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第1章 守護神石の導き

第6話 繁華街の甘い罠(3)

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ディーラーが数字をアナウンスすると同時に、カジノ内は歓声と罵声で大きくどよめいた。勝った分のチップが、ディーラーにより勝者に配られる。その間にティムは今出た十二を紙にメモする。

かれこれティムは休憩を挟んで半日以上ルーレットを続けていた。
ルーレットをやり始めた時、ティムはチップを一枚だけ無難な所にかけ、小さな勝利と小さな敗北を繰り返していたが、慣れてきたところで少し冒険して賭けてみたところ、見事に当たり、大勝利を納めた。しかしそれ以降一向に勝ちがこず、カウンターで現金とおはじきの交換を繰り返していた。

だが、そんなティムに好機が訪れた。ここ数回の出た数が、ティムの狙っていた流れになってきたのである。ティムはここぞとばかりに全てのチップを賭けて、勝負に出た。

「お前、ここにいたのか」

振り向くと、そこにはあの変なおじさんがいた。口には葉巻を咥えている。

「ああ、おじさん。ここしばらくずっと、偶数、奇数の順番で来てるんだ。だから、次は偶数が来るはずだよ」

おじさんはティムからメモを受け取ると、吟味するように視線をメモの上に走らせた。
「まあ、確かに偶数になりそうな感じに見えるが」

「そうでしょ。ここは、がっつり賭けるよ。もうさっきからずっと外れてて、一発逆転しないとまずいんだ」

そうこう話している内にルーレットが回される。

ティムは、ありったけのチップを偶数の上に置くと、両手を重ね合わせて祈った。だが、玉はルーレット盤の中で孤を描きながら、無情にも三の仕切りに納まった。


「げっ」


「三が出ました!」
ディーラーの明朗な声が空しく響き渡り、周囲がざわめく。

ほとんど一文無し状態に陥ってしまったティムは、がっくりとその場に崩れ落ちた。
「偶数が出るはずなのに、何で・・・」

「ルーレットの考えを読むことなんてできねえよ。こいつの仕事は裏切ることだ。それがギャンブルの怖いところなんだよ」
そう言うと、おじさんはもくもくと口から煙を吐き出した。

その時、おじさんの目に眩しく輝く何かが見えた。それはうなだれるティムのベルトにかかっている袋の中から見えていた。
おじさんは生唾を飲み込むと、そっと袋に近づき、中を覗き込んだ。

それは青く輝く美しい宝石だった。

おじさんは思わず武者震いを起こして、その宝石に見入った。そして、ティムを一瞥すると、宝石をすっと引き抜き、その場から一目散に離れていった。
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