雲の子ムックン

燦一郎

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さとみと雲の子ムックンのファンタジックな物語

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 さとみは雲が好きだ。
小学校に入ったころから、雲をながめてばかりいた。一年生の夏休みにはじめて飛行機に乗ったとき、人間のかたちをした雲がひじをまくらに寝そべって、さとみにむかって笑いかけるのを見たのがきっかけだ。
 あの日から、さとみは雲が生きものだと信じるようになった。今でもその思いは変わらない。雲は、人とか、ゾウとか、クマとか、くだものとか、お菓子とか自由にすがたを変えながら、空という住みかでくらしている生きものだ。
 さとみがいちばん好きな雲、それは低い空からじっと地上をにらんでいる入道雲。雷や大雨で地上を攻撃する入道雲は、人間からきらわれがちだけど、気持ちがまっすぐで、うそをつかない、わかりやすい性格をしている。
 さとみがいちばんきらいな雲、それはすじ雲やうろこ雲みたいに、高いところに住んでいる雲。見た目が美しくて、ふだんは人間になんか関心がないくせに、明日は雨だよって人間をおどかしたりする。プライドが高いくせにさみしがりやだし、わかりにくい性格をしている。

 生きている雲をまぢかに見たのは、四年生の夏休みだった。
 その日は午後から雷雨になる予報だったので、部屋の机にほおづえをついて、そのときをまっていた。
 どのくらい時間がたっただろう。予定どおり、雷鳴とともに強風と大つぶの雨がやってきた。こんなにはげしいのは、おそらく長い夏を通じて一度あるかないかだ。なぜなら雨があがって青空が見えはじめたというのに、入道雲がわすれていったのか、雲のかけらがバルコニーのかたすみに落ちていたくらいだから。

でもなんだか変。

 さとみは音をたてないように、そっとサッシをあけた。ちょうど、その白い物体がゆっくり浮きあがろうとしているところだった。野球のボールくらいの大きさで、フワフワして軽そうだった。おそるおそる近づくと、いきなりフワッとこっちをむいた。小さいビー玉のような目が光った。

「きゃっ」

 飛びのいた。するとその物体もクルクル回転しながら空に逃げていった。
 びっくりしたけど感動した。あれはきっと入道雲の子どもで、はるばる自分に会いにきてくれたのだと、さとみは思った。
 それから雷雨になるたびに、バルコニーにおりてその子がいるかどうかたしかめるようになった。それから再会していないけど、いつかかならず会えると信じた。

 さとみは五年生になると、ある町に転校した。
初日、みんなの前で自己紹介。
「わたしは、こうさか さとみです。くもが好きです」
 するとクラスのみんなは「へーっ」とおどろいた。体を小さくちぢめる女の子もいる。「気持ちわりい」とさけぶ男の子もいる。どうやら糸をはく「クモ」とかんちがいしたようだ。
「くもは、空のくもです。節足せっそく動物のくもじゃありません」
 でもさとみの声は小さくてみんなのさわぎ声にかきけされてしまった。そのときふと思った。雲だってクモのすがたになることもある。
「わたしの好きなのは、空の雲です。でも、雲もクモになったりします」
 すると今度はシラけてしまった。
 奈穂子先生がさとみの肩に手をおく。
「こうさかさんは夢のある人ですね。雲のことをみんなに教えてあげてくださいね」
 先生から「夢のある人」といわれたのははじめてだ。まだ若い先生だからそんなふうに思うのかもしれない。前の学校の先生はおばさんだったけど、さとみのことを、変わった子といっていた。ママも同じことをいう。さとみの部屋には雲の絵とか写真がたくさんかざってあって、綿で作った雲の模型が本だなにおいてあったりして、それを見るたびにママは「ほんと、さとみは変わってるわね」という。
 だから友だちもいない。楽しみが「雲の観察」だから、自然とひとりぼっちになってしまう。ちょっとさみしい気もするけど、広い空に浮かぶ雄大な雲を見ていれば、そんなちっぽけな気持ちもどこかにいってしまう。

 夏休みになった。

さとみは毎日本を読んだり宿題をしたりして、部屋にこもっていた。宿題でいちばんいやなのは作文、いちばん楽しいのは自由研究だ。
 自由研究のテーマにえらんだのは、「気温と湿度と気圧と雲」の関係だ。新聞から気象のデータをとって、その条件でどんな雲が発生するかを観察する。さとみは一時間おきに空を見て、雲をていねいにスケッチした。
 作文で先生からみんなに与えられたテーマは「友だち」だった。友だちのいないさとみにとって、この題材はむずかしい。書いたり消したり、作文用紙はいつまでもまっしろだった。
 その日は関東地方で雷雨になるという予報だった。そのとおり午後から風むきが変わり、気温もさがり、ひさしぶりにはげしい雷雨になりそうだった。
 午後3時すぎ、風が強くなり、灰色の雲がおしよせた。すぐに色えんぴつを手にして、灰色の雲がムクムクとふくらんでいくようすを、夢中でスケッチする。
 やがて強風と大つぶの雨といなづまと雷鳴がミックスになって町をおそってきた。外は暗いだけだったけど、窓をつたって流れるしずくがとてもきれいだったので、そのしずくをていねいにスケッチした。
 やがて嵐も終わり、白い雲がきれぎれにただよい、青い空が顔をのぞかせた。風もおさまり、セミの声ももどってきた。
 窓をあけると、ひんやりしたここちよい風がふいてきた。すると、いきなり目の前に白いものがあらわれたのだ。フワフワしたその物体は、まるでオバケのように宙に浮いたまま、ビー玉のようなキラキラした目でじっとこっちを見ている。
さとみは両手で口をおおった。

「ああ! あの子だ」

 体は、サッカーボールくらいの大きさになっていた。その子は、小さな口がプカッとあけてほほえんだ。さとみは思わずこういった。
「今度は逃げないでね」
「逃げるもんか。やっと見つけたんだもん。きみ、ひっこしたよな」
「あなた、入道雲の子どもでしょう。一年前にも会いにきてくれた」
「そのとおり、またきみに会いにきた。きみ、ぼくたち雲のことを、生きものだと信じているだろう。めずらしい子だと思って、会いたくなったんだ。去年の夏はなんだかはずかしくなって逃げちゃったけど、今年の夏はぜったい会いにいこうと思ったんだ。でものきみの家はからっぽだった。きみをさがすの大変だったよ。鳥さんとか風さんにいろいろきいてまわったよ」
「おもしろい。鳥さんとか、風さん?」
「そう。けっこう頼りになるんだよ」
 さとみはうきうきした。調子にのって、人さし指をその小さな雲の中にいれてみた。つめたい空気が、ドライヤーの風のようにシューシューと上下している。
「くすぐったい。やめてくれ」
 キラキラした目がくもった。よく見ると、目は氷でできているらしい。
「氷の目、とけないの?」
「ぼくが雲でいるかぎり、どんなに暑くてもとけない氷だよ」
「大人の入道雲にも目がついているのかな」
「もちろんさ。こわい目で地上をにらんでる。こうやってね」
 雲の子は目をつりあげた。ちっともこわくないので、クスッと笑ってしまった。
 さとみはその子に『ムックン』という名前をつけた。ムクムクした入道雲の子、ムックンだ。

「ムックン、ちょっといっしょにきて。ママに紹介する」

ムックンはうしろからフワフワとついてきた。さとみは、ママに本物の雲の子を見せてびっくりさせたかった。きっとママは腰をぬかすだろう。そしてわたしのやっていることがどれだけすごいことか気づくだろう。
 ママはキッチンで夕飯のしたくをしていた。
「ママ、これから友だちを紹介します」
 ママはアボガドの皮をむく手をとめて、ふりむいた。
「名前はムックン。入道雲の子。わたしに会いにきてくれたのよ」
 ところがママはびっくりするどころか、さめた目をした。
「さとみ、どうかしたの? 暑いから頭が変になった? 二階の部屋、エアコン入れてる?」
 ムックンは目の前にいるというのに、まったく気づいていないみたい。
「エアコンは入れてるけど。ママ、見えないの? これがムックンよ」
 さとみはムックンをやさしくだっこした。ママはクッキングナイフをテーブルにおくと、心配そうな表情でさとみのおでこに手をあてた。
「熱はないわね。どこかぐあいわるい?」
「別に、どこも」
「今まで寝てた? 夢見た?」
「寝てないよ」
「さとみ、前からいおうと思ってたんだけど、一日中部屋にとじこもってると、ほんとに頭がおかしくなるわよ。少しは外にでてみたら?」
 そしてまたアボガドの皮をむきだした。
 どうやらママにはムックンが見えないらしい。
 さとみは部屋にもどりながらムックンにこういった。
「ママにはムックンが見えないみたいね」
「ぼくを見ることができるのは、雲が生きものだって信じている人だけだよ」
「だったら、ほとんどの人にはムックンが見えないね」

 それからムックンとのひみつの生活がはじまった。ムックンはベッドの下にあった赤い風船が気に入ったらしく、中に入って遊んだ。さとみが風船の口を結んであげると、ワーッとはしゃぎながら部屋じゅう飛びまわった。前に住んでいた町の「ようこそ みずず商店街へ」という文字が入った風船で、そんなものがベッドの下ににあったなんて、すっかりわすれていた。
 そのうちにムックンも自分で風船の口を結んだりほどいたりすることができるようになって、かってに風船遊びをするようになった。夜になってさとみがベッドにもぐりこむと、そのまねをして自分も風船にもぐりこむ。
 ムックンの食事は水だけだ。コップに水をついで机の上においてあげると、ニョキッと手をだしてコップをかかえて飲みほす。それがめんどうなときは体を思いきり小さくしてコップの中に入りこんで、まるで脱脂綿のように全身で水をすいこむ。
 お風呂もいっしょに入る。ムックンはお湯をたくさんすいこんで、シャワーをかけてくれたりする。水をお湯にしてみたり、お湯を水にしてみたり、温度調節も自由自在。

 ある日、さとみはムックンといっしょに図書館にでかけた。気分を変えて手つかずの作文を一気に書きあげようと思った。題材の「友だち」はムックンにしようと決めていた。
 その図書館にはバスでいかなくてはならない。バス停にむかって歩いていたら、真夏の太陽がじりじりとてりつけて、顔がほてり、汗が流れてきた。
「暑くて体がとけそう。背中の汗が気持ちわるい」
「日ごろから外で遊ばないからそうなるんだ。もっと体をきたえないと。まあ、ぼくもえらそうなこといえないけどさ」
 といって、ムックンはつめたい霧を顔や首にふきかけてくれた。
 バスの中でムックンはつりかわの丸い輪の中をつぎつぎとすりぬけて遊んだ。
「人間って、よくこんなものに乗るよなあ。ぼくのほうが二倍はやく飛べるよ。大人になれば、きっと十倍はでるな」
「わたしもムックンに乗ってみたいな」
「もう人間の世界にもどらなくていいのなら、乗せてあげる。きみを空につれていくことはできるけど、安全に地上にもどすことはできないからね」
「ちぇ」
 図書館についた。
「図書館は静かにしてなきゃならないから、しばらくおしゃべりなしね」
「だったらテレパシーで会話しよう」
「そんなことできるの」
「きみとぼくならできるさ。ぼくは空にいたとき、きみの気持ちがわかっていた。きみも地上にいながら、ぼくの気持ちがわかっていただろう?」
「そうね。できるかもね」
「やってみよう」
『これから中に入るわよ。中ではあばれないようにね』
『心配すんな。雲は紳士さ』
「ほんとだ、できたできた」
『しゃべるなっていったのはそっちだよ』
『ごめんなさい』
『なんの本を読むんだ』
『本は読まない。宿題の作文をかたづけようと思って』
 さとみは空席を見つけるとバッグの中から筆記用具と、けしゴムの使いすぎでよれよれになった作文用紙をとりだし、机の上に広げた。タイトル以外何も書けていない。ムックンは机のすみっこに着地して、フワンと横になった。まるまる太ったウサギが横になっているように見える。
『テーマは友だちか』
『そう。ムックンのことを書くのよ』
『ぼくが友だち? まあいいけど、人間の友だちはいないのか』
『いないわ。別にほしくないし。ムックンがいてくれたらそれだけでいい』
『学校でいじめられたりしてるのか』
『それはない。でも、みんなわたしのことを変わった子だと思ってる』
 ふと、奈緒子先生のことを思いだした。
『でもね、担任の先生は夢のある人だっていってくれたのよ』
『なぜ夢なの』
『雲を見るってことは、夢を見ることなのかもしれない』
『そうか……きみにぼくが見えるのは、夢を見る力があるからなんだね』
 ムックンはフワンと回転してむこうをむいた。夏休みの図書館はさとみと同年代の子が多いので、ひとりくらい雲を生きものだと思っている人がいてもふしぎではないのだけど、だれひとりムックンに気づかない。
『同じ地球の住人として、雲と人間がなかよくするのは、そんなにむずかしいことじゃないんだな。夢見る気持ちが大切なんだな』
 ムックンはそういうと、またフワンと回転してこっちを見た。
『でもさ。けっきょくきみは人間でぼくは雲さ。生きる場所がちがう。さっきもいったけど、ぼくはきみを空につれていけても、地上にもどすことはできない。きみは人間の友だちも作ったほうがいい』
『ムックンには雲の友だちいるの』
 するとその氷の目は、遠くを見るようにいちだんとキラキラ光った。
『じつはぼく、いじめられてたんだ』
 さとみはシャープペンを机の上においた。コトンと小さな音がした。
『入道雲界のきまりで、子どもは静電気をスパークさせる練習をするんだ。子どものころからやっておかないと、大人になって急にやろうと思ってもできないからね。つめたい空気とあたたかい空気をすいこんで、両手でおなかをたたくとスパークするんだけど、ぼくはその音がこわくてしかたなかった。友だちはみんな「ダンダンドドーン」と平気で音をだすんだけど、ぼくは「ダン」または「ダ」とだしただけで、身がちぢんでしまう。そのたびに友だちがぼくをバカにする。
「おまえ、それでも入道雲の子かよ。おまえはまるでわた雲のひ弱なおぼっちゃんだ」
 ってね。父ちゃんや母ちゃんもぼくのことを心配する。
「そんなことで、将来一人前の入道雲になれんのか?」
 ってね。ふてくされたぼくは練習をやめた。すると友だちはみんなでおもしろがってぼくのまわりに集まってきて、わざと大きな音をだしておどろかすんだ。そのたびにぼくは耳をおさえてヒューッと急降下さ。すると、うね雲の女の子がクスクス笑う。ずっと前からからかわいいなって思ってた子だったから、とてもショックだった。
 夏になると父ちゃんや母ちゃんの仕事がいそがしくなって、どこの家でも子どもが親の仕事を手つだうんだけど、ぼくは無視して遊んだ。おこった父ちゃんは、ぼくを家からたたきだしたんだ。ぼくはそのまま家出してしまった。それからぼくは家にもどっていない。でもまあ、そのおかげできみにあえたんだけどね』
『両親は心配してないの』
『心配してるかもね。家出のことより、ひ弱なぼくがまともな大人になれるかどうか心配してると思う』
 さとみは、入道雲のくせに気がやさしいムックンの物語をそのまま作文にした。
 
 夏休みが終わった。あいかわらずさとみは雲ばかり見ていて、なかよしの友だちもできないままだった。休み時間はポケットにいれてきたムックンとテレパシーでお話したり、校庭でいっしょに雲をながめたりしていた。クラスのみんなは、そんなさとみになれてきたのか、あまり気にしなくなっていた。さとみはだんだんと、教室の雲になっていった。いつもひとりで浮いていた。
 ところでムックンは、秋が近づくにつれて元気をなくしていった。今までのように元気に風船で遊ぶこともなく、空を見ながらぼんやりすることが多くなった。
「どうしたの。どこかぐあいでもわるいの」
 ときいても、なんでもないと答えるだけで、その本心は見えないままだった。もしかして家族のことを思いだしているのだろうか。このまま地上にいてよいのだろうか。できればいつまでもいっしょにいてほしいから、今までその質問をしなかったけど、勇気をだしてきいてみることにした。
「ムックン、ほんとは空に帰りたいんじゃない? 家族のところに帰りたいんじゃない?」
 ムックンは、何かいやなものをはきだすように、口をプカッとあけた。
「入道雲はいつまでもこの国の空にいることができないんだ。ほんとは秋になったら南の空にひっこさなくちゃならないんだよ。ぼくたち入道雲は寒さに弱い。それに、秋は台風が多い。やつは強力なうずをまいて、ぼくたち入道雲をねこそぎ食べてしまう。ぼくの知るかぎり、台風に勝った入道雲はいない。去年だって、ぼくはいったん家族といっしょに南の空にひっこしたんだよ」
 やっぱりそうなのか。さとみも口をあけて大きく息をはいた。泣きたくなった。
「それでムックン。南の空にいっちゃうの? ほんとにいかないといけないの?」
「いきたくないけど、ここにいたらぼくは死んでしまう」
「台風がきたって、家の中にいればだいじょうぶよ」
「台風だけでなくて、この国のこれからの気圧、気温、湿度。すべてぼくの体によくないんだ。それはきみがよく知っているはずさ」
 さとみはがっくりと肩を落とした。
「南にいっても、みんなから攻撃されるだけだけどね。スパークの練習をなまけて、親の仕事も手つだわず、家出してフラフラしてた雲が、今さら南にいったって、村八分にあうだけさ。一人前の入道雲になっていれば別だろうけど」
「だったらここにいるべきよ。わたしが守る」
 さとみはむきになってムックンを守る方法を考えた。
「この部屋にストーブを持ちこんでお湯をわかす。窓もしめきって外の空気をいれない」
「そんなのむりだよ。きみが生活できなくなる。この前もいっただろう。きみは人間、ぼくは雲さ。ぼくはどんどん大きくなるよ。この家つぶれちゃうよ」
 その夜、なかなか寝つけなかった。どうやったらムックンといっしょにいられるか考えていた。となりでは赤い風船がふくらんだりしぼんだりしている。ムックンはすやすや寝ているようだ。さとみは、この国が一年中夏ならいいのにと思いながら、暗やみの中で、なんども寝がえりをうった。
 そのせいで、次の日学校を休んだ。ムックンを守る方法を見つけられないまま、ひどい寝不足になってしまったのだ。半日、おきあがることができなかった。ムックンはとても心配したようだ。その日は風船遊びもせずに、ずっとさとみの枕もとにいてくれた。目をさますと、かなしそうな目をしてこういう。
「どうしてぼくみたいな、できそこないの入道雲を大事にするんだ」
「ムックンは、わたしの友だちだから。何よりもだれよりも大切な友だちだから」
 そういうと、ムックンはてれくさそうに笑った。目の光がソーダ水のようにはじけた。
「人間にも、きみのような子がいたとはね。家出してよかったよ。あのさ、南にいっていじめられたら、逃げまわるからさ。インド洋かアラビア海の目立たない海域に身をひそめて、夏になったらこっそりここにもどる。だから心配すんなよ」
 今度はムックンがさとみを元気づけてくれた。
でもそのあと丸い体をぶるぶるふるわせて、青ざめた顔をした。
「どうしたのよムックン……」
「台風が生まれたみたいだ。熱い風のにおいがする。まだレーダーにうつるほどじゃないけど、ぼくにはわかる。南東海上だ」
 ムックンはしばらくぶるぶるふるえていた。

 その二日後、ムックンのいったとおり南東海上で大型の台風5号が発生した。
ニュースでは、台風はそのまま北上をつづけ、日本列島に接近する可能性が高いとのことだった。
「家の中にかくれていれば平気よ。寒くなったら、わたしがあたためてあげる。お湯もわかしてあげる。風船だって、もっと大きいのを買ってきてあげる」
 と必死になる。でも風船の中のムックンは何も答えない。
「何か答えてよ。ムックン」
「考えてる」
「何を考えてるの」
「いろんなこと」
 それから毎日、ムックンは風船の中ですごした。いっしょに学校にいくこともなくなった。もしかしたら、気象の変化で体をこわしているのかもしれない。早く手をうたないと大変なことになる。でもあせるだけで、これといったアイデアは何も思い浮かばなかった。
 学校では数日後にせまった遠足の話でもちきりだった。今回はバスに乗って高原にでかける。高原からはめずらしい雲が見えるので、さとみも楽しみにしていた。でも台風5号の速度から計算すると、関東地方にやってくるのはちょうど遠足の日あたりだ。クラスのみんなは台風のことなんか考えてもいないけど、あの大型台風が上陸したらバス旅行どころではない。
 ムックンにきいたら、やっぱりバス旅行の日がいちばんあぶないらしい。
「あした先生にいおうかなあ。今のうちに中止したほうがいいって。ぎりぎりになって中止したらみんながっかりするよね」
 するとムックンがひさしぶりに風船の中からでてきた。びっくりした。しばらく見ないうちに、車のタイヤくらいの大きさに成長していた。目も少しつりあがり、いさましくなっている。
「風船の中では、体をおもいきりちぢめなきゃならないから大変だ」
「ムックン、大人になったの?」
「大人になれるかどうか、これからチャレンジさ」
 そのつりあがった目に、勇敢な光がさした。
「学校の先生には、台風は関東に上陸しないと伝えてほしい。バス旅行も中止にしなくていいとね。約束だよ。かならずいうんだよ」
「何いってるのムックン。意味がわからない」
「台風は、関東上陸直前に、大きく東にそれて温帯低気圧に変わる。当日、関東地方は少し風が残るものの、だいたい晴れる」
「それが、ムックンの予報なの」
「いや、きみの予報だ。ぼくが台風と戦う。ぼくが台風と戦ってもしも勝つことができたら、きみの予報はクラスのみんなをあっとおどろかせることができる。なんせ気象庁も予測できない台風の動きを見事にあてたわけだからね。きみが雲の研究家として、みんなの注目をあびることはまちがいない。友だちもたくさんできるさ」
「そんなばかなことしなくていい。ムックンをそんなあぶない目にあわせるのはいや。ねえ、わたしが守るからここにいてよ」
「いろいろ考えて決めたんだ。ぼくはここにいても死んじゃうし、南には住む空がない。ここは勝負にでるしかない。見方を変えればこれはチャンスだ。弱虫入道が、台風をやっつけたヒーローになるチャンスさ。そしてこれは、きみにとってもクラスのヒロインになれる大きなチャンスだ」
「友だちなんていらないもの」
「そんなこというなよ。人間の友だちだって、きっといいものだよ」
「でも、ムックンがそんな目にあってまで。だいたい、台風に勝った入道雲はいないんでしょう? ムックン勝てるの」
 ムックンはゆかに着地すると、ニョキッと手をだして風船をひろった。
「正直こわいよ。やつのパワーは地球最強だもん。まともにぶつかったらあっというまに食べられちゃう。でも頭は使いようさ。目をねらうんだ。目はやつの急所だ」
 台風と戦うことがどんなことなのかわからない。目をねらえばどんな勝ち目があるのか想像もできない。でもムックンが本気であることはたしかだった。この気のやさしい雲の子が、よくこんな決心をしたものだと、胸がじんとした。
 さとみもゆかにしゃがみこんだ。外は台風の接近しているせいか、小雨がふっている。少し風もある。
「台風に勝ったらどうするの?」
「もしも力が残っていたら南にいく。入道雲史上はじめて台風をやっつけたんだ。南の連中も、ぼくをヒーローとしてむかえないわけにはいかないさ」
「力が残っていないこともあるわけ?」
「もちろん。相手がバカ強いからね」
「力が残っていなかったらどうなるの」
「しばらくは雲でいられるだろうけど、たぶん消えてしまう」
「台風に勝って、南にいける可能性はどのくらいあるの」
「あまりない。でもかけてみる。きみと、ぼくのために」
 それからムックンはまた体をぎゅっとちぢめて、風船の中にもぐりこんだ。さとみもスタンドの灯を消して、ベッドに横になった。

 遠足の前日になった。朝のニュースでは、台風5号は勢力をたもったまま小笠原諸島に接近中とのことだった。中心付近の最大風速は40メートル。最大瞬間風速は55メートル。明日の午前4時ごろ関東地方を直撃するらしい。
 クラスの朝の会で、奈穂子先生から遠足中止のお知らせがあった。
「みなさんも知ってるとおり、明日の朝、台風が上陸します。とても強い台風です。遠足は中止になりました」
 みんな覚悟していたはずなのに、いざ中止を告げられるとがっかり感が増すようで、口々にいじけた声をだしてさわがしくなった。
 そのクラスの空気に逆行するように、さとみは台風消滅の重大発表をするタイミングをうかがっていた。胸がとてもドキドキしていた。今まで授業の中で手をあげたことが一度もないのに、そんな大それた発言が自分にできるかどうかとても不安だった。やめようかとも思った。でもムックンとの約束だし、ムックンだって命をかけた戦いをしようとしているんだし、わたしだって勇気をださないといけないと思った。
 奈穂子先生が、パンと手をたたいた。
「静かに静かに。残念でしょうけど、明日は登校できるかどうかもわかりません。朝、連絡網で電話しますので、保護者のかたのいうことにしたがってください。それでは、このまま国語の授業をはじめます。教科書は、20ページの……」
「先生、あのう」
 さとみが手を少しあげると、奈緒子先生が笑顔をむけた。
「こうさかさん、どうかしましたか」
 みんなの視線がさとみに集まった。さとみが何をいおうとしているのか興味しんしんという感じだった。
「どうかしましたか?」
 さとみは音をたてて立ちあがった。小さな声だったけど、しっかりと発言した。
「台風は明日未明、東の海上に大きくそれて温帯低気圧に変わります。台風の上陸はありません。明日は風がやや残りますが、関東地方はだいたい晴天です。ですから遠足は中止にしないでください」
 みんながざわざわした。テレビのニュースも、台風が直撃するといっている。なのに東にそれて勢力が急に弱まるなんて夢のような話だ。奈緒子先生がやさしい口調でいった。
「こうさかさん、発言してくれてありがとう。雲を研究しているこうさかさんだから、きっといろんな可能性を信じてみたくなるのでしょうね。台風がそれていく可能性は、たしかにゼロではないかもしれません。でも、残念ですがかぎりなくゼロに近いと思います。遠足は中止です。よろしいですか?」
 先生のいうとおりだ。さとみもそう思う。もうこれ以上何もいえないので、こくりとうなずいて席にすわった。胸のドキドキはおさまっていた。でもみんなのひそひそ話がきこえてきたので、うつぶせになった。涙が少しだけにじんだ。

 夜がきた。風雨はだいぶ強くなっていた。台風の位置は小笠原諸島の北の海上にあった。速度もだんだんとあがってきているようだ。ムックンはベッドの上でじっとしていた。日がくれたら急に無口になって、目をつりあげて、じっと窓の外をにらみつづけている。
 さとみは拡大コピーした天気図をじっと見ていた。ときどき下におりて、テレビの天気情報をチェックして、台風の位置を赤ペンで書きくわえるのだ。
「ほんと、さとみは変わっているわね」
 とまたママがいう。ママに今のわたしの気持ちがわかるものか。
 気がつくと、ムックンの体の中にはまるで火がともったように、オレンジ色の光がぼんやりと見えるようになっていた。なぜそんな色になっているのかわからないけど、別れの時がもうすぐそこまできていることは、まちがいなさそうだった。さとみはベッドの上で体育ずわりをして、窓の外を見た。
 台風はどんどん近づいていた。風がごうごうとうなり、水しぶきとともに窓に体当たりしてくる。さとみもムックンも何もしゃべらなかった。テレパシーも使わなかった。
 0時近くになったらムックンが動いた。少しうきあがり、はりつめた声でこういった。
「そろそろいこうかな。やつは、すぐそこにいる。ほうっておけば、あと2~3時間で関東に上陸する」
 さとみも立ちあがった。
「台風に勝って、きっと南に帰ってね」
「そうなるといいね」
「これ、お守りにして」
 さとみは、「みすず商店街」の風船をムックンに手わたした。
「ありがとう。じつはほしかったんだ、これ。大事に持っとくよ」
 ムックンは風船をするっと飲みこんだ。さとみは涙をこぼした。
「また、会えるよね。かならず、会えるよね」
「きみがこれからどんな風に大きくなっていくのかわからないけど、夢見る気持ちをこれからも持ちつづけてほしい。そうしたら、またぼくに会えるよ。……できれば、すべての人間がそうあってほしいよね。そのほうが楽しいじゃないか。雲と人間が自由に会話できるなんて、なんてすてきなんだろう。おまけに、きみはぼくを守ろうとしてくれた。それがとてもうれしかった。あの日、ぼくはきみから勇気をもらった。そしてぼくもきみを守りたいと思った。そして台風と戦うことを決めた」
「わたしも、ムックンから元気をもらったよ。ムックン、ぶじに南の空にいってね。そして、かならずもどってきてね。夢は、すてないから」
「ぶじについたら、知らせるよ」
 さとみは、涙をふきながらほくそえんだ。 
「どうやって知らせるの」
「そうだなあ。考えとく」
 ムックンのつりあがった目が少しだけたれさがった。
 やがてムックンはおなかをふくらませた。すると、体の中にともっていたオレンジ色の光が全身に広がり、高熱をはなちはじめた。そして、苦しそうにこういった。
「窓を、あけてほしい」
 さとみは窓を半分くらいあけた。たちまち風と雨が部屋の中に入りこみ、カーテンが勢いよくひるがえり、部屋のドアがガタガタ音をたてた。荒れた上空では不気味な大気のかたまりが、とぐろをまくように流れていた。
「それじゃ、元気でね」
 ムックンはそういい残すと、荒れた空にむかって高速でのぼっていった。その体は巨大な白雲になり、暗黒の中に消えた。
「ムックン、負けないでね」
 さとみは風で重くなった窓を両手でしめた。そして急いでベッドに飛びこむと、毛布をかぶって体をまるめ、耳をふさいだ。
『きっとムックンが戦う音がきこえる。ききたくない。その音をきいたら、ムックンがどんな目にあっているのか、わかってしまいそう』
 さとみは耳をふさいだまま、自分の心臓の音をきいていた。そして少しずつねむりに落ちていった。
 どのくらい時間がたっただろうか。それは夢の中の音なのか、現実の音なのかわからなかったけど、台風の苦しそうなうなり声と、ムックンのつかれきった声が、ひとかたまりになって東のほうにどんどん遠ざかっていくのを耳にした。
 すぐにはねおきた。びっしょり汗をかいていた。窓をあけた。群青色の空は、うそのように静まりかえり、かすかに夜あけの光をおびていた。
 あわててラジオをつけた。台風情報をやっていた。アナウンサーはなんとなくあわてぎみだった。台風5号は上陸することなく、奇跡的に東海上に大きくそれて、温帯低気圧に変わった。さとみはまた空を見あげた。ちりぢりに切りさかれた雲が、少しずつ東の方向に流されていた。さとみは大声でさけんだ。
「ムックン! 生きているならもどってきて! もどってきて! もどってきて!」
 しばらくまったけど、反応はなかった。テレパシーも送ったけど、返事はなかった。
「ムックンさようなら。ありがとう」 
 そうつぶやいた。そしてゆっくりとラジオのスイッチを切り、くずれるようにしゃがみこんだ。

 学校では、みんながさわいでいた。台風はさとみの予想通りに消えてしまい、何ごともなかったかのような晴天にめぐまれたからだ。
「さとみちゃん、すごい!」
「さとみちゃんは天才だ!」
 と、登校してきたさとみをもてはやした。今まで口をきいたこともない友だちまでがさかんに声をかけてくる。奈緒子先生も、
「こうさかさん、どうやって台風の進路がわかったの? すごいわね。先生たちの間でもビッグニュースなのよ。遠足、中止にしなきゃよかったわね」
 と明るいしぐさで、さとみの肩を指さきでつつくと、さとみも自信をもってこういった。
「雲も台風も生きものですから。人間の思い通りに行動するとはかぎりません」
 奈緒子先生は大きくうなずいた。みんなも共感のまなざしをむけた。でも正直、さとみはあまりうれしくなかった。その晴天のかげには、ムックンのぎせいがあったのだから。
 それからムックンが命にかえてプレゼントしてくれたチャンスが現実のものになってきた。雲を観察するさとみの横に、一人、また一人とクラスメイトが集まってきたのだ。雲が生きものであることを感じてみたい、という友だちがふえていった。さとみもさとみで、雲の観察以外のことにも積極的に参加するようになっていった。毎日が楽しくてしかたなかった。ムックンのいったとおりだった。友だちっていいな。

 秋が深まり、風もつめたくなってきたある朝のこと、一階のママがかん高い声をあげた。
「お庭の風船かたづけなさい。きのうからだしっぱなしじゃない。みっとみない」
 風船? そんなものあるわけがない。
 いや、もしかしたら。
 一目散に階段をおりた。
 はだしのまま庭にでた。
 すみっこに風船があった。
 消えかかっていたけど「ようこそ みずず商店街へ」の文字が見えた。まさしくそれは、 お守りとしてムックンに手わたしたあの風船だった。
 もしかしてムックンが中にいるの?頭の中がまっしろになった。ゆっくり近よって、そっと風船を手にした。
「ムックンなの? ムックン?」
 と大声でいった。でも反応はない。それはただのよごれた風船だった。さとみは、かたい結び目をていねいにほどいた。
 潮のかおりのするあたたかな南風がふきでてきた。
「やったね、ムックン。すごいよ、ムックン」
 さとみは顔をあげて目をとじた。
ぶじに南の空についたことをムックンが知らせてくれたんだろうね。
その風船は鳥さんや風さんの力をかりて、長い旅をしてきたんだろうね。
目をあけると雲ひとつない秋の青空が広がっていた。

さとみは南の空に浮かぶ堂々とした入道雲を思い浮かべた。  
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