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鳥籠の中の花
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流行りの”帽子”とやらを被っている男、無地の着物を着た女。そんな人達が花街を行き交う。人の流れをある鳥籠の中からぼんやりと希は眺めていた。簡単には出れない頑丈な木の檻で僅かに手首が入る程の間から希にとっては変わらない在り来りな風景が流れている。行き交う人々の視線が時折希に向けられる。その目は怪訝でもあり哀れみのようでもあった。…それもそうだ、と言うように希は小さくため息をついた。
希はこの花街の中で異例な”男”の花魁だった。世の中には女は抱けず男だけ抱けるという変わった奴がいる。そのような者のために男の花魁を置いた。それを知った男たちは挙って希を抱いた。抱く側は良い事だが希にとってそれは地獄だった。下手な者が多くいつも希は痛みを感じていた。辞めたくてしょうがなかったけど希が働いている、いや、働かされている店の支配人が従業員に暴力を振るうほどの悪人だったため言えなかった。反抗すれば木の棒で思いきり殴られる。以前、希の同僚にあたる女性が反抗して殴られそのまま帰らぬ人となってしまったのだ。希はその時は死にたくない、と強く思っていた。けど今は死にたいと思うようになってしまった。毎日、毎日男に抱かれる日々が苦しくなってきていた。一度だけ支配人に反抗しようとしたが何故か恐怖を感じてしまった。死の覚悟を決めたのに何故か恐怖を感じたのだ。それ以来希は夜は男に抱かれ、昼は花街の風景を眺める。そんな日々を繰り返していた。
当たりが暗くなっていき、街の提灯が光っていく。嗚呼、今夜も男に抱かれるのか。と希は鳥籠の外で光る提灯を眺めながら思っていた。
「希、仕事の時間だ」
背後から聞き慣れてしまった声が聞こえて振り返る。そこには支配人がいた。
「…わかりました、すぐ行きます」
希は立ち上がって仕事場へ向かう。足取りが酷く重く感じていた。仕事場と言っても少し狭い畳の部屋だった。そこで希は男に抱かれる。希は客が来るまで待っていた。この時間の合間に希は決まって妄想するのだ。いつかこの鳥籠の中から出してくれる人と幸せに暮らす、という妄想だ。希にとってもう幸せと言うものがどんなもので、どんな感情になるのか忘れてしまっていた。幸せを感じてみたかった。希は毎日そう思っていた。そうしているうちに客が来たようだった。障子の向こうに影が見える。希は居住まいを正して客が来るのを待った。数秒すると客が障子を開けて入ってきた。嗚呼、また始まるのか。希はそう言いたくなるのを堪えて作り笑いをした。
「ようこそ、おいでくんなまし」
希はこの花街の中で異例な”男”の花魁だった。世の中には女は抱けず男だけ抱けるという変わった奴がいる。そのような者のために男の花魁を置いた。それを知った男たちは挙って希を抱いた。抱く側は良い事だが希にとってそれは地獄だった。下手な者が多くいつも希は痛みを感じていた。辞めたくてしょうがなかったけど希が働いている、いや、働かされている店の支配人が従業員に暴力を振るうほどの悪人だったため言えなかった。反抗すれば木の棒で思いきり殴られる。以前、希の同僚にあたる女性が反抗して殴られそのまま帰らぬ人となってしまったのだ。希はその時は死にたくない、と強く思っていた。けど今は死にたいと思うようになってしまった。毎日、毎日男に抱かれる日々が苦しくなってきていた。一度だけ支配人に反抗しようとしたが何故か恐怖を感じてしまった。死の覚悟を決めたのに何故か恐怖を感じたのだ。それ以来希は夜は男に抱かれ、昼は花街の風景を眺める。そんな日々を繰り返していた。
当たりが暗くなっていき、街の提灯が光っていく。嗚呼、今夜も男に抱かれるのか。と希は鳥籠の外で光る提灯を眺めながら思っていた。
「希、仕事の時間だ」
背後から聞き慣れてしまった声が聞こえて振り返る。そこには支配人がいた。
「…わかりました、すぐ行きます」
希は立ち上がって仕事場へ向かう。足取りが酷く重く感じていた。仕事場と言っても少し狭い畳の部屋だった。そこで希は男に抱かれる。希は客が来るまで待っていた。この時間の合間に希は決まって妄想するのだ。いつかこの鳥籠の中から出してくれる人と幸せに暮らす、という妄想だ。希にとってもう幸せと言うものがどんなもので、どんな感情になるのか忘れてしまっていた。幸せを感じてみたかった。希は毎日そう思っていた。そうしているうちに客が来たようだった。障子の向こうに影が見える。希は居住まいを正して客が来るのを待った。数秒すると客が障子を開けて入ってきた。嗚呼、また始まるのか。希はそう言いたくなるのを堪えて作り笑いをした。
「ようこそ、おいでくんなまし」
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