31 / 34
第1章 守護神石の導き
第9話 守護神石の秘める力(5)
しおりを挟む
翌朝、ソニアは山際から差し込む朝日の眩しさで目を覚ました。目を細めて周りを見ると、二人はまだ寝ているようだった。
ソニアが起き上がり二人に声をかけると、ライアンだけが目を覚ました。
あくびをしながら言う。
「おお、ソニア。おはよう」
「おはよう、ライアン。ティムを起こしてくれますか」
「ああ」と答えると、ライアンは寝呆け眼をこすりながらティムを見た。
「朝のこいつは厄介だぜ。そう簡単にはお目覚めになってくれねえからよ」
ライアンは起き上がると、いきなりティムの尻を力いっぱい蹴り飛ばした。全く手加減をしているようには見えない。ソニアは思わず両手で口を覆う。
するとティムはがばっと上半身を起こすと、思い切り伸びをした。
ソニアが言う。
「おはよう、ティム」
「おはよう、ソニア」とティムは答えたのだろうが、口元でもそもそ言ったのではっきりと聞こえなかった。
「もう朝だぜ。ぼちぼち出発すんぞ」
ライアンが言うと、ティムは勢いよく立ち上がった。今日はいつもより目覚めが良いようだ。
立ち上がりもう一度伸びをすると、ティムは思い出したように言った。
「あ、そうだ。昨日あの後ずっと石を見てたんだけどね、また変化があったんだ。ちょっと見てよ」
「変化だと?」
ライアンが聞く。
「うん」
ティムは袋からサファイアを取り出し、真剣な眼差しで見つめ始めた。すると、サファイアからおぼろげではあるが、青い光が出ているのが分かった。二人がサファイアに触れてみると、サファイアは昨晩よりも明らかに温かくなっていた。
「お前・・・。すげえな」
ライアンが驚いて目を見開く。
「へへへ、まあね!」
ソニアは一つ頷いた。
「どうやら、ちゃんと石と心が通い合えたようですね」
「やったあ!」
ティムは目を輝かせて拳を握った。
「これで俺も魔法使いだぜ!ウヒョヒョヒョ・・・」
「いえ、まだまだですよ。まだ魔法習得のスタート地点に立っただけに過ぎません」
「ええ、まだ何かあるの?嫌だなあ」
「嫌嫌言ってたら、魔法は使えるようにならないですよ。また今晩次のことを教えます」
「はあい」
ティムの力の無い返事を聞きながら、横にいるライアンは更に輪をかけて力の無い声で言った。
「まだスタート地点にも立ててない俺って一体・・・」
しかし、三人がヘーゼルガルドを目指して歩き始めてから三日が経った日のことである。
「おお!ティッ・・・ティム!ソニア!」
夕飯を食べ終えてごろごろしていたティムと、もぐもぐとグリュエルを食べ続けていたソニアの二人は、突拍子もなく叫んだライアンを見やった。
「ライアン、どうしたんだ?ケツにほくろでも見つけたのかい?」
ティムがあくび混じりにそう尋ねると、ライアンは「ほら、これ見てみろよ!」と言って、持っているルビーを突き出した。
ルビーは焚火の明かりで霞んでしまう程微弱ではあったが、真っ赤な光を確かに放っていた。
「やっと光ったぜ!」
ライアンは顔を輝かせる。
ソニアは軽く拍手をして、ライアンをねぎらう。
「ライアン、良かったですね!」
一方ティムは、「あちゃー、光っちゃったか」とおどけた口調で悔しがった。
ティムがサファイアと共鳴し合うことができるようになってから、もう四日。その間ティムはソニアの指導の下、ライアンとは別メニューで本格的な魔法の特訓をしていたのだが、ライアンは全く共鳴ができないままだった。だからティムは、ライアンに魔法は永遠に使えないと言ってからかっていたのだ。
「へっ!どうだ!ざまあみやがれ!」
ライアンが得意げにルビーをティムの顔の前に突きつける。
ソニアは言った。
「何はともあれ、これで二人一緒に練習ができますね」
ソニアがようやく夕飯を食べ終わると、三人は早速魔法の特訓を始めた。夕飯後の魔法の特訓は習慣になりつつある。
「さて、ライアンが共鳴に成功したので、これからは二人で実践的な魔法の練習をしていきましょう」
「合点承知だぜ!」
ライアンは歯を見せてこぶしを握った。
「じゃあ、まずティム。ライアンに特訓の成果をまず見せてください」
「えーと、どうすればいいの?」
「何か魔法を使ってみてください」
「オッケー」
ティムは頷くと両手を地面に置いた。目を閉じて気持ちを集中させる。
その様子をライアンは固唾を飲みながら見つめている。
「風よ、吹け!」とティムはおもむろに言い放った。
その後は辺り一帯を静けさが支配した。
「・・・何も起こらねえな」
数秒待っても何も変化が現れないため、ライアンは怪訝そうな顔で言った。
ソニアは地面に落ちている葉っぱを拾い上げ、掌の上に乗せた。するとその葉っぱはゆらゆらと空中を踊ると、舞い落ちていった。
「おお」
ライアンは声を漏らした。
微弱な風。単なる自然現象の風かもしれない。でももしティムが起こした風なら、それは紛れもなく魔法ということになる。
「っはー!」
ティムは大きく息を吐いた。姿勢をくずし楽な体勢になる。
「ティム、全然風を感じませんよ。昨日の方がもっと風が吹いていました」
ソニアが落ち着いた声でぴしゃりと言う。
「もっと気を集中させないと。散漫だと風が一か所に集まりませんよ」
「うー、また同じ練習を続けていくか」
ティムは頭を掻いた。
「これが魔法か」
ライアンはごくりと唾を飲み込む。
ティムが照れくさそうに手を振る。
「いやいや、こんなのまだ魔法って程じゃないよ」
「そうですね。これではただの一発芸にもなりませんね」
ソニアがさらりと言うと、ティムは「ぐはあ・・・」とうなだれた。
ソニアがパンパンと手を鳴らす。
「はい、じゃあ気を取り直して特訓に入りましょう!ティムは引き続きひたすら風を吹かせる練習を。ライアンは・・・まずは、魔法を使うイメージトレーニングからやりましょうか」
「はーい・・・」ティムは心折られ、力なく返事。ライアンも思わずたじろいで「お、おう」と答えた。
ティムとライアンは少し間を置いて並んで座り、二人に向かい合うようにして、ソニアが立った。
まずティムを一人で練習させ、ソニアはライアンに説明を始めた。
「ティムの持つサファイアは風の守護神石ですが、ライアンの持つルビーは炎の守護神石です。ルビーを持っているライアンは、炎の魔法を操ることができます」
「俺でも魔法が使えるのか。まだ信じがたい話だぜ」
「勿論、練習次第ですが。既に共鳴は完全ではないにしろ形にはなってきているので、実践的な練習をやっていきましょう」
「今ティムがやっているあれか?」
「まあ、そうです。でもいきなりやってもできないと思うので、まずはイメージトレーニングからやりましょうか」
そう言うとソニアはライアンの前に座り込んだ。
「この世界―エルゼリアは十二の神々によって生み出されました。炎の神ヒース・ムーアは、その十二の神の一つです」
ソニアは人差し指を立てて見せた。
「エルゼリアには火や熱の要素でいっぱいです。照りつける太陽の熱さ、焚火の炎、枝を木板に擦り合わせると、摩擦熱が発生します。これらはみんな炎の神ヒース・ムーアが生み出したものです」
ライアンはすぐ横で燃える焚火を見た。
「この焚火もルビーに宿る神様が作ったってことだな」
「そうです。そしてライアン、今あなたはそのルビーを持っている訳です。だから、そのルビーの力を使えば、炎を自在に操ることができるはずです」
「できるはずなんだけどねえ」
ライアンが気の抜けた声を上げる。
「ちゃんと修行を積めばできるようになりますよ。私なんかは石の力を使わずに、一から修行をして魔法を習得したんですからね」
ソニアは気持ち胸を張ってみせた。
「ソニアちゃんはすげえよなあ」
「石がある状態から始めるのと無い状態から始めるのでは、習得の速さに天と地程差が出るんですよ。私の場合、実戦で使えるレベルの魔法が使えるようになるまで一年半かかりました」
「へえ」
「石があるライアンさんの場合は、一週間もあれば大丈夫でしょう」
「いっ・・・」
ライアンは息を飲んだ。
「いやいやソニアちゃん、いくらなんでもそれは・・・」
ソニアは立ち上がりざまに言った。
「とにかく挑戦してみましょう。何も無い所からいきなり火を生み出すことはまだ難しいと思うので、まずはそこの焚火の火を動かすことから始めましょう」
「え?ど、どうやって?」
「共鳴と同じ感覚です。ルビーと心を一つにして、念じるんですよ。その念を言葉に表せば、炎を操ることができます」
「なるほどな。意外と簡単そうだな」
そして、夜が更けた。ソニアはもうぐっすり寝静まっている。
「全然できねえ!」
焚火と長い間睨めっこしていたライアンは、しびれを切らして喚いた。手に握りしめていたルビーを投げ出し、仰向けに倒れこむ。
「どうした、ライアン。諦めんの?」
少し離れて、きりかぶに座って練習をしていたティムが言う。
「ずっと念じてるのに、焚火の火がピクリとも動かねえよ」
ライアンは腰を上げて、弱音を吐く。
「本当に魔法なんて使えるようになるのか?」
「なるでしょ。俺は何となくコツが掴めてきてるし」
「お前、もう実践練習始めてから今日で三日だっけ」
「うん」
「そうだよなあ」
ライアンは両手を頭の後ろで組んだ。
「三日でようやくコツが掴めるのに、今日いきなりできるようになる訳無えかあ」
「俺だって最初は何もできなかったからな。まだヘーゼルガルドまで三、四日くらいはかかるし、それまでにある程度はできるようになってるんじゃない?」
「うーん、そうなればいいけどな」
共鳴にすらかなり手こずったライアンは、不安な気持ちでいっぱいだった。
ソニアが起き上がり二人に声をかけると、ライアンだけが目を覚ました。
あくびをしながら言う。
「おお、ソニア。おはよう」
「おはよう、ライアン。ティムを起こしてくれますか」
「ああ」と答えると、ライアンは寝呆け眼をこすりながらティムを見た。
「朝のこいつは厄介だぜ。そう簡単にはお目覚めになってくれねえからよ」
ライアンは起き上がると、いきなりティムの尻を力いっぱい蹴り飛ばした。全く手加減をしているようには見えない。ソニアは思わず両手で口を覆う。
するとティムはがばっと上半身を起こすと、思い切り伸びをした。
ソニアが言う。
「おはよう、ティム」
「おはよう、ソニア」とティムは答えたのだろうが、口元でもそもそ言ったのではっきりと聞こえなかった。
「もう朝だぜ。ぼちぼち出発すんぞ」
ライアンが言うと、ティムは勢いよく立ち上がった。今日はいつもより目覚めが良いようだ。
立ち上がりもう一度伸びをすると、ティムは思い出したように言った。
「あ、そうだ。昨日あの後ずっと石を見てたんだけどね、また変化があったんだ。ちょっと見てよ」
「変化だと?」
ライアンが聞く。
「うん」
ティムは袋からサファイアを取り出し、真剣な眼差しで見つめ始めた。すると、サファイアからおぼろげではあるが、青い光が出ているのが分かった。二人がサファイアに触れてみると、サファイアは昨晩よりも明らかに温かくなっていた。
「お前・・・。すげえな」
ライアンが驚いて目を見開く。
「へへへ、まあね!」
ソニアは一つ頷いた。
「どうやら、ちゃんと石と心が通い合えたようですね」
「やったあ!」
ティムは目を輝かせて拳を握った。
「これで俺も魔法使いだぜ!ウヒョヒョヒョ・・・」
「いえ、まだまだですよ。まだ魔法習得のスタート地点に立っただけに過ぎません」
「ええ、まだ何かあるの?嫌だなあ」
「嫌嫌言ってたら、魔法は使えるようにならないですよ。また今晩次のことを教えます」
「はあい」
ティムの力の無い返事を聞きながら、横にいるライアンは更に輪をかけて力の無い声で言った。
「まだスタート地点にも立ててない俺って一体・・・」
しかし、三人がヘーゼルガルドを目指して歩き始めてから三日が経った日のことである。
「おお!ティッ・・・ティム!ソニア!」
夕飯を食べ終えてごろごろしていたティムと、もぐもぐとグリュエルを食べ続けていたソニアの二人は、突拍子もなく叫んだライアンを見やった。
「ライアン、どうしたんだ?ケツにほくろでも見つけたのかい?」
ティムがあくび混じりにそう尋ねると、ライアンは「ほら、これ見てみろよ!」と言って、持っているルビーを突き出した。
ルビーは焚火の明かりで霞んでしまう程微弱ではあったが、真っ赤な光を確かに放っていた。
「やっと光ったぜ!」
ライアンは顔を輝かせる。
ソニアは軽く拍手をして、ライアンをねぎらう。
「ライアン、良かったですね!」
一方ティムは、「あちゃー、光っちゃったか」とおどけた口調で悔しがった。
ティムがサファイアと共鳴し合うことができるようになってから、もう四日。その間ティムはソニアの指導の下、ライアンとは別メニューで本格的な魔法の特訓をしていたのだが、ライアンは全く共鳴ができないままだった。だからティムは、ライアンに魔法は永遠に使えないと言ってからかっていたのだ。
「へっ!どうだ!ざまあみやがれ!」
ライアンが得意げにルビーをティムの顔の前に突きつける。
ソニアは言った。
「何はともあれ、これで二人一緒に練習ができますね」
ソニアがようやく夕飯を食べ終わると、三人は早速魔法の特訓を始めた。夕飯後の魔法の特訓は習慣になりつつある。
「さて、ライアンが共鳴に成功したので、これからは二人で実践的な魔法の練習をしていきましょう」
「合点承知だぜ!」
ライアンは歯を見せてこぶしを握った。
「じゃあ、まずティム。ライアンに特訓の成果をまず見せてください」
「えーと、どうすればいいの?」
「何か魔法を使ってみてください」
「オッケー」
ティムは頷くと両手を地面に置いた。目を閉じて気持ちを集中させる。
その様子をライアンは固唾を飲みながら見つめている。
「風よ、吹け!」とティムはおもむろに言い放った。
その後は辺り一帯を静けさが支配した。
「・・・何も起こらねえな」
数秒待っても何も変化が現れないため、ライアンは怪訝そうな顔で言った。
ソニアは地面に落ちている葉っぱを拾い上げ、掌の上に乗せた。するとその葉っぱはゆらゆらと空中を踊ると、舞い落ちていった。
「おお」
ライアンは声を漏らした。
微弱な風。単なる自然現象の風かもしれない。でももしティムが起こした風なら、それは紛れもなく魔法ということになる。
「っはー!」
ティムは大きく息を吐いた。姿勢をくずし楽な体勢になる。
「ティム、全然風を感じませんよ。昨日の方がもっと風が吹いていました」
ソニアが落ち着いた声でぴしゃりと言う。
「もっと気を集中させないと。散漫だと風が一か所に集まりませんよ」
「うー、また同じ練習を続けていくか」
ティムは頭を掻いた。
「これが魔法か」
ライアンはごくりと唾を飲み込む。
ティムが照れくさそうに手を振る。
「いやいや、こんなのまだ魔法って程じゃないよ」
「そうですね。これではただの一発芸にもなりませんね」
ソニアがさらりと言うと、ティムは「ぐはあ・・・」とうなだれた。
ソニアがパンパンと手を鳴らす。
「はい、じゃあ気を取り直して特訓に入りましょう!ティムは引き続きひたすら風を吹かせる練習を。ライアンは・・・まずは、魔法を使うイメージトレーニングからやりましょうか」
「はーい・・・」ティムは心折られ、力なく返事。ライアンも思わずたじろいで「お、おう」と答えた。
ティムとライアンは少し間を置いて並んで座り、二人に向かい合うようにして、ソニアが立った。
まずティムを一人で練習させ、ソニアはライアンに説明を始めた。
「ティムの持つサファイアは風の守護神石ですが、ライアンの持つルビーは炎の守護神石です。ルビーを持っているライアンは、炎の魔法を操ることができます」
「俺でも魔法が使えるのか。まだ信じがたい話だぜ」
「勿論、練習次第ですが。既に共鳴は完全ではないにしろ形にはなってきているので、実践的な練習をやっていきましょう」
「今ティムがやっているあれか?」
「まあ、そうです。でもいきなりやってもできないと思うので、まずはイメージトレーニングからやりましょうか」
そう言うとソニアはライアンの前に座り込んだ。
「この世界―エルゼリアは十二の神々によって生み出されました。炎の神ヒース・ムーアは、その十二の神の一つです」
ソニアは人差し指を立てて見せた。
「エルゼリアには火や熱の要素でいっぱいです。照りつける太陽の熱さ、焚火の炎、枝を木板に擦り合わせると、摩擦熱が発生します。これらはみんな炎の神ヒース・ムーアが生み出したものです」
ライアンはすぐ横で燃える焚火を見た。
「この焚火もルビーに宿る神様が作ったってことだな」
「そうです。そしてライアン、今あなたはそのルビーを持っている訳です。だから、そのルビーの力を使えば、炎を自在に操ることができるはずです」
「できるはずなんだけどねえ」
ライアンが気の抜けた声を上げる。
「ちゃんと修行を積めばできるようになりますよ。私なんかは石の力を使わずに、一から修行をして魔法を習得したんですからね」
ソニアは気持ち胸を張ってみせた。
「ソニアちゃんはすげえよなあ」
「石がある状態から始めるのと無い状態から始めるのでは、習得の速さに天と地程差が出るんですよ。私の場合、実戦で使えるレベルの魔法が使えるようになるまで一年半かかりました」
「へえ」
「石があるライアンさんの場合は、一週間もあれば大丈夫でしょう」
「いっ・・・」
ライアンは息を飲んだ。
「いやいやソニアちゃん、いくらなんでもそれは・・・」
ソニアは立ち上がりざまに言った。
「とにかく挑戦してみましょう。何も無い所からいきなり火を生み出すことはまだ難しいと思うので、まずはそこの焚火の火を動かすことから始めましょう」
「え?ど、どうやって?」
「共鳴と同じ感覚です。ルビーと心を一つにして、念じるんですよ。その念を言葉に表せば、炎を操ることができます」
「なるほどな。意外と簡単そうだな」
そして、夜が更けた。ソニアはもうぐっすり寝静まっている。
「全然できねえ!」
焚火と長い間睨めっこしていたライアンは、しびれを切らして喚いた。手に握りしめていたルビーを投げ出し、仰向けに倒れこむ。
「どうした、ライアン。諦めんの?」
少し離れて、きりかぶに座って練習をしていたティムが言う。
「ずっと念じてるのに、焚火の火がピクリとも動かねえよ」
ライアンは腰を上げて、弱音を吐く。
「本当に魔法なんて使えるようになるのか?」
「なるでしょ。俺は何となくコツが掴めてきてるし」
「お前、もう実践練習始めてから今日で三日だっけ」
「うん」
「そうだよなあ」
ライアンは両手を頭の後ろで組んだ。
「三日でようやくコツが掴めるのに、今日いきなりできるようになる訳無えかあ」
「俺だって最初は何もできなかったからな。まだヘーゼルガルドまで三、四日くらいはかかるし、それまでにある程度はできるようになってるんじゃない?」
「うーん、そうなればいいけどな」
共鳴にすらかなり手こずったライアンは、不安な気持ちでいっぱいだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる