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5話 神霊機と量産機
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ザムを走らせながら、ドドドッ!ドドドッ!ザムの76mmマシンガンを発射する。発射された弾は、狙い通り草原の先に落ちていた大岩に当り、その岩を軽々と砕く。
走りながら76mmマシンガンをバックパックの武器ラックに送り、今度は腰にある両刃の斧、バトルアックスをザムに持たせる。そしてそれを目の前にあった木に向けて振り下ろす。
大木と言っていいほど太い幹を持ったその木は、あっさりと袈裟懸けに切断された。
ズゥンと土煙を上げて斬れた木が倒れ、その振動に驚いた鳥達が飛び立つ。
「ふぅ」
一連の動きをこなすと僕は大きく息を吐いた。
巨大人型ロボットを操縦士大きな武器をぶっ放す。これは、男であれば誰しもが一度は夢見るシチュエーション。本来であれば、心踊り、興奮に身を包まれていてしかるべきだと僕は思う。
だが、僕は、今素直に喜べない。
いや、喜びは確かにあるのだ。だがそれ以上に僕には感じる感情があるのだ。
それは恐怖。
その時、ザムが走る振動より、さらに激しい振動が僕の身を揺さぶった。それはザムの起こす振動とは一線を画している大きな振動、もはや地震と言ってもいいかもしれない。
振り向かなくても分かる。
それでもザムを、振り向かせ、その現実を直視する。
黙示録の光景といわれても素直に信じてしまいそうな光景が繰り広げられていた。
ある場所では、燃えるはずの無い岩山が、業火によって燃えながら唐竹割にされている。
またある場所では、無数の木々が根元からスッパリと断ち切られ、その部分だけ巨大なバリカンで剃った様になっている。
またまたある場所では、地は割れ、それによって出来た断崖に、支えを失った木々がその断崖から落ちていく。少しすると再び地割れが閉じる。
草原や森に居た動物達は大混乱の中、右往左往しながら逃げ回っている。今も、同じく巨大ロボットであるザムの足元を沢山の動物達が駆け抜ける。動物達も分かっているのだ。ザムは、アレよりマシだと。
これらの状況を作り出したのは、もちろんケンジさん達だ。
フレイムソスが、岩山に試しに切りかかり、アクアヴィーネが戯れに水を纏った槍を振るい、ククノチが気合を入れる為に大地を打った。
その結果だ。
ただそれだけの事をしただけなのに、これ程までの被害を大地に刻みつけていたのだ。
『おおすっげー!』
『ちょっとこれ!斬れ過ぎじゃないの!私、こんなに斬るつもりじゃなかったんだけどっ!』
『…』
本人達も力をもてあましているらしく四苦八苦しながら神霊機の操縦をしている。
これ、攻撃の為の訓練と言うよりは、手加減の勉強する為の訓練じゃなかろうかと思えてくる。
あれらと比べると僕のザムの攻撃がまるでおもちゃの様に感じられてしまうから驚きだ。
あれが、勇者に求められているレベルか…。うん僕には無理だな。量産型だし。これが普通だし。僕にはこれがあるから、これが良いんだし。
僕は、孤独な狙撃兵の言葉を思い出しながら、ヘッドセット越しに遠くを見つめた。
この世界に呼び出さたれた翌日。僕は、コンコンというノックの音で目を覚ました。眠っていたのに体がだるい。それもそのはず、昨日は、何かあるかもしれないとすぐに動けるように寝巻きに着替えていなかったから準備はすぐに出来る。そのお陰でぐっすり眠れなかったけどね。
「天田様、朝でございます。起きてくださいませ」
「は~い」
ベットからおり、あくびをしながら椅子にかけていた上着を羽織ると扉へと向かう。
「よっと」
ズズッと扉の前に置いておいたチェストを動かして、扉を開けられるようにする。そもそもこの施設自体が教会とやらの持ち物なので無駄かも知れないが、やった方がやらないより多少はマシだ。
「えっと、今のは…?」
扉を開けると困った様子のメイドさんが居た。日本のアニメとかで出て来る、フリルなどで装飾されたメイド服ではなく。純粋な作業着としてのメイド服だった。
そのメイド服を見た瞬間僕は若干落胆した。かわいくないと…。
「僕は、ガウス大司教に歓迎されていないようなので、一応の用心にと…」
「申し訳ありません。ガウス大司教は…何といいますか融通が利かない方でして。ですが、決して貴方様に危害をくわえる様な方ではありません」
「そうですか。それで何の用ですか?」
メイドさんはすまなそうに言っているが、それではい、そうですかと信頼できるほど僕は善人ではない。これからも警戒は続けるつもりだ。
「はい、朝食のご用意が出来ましたのでご案内に参りました」
横を見れば、メイドさんが、それぞれの扉の前に居て、ケンジさん達が出てくるのが見えた。
おいしい朝食を終えると、ガウス大司教からこれからの予定を聞かされた。
これから約2週間程は、午前中は、この世界の事についてのあれこれを習い、午後は、神霊機(僕のは神霊機じゃないけど)の操縦訓練に当てるのだそうだ。とはいっても神霊機を使った事のある人間なんてケンジさん達だけだから、基本的には先輩達が試行錯誤する時間だろう
ただ今日の午前中は、僕達の服や日用品を作る為に体の採寸をおこなった。体の隅々まで採寸され、一体なんでそんなところまで測るのだろうと疑問に思ったほどだ。その後は昼食となり、午後の神霊機を使った訓練となった。
ソレがあの有様だった。
訓練を終え、帰りの竜車に乗っている時、水上先輩が叫んだ。
結局あれから燃え上がった岩山はアクアヴィーネの水によって消火され、空いた地割れもふさがれた。ただ、岩山は見る影も無くなり、地割れがあった場所には、新たな山が出来上がった。
「何あれ何あれ、なんなのアレ!攻撃力強すぎない!おかしいわよ!あれじゃ、アポリオンとか言うのに滅ぼされる前に私達が滅ぼしちゃうわよ!」
「アハハハハ!すげぇなあれ!」
「アレを使って戦うのか…」
水上先輩は、自らに与えられた力のあまりの強さに、我を失っていた。ケンジさんは楽しそうに、木下先輩は、神霊機で戦う事について思い悩んでいた。
あれは、絶対に防衛には向いていない。某ロボット戦略シミュレーションゲーム風に言うなら、神霊機は強力な広範囲マップ兵器しか持たないユニットだ。しかもフレンドリーファイア有りの。下手に使えば味方が大損害を受ける扱いに困るユニットだろう。
僕の乗っているザムは、先輩達に比べるとまだ常識の範囲内の攻撃力しかないのでケンジさん達とは違い、気分は楽だ。ケンジさん達を基準とすれば僕は味噌っかすもいいとこ、誰も期待しないだろう。
「さすが勇者様方、あの程度の事は、神霊機を用いれば、たやすい事、幾万幾億のアポリオンを殲滅するのですよ?あの程度できて当然です。それに聖書によれば新たに呼び出された勇者によって召還された神霊機は、戦いを通じで更なる力を得ると記されております」
一方、ガウス大司教は当然と言った様子で離している。しかし、その言葉にはうれしさが見え隠れしていた。
「まだ成長するの!?嘘でしょ!どうやって町とか守るのよ!アレだった街とか村とか、それごと消し飛ばしちゃうわよ!」
「大丈夫です。勇者様方には基本的に人里から離れた場所で戦ってもらう予定ですから」
「…だが、町や村に接近したのに気付かなかったらどうするんだ?」
木下先輩が聞いた。そうだ、戦場は常に選べるというわけには行かない。不測の事態によって町の近くや、町の中での戦闘になる可能性だってある。
「大丈夫です。主だった場所にはフォルスを配備した部隊がおります。その者達が、勇者様方が来るまでの間、接近したアポリオンの足止めをします」
「フォルスって何ですか?」
「神霊機を元に、我々人が作った対アポリオン用の兵器です。とは言え、神霊機と比べると万分の一以下の力しかありませんが、街を守る程度の事は出来ましょう」
「神霊機を元に作ったって事は、人型兵器か?」
「はい、ですが背はせいぜい神霊機の1/3程度の大きさでしかなく、持っている装備も盾や剣にボーガン、魔道ライフルが使える程度の物です。たいした事はありません」
神霊機の1/3って事は大体8m位か。実用型人型ロボットが一つも無い世界から来た僕達には、十分凄いと思うんだけど…。それに防衛にまわせるって事は量産もある程度されてるって事だ。こっちの方が元の世界より人型ロボットの技術は上じゃないか?
「それは十分に凄いのでは?」
水上先輩も同じ事を思ったようだ。
「何をおっしゃいますか水上様!フォルスは所詮神霊機の出来の悪いまがい物!凄い物の訳はありません!」
ガウス大司教は鼻息を荒くして反論する。
何というかこの人は、神霊機と勇者は凄くて、それ以外は下らないとか思ってそうだな。また僕の中でガウス大司教に対しての警戒度が一上がった。
「話を戻すけど、アポリオンが街まで到達したらどうするの?」
「そうなった場合は、街ごと殲滅していただくしかありません」
ガウス大司教はあっさりとそう言った。あまりにあっけらかんと言った為に、ケンジさん達はあっけに取られている。
「えっそんな!」
「仕方の無い事なのです。奴らは執拗に人間を狙います。それ故に奴らは町や村を襲います。それは危機と同時にチャンスなのです。一箇所に集まったアポリオンを一気に殲滅する事の出来る。そうしなければ、より多くの人々がアポリオンに襲われます。どうかご理解下さい」
「それは…」
水上先輩は、眉をひそめた。たとえ大量のアポリオンを倒すチャンスであったとしても、街に住む人間ごと殺すのは嫌なのだろう。
「気にいらねぇ」
「うむ。そうさせない方法をを考えねばな」
何とかそれを避けようと考えているケンジさん達にガウス大司教は静かに言った。
「…覚えて置いて下さいませ。勇者様方。いかに神霊機が神の如き力を持っていたとしても、それはたったの三機しかないのです。それ故に出来る事は限られております。いざとなりますれば躊躇などしないようお願いいたします。それにより、その街のさらに奥にいる人々が救われるのです。それは貴方方の咎ではありません。アポリオンの咎です」
「はっ!なら近づく前にぶっ倒しゃいいんじゃねぇか。簡単な事だろ」
ケンジ先輩の発言に、ガウス大司教は大喜びした。さすが勇者様だと。
けど、守るって事は、そう簡単な事だとは、僕には思えなかった。
走りながら76mmマシンガンをバックパックの武器ラックに送り、今度は腰にある両刃の斧、バトルアックスをザムに持たせる。そしてそれを目の前にあった木に向けて振り下ろす。
大木と言っていいほど太い幹を持ったその木は、あっさりと袈裟懸けに切断された。
ズゥンと土煙を上げて斬れた木が倒れ、その振動に驚いた鳥達が飛び立つ。
「ふぅ」
一連の動きをこなすと僕は大きく息を吐いた。
巨大人型ロボットを操縦士大きな武器をぶっ放す。これは、男であれば誰しもが一度は夢見るシチュエーション。本来であれば、心踊り、興奮に身を包まれていてしかるべきだと僕は思う。
だが、僕は、今素直に喜べない。
いや、喜びは確かにあるのだ。だがそれ以上に僕には感じる感情があるのだ。
それは恐怖。
その時、ザムが走る振動より、さらに激しい振動が僕の身を揺さぶった。それはザムの起こす振動とは一線を画している大きな振動、もはや地震と言ってもいいかもしれない。
振り向かなくても分かる。
それでもザムを、振り向かせ、その現実を直視する。
黙示録の光景といわれても素直に信じてしまいそうな光景が繰り広げられていた。
ある場所では、燃えるはずの無い岩山が、業火によって燃えながら唐竹割にされている。
またある場所では、無数の木々が根元からスッパリと断ち切られ、その部分だけ巨大なバリカンで剃った様になっている。
またまたある場所では、地は割れ、それによって出来た断崖に、支えを失った木々がその断崖から落ちていく。少しすると再び地割れが閉じる。
草原や森に居た動物達は大混乱の中、右往左往しながら逃げ回っている。今も、同じく巨大ロボットであるザムの足元を沢山の動物達が駆け抜ける。動物達も分かっているのだ。ザムは、アレよりマシだと。
これらの状況を作り出したのは、もちろんケンジさん達だ。
フレイムソスが、岩山に試しに切りかかり、アクアヴィーネが戯れに水を纏った槍を振るい、ククノチが気合を入れる為に大地を打った。
その結果だ。
ただそれだけの事をしただけなのに、これ程までの被害を大地に刻みつけていたのだ。
『おおすっげー!』
『ちょっとこれ!斬れ過ぎじゃないの!私、こんなに斬るつもりじゃなかったんだけどっ!』
『…』
本人達も力をもてあましているらしく四苦八苦しながら神霊機の操縦をしている。
これ、攻撃の為の訓練と言うよりは、手加減の勉強する為の訓練じゃなかろうかと思えてくる。
あれらと比べると僕のザムの攻撃がまるでおもちゃの様に感じられてしまうから驚きだ。
あれが、勇者に求められているレベルか…。うん僕には無理だな。量産型だし。これが普通だし。僕にはこれがあるから、これが良いんだし。
僕は、孤独な狙撃兵の言葉を思い出しながら、ヘッドセット越しに遠くを見つめた。
この世界に呼び出さたれた翌日。僕は、コンコンというノックの音で目を覚ました。眠っていたのに体がだるい。それもそのはず、昨日は、何かあるかもしれないとすぐに動けるように寝巻きに着替えていなかったから準備はすぐに出来る。そのお陰でぐっすり眠れなかったけどね。
「天田様、朝でございます。起きてくださいませ」
「は~い」
ベットからおり、あくびをしながら椅子にかけていた上着を羽織ると扉へと向かう。
「よっと」
ズズッと扉の前に置いておいたチェストを動かして、扉を開けられるようにする。そもそもこの施設自体が教会とやらの持ち物なので無駄かも知れないが、やった方がやらないより多少はマシだ。
「えっと、今のは…?」
扉を開けると困った様子のメイドさんが居た。日本のアニメとかで出て来る、フリルなどで装飾されたメイド服ではなく。純粋な作業着としてのメイド服だった。
そのメイド服を見た瞬間僕は若干落胆した。かわいくないと…。
「僕は、ガウス大司教に歓迎されていないようなので、一応の用心にと…」
「申し訳ありません。ガウス大司教は…何といいますか融通が利かない方でして。ですが、決して貴方様に危害をくわえる様な方ではありません」
「そうですか。それで何の用ですか?」
メイドさんはすまなそうに言っているが、それではい、そうですかと信頼できるほど僕は善人ではない。これからも警戒は続けるつもりだ。
「はい、朝食のご用意が出来ましたのでご案内に参りました」
横を見れば、メイドさんが、それぞれの扉の前に居て、ケンジさん達が出てくるのが見えた。
おいしい朝食を終えると、ガウス大司教からこれからの予定を聞かされた。
これから約2週間程は、午前中は、この世界の事についてのあれこれを習い、午後は、神霊機(僕のは神霊機じゃないけど)の操縦訓練に当てるのだそうだ。とはいっても神霊機を使った事のある人間なんてケンジさん達だけだから、基本的には先輩達が試行錯誤する時間だろう
ただ今日の午前中は、僕達の服や日用品を作る為に体の採寸をおこなった。体の隅々まで採寸され、一体なんでそんなところまで測るのだろうと疑問に思ったほどだ。その後は昼食となり、午後の神霊機を使った訓練となった。
ソレがあの有様だった。
訓練を終え、帰りの竜車に乗っている時、水上先輩が叫んだ。
結局あれから燃え上がった岩山はアクアヴィーネの水によって消火され、空いた地割れもふさがれた。ただ、岩山は見る影も無くなり、地割れがあった場所には、新たな山が出来上がった。
「何あれ何あれ、なんなのアレ!攻撃力強すぎない!おかしいわよ!あれじゃ、アポリオンとか言うのに滅ぼされる前に私達が滅ぼしちゃうわよ!」
「アハハハハ!すげぇなあれ!」
「アレを使って戦うのか…」
水上先輩は、自らに与えられた力のあまりの強さに、我を失っていた。ケンジさんは楽しそうに、木下先輩は、神霊機で戦う事について思い悩んでいた。
あれは、絶対に防衛には向いていない。某ロボット戦略シミュレーションゲーム風に言うなら、神霊機は強力な広範囲マップ兵器しか持たないユニットだ。しかもフレンドリーファイア有りの。下手に使えば味方が大損害を受ける扱いに困るユニットだろう。
僕の乗っているザムは、先輩達に比べるとまだ常識の範囲内の攻撃力しかないのでケンジさん達とは違い、気分は楽だ。ケンジさん達を基準とすれば僕は味噌っかすもいいとこ、誰も期待しないだろう。
「さすが勇者様方、あの程度の事は、神霊機を用いれば、たやすい事、幾万幾億のアポリオンを殲滅するのですよ?あの程度できて当然です。それに聖書によれば新たに呼び出された勇者によって召還された神霊機は、戦いを通じで更なる力を得ると記されております」
一方、ガウス大司教は当然と言った様子で離している。しかし、その言葉にはうれしさが見え隠れしていた。
「まだ成長するの!?嘘でしょ!どうやって町とか守るのよ!アレだった街とか村とか、それごと消し飛ばしちゃうわよ!」
「大丈夫です。勇者様方には基本的に人里から離れた場所で戦ってもらう予定ですから」
「…だが、町や村に接近したのに気付かなかったらどうするんだ?」
木下先輩が聞いた。そうだ、戦場は常に選べるというわけには行かない。不測の事態によって町の近くや、町の中での戦闘になる可能性だってある。
「大丈夫です。主だった場所にはフォルスを配備した部隊がおります。その者達が、勇者様方が来るまでの間、接近したアポリオンの足止めをします」
「フォルスって何ですか?」
「神霊機を元に、我々人が作った対アポリオン用の兵器です。とは言え、神霊機と比べると万分の一以下の力しかありませんが、街を守る程度の事は出来ましょう」
「神霊機を元に作ったって事は、人型兵器か?」
「はい、ですが背はせいぜい神霊機の1/3程度の大きさでしかなく、持っている装備も盾や剣にボーガン、魔道ライフルが使える程度の物です。たいした事はありません」
神霊機の1/3って事は大体8m位か。実用型人型ロボットが一つも無い世界から来た僕達には、十分凄いと思うんだけど…。それに防衛にまわせるって事は量産もある程度されてるって事だ。こっちの方が元の世界より人型ロボットの技術は上じゃないか?
「それは十分に凄いのでは?」
水上先輩も同じ事を思ったようだ。
「何をおっしゃいますか水上様!フォルスは所詮神霊機の出来の悪いまがい物!凄い物の訳はありません!」
ガウス大司教は鼻息を荒くして反論する。
何というかこの人は、神霊機と勇者は凄くて、それ以外は下らないとか思ってそうだな。また僕の中でガウス大司教に対しての警戒度が一上がった。
「話を戻すけど、アポリオンが街まで到達したらどうするの?」
「そうなった場合は、街ごと殲滅していただくしかありません」
ガウス大司教はあっさりとそう言った。あまりにあっけらかんと言った為に、ケンジさん達はあっけに取られている。
「えっそんな!」
「仕方の無い事なのです。奴らは執拗に人間を狙います。それ故に奴らは町や村を襲います。それは危機と同時にチャンスなのです。一箇所に集まったアポリオンを一気に殲滅する事の出来る。そうしなければ、より多くの人々がアポリオンに襲われます。どうかご理解下さい」
「それは…」
水上先輩は、眉をひそめた。たとえ大量のアポリオンを倒すチャンスであったとしても、街に住む人間ごと殺すのは嫌なのだろう。
「気にいらねぇ」
「うむ。そうさせない方法をを考えねばな」
何とかそれを避けようと考えているケンジさん達にガウス大司教は静かに言った。
「…覚えて置いて下さいませ。勇者様方。いかに神霊機が神の如き力を持っていたとしても、それはたったの三機しかないのです。それ故に出来る事は限られております。いざとなりますれば躊躇などしないようお願いいたします。それにより、その街のさらに奥にいる人々が救われるのです。それは貴方方の咎ではありません。アポリオンの咎です」
「はっ!なら近づく前にぶっ倒しゃいいんじゃねぇか。簡単な事だろ」
ケンジ先輩の発言に、ガウス大司教は大喜びした。さすが勇者様だと。
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