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サークル仲間と
しおりを挟む『竹之内先輩とよく一緒にいる人だ!』
それが部室に入って掛けられた第一声だった。
また何か言われるかと警戒してしまったが、彼女たちはすぐにハッとして優斗にごめんねと謝罪した。
『あんなイケメンと真顔で話せるってすごい、ってずっと思ってて』
『私なら見つめられるだけで心臓止まるなぁって』
『だよね。名前なんて呼ばれた日には即成仏だよ』
ウンウンと頷く彼女たちの独特な表現が楽しくて、優斗はつい笑ってしまって。それだけの事で優斗は“可愛い”の方へと分類されてしまった。
もっと話しかけづらいと思われていたらしく、そのギャップや、耀の“橘はめちゃくちゃいい奴!”という言葉もあり、優斗はすぐに受け入れられ皆と打ち解けたのだった。
そして、旅行当日。
冬も間近のキャンプは、キャンプファイヤーが醍醐味だと知った。
暖かな火を囲み、成人組はアルコールを、未成年組は炭酸飲料を片手に賑やかな時間を過ごした。
見上げれば、キラキラと輝く宝石のような星々。
澄んだ空気。
パチパチと火の弾ける音。
――三人でキャンプも楽しそうだな……。
優斗は空を見上げたまま思う。
のんびり散歩をしたり釣りをしたりバーベキューをしたり、こんな風に火の前で他愛ない話をしたり。
テントでの雑魚寝は直柾はあまりイメージが出来ないが、楽しいね、と言ってくれそう。隆晴は高校時代になかなかサバイバルなキャンプをしたと聞いた事がある。
いつか三人で行けたら、と想像してしまった。
「じゃあ次! 橘君は好きな人いる?」
「っ!? え、な、なにっ?」
突然話を振られ、ごめん聞いてなかった、と素直に謝る。すると耀がやってきて、ガシッと優斗の肩を組んだ。
「ごめんね! 橘はツンデレだから言えないって!」
「ツンデレって……」
違う、と耀を見るが、ふと気付き口を噤んだ。
「ちなみに俺は彼女募集中です! 出来れば胸がおっきい人がいいです!」
「やだー、笹山君サイテー」
「素直すぎー」
ワッと笑いが起こる。
はい、次の人! と耀が言うと、皆楽しそうに笑いながら次の話題に移った。
「笹山、ありがとう」
「いいって。橘、こういう話苦手だろ?」
「うん……。笹山って、すごく気が利いて頼りにもなるのに……」
「そんな残念そうな目で見ないで!」
「ごめんごめん。でも、笹山のかっこいいところをちゃんと分かってくれる人、きっとたくさんいると思うな」
そういう人とお付き合いして欲しいな。そう言って笑う優斗に、耀はウッと両手で顔を覆った。
「橘……。どうしてお前は俺の彼女じゃないんだ……」
「そんな残念そうに言われても」
「せめて橘がDカップ以上だったら……」
「そういうところは駄目だと思う」
真顔で返すと、そういうとこも好きだけど! と優斗に抱きついて、笹山またやってる、と皆が楽しげに笑った。
人気のテーマパークも、平日は多少空いていた。
昼食をとりながらゆったりしていると、耀が優斗にある提案をしてくる。そして。
「みんなー、見て見て!」
そう言って耀が皆に見せた画面には、キャラクターモチーフのふわふわマフラーをした優斗が口元を埋めて、上目遣いで写っていた。隣の男友達が彼氏ばりに優斗の肩を抱いている。
「えっ、やだ! 橘君、可愛いー!」
「なになに~? わっ、ほんとかわいい~」
「ええっ、そうかな……? というか、男としては可愛いは微妙なんだけど……」
加工アプリで撮っているとはいえ、ここまで絶賛されては微妙な気分だ。苦笑すると、実物も可愛いよ! とフォローにならないフォローが飛んできた。
「青葉君と並ぶと、リアルに美男美女カップルだね」
「橘、マジで女子だわ」
「だよな。思わず肩抱いた」
「えっ、待って、俺、普通にちゃんと男だからね?」
「あはは、じゃあ私とカップルっぽく撮ろ?」
「私も撮りたい!」
「誰が一番橘君を彼氏っぽく撮れるか勝負だよ!」
「勝負って……」
「橘君、ちゃんと彼氏顔して!」
「えっ、彼氏顔っ?」
「駄目、可愛い。やり直し!」
女の子にも可愛いと言われ、彼氏、彼氏、と懸命に男らしい顔を考える。
男らしい……。ポンと隆晴と直柾の顔が浮かんだ。二人をイメージして顔を作る。そして、撮れた写真。
「えっ……、待って、橘君、ちゃんと彼氏……」
「えー? 見せ……、……って、なにこのイケメン……」
「そういや、橘って普通に顔いいよな……」
「いつも竹之内先輩といるから可愛く見えるだけ……?」
ざわ……とざわつく。
「その反応もなんか恥ずかしいんだけど……」
顔が良いと言われても、以前のように否定はしなくなった。認めたわけではなく、好意は素直に受け取っておこうと思うようになっただけ。
その後、他の女の子たちからも彼氏顔でと写真を頼まれ、頑張った優斗は明日は顔面筋肉痛かなと頬を擦り苦笑した。
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