16 / 34
第1章 守護神石の導き
第6話 繁華街の甘い罠(3)
しおりを挟む
ディーラーが数字をアナウンスすると同時に、カジノ内は歓声と罵声で大きくどよめいた。勝った分のチップが、ディーラーにより勝者に配られる。その間にティムは今出た十二を紙にメモする。
かれこれティムは休憩を挟んで半日以上ルーレットを続けていた。
ルーレットをやり始めた時、ティムはチップを一枚だけ無難な所にかけ、小さな勝利と小さな敗北を繰り返していたが、慣れてきたところで少し冒険して賭けてみたところ、見事に当たり、大勝利を納めた。しかしそれ以降一向に勝ちがこず、カウンターで現金とおはじきの交換を繰り返していた。
だが、そんなティムに好機が訪れた。ここ数回の出た数が、ティムの狙っていた流れになってきたのである。ティムはここぞとばかりに全てのチップを賭けて、勝負に出た。
「お前、ここにいたのか」
振り向くと、そこにはあの変なおじさんがいた。口には葉巻を咥えている。
「ああ、おじさん。ここしばらくずっと、偶数、奇数の順番で来てるんだ。だから、次は偶数が来るはずだよ」
おじさんはティムからメモを受け取ると、吟味するように視線をメモの上に走らせた。
「まあ、確かに偶数になりそうな感じに見えるが」
「そうでしょ。ここは、がっつり賭けるよ。もうさっきからずっと外れてて、一発逆転しないとまずいんだ」
そうこう話している内にルーレットが回される。
ティムは、ありったけのチップを偶数の上に置くと、両手を重ね合わせて祈った。だが、玉はルーレット盤の中で孤を描きながら、無情にも三の仕切りに納まった。
「げっ」
「三が出ました!」
ディーラーの明朗な声が空しく響き渡り、周囲がざわめく。
ほとんど一文無し状態に陥ってしまったティムは、がっくりとその場に崩れ落ちた。
「偶数が出るはずなのに、何で・・・」
「ルーレットの考えを読むことなんてできねえよ。こいつの仕事は裏切ることだ。それがギャンブルの怖いところなんだよ」
そう言うと、おじさんはもくもくと口から煙を吐き出した。
その時、おじさんの目に眩しく輝く何かが見えた。それはうなだれるティムのベルトにかかっている袋の中から見えていた。
おじさんは生唾を飲み込むと、そっと袋に近づき、中を覗き込んだ。
それは青く輝く美しい宝石だった。
おじさんは思わず武者震いを起こして、その宝石に見入った。そして、ティムを一瞥すると、宝石をすっと引き抜き、その場から一目散に離れていった。
かれこれティムは休憩を挟んで半日以上ルーレットを続けていた。
ルーレットをやり始めた時、ティムはチップを一枚だけ無難な所にかけ、小さな勝利と小さな敗北を繰り返していたが、慣れてきたところで少し冒険して賭けてみたところ、見事に当たり、大勝利を納めた。しかしそれ以降一向に勝ちがこず、カウンターで現金とおはじきの交換を繰り返していた。
だが、そんなティムに好機が訪れた。ここ数回の出た数が、ティムの狙っていた流れになってきたのである。ティムはここぞとばかりに全てのチップを賭けて、勝負に出た。
「お前、ここにいたのか」
振り向くと、そこにはあの変なおじさんがいた。口には葉巻を咥えている。
「ああ、おじさん。ここしばらくずっと、偶数、奇数の順番で来てるんだ。だから、次は偶数が来るはずだよ」
おじさんはティムからメモを受け取ると、吟味するように視線をメモの上に走らせた。
「まあ、確かに偶数になりそうな感じに見えるが」
「そうでしょ。ここは、がっつり賭けるよ。もうさっきからずっと外れてて、一発逆転しないとまずいんだ」
そうこう話している内にルーレットが回される。
ティムは、ありったけのチップを偶数の上に置くと、両手を重ね合わせて祈った。だが、玉はルーレット盤の中で孤を描きながら、無情にも三の仕切りに納まった。
「げっ」
「三が出ました!」
ディーラーの明朗な声が空しく響き渡り、周囲がざわめく。
ほとんど一文無し状態に陥ってしまったティムは、がっくりとその場に崩れ落ちた。
「偶数が出るはずなのに、何で・・・」
「ルーレットの考えを読むことなんてできねえよ。こいつの仕事は裏切ることだ。それがギャンブルの怖いところなんだよ」
そう言うと、おじさんはもくもくと口から煙を吐き出した。
その時、おじさんの目に眩しく輝く何かが見えた。それはうなだれるティムのベルトにかかっている袋の中から見えていた。
おじさんは生唾を飲み込むと、そっと袋に近づき、中を覗き込んだ。
それは青く輝く美しい宝石だった。
おじさんは思わず武者震いを起こして、その宝石に見入った。そして、ティムを一瞥すると、宝石をすっと引き抜き、その場から一目散に離れていった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる