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引きこもり、レベル上げをする①
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「やったーーー!パンダ帽子げっとぉーーー!」
プロレシアに帰ったエイスは交換NPCからパンダ帽子を貰い、大喜びしていた。
両手にそれを抱きかかえ、くるくる回りながらキスの雨を降らせる。
「やばーっ!可愛いー!なんて名前つけようかしら?パンちゃん?いやいやそれはあまりに安易よね。じゃあランちゃん?あいや、ランランちゃんにしよっ!よろしくね、ランランちゃんっ!」
「……ま、なんでもいいけど」
全力でテンションを上げるエイスを、ヴァットは冷めた目で見ていた。
「それじゃあ俺は狩りに行ってくるぜ」
「およー? ヴァットが狩りなんて珍しいじゃん。引きこもりは卒業したの?」
「そもそも引きこもりじゃねーし。……レベル上げたくなったんだよ。花子の戦いぶりを見ていたら、やっぱ高レベルっていいなって思ってさ」
「あー、確かにね。強かったなあ、花子……よし、私もレベル上げるよ! 一緒に行こう!」
エイスの誘いに、しかしヴァットは首を振って返す。
「いや、悪いが俺一人で行こうと思う」
「えーっ!?なんでよ!」
「今から行くところはAGI殺しだからな。エイスだと死にかねない」
「だからどうしてわざわざそんな所に行くのよっ!」
「俺的に最高効率の狩場だからな」
それを聞いたエイスは、不満げに頬を膨らませる。
「むぅ、わかったわよ!私はランランちゃんと狩りするからね。あ、レベル上げすぎてパーティ組めなくなっちゃダメだからね!」
「それはエイスが頑張れ。じゃあな」
「冷たいーーー!」
ヴァットはエイスに背を向けると、スタスタと去って行った。
その足で向かったのは武器屋である。
中に入ると、髭面の金槌を持ったNPCがヴァットを迎えた。
「いよぅ、らっしゃい。武器が入り用かい?」
「あぁ、錬金術師のを頼む」
「オーケーだ。ゆっくり見ていってくれよな!」
髭面NPCの前にコンソールが出現し、武器がずらり並んで表示される。
錬金術師の装備可能な武器は短剣と長剣、棍棒、そして銃だ。
短剣は攻撃速度補正が一番良く、ヴァットも草刈りによく使っている。
長剣は一番バランスの良い武器で、戦闘型ジョブが最もよく使う武器だ。
棍棒は攻撃力はあるが命中率が低く、DEXを上げていたり、必中スキルを有するなど命中率に関係のないジョブがよく使う。
好みはあれど基本的にこの三つがSTRを上げている戦闘型錬金術師の使う武器だ。
しかしヴァットが見ているのは銃である。
銃はDEX依存で弾丸が別途必要になるという特性があり、威力は高いが攻撃速度が極端に遅く、AGIを振らなければ秒間ダメージが低いという癖のある武器なのだ。
大抵のプレイヤーはカタログスペックのみを見て使えないという烙印を押す所だが、ヴァットはこれに可能性を見出していた。
「製作者の意図としては製薬型の救済措置だろうな。これを使ってなんとかしなさいと……よし、これを買おう」
「毎度ありぃ!」
ヴァットが選んだのはノービスガンという一番安い銃だった。
銃の攻撃力はほぼ弾丸依存で、値段による性能の違いは命中率や連射速度、射程に影響する。
「これから向かう狩場はこれで十分……いやまぁ本当はもっといいのが欲しいが、財布的に限界だ」
がっつり減った所持金を見て肩を落としながらも、今度は弾丸を購入した。
これまた一番安いアイアンバレットを山ほどである。
「とりあえずこんなもんか。足りなければまた買い足せばいいしな」
準備が整ったヴァットは、早速街を出る。
そして北へ、アクティブモンスターに注意しながら進む事しばし、辿り着いたのは荒れ地のマップだった。
ほとんどモンスターが見当たらないそのマップの中心には、古びた館があった。
ヴァットはその中へと足を踏み入れる。
館の中は不気味に静まり返っており、時折おどろおどろしい叫び声が聞こえてくる。
ここは機械人形の開発区という設定のダンジョンマップだ。
狩場の推奨レベルは現在のヴァットよりかなり上であった。
「さて、不意打ちを食らったら即死しかねないからな。さっさとこいつを使っておこう」
そう言ってヴァットは取り出したポーションをグビリと飲み干す。
するとヴァットの身体を青白いオーラが包んだ。
「よし、これでオーケーと……む」
ふと、ヴァットが通路を見ると、兵隊のようなモンスターがいた。
ヘルメットを被り軍服を着て、しかしその顔はおもちゃのような作りであった。
頭上にはパペットガンナーと表示されていた。
パペットガンナーはヴァットとほぼ同時に気づいようで、背負ったライフルを向け、撃ってきた。
「やべっ!」
反射的に避けようとするがAGIの低いヴァットにはそれは叶わず、モロに食らってしまう、
発砲音と銃撃エフェクトが重なり、ダメージが表示される。
ただしそれは、ヴァットのHPの一割にも満たないものであった。
「……あぶね、ギリギリで間に合ったな」
先刻ヴァットが使ったのはアンチスナイプポーションである。
これは遠距離攻撃に対する耐性を大きく上げるという効果を持つ。
フレーバーテキストとしては自身の移動を制限する事で精神を集中させ、攻撃をかすり傷で済ませるというものだ。
故に移動に大きな制限がかかるデメリットもある。
パペットガンナーは銃撃を繰り返すが、ヴァットにはまさしくかすり傷程度のダメージだった。
「だが移動速度が落ちるからな。近づいて攻撃するには向いてない。そこでこいつの出番というわけだ」
次に取り出したのは、買ったばかりのノービスガンだ。
すでに弾丸は装填しており、パペットガンナーに向けて放つ。
がん!と金属音が鳴り、銃撃エフェクトと共にダメージ値が表示される。
「ダメージは一割程か。俺のレベルなら出てる方だな」
そのまま攻撃を続けるヴァット。
HPバー的には一進一退の攻防だが、ヴァットには数多くの回復ポーションがある。
パペットガンナーは耐えきれず、そのまま押し切られてしまった。
同時に、ヴァットの経験値バーが大きく上がる。
高レベルのモンスターを倒せば、ある程度の経験値ボーナスが得られるのだ。
そしてパペットガンナーが消滅した後には、ヘルメットの破片が落ちていた。
「確かこれ、頭装備の材料だっけか。一応拾っておくか」
拾った破片を鞄に入れ、ヴァットは狩りを続けるのだった。
プロレシアに帰ったエイスは交換NPCからパンダ帽子を貰い、大喜びしていた。
両手にそれを抱きかかえ、くるくる回りながらキスの雨を降らせる。
「やばーっ!可愛いー!なんて名前つけようかしら?パンちゃん?いやいやそれはあまりに安易よね。じゃあランちゃん?あいや、ランランちゃんにしよっ!よろしくね、ランランちゃんっ!」
「……ま、なんでもいいけど」
全力でテンションを上げるエイスを、ヴァットは冷めた目で見ていた。
「それじゃあ俺は狩りに行ってくるぜ」
「およー? ヴァットが狩りなんて珍しいじゃん。引きこもりは卒業したの?」
「そもそも引きこもりじゃねーし。……レベル上げたくなったんだよ。花子の戦いぶりを見ていたら、やっぱ高レベルっていいなって思ってさ」
「あー、確かにね。強かったなあ、花子……よし、私もレベル上げるよ! 一緒に行こう!」
エイスの誘いに、しかしヴァットは首を振って返す。
「いや、悪いが俺一人で行こうと思う」
「えーっ!?なんでよ!」
「今から行くところはAGI殺しだからな。エイスだと死にかねない」
「だからどうしてわざわざそんな所に行くのよっ!」
「俺的に最高効率の狩場だからな」
それを聞いたエイスは、不満げに頬を膨らませる。
「むぅ、わかったわよ!私はランランちゃんと狩りするからね。あ、レベル上げすぎてパーティ組めなくなっちゃダメだからね!」
「それはエイスが頑張れ。じゃあな」
「冷たいーーー!」
ヴァットはエイスに背を向けると、スタスタと去って行った。
その足で向かったのは武器屋である。
中に入ると、髭面の金槌を持ったNPCがヴァットを迎えた。
「いよぅ、らっしゃい。武器が入り用かい?」
「あぁ、錬金術師のを頼む」
「オーケーだ。ゆっくり見ていってくれよな!」
髭面NPCの前にコンソールが出現し、武器がずらり並んで表示される。
錬金術師の装備可能な武器は短剣と長剣、棍棒、そして銃だ。
短剣は攻撃速度補正が一番良く、ヴァットも草刈りによく使っている。
長剣は一番バランスの良い武器で、戦闘型ジョブが最もよく使う武器だ。
棍棒は攻撃力はあるが命中率が低く、DEXを上げていたり、必中スキルを有するなど命中率に関係のないジョブがよく使う。
好みはあれど基本的にこの三つがSTRを上げている戦闘型錬金術師の使う武器だ。
しかしヴァットが見ているのは銃である。
銃はDEX依存で弾丸が別途必要になるという特性があり、威力は高いが攻撃速度が極端に遅く、AGIを振らなければ秒間ダメージが低いという癖のある武器なのだ。
大抵のプレイヤーはカタログスペックのみを見て使えないという烙印を押す所だが、ヴァットはこれに可能性を見出していた。
「製作者の意図としては製薬型の救済措置だろうな。これを使ってなんとかしなさいと……よし、これを買おう」
「毎度ありぃ!」
ヴァットが選んだのはノービスガンという一番安い銃だった。
銃の攻撃力はほぼ弾丸依存で、値段による性能の違いは命中率や連射速度、射程に影響する。
「これから向かう狩場はこれで十分……いやまぁ本当はもっといいのが欲しいが、財布的に限界だ」
がっつり減った所持金を見て肩を落としながらも、今度は弾丸を購入した。
これまた一番安いアイアンバレットを山ほどである。
「とりあえずこんなもんか。足りなければまた買い足せばいいしな」
準備が整ったヴァットは、早速街を出る。
そして北へ、アクティブモンスターに注意しながら進む事しばし、辿り着いたのは荒れ地のマップだった。
ほとんどモンスターが見当たらないそのマップの中心には、古びた館があった。
ヴァットはその中へと足を踏み入れる。
館の中は不気味に静まり返っており、時折おどろおどろしい叫び声が聞こえてくる。
ここは機械人形の開発区という設定のダンジョンマップだ。
狩場の推奨レベルは現在のヴァットよりかなり上であった。
「さて、不意打ちを食らったら即死しかねないからな。さっさとこいつを使っておこう」
そう言ってヴァットは取り出したポーションをグビリと飲み干す。
するとヴァットの身体を青白いオーラが包んだ。
「よし、これでオーケーと……む」
ふと、ヴァットが通路を見ると、兵隊のようなモンスターがいた。
ヘルメットを被り軍服を着て、しかしその顔はおもちゃのような作りであった。
頭上にはパペットガンナーと表示されていた。
パペットガンナーはヴァットとほぼ同時に気づいようで、背負ったライフルを向け、撃ってきた。
「やべっ!」
反射的に避けようとするがAGIの低いヴァットにはそれは叶わず、モロに食らってしまう、
発砲音と銃撃エフェクトが重なり、ダメージが表示される。
ただしそれは、ヴァットのHPの一割にも満たないものであった。
「……あぶね、ギリギリで間に合ったな」
先刻ヴァットが使ったのはアンチスナイプポーションである。
これは遠距離攻撃に対する耐性を大きく上げるという効果を持つ。
フレーバーテキストとしては自身の移動を制限する事で精神を集中させ、攻撃をかすり傷で済ませるというものだ。
故に移動に大きな制限がかかるデメリットもある。
パペットガンナーは銃撃を繰り返すが、ヴァットにはまさしくかすり傷程度のダメージだった。
「だが移動速度が落ちるからな。近づいて攻撃するには向いてない。そこでこいつの出番というわけだ」
次に取り出したのは、買ったばかりのノービスガンだ。
すでに弾丸は装填しており、パペットガンナーに向けて放つ。
がん!と金属音が鳴り、銃撃エフェクトと共にダメージ値が表示される。
「ダメージは一割程か。俺のレベルなら出てる方だな」
そのまま攻撃を続けるヴァット。
HPバー的には一進一退の攻防だが、ヴァットには数多くの回復ポーションがある。
パペットガンナーは耐えきれず、そのまま押し切られてしまった。
同時に、ヴァットの経験値バーが大きく上がる。
高レベルのモンスターを倒せば、ある程度の経験値ボーナスが得られるのだ。
そしてパペットガンナーが消滅した後には、ヘルメットの破片が落ちていた。
「確かこれ、頭装備の材料だっけか。一応拾っておくか」
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