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第1章 守護神石の導き
第8話 魔法使いソニア(1)
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剣術大会の行われている場所に戻ると、相変わらずの人だかりだった。これではライアンがどこにいるのかすぐには分かりそうにはない。
人ごみをかき分けて前の方へ行くと、そこには先程ティムを完膚無きに打ち負かしたダシールと、どこかの城の中堅剣士といった風貌のいかにも腕の立ちそうな男が戦闘準備を整えているところだった。
「それでは長らくお待たせしました!本日の大会の決勝戦を開始します!長い闘いの末この決勝戦に挑むのは、ダシール様とスミス様!」
審判の男が叫ぶと、観衆から大きな歓声が上がった。
ティムが予想していた通り、ダシールは決勝戦まで残ったようである。
ティムはダシールとの試合を思い返した。迅速な剣裁き、瞬発力、反射神経、全てに優れた使い手だった。そして印象に残ったのは、ティムの落としたサファイアをじっと見つめていたことだった。一体あの時ダシールは何を考えていたのだろうか。
ともあれ、これが決勝戦だということはライアンは敗退したということだった。ティムがソニアに首を振ってみせると、ソニアは残念そうに少し眉を寄せた。
審判の掛け声と同時に、試合が始まった。しかし両者とも間合いを測っているようで動こうとしない。長い間が開いた。観衆がその間、固唾(かたず)を飲んで見守る。
先にダシールが動いた。無駄の無い動きでスミスに斬り込む。しかしスミスはそれを待っていたかのように軽く弾き返した。ダシールが押し返されて後ろに下がる。こここへスミスは鋭く木刀をなぎ払ったが、ダシールは素早く身を屈めそれをかわした。
すぐに体勢を整えたダシールが得意の高速斬りでスミスに攻撃すると、スミスは的確にそれを受け止めた。そしてスミスは続けざまに木刀を押し出すと、ダシールは再び力負けして後退した。間髪を入れず、スミスはダシールに斬りかかる。その迅速な攻撃をダシールはぎりぎりで受け流し、一瞬の隙をついてスミスに斬りつけた。しかしスミスはすぐさま向き直り、ダシールの攻撃を受け止める。驚くべき反射神経だった。
スミスは木刀を力任せに押し出し、ダシールとの距離を開けた。もう一度両者が睨み合う。観衆から拍手が鳴った。ティムも拍手をする。スミスという剣士も、かなりの使い手だった。
それからしばらく両者の一進一退の打ち合いが続き試合は白熱したが、最後にダシールがスミスの肩に木刀をかすらせた。観衆から驚嘆の声が上がったが、それはすぐに歓声に変わった。
「勝負あり!勝者、ダシール様!おめでとうございます!優勝です!」
審判の高揚した声が聞こえる。観衆からは歓声と口笛と野次が飛び交っていた。
スミスは汗を拭うと、笑顔でダシールに握手を求めた。するとダシールは被っていたベールをおもむろに脱ぎ捨てた。ベールを脱いだダシールは、黒紫色の髪を後ろで団子状に結った艶やかな女であった。
これにはスミスも審判も度肝を抜かれているようだった。観衆がより一層騒ぎ立てる。
ダシールに笑顔で握手を求められると、スミスは思いがけない状況に驚きながらも笑顔で握手を返していた。
「それでは優勝者のダシール様には、優勝賞金として千ルーンを差し上げます!」
審判がそう叫ぶと、受付の時にいた別の男が金貨の束を持って登場した。男はダシールの前まで来ると、金貨の束をダシールに渡した。ダシールはそれを受け取ると、にっこりと上品に微笑みお礼を述べた。観衆からは雨のような拍手が轟いた。
人だかりから出ると、店の建物の壁にもたれるようにしてライアンが座っていた。
「よう、ライアン。元気そうだね」
ティムが早速皮肉を言うと、ライアンは大げさに溜息を吐いた。
「お前は相変わらず呑気だよなあ。これで俺たち本当に一文無しになっちまったっていうのによ」
「まあ何とかなるって。水は川や泉にあるし、食糧は狩りでも何でもして調達するさ」
「お前は野生をなめてるよ、絶対」
ライアンはまた溜息を吐いた。
「お金が無いのですか?」
ティムの後ろにいたソニアが聞いた。
「あ、うん。実は色々あって今お金が無いんだよ。だからこそ剣術大会に参加したんだけどね」
その時、ライアンが顔を上げてゆっくりと立ち上がった。そしてティムとソニアの顔をゆっくり見比べていたかと思うと、突然目を剥いてティムに掴みかかった。
「やい、ティム!貴様、俺がヒーコラ闘っている間にこんな美女と遊んでいやがったのか!許さんぞ!」
「ちょ、落ち着けよ、ライアン。別に遊んでた訳じゃないって」
ライアンはさっとソニアの方を向いた。ソニアは目の前の騒動に戸惑ったように目を瞬かせている。
ライアンはティムをどんと突き放すと、ソニアに手を差し伸べた。
「初めまして。私はライアン・ヘルムクロス。しがない騎士であります。どうぞお見知りおきを」
ソニアは苦笑いしながら握手し返した。
「私はソニア・クランスフェイドと申します。よろしくお願いします」
「どうですか。もしよろしければ、これから葡萄酒を飲みながらゆっくりお食事でも」
「おい、ライアン。ちょっと待てって」
ティムが中に割って入る。
「うるさい!お前だけ美女と遊ぼうなんて、俺は絶対に認めんぞ!」
「だから、遊んでないって言ってるだろ。それにお前今お金無いじゃないか」
「うむむ・・・」
ライアンが言い返せずに唸る。
その時、背後から艶(なま)めかしい声がした。
「ちょっといいかしら」
振り向くと、黒いドレスのようなローブを纏った女が立っていた。ダシールである。
「これはこれは、麗しき貴婦人殿。この騎士ライアンに何か御用事でしょうか?」
ライアンはあっさりとソニアから離れ、ダシールに尻尾を振り始めた。どうやらライアンは、この女がダシールだということを知らないらしい。
ダシールは白けた目つきでライアンを見据えると、ぴしゃりと言った。
「あなたじゃなくて、そこの彼に用事があるのよ。ティムだったかしら」
「え?」
ティムは思わず声を出した。
ダシールの視線がティムを捕らえた。ダシールのサファイアを見つめている情景が頭の中で再現され、ティムの体は強張った。
「何だよ。ティムばっかり・・・」
ライアンが口を尖らせて拗(す)ねる。
その様子を見てダシールが言う。
「あら、あなた、彼のお友達なのね」
「俺に何か用ですか?」
ティムが聞いた。
するとダシールは肉厚の唇を歪ませて微笑んだ。
「ええ、そうよ。あなたの持っている石は守護神石のサファイアだということは知ってるかしら?」
ティムは、こくりと頷いた。
ダシールは続ける。
「では、あなたがサファイアを持っている理由は何かしら?」
「この石は俺の親父から受け継いだもので・・・」
「そういうことを聞いてるんじゃなくて、何の為に持っているかを聞いてるの」
ダシールはぴしゃりと言い放った。
ティムは、不意を打たれて口ごもる。
「これは、その、魔族を倒す為だよ。集めてるんだ、守護神石」
「あらあ、そうなの」
ダシールは、ティムの目を涼しい顔で見つめた。
ティムは妙な居心地の悪さを覚え、冷や汗を流した。この女からはやはりただものではない気配を感じた。
ダシールは長い前髪を手繰りながら言った。
「まあ、精々頑張ることね。それじゃ、失礼するわね」
ダシールはそのまま立ち去ろうと歩きだしたが、すぐに止まった。
「あ、そうそう。あなたに二百ルーン差し上げるわ。私はこんなに要らないから」
「え、いいの?」
ティムは、目を丸くした。ライアンは、驚いて口をあんぐり開けていた。
「ええ、いいわ。どうせお金に困ってたんでしょ?」
ダシールは、薄らと微笑んで、十ルーン紙幣を二十枚差し出した。
断る理由は無かった。
「じゃあ、何か悪いけど、頂きます!」
ティムはお金を受け取った。思わず大声が出ていた。
その様子を見て、ソニアは口を手で押さえて笑っていた。
ライアンは訳も分からず、目をぱちくりさせている。
「それじゃあね。縁があれば、また会いましょう」
「ちょっと待って。あなたは一体誰?」
「私はアンジェラ。ただの旅人よ。じゃあね」
そう言い残して、アンジェラは通りの方角へ去って行った。
どうやらダシールというのは、性別を曖昧にする為の偽名であったようだ。
「おい、誰なんだ、あの超絶に色っぽい女性は。何であんな大金を持ってるんだ」
ライアンが、唾を飛ばしながらまくし立てる。
「あれはベールを脱いだダシールだよ」
「な、な、な、何い?あの人が?」
ライアンは前につんのめって驚き、アンジェラが去って行った方角を見つめた。
「だって、女じゃねえか」
「俺だって信じられないよ」
ティムは両手を広げて、首をすくめた。
ライアンはしばらく指を歯に当てて呆気に取られていたが、ソニアの存在を思い出して顔を元に戻した。
「それで、こっちの可愛い子ちゃんは?」
「ああ、そうそう。この人はソニア・クランスフェイド。お前が試合をしている間に俺は守護神石の情報収集をしてたんだけど、その時に出会ったんだ」
「へえ。それで、何か分かったのかよ」
「それが実はね・・・」
「ティムさん!」
うっかり大声で言いそうになったティムを、ソニアが焦って止める。
ティムは慌てて口を手で覆うと、怪訝そうな顔で目を細めるライアンの耳元で囁いた。
「この人、守護神石の一つのアクアマリンを持ってるんだ」
「マジかよ」
ライアンが驚いた顔で、ティムの目を見据える。
ティムはにんまりと微笑み、頷いた。
ソニアが口を開いた。
「それではこんな所で立ち話もなんですし、これから一緒に夕食でもいかがですか?」
その言葉を合図にティムとライアンのお腹は、揃って美しいハーモニーを奏でた。
人ごみをかき分けて前の方へ行くと、そこには先程ティムを完膚無きに打ち負かしたダシールと、どこかの城の中堅剣士といった風貌のいかにも腕の立ちそうな男が戦闘準備を整えているところだった。
「それでは長らくお待たせしました!本日の大会の決勝戦を開始します!長い闘いの末この決勝戦に挑むのは、ダシール様とスミス様!」
審判の男が叫ぶと、観衆から大きな歓声が上がった。
ティムが予想していた通り、ダシールは決勝戦まで残ったようである。
ティムはダシールとの試合を思い返した。迅速な剣裁き、瞬発力、反射神経、全てに優れた使い手だった。そして印象に残ったのは、ティムの落としたサファイアをじっと見つめていたことだった。一体あの時ダシールは何を考えていたのだろうか。
ともあれ、これが決勝戦だということはライアンは敗退したということだった。ティムがソニアに首を振ってみせると、ソニアは残念そうに少し眉を寄せた。
審判の掛け声と同時に、試合が始まった。しかし両者とも間合いを測っているようで動こうとしない。長い間が開いた。観衆がその間、固唾(かたず)を飲んで見守る。
先にダシールが動いた。無駄の無い動きでスミスに斬り込む。しかしスミスはそれを待っていたかのように軽く弾き返した。ダシールが押し返されて後ろに下がる。こここへスミスは鋭く木刀をなぎ払ったが、ダシールは素早く身を屈めそれをかわした。
すぐに体勢を整えたダシールが得意の高速斬りでスミスに攻撃すると、スミスは的確にそれを受け止めた。そしてスミスは続けざまに木刀を押し出すと、ダシールは再び力負けして後退した。間髪を入れず、スミスはダシールに斬りかかる。その迅速な攻撃をダシールはぎりぎりで受け流し、一瞬の隙をついてスミスに斬りつけた。しかしスミスはすぐさま向き直り、ダシールの攻撃を受け止める。驚くべき反射神経だった。
スミスは木刀を力任せに押し出し、ダシールとの距離を開けた。もう一度両者が睨み合う。観衆から拍手が鳴った。ティムも拍手をする。スミスという剣士も、かなりの使い手だった。
それからしばらく両者の一進一退の打ち合いが続き試合は白熱したが、最後にダシールがスミスの肩に木刀をかすらせた。観衆から驚嘆の声が上がったが、それはすぐに歓声に変わった。
「勝負あり!勝者、ダシール様!おめでとうございます!優勝です!」
審判の高揚した声が聞こえる。観衆からは歓声と口笛と野次が飛び交っていた。
スミスは汗を拭うと、笑顔でダシールに握手を求めた。するとダシールは被っていたベールをおもむろに脱ぎ捨てた。ベールを脱いだダシールは、黒紫色の髪を後ろで団子状に結った艶やかな女であった。
これにはスミスも審判も度肝を抜かれているようだった。観衆がより一層騒ぎ立てる。
ダシールに笑顔で握手を求められると、スミスは思いがけない状況に驚きながらも笑顔で握手を返していた。
「それでは優勝者のダシール様には、優勝賞金として千ルーンを差し上げます!」
審判がそう叫ぶと、受付の時にいた別の男が金貨の束を持って登場した。男はダシールの前まで来ると、金貨の束をダシールに渡した。ダシールはそれを受け取ると、にっこりと上品に微笑みお礼を述べた。観衆からは雨のような拍手が轟いた。
人だかりから出ると、店の建物の壁にもたれるようにしてライアンが座っていた。
「よう、ライアン。元気そうだね」
ティムが早速皮肉を言うと、ライアンは大げさに溜息を吐いた。
「お前は相変わらず呑気だよなあ。これで俺たち本当に一文無しになっちまったっていうのによ」
「まあ何とかなるって。水は川や泉にあるし、食糧は狩りでも何でもして調達するさ」
「お前は野生をなめてるよ、絶対」
ライアンはまた溜息を吐いた。
「お金が無いのですか?」
ティムの後ろにいたソニアが聞いた。
「あ、うん。実は色々あって今お金が無いんだよ。だからこそ剣術大会に参加したんだけどね」
その時、ライアンが顔を上げてゆっくりと立ち上がった。そしてティムとソニアの顔をゆっくり見比べていたかと思うと、突然目を剥いてティムに掴みかかった。
「やい、ティム!貴様、俺がヒーコラ闘っている間にこんな美女と遊んでいやがったのか!許さんぞ!」
「ちょ、落ち着けよ、ライアン。別に遊んでた訳じゃないって」
ライアンはさっとソニアの方を向いた。ソニアは目の前の騒動に戸惑ったように目を瞬かせている。
ライアンはティムをどんと突き放すと、ソニアに手を差し伸べた。
「初めまして。私はライアン・ヘルムクロス。しがない騎士であります。どうぞお見知りおきを」
ソニアは苦笑いしながら握手し返した。
「私はソニア・クランスフェイドと申します。よろしくお願いします」
「どうですか。もしよろしければ、これから葡萄酒を飲みながらゆっくりお食事でも」
「おい、ライアン。ちょっと待てって」
ティムが中に割って入る。
「うるさい!お前だけ美女と遊ぼうなんて、俺は絶対に認めんぞ!」
「だから、遊んでないって言ってるだろ。それにお前今お金無いじゃないか」
「うむむ・・・」
ライアンが言い返せずに唸る。
その時、背後から艶(なま)めかしい声がした。
「ちょっといいかしら」
振り向くと、黒いドレスのようなローブを纏った女が立っていた。ダシールである。
「これはこれは、麗しき貴婦人殿。この騎士ライアンに何か御用事でしょうか?」
ライアンはあっさりとソニアから離れ、ダシールに尻尾を振り始めた。どうやらライアンは、この女がダシールだということを知らないらしい。
ダシールは白けた目つきでライアンを見据えると、ぴしゃりと言った。
「あなたじゃなくて、そこの彼に用事があるのよ。ティムだったかしら」
「え?」
ティムは思わず声を出した。
ダシールの視線がティムを捕らえた。ダシールのサファイアを見つめている情景が頭の中で再現され、ティムの体は強張った。
「何だよ。ティムばっかり・・・」
ライアンが口を尖らせて拗(す)ねる。
その様子を見てダシールが言う。
「あら、あなた、彼のお友達なのね」
「俺に何か用ですか?」
ティムが聞いた。
するとダシールは肉厚の唇を歪ませて微笑んだ。
「ええ、そうよ。あなたの持っている石は守護神石のサファイアだということは知ってるかしら?」
ティムは、こくりと頷いた。
ダシールは続ける。
「では、あなたがサファイアを持っている理由は何かしら?」
「この石は俺の親父から受け継いだもので・・・」
「そういうことを聞いてるんじゃなくて、何の為に持っているかを聞いてるの」
ダシールはぴしゃりと言い放った。
ティムは、不意を打たれて口ごもる。
「これは、その、魔族を倒す為だよ。集めてるんだ、守護神石」
「あらあ、そうなの」
ダシールは、ティムの目を涼しい顔で見つめた。
ティムは妙な居心地の悪さを覚え、冷や汗を流した。この女からはやはりただものではない気配を感じた。
ダシールは長い前髪を手繰りながら言った。
「まあ、精々頑張ることね。それじゃ、失礼するわね」
ダシールはそのまま立ち去ろうと歩きだしたが、すぐに止まった。
「あ、そうそう。あなたに二百ルーン差し上げるわ。私はこんなに要らないから」
「え、いいの?」
ティムは、目を丸くした。ライアンは、驚いて口をあんぐり開けていた。
「ええ、いいわ。どうせお金に困ってたんでしょ?」
ダシールは、薄らと微笑んで、十ルーン紙幣を二十枚差し出した。
断る理由は無かった。
「じゃあ、何か悪いけど、頂きます!」
ティムはお金を受け取った。思わず大声が出ていた。
その様子を見て、ソニアは口を手で押さえて笑っていた。
ライアンは訳も分からず、目をぱちくりさせている。
「それじゃあね。縁があれば、また会いましょう」
「ちょっと待って。あなたは一体誰?」
「私はアンジェラ。ただの旅人よ。じゃあね」
そう言い残して、アンジェラは通りの方角へ去って行った。
どうやらダシールというのは、性別を曖昧にする為の偽名であったようだ。
「おい、誰なんだ、あの超絶に色っぽい女性は。何であんな大金を持ってるんだ」
ライアンが、唾を飛ばしながらまくし立てる。
「あれはベールを脱いだダシールだよ」
「な、な、な、何い?あの人が?」
ライアンは前につんのめって驚き、アンジェラが去って行った方角を見つめた。
「だって、女じゃねえか」
「俺だって信じられないよ」
ティムは両手を広げて、首をすくめた。
ライアンはしばらく指を歯に当てて呆気に取られていたが、ソニアの存在を思い出して顔を元に戻した。
「それで、こっちの可愛い子ちゃんは?」
「ああ、そうそう。この人はソニア・クランスフェイド。お前が試合をしている間に俺は守護神石の情報収集をしてたんだけど、その時に出会ったんだ」
「へえ。それで、何か分かったのかよ」
「それが実はね・・・」
「ティムさん!」
うっかり大声で言いそうになったティムを、ソニアが焦って止める。
ティムは慌てて口を手で覆うと、怪訝そうな顔で目を細めるライアンの耳元で囁いた。
「この人、守護神石の一つのアクアマリンを持ってるんだ」
「マジかよ」
ライアンが驚いた顔で、ティムの目を見据える。
ティムはにんまりと微笑み、頷いた。
ソニアが口を開いた。
「それではこんな所で立ち話もなんですし、これから一緒に夕食でもいかがですか?」
その言葉を合図にティムとライアンのお腹は、揃って美しいハーモニーを奏でた。
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