量産型英雄伝

止まり木

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量産型プロローグ

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 その日、天田英行は、高校から帰宅すると、すぐさま自身の部屋へと向かいPCの電源を入れた。
 体力並み、知力並み、外見並みと見事に並が揃った極平均的な高校生。だが、オタク趣味なのでクラスメイトからの評価は一段低い。
 そんな彼は、学校が終われば、すぐに帰る事に全力を尽くす帰宅部である。
 PCが起動すると手馴れた様子で、アプリケーションを起動していく。
「さぁーて今日こそ完成させるぞ!」
 起動したのは動画編集用のソフトだ。手馴れた様子で、作りかけのMADのデータを読み込む。MADとは、ゲームの動画やアニメーションを勝手に編集、再構成した動画の事だ。(作ってもいいけど、ゲームとかアニメは著作権の問題があるからネットとかに無闇にアップしてはいけないぞ!)
「じゃあまずは、出来てるところまでで可笑しなところが無いかな確認しよう」
 英行は、読み込んだ作り掛けのMADを最初から再生する。
 再生された動画は、熱い男性ボーカルの歌に乗せ、色々なロボットアニメのシーンが繋ぎ合わされたものだった。
 映されているのは、色々なロボットが倒されたり、倒されたり、時には倒したりしている場面ばかりだ。大体8:3の割合で倒される場面の方が多い。
 それもそのはず、彼が作っているのは量産型ロボット名場面集なのだから。量産型ロボットとは、ロボットアニメに出てくるやられ役のことだ。○クしかり○ムしかり。
「うむうむ。いい感じだ。リズムにも合ってるし、盛り上がりもある」
 普通であれば、その雑魚を倒す主役ロボットに憧れる。だが、時たま、その雑魚ロボットに焦がれるものも居る。それが彼だった。彼の部屋には、プラモを飾る為の棚があり、その棚には、量産型ロボットのプラモデルが最低でも同じものが三機、多ければ十数機並んでいた。
 筋金入りの量産型好きである。
「よし、じゃあ続きを作ろうか!」
 今日も今日とて、学校から帰ると自身の量産型愛を形にする為に、学校から帰るなり編集作業に没頭する。
 そんな時だ。彼の座っている椅子を中心に複雑な魔法陣がうっすらと現れ、輝き始める。
「ウへ!ウヘヘヘ!やっぱ量産型はいいなぁ!」
 だが、怪しい言葉を吐きながら、カチカチと編集に集中している英行は気付かない。
 魔法陣の輝き環増してゆく。目も眩むほどの輝きになった時、ようやく英行は異変に気付いた。
「ん?何か眩しいな?」
 英行は、その一言を最後のこの世界から姿を消した。
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