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第一話
ノンビ山の春
しおりを挟むタノシ山の木が伐採されたという情報をつたえたのは、ノンビ山でおしらせ係をやっているオオルリ鳥でした。
オオルリ鳥はいつもよりあわただしくノンビ山を飛びまわり、住人にむかってつたえました。
「人間がとなりのタノシ山の百歳くらいの木を何十本も切りました。今のところノンビ山の木が切られるという情報はありませんが、ご注意ください! くりかえします。人間がとなりのタノシ山の百歳くらいの木を……」
でも、ノンビ山の住人のほとんどはのんびりとしていて、オオルリ鳥の話などには耳をかたむけませんでした。
そのオオルリ鳥が空からすがたを消したころ、郵便屋のアシナガバチがいそがしそうに飛んできて、ナラの木のコンボじいさんの枝にとまりました。木のみきからでるジュースをもらいにきたのです。
「ああ、今日も朝からいそがしい。いそがしい」
アシナガバチはジュースをいっきに飲みほすと、口をふきながらそういいました。
「こんな朝はやくから配達いくんかい?」
「冬が終わって今日から手紙がだせるようになったからね。花手紙がたくさん集まってたいへんなのさ。これみて、これ」
アシナガバチは手紙が入った袋をあけると、コンボじいさんに中身をみせました。花びらがたくさん入っています。それらはみんな、ノンビ山の住人の植物や動物、虫たちがおたがいに花びらに書く手紙で、花手紙と呼ばれています。
「ところでアシナガバチ。……わしの花手紙も送ってくれないかな」
とてれくさそうに、コンボじいさんがいいました。
「うら山でひと仕事したらもどってくるよ。それじゃまたくるね!」
アシナガバチはそういうと、ブーンと音をたてて飛んでいきました。
コンボじいさんは二百五十歳で、同じナラの木の息子のサンボといっしょにカワベ村でくらしています。近くには小川が流れ、いろんな種類の草がはえ、花が咲いています。花のみつをとりにくる虫たちや、水を飲みにくる鳥や動物たちも多く、コンボじいさんには知りあいがたくさんいました。またコンボじいさんは、めんどうみがよく、たよりがいがあるので、ノンビ山の人気者でした。
コンボじいさんは下をみました。小川のほとりで花たちが歌っています。毎年春にひらかれる「ノンビ山・花の音楽会」の練習をしているのでした。冬のあいだ声をだすことなんてほとんどないので、花たちは歌うことが楽しそうでもあり、またてれくさそうでもありました。
「音楽会、いつだったかな」とコンボじいさんがたずねました。
「まだ決めていません。でも五月までにはやりたいですね」
と、ソプラノ担当のスイトピーが答えました。
「楽しみにしとるから、みんながんばれ」
大昔のノンビ山は、草木も川もない、はだかの山でした。そこに人間がやってきて草木をうえて、川を作りました。やがて何十年かたつと、山は緑にあふれ、小川がゆたかな水をはこび、鳥や虫、動物、草木がそだちました。人間もいっしょに生活するようになり、みんな助け合いながら、なかよくのんびりとくらしてきました。「ノンビ山」という名前は、だれがつけたのかわかりませんが、おそらく「のんびりした山」からきた名前だと思われます。
「もう春なんだのう」
コンボじいさんは、大きく息をすって遠くをみつめました。うすい青色の山々がみえます。その山々のいただきの白い雪もほとんどみえなくなっていて、春のおとずれを物語っています。山の色が青っぽくみえるのも春がきたしるしです。冬のあいだは黒っぽくみえるのでした。
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