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第一章 危険な遊戯 四節
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「・・・ここだよ」
藤園さんと荷物を抱えてやって来たのは、割かし広い我が校の食堂であった。
「良かった、普通だ・・・」
私はホッと胸を撫で下ろしたわけだが、代わりに別の不安が顔を覗かせてきた。
「ここだと人目に付くと思うんだけど・・・大丈夫なの? 一応、こっそり動くべきなんじゃ?」
「その通りだよ、白枝理貴君。敵には高い情報収集能力と実動部隊が有ると警戒しておくべきだ。仮に此方の行なおうとしている事が外部へ漏れれば、事故に見せ掛けて始末されてしまうだろうね」
「考え過ぎなんじゃ・・・それで、警戒すると何でこの場所が最適解なの?」
「はぁ・・・馬鹿野郎かな、君は? せっかくチンパンジーより頭が働く様になったのだから、少し考えたらどうだい? 問題と答えは判っているのだから、途中式を組み立てるだけだよ」
「馬鹿は良いけど、野郎は止めようね? ・・・そうだな、食堂は放課後になると暇をもて余した生徒が集まってくる、今みたいにね。不特定多数の生徒が集まるから、俺たちが近くに居ても不自然ではない。それに騒音も適度に有るから、密談には最適ってところかな?」
「正解だよ、ここなら怪しまれずに暗躍する事が出来る。最高の隠れ蓑さ」
「暗躍とか隠れ蓑とか・・・藤園さん、スパイ映画好きなの?」
「うっ・・・人を待たせてある、行こうか」
一瞬だが、息を詰まらせたところから察するに、スパイ映画が大好きなのだろう。もはや人生のバイブルと化しているのかもしれない。
「・・・ちょっと待って、人を待たせてあるって・・・他に協力者が居るの?」
「ん? ああ、まあ・・・席の確保を協力と呼ぶのなら、そうかもね?」
チンパンジーでも出来る事だよ、と藤園さんは表情で訴えかけて来る。どうやら、その人物の事を協力者として認知していないらしい。
「それより、早く席へ行こう。活動時間はあまり無いのだから」
彼女は食堂の営業時間の事を言っているのかもしれない。この食堂は午後8時まで営業しているが、そんな時間まで残っている生徒は疎らであり、時間フルに使う事は難しい。しかも午後7時くらいからは教職員が多く利用する為、それまでに撤収する事が望ましい。現在時刻は午後5時2分、多く見積もったところで1、2時間程度しか活動時間が無いと推測出来る。
「分かった、急ごう」
「ああ、それが賢明だよ」
ここでも藤園さんに付き従って行くと、放課後とはいえ満席が多い食堂のテーブル席で独り、携帯端末を握りながら小さくなっている女生徒の元へと辿り着いた。
「結花(ゆいか)、お待たせ」
藤園さんに声を掛けられた女生徒は、弾かれた様に顔を上げる。薄らと涙目になっていた。
「遅いよ、美智香(みちか)!? 席を確保しておくの大変だったんだから!」
「ありがとう、結花。でも文句なら、此方との約束に遅れてきた彼に言って欲しいな」
藤園さんに促され、私の事をキッと睨み付ける女生徒。しかし、すぐに両手で両の目を塞いでしまう。
「わぁっ、知らない人だ!?」
またユニークなのが現れた、私は精一杯の苦笑いを浮べる事しか出来なかった。
「この子は桜見橋結花(さくらみばし ゆいか)、幼馴染み(パシリ)だ」
おかしい、言葉の裏に隠された真意が一瞬だけ見えた気がする。感覚が研ぎ澄まされているせいかもしれない。
「結花、彼は白枝理貴。例のモルモット(モルモット)だ」
おかしい、言葉の裏に隠された真意が見えなかった。感覚が鈍ったのかもしれない、きっとそうだ。
「えっと・・・初めまして、B組の白枝理貴です」
「初めまして・・・F組の桜見橋です」
桜見橋さんは両の目を隠したまま、一礼した。
「さあ、時間も惜しいから始めるとしよう」
藤園さんはテーブル席に腰掛け、ノートPCを立ち上げ始めた。私もそれに倣い、彼女達とテーブルを囲む事にする。
「あのさ藤園さん、桜見橋さんが居るなら、俺が手伝う必要も無かったんじゃないかな?」
私の何気ない質問に、目を隠したままの桜見橋さんが敏感に反応した。
「そうだよ美智香! 知らない人に頼らなくても、私が居るじゃない!」
「ああ・・・それはね、結花にはプログラミングスキルもゲーミングセンスも無いからだよ。残念ながら、役立たずだ」
「ひ、ひどい・・・」
桜見橋さんの頬を涙が伝う。そんな彼女の頭に、藤園さんがそっと手を置いた。
「だけど大切なパシ・・・幼馴染みだ。直接的ではないにせよ、こうして場所を確保しておいてくれた。感謝しているよ?」
「うん・・・私、頑張るよ」
これが、藤園美智香と桜見橋結花の日常なのだろうか。私には美しい友情というより、主人とそれに尻尾を振る犬の図にしか見えない。
「さて白枝理貴君、そんなわけで君に行ってもらう他無いのだよ。君の必要性についてこれ以上疑問を持たないで欲しいな・・・協力を誓ってくれたばかりだろう?」
桜見橋さんの頭を撫でながら、私へ妖しい笑みを向けてくる藤園さん。もしかすると私は、彼女の壮大な一芝居に踊らされていたのではないか。そんな不安を抱かせる、IQ高めの笑みであった。
「さあ、まずはこめかみに吸盤を付けて。それからこのヘッドホンを装着し、眠る体勢をとってくれ。ちょっとしたカモフラージュだよ」
「・・・了解」
私は言われた通りこめかみに電極入り吸盤を付け、ヘッドホンを装着した後、テーブルに突っ伏した。
「目を閉じて・・・突っ伏している感覚が無くなったら、目を開けるんだ・・・」
藤園さんの声が遠退いていき、周囲の喧騒も徐々に失せていく。最後に、額に感じていた腕枕の感触が消えたのを皮切りに、両の目を開いた。私は、だだっ広い草原の只中にいる。どうやら、昨日と同じ世界へやって来たらしい。
「やあ、無事にログイン出来た様で何よりだ」
いつの間か、あの灰を頭から被ったような毛色の猫が、眼下で毛繕いをしていた。
「あっ、猫君だ」
私はその場でしゃがみ、猫君の頭を撫で回した。
「よしよ~し可愛い、可愛いなお前は」
「おい君、気安く触るなといっただろう!」
「良いじゃないか、別に。藤園さんと感覚がリンクしているわけじゃないんでしょ? 喜んでるよ、猫君」
「そうだよ、確かに移動可能なオブジェクトをハックして、視界を得ているだけだが・・・君の囁きが、こそばゆいんだよ・・・恥ずかしくなる」
「ん? 何て?」
「遊んでいる暇は無いと言ったんだよ!」
「は~い・・・それで、どうすれば良いの?」
「こほん・・・そこから北へ3キロほど行った地点に、始まりの町と標記された場所がある。まずはそこへ向かい、装備を調えよう」
「なるほど、古きゆかしきRPGって感じか・・・となると、レベル上げが重要になってくるのかな?」
「残念だったね、ゲーマーさん。この世界にプレイヤーのレベリング機能は存在しないよ、あるのは装備のレアリティくらいだね」
「リアリティー追求型か・・・通りでプレイヤー自身のスキルを重視してたわけだ」
「ああ、ちなみにゲームオーバーになるとアクセス権限も失われるから、くれぐれも気を付けて」
「えっ? 昨日は俺、殺されてなかったけ・・・あの馬に?」
「昨日、君をコンバートさせていたのは此方が用意した精巧なレプリカ空間だよ。本番前に実験しておかないと、危ないだろう?」
「アクセス権限が最優先ってわけか・・・・・・待てよ、今が本番ってことは、また死ぬ危険性があったんじゃ?」
「まあ、多少はね。でも昨日の実験をクリアしていたおかげで確率は低かったから、安心して?」
「だとしても、死の危険があるものを、あんな軽々しく渡すんじゃないよ、まったく・・・・・・ちなみに、俺が死んだら、どうするつもりだったのさ?」
「この技術は一般化されていないから、予め壊しておいたヘッドホンを付けて放置しておけば、機械の故障による脳への損傷、つまり事故として処理されるだろうね」
「その為のヘッドホンか!? 企業さんに迷惑だろう!」
「責任追求し難い場末の海外メーカー製にしておいたから、安心して」
「やり口が巧妙過ぎる・・・・・・流石、女スパイに憧れている事はあるな」
「何か言ったかい? そろそろ進んで欲しいのだけど?」
「はいはい・・・それで、北ってどっち?」
「今、君が向いている方向だよ。方向を間違えていたら指示するから、とりあえず歩きだして」
「・・・了解」
私は渋々、始まりの町への移動を開始した。その後を、猫君が甲斐甲斐しく付いて来る。
「あのさ、また服しか無い状態なんだけど、ハッキングして最初から良い装備手に入らないの?」
「君が潜入しているのを頑張って隠し続けているというのに、堂々とメインシステムをハッキングなんてすれば、ものの数秒で特定されてしまうだろうね」
「楽は出来ませんって事か・・・経験値とか入らないなら、戦闘は避けるのが無難かな?」
「そうだね、活動時間は限られているから、前進する事を考えた方が良い・・・まあ、戦闘をすると通貨や武器を獲得出来たり、運動量に応じてステータスが向上されたりする場合もあるみたいだけど」
「ほう・・・・・・どうすれば、前進した事になるのかな?」
「今、君が居る世界はどうやらプロトタイプサーバーみたいなんだ。他に、完成品とされる世界がある。この世界にそこへ至る為の鍵、アクセス権限があるはずなんだけど・・・データの閲覧権限までは、今のアクセス権限には無いから、手に入れないと判らないんだよ」
「ハッキングが手詰まりなら、正攻法で行くしかないもんね・・・・・・もしかして、閲覧権限を持ってるのって、ボスキャラだったりとか?」
「さすが、冴えてるね・・・ボスを倒すと次のボスが居る地域が開放される。最後まで倒せば、この世界の全てを掌握する事も可能なんだよ。そうすれば、次への道が判るかも・・・この地域のボスは、君の大好きな馬頭(ホースヘッド)だね。その強さは、昨日のデータを基にしたレプリカで思い知っただろう?」
「まあね・・・少なくとも棍棒でどうにか出来る相手じゃない事は判ったよ。しっかり準備していかないと・・・それには先立つものが必要だね」
私の目は、新参者をビビらせる為に配置されたのであろう盗賊達の姿を、はっきりと捉えていた。
藤園さんと荷物を抱えてやって来たのは、割かし広い我が校の食堂であった。
「良かった、普通だ・・・」
私はホッと胸を撫で下ろしたわけだが、代わりに別の不安が顔を覗かせてきた。
「ここだと人目に付くと思うんだけど・・・大丈夫なの? 一応、こっそり動くべきなんじゃ?」
「その通りだよ、白枝理貴君。敵には高い情報収集能力と実動部隊が有ると警戒しておくべきだ。仮に此方の行なおうとしている事が外部へ漏れれば、事故に見せ掛けて始末されてしまうだろうね」
「考え過ぎなんじゃ・・・それで、警戒すると何でこの場所が最適解なの?」
「はぁ・・・馬鹿野郎かな、君は? せっかくチンパンジーより頭が働く様になったのだから、少し考えたらどうだい? 問題と答えは判っているのだから、途中式を組み立てるだけだよ」
「馬鹿は良いけど、野郎は止めようね? ・・・そうだな、食堂は放課後になると暇をもて余した生徒が集まってくる、今みたいにね。不特定多数の生徒が集まるから、俺たちが近くに居ても不自然ではない。それに騒音も適度に有るから、密談には最適ってところかな?」
「正解だよ、ここなら怪しまれずに暗躍する事が出来る。最高の隠れ蓑さ」
「暗躍とか隠れ蓑とか・・・藤園さん、スパイ映画好きなの?」
「うっ・・・人を待たせてある、行こうか」
一瞬だが、息を詰まらせたところから察するに、スパイ映画が大好きなのだろう。もはや人生のバイブルと化しているのかもしれない。
「・・・ちょっと待って、人を待たせてあるって・・・他に協力者が居るの?」
「ん? ああ、まあ・・・席の確保を協力と呼ぶのなら、そうかもね?」
チンパンジーでも出来る事だよ、と藤園さんは表情で訴えかけて来る。どうやら、その人物の事を協力者として認知していないらしい。
「それより、早く席へ行こう。活動時間はあまり無いのだから」
彼女は食堂の営業時間の事を言っているのかもしれない。この食堂は午後8時まで営業しているが、そんな時間まで残っている生徒は疎らであり、時間フルに使う事は難しい。しかも午後7時くらいからは教職員が多く利用する為、それまでに撤収する事が望ましい。現在時刻は午後5時2分、多く見積もったところで1、2時間程度しか活動時間が無いと推測出来る。
「分かった、急ごう」
「ああ、それが賢明だよ」
ここでも藤園さんに付き従って行くと、放課後とはいえ満席が多い食堂のテーブル席で独り、携帯端末を握りながら小さくなっている女生徒の元へと辿り着いた。
「結花(ゆいか)、お待たせ」
藤園さんに声を掛けられた女生徒は、弾かれた様に顔を上げる。薄らと涙目になっていた。
「遅いよ、美智香(みちか)!? 席を確保しておくの大変だったんだから!」
「ありがとう、結花。でも文句なら、此方との約束に遅れてきた彼に言って欲しいな」
藤園さんに促され、私の事をキッと睨み付ける女生徒。しかし、すぐに両手で両の目を塞いでしまう。
「わぁっ、知らない人だ!?」
またユニークなのが現れた、私は精一杯の苦笑いを浮べる事しか出来なかった。
「この子は桜見橋結花(さくらみばし ゆいか)、幼馴染み(パシリ)だ」
おかしい、言葉の裏に隠された真意が一瞬だけ見えた気がする。感覚が研ぎ澄まされているせいかもしれない。
「結花、彼は白枝理貴。例のモルモット(モルモット)だ」
おかしい、言葉の裏に隠された真意が見えなかった。感覚が鈍ったのかもしれない、きっとそうだ。
「えっと・・・初めまして、B組の白枝理貴です」
「初めまして・・・F組の桜見橋です」
桜見橋さんは両の目を隠したまま、一礼した。
「さあ、時間も惜しいから始めるとしよう」
藤園さんはテーブル席に腰掛け、ノートPCを立ち上げ始めた。私もそれに倣い、彼女達とテーブルを囲む事にする。
「あのさ藤園さん、桜見橋さんが居るなら、俺が手伝う必要も無かったんじゃないかな?」
私の何気ない質問に、目を隠したままの桜見橋さんが敏感に反応した。
「そうだよ美智香! 知らない人に頼らなくても、私が居るじゃない!」
「ああ・・・それはね、結花にはプログラミングスキルもゲーミングセンスも無いからだよ。残念ながら、役立たずだ」
「ひ、ひどい・・・」
桜見橋さんの頬を涙が伝う。そんな彼女の頭に、藤園さんがそっと手を置いた。
「だけど大切なパシ・・・幼馴染みだ。直接的ではないにせよ、こうして場所を確保しておいてくれた。感謝しているよ?」
「うん・・・私、頑張るよ」
これが、藤園美智香と桜見橋結花の日常なのだろうか。私には美しい友情というより、主人とそれに尻尾を振る犬の図にしか見えない。
「さて白枝理貴君、そんなわけで君に行ってもらう他無いのだよ。君の必要性についてこれ以上疑問を持たないで欲しいな・・・協力を誓ってくれたばかりだろう?」
桜見橋さんの頭を撫でながら、私へ妖しい笑みを向けてくる藤園さん。もしかすると私は、彼女の壮大な一芝居に踊らされていたのではないか。そんな不安を抱かせる、IQ高めの笑みであった。
「さあ、まずはこめかみに吸盤を付けて。それからこのヘッドホンを装着し、眠る体勢をとってくれ。ちょっとしたカモフラージュだよ」
「・・・了解」
私は言われた通りこめかみに電極入り吸盤を付け、ヘッドホンを装着した後、テーブルに突っ伏した。
「目を閉じて・・・突っ伏している感覚が無くなったら、目を開けるんだ・・・」
藤園さんの声が遠退いていき、周囲の喧騒も徐々に失せていく。最後に、額に感じていた腕枕の感触が消えたのを皮切りに、両の目を開いた。私は、だだっ広い草原の只中にいる。どうやら、昨日と同じ世界へやって来たらしい。
「やあ、無事にログイン出来た様で何よりだ」
いつの間か、あの灰を頭から被ったような毛色の猫が、眼下で毛繕いをしていた。
「あっ、猫君だ」
私はその場でしゃがみ、猫君の頭を撫で回した。
「よしよ~し可愛い、可愛いなお前は」
「おい君、気安く触るなといっただろう!」
「良いじゃないか、別に。藤園さんと感覚がリンクしているわけじゃないんでしょ? 喜んでるよ、猫君」
「そうだよ、確かに移動可能なオブジェクトをハックして、視界を得ているだけだが・・・君の囁きが、こそばゆいんだよ・・・恥ずかしくなる」
「ん? 何て?」
「遊んでいる暇は無いと言ったんだよ!」
「は~い・・・それで、どうすれば良いの?」
「こほん・・・そこから北へ3キロほど行った地点に、始まりの町と標記された場所がある。まずはそこへ向かい、装備を調えよう」
「なるほど、古きゆかしきRPGって感じか・・・となると、レベル上げが重要になってくるのかな?」
「残念だったね、ゲーマーさん。この世界にプレイヤーのレベリング機能は存在しないよ、あるのは装備のレアリティくらいだね」
「リアリティー追求型か・・・通りでプレイヤー自身のスキルを重視してたわけだ」
「ああ、ちなみにゲームオーバーになるとアクセス権限も失われるから、くれぐれも気を付けて」
「えっ? 昨日は俺、殺されてなかったけ・・・あの馬に?」
「昨日、君をコンバートさせていたのは此方が用意した精巧なレプリカ空間だよ。本番前に実験しておかないと、危ないだろう?」
「アクセス権限が最優先ってわけか・・・・・・待てよ、今が本番ってことは、また死ぬ危険性があったんじゃ?」
「まあ、多少はね。でも昨日の実験をクリアしていたおかげで確率は低かったから、安心して?」
「だとしても、死の危険があるものを、あんな軽々しく渡すんじゃないよ、まったく・・・・・・ちなみに、俺が死んだら、どうするつもりだったのさ?」
「この技術は一般化されていないから、予め壊しておいたヘッドホンを付けて放置しておけば、機械の故障による脳への損傷、つまり事故として処理されるだろうね」
「その為のヘッドホンか!? 企業さんに迷惑だろう!」
「責任追求し難い場末の海外メーカー製にしておいたから、安心して」
「やり口が巧妙過ぎる・・・・・・流石、女スパイに憧れている事はあるな」
「何か言ったかい? そろそろ進んで欲しいのだけど?」
「はいはい・・・それで、北ってどっち?」
「今、君が向いている方向だよ。方向を間違えていたら指示するから、とりあえず歩きだして」
「・・・了解」
私は渋々、始まりの町への移動を開始した。その後を、猫君が甲斐甲斐しく付いて来る。
「あのさ、また服しか無い状態なんだけど、ハッキングして最初から良い装備手に入らないの?」
「君が潜入しているのを頑張って隠し続けているというのに、堂々とメインシステムをハッキングなんてすれば、ものの数秒で特定されてしまうだろうね」
「楽は出来ませんって事か・・・経験値とか入らないなら、戦闘は避けるのが無難かな?」
「そうだね、活動時間は限られているから、前進する事を考えた方が良い・・・まあ、戦闘をすると通貨や武器を獲得出来たり、運動量に応じてステータスが向上されたりする場合もあるみたいだけど」
「ほう・・・・・・どうすれば、前進した事になるのかな?」
「今、君が居る世界はどうやらプロトタイプサーバーみたいなんだ。他に、完成品とされる世界がある。この世界にそこへ至る為の鍵、アクセス権限があるはずなんだけど・・・データの閲覧権限までは、今のアクセス権限には無いから、手に入れないと判らないんだよ」
「ハッキングが手詰まりなら、正攻法で行くしかないもんね・・・・・・もしかして、閲覧権限を持ってるのって、ボスキャラだったりとか?」
「さすが、冴えてるね・・・ボスを倒すと次のボスが居る地域が開放される。最後まで倒せば、この世界の全てを掌握する事も可能なんだよ。そうすれば、次への道が判るかも・・・この地域のボスは、君の大好きな馬頭(ホースヘッド)だね。その強さは、昨日のデータを基にしたレプリカで思い知っただろう?」
「まあね・・・少なくとも棍棒でどうにか出来る相手じゃない事は判ったよ。しっかり準備していかないと・・・それには先立つものが必要だね」
私の目は、新参者をビビらせる為に配置されたのであろう盗賊達の姿を、はっきりと捉えていた。
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