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恋の成就
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鍋の中でふつふつと味噌汁が温まっていく。味噌汁にかけている火を弱めて白身魚の焼け具合を見る。塩をふって味をつけてまた火にかける。度々玄関の方を覗いて希は愛する人の帰りを待った。
あれから希は俊の家に住むことになった。家事などは俊に全て教えてもらって今では一人でも出来るようになった。俊と過ごして数ヶ月、希は俊から求婚を受けた。
『必ずあなたを幸せにします。辛い思いはさせません。私は希さんを愛してます』
そのまっすぐな告白に希は涙を流して頷いたのだ。同性同士の結婚は聞いたことがない。希たちの関係は俊の仕事の同僚にだけ教え、他には隠しておくことにしたのだ。花街で働かされていた希が今は愛する者の元で暮らすなんて希自身考えたことなかった。あの頃の希は誰かが手を差し伸べてくれることだけを望んでいた。その望みがこんなにも膨れている。もし俊に会えなかったら希はあの店で死んでいたかもしれない。俊という存在があったから希望が持てた。また明日も会いたい。そう思えば思うほど生きる活力となった。そして今、こうして俊の傍にいる。
夕食の支度を終えて俊を待っていると玄関の引き戸が開いた音がした。希は玄関へ行くと俊がちょうど靴を脱いで家に上がったところだった。
「俊おかえり!」
希は俊に近づいて抱きつく。子供っぽいが希にとってこの瞬間が“幸せ“だと感じる。
「ただいま希さん」
俊が応えるように抱きしめる。互いの体温を感じて更に幸福感で満たされる。
「…あぁそうだ、希さんに渡したいものがあるんです」
俊は希を離すと希の手を引いて居間に入った。俊は希を座らせると希の背後にまわって髪に触れた。どうやら髪を結っているようだ。希はじっとしていると俊が「できた」と言って希に手鏡を渡した。鏡に映った希は自身の結われた髪を見て驚いた。一つに結われているその髪を止めている髪留めに目を奪われた。孔雀石でできていて装飾はあまりなく孔雀石そのものを主張していた。
「これ…」
「髪留めです。希さんの髪がだいぶ伸びてきたので良い髪留めをと思って。それに、まだ希さんに贈り物をしたことがなかったんです」
俊が照れくさそうに話す。その隣で希はずっと鏡に映る髪留めを見ていた。贈り物はあの花街にいた時に何回かあったが全て女物で使えないし使いたくなかった。けれど俊がくれた髪留めは嫌じゃなかった。寧ろ嬉しくてしょうがなかった。俊が希のことを考えてこの髪留めを選んでくれたのか何より嬉しかった。希は俊の方を向いて抱きついた。嬉しくて幸せでいっぱいな気持ちを全身で表す。
「ありがとう俊!俺…凄く嬉しい…!!」
「いえいえ、…希さんに喜んでもらえてよかった」
俊は希を抱きしめて頭を撫でた。希の胸が熱くなっていく。
「俊、大好き」
「私もですよ。愛してます」
互いの唇が重なる。唇が離れると希はまた俊に抱きついた。今は俊から離れたくなかった。
希は“幸せ“だった。
あれから希は俊の家に住むことになった。家事などは俊に全て教えてもらって今では一人でも出来るようになった。俊と過ごして数ヶ月、希は俊から求婚を受けた。
『必ずあなたを幸せにします。辛い思いはさせません。私は希さんを愛してます』
そのまっすぐな告白に希は涙を流して頷いたのだ。同性同士の結婚は聞いたことがない。希たちの関係は俊の仕事の同僚にだけ教え、他には隠しておくことにしたのだ。花街で働かされていた希が今は愛する者の元で暮らすなんて希自身考えたことなかった。あの頃の希は誰かが手を差し伸べてくれることだけを望んでいた。その望みがこんなにも膨れている。もし俊に会えなかったら希はあの店で死んでいたかもしれない。俊という存在があったから希望が持てた。また明日も会いたい。そう思えば思うほど生きる活力となった。そして今、こうして俊の傍にいる。
夕食の支度を終えて俊を待っていると玄関の引き戸が開いた音がした。希は玄関へ行くと俊がちょうど靴を脱いで家に上がったところだった。
「俊おかえり!」
希は俊に近づいて抱きつく。子供っぽいが希にとってこの瞬間が“幸せ“だと感じる。
「ただいま希さん」
俊が応えるように抱きしめる。互いの体温を感じて更に幸福感で満たされる。
「…あぁそうだ、希さんに渡したいものがあるんです」
俊は希を離すと希の手を引いて居間に入った。俊は希を座らせると希の背後にまわって髪に触れた。どうやら髪を結っているようだ。希はじっとしていると俊が「できた」と言って希に手鏡を渡した。鏡に映った希は自身の結われた髪を見て驚いた。一つに結われているその髪を止めている髪留めに目を奪われた。孔雀石でできていて装飾はあまりなく孔雀石そのものを主張していた。
「これ…」
「髪留めです。希さんの髪がだいぶ伸びてきたので良い髪留めをと思って。それに、まだ希さんに贈り物をしたことがなかったんです」
俊が照れくさそうに話す。その隣で希はずっと鏡に映る髪留めを見ていた。贈り物はあの花街にいた時に何回かあったが全て女物で使えないし使いたくなかった。けれど俊がくれた髪留めは嫌じゃなかった。寧ろ嬉しくてしょうがなかった。俊が希のことを考えてこの髪留めを選んでくれたのか何より嬉しかった。希は俊の方を向いて抱きついた。嬉しくて幸せでいっぱいな気持ちを全身で表す。
「ありがとう俊!俺…凄く嬉しい…!!」
「いえいえ、…希さんに喜んでもらえてよかった」
俊は希を抱きしめて頭を撫でた。希の胸が熱くなっていく。
「俊、大好き」
「私もですよ。愛してます」
互いの唇が重なる。唇が離れると希はまた俊に抱きついた。今は俊から離れたくなかった。
希は“幸せ“だった。
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