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魔法アロマは夢の香りを連れて来たのか?05
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アロマ研究室で室長に今日の調査の予定を報告すると、さっそくクロードに連絡を取ってくれた。
「玩具研究室に行く頃には許可は下りているはずだ」と言われ、ヒオリはニールとともに魔法道具部門のある棟へ急ぐ。
人気のない廊下を二人連れだって歩く中、ニールが後ろから静かに耳打ちしてきた。
「あの時温室でリリアン殿を囲んでいたのはほとんど魔法道具部門の方のようですよ。彼女が配属される前からの付き合いの者もいるとか」
「ふうん。あの調子で仕事になるのかしら?ヴェロニカ女史も苦労しているでしょうね」
ヴェロニカ女史もまた魔法道具部門の所属であり、責任ある部長と言う立場だ。
赤毛の博士がどんな気持ちで研究室にいるのか想像すると、他人事ながらげんなりしてくる。
対立しているようにも見える彼女らが近くにいて上手くやっていけるとは思えないし、何より研究がはかどらないだろう。
彼らに会うことが何となく憂鬱になってくるが、道具部門棟に入るとすぐに玩具研究室へ続くゲートが見えてきて嘆息する。
入室するべく認証ゲートに認識証をかざすが……、低いブサー音とともに扉はエラーの文字を画面に映し出した。
「ん……?」
「おや?おかしいですね。登録されていないみたいだ」
試しにニールの認識証をゲートにかざすが、こちらもエラー。
自分たちがゲートに登録されていない、つまり魔法道具部門へ連絡が行っていない可能性があり、ヒオリはニールとともに顔を見合わせる。
廊下の向こうから何者かの足音が聞こえてきたのは、今一度試してみようかと認識証をかざしたすぐ後だった。
「ちょっと、貴女たち。ここで何をしているの?」
足音の主はゲートで再度エラーを出した自分たちを見とがめたのか、厳しい声をかける。
振り向くと、40代半ばほどの何処となくきつい顔立ちの女性が、胡散臭げな眼差しでこちらを見つめていた。
スクエア型の眼鏡をかけておりおでこが広い知的な印象で、白衣姿である。彼女も恐らくこの研究室の博士だろう。
首から下げられている認識証を確認すると、『魔法道具部門玩具研究室・キリノ』と所属と名前が見えた。
ヒオリは背筋を伸ばし、出来るだけ警戒されないような口調と笑顔で「どうも」とあいさつをして歩み寄る。
「薬品部門の者です。温室に雑草が生えていた件で聞き込みをすると連絡が来ていませんか?私たちはその役目を請け負ったのですが」
「いいえ、聞いていないわ。本当に調査なの?」
疑いの表情のままきっぱりと言い切られて、ヒオリはやはりと眉間にしわを寄せた。
ハオラン室長は間違いなくクロード所長には話を通したと言ったはずだが、まだ道具部門には連絡が来ていないのだろうか?
疑問に思ったがだからと言って素直に帰ることも出来ず、ヒオリは丁寧な口調を心がけて頼み込む。
「所長に確認していただけないでしょうか?調査も、皆さんにお手間をかけないように配慮します」
「いいえ、駄目よ。他の部門の人間を入れるわけにはいかないわ。皆仕事中よ」
取り付く島もなく、キリノは首を横に振った。
二度手間だが今一度ハオラン室長話を聞きに行くべきか?そうヒオリが静かにため息をついた時、ニールが「失礼」と一歩前へ出る。
何だ?と首を傾げる己と女性の前で、彼は柔らかな微笑を口元に浮かべて彼女を見つめた。
「困りましたね。事態が事態ですから、なるべく早急にお話を聞きたいんですよ。何とかなりませんか?」
「……。まあ、確認くらいなら取ってあげてもいいけど」
明らかにキリノの態度が変わり、ヒオリはつい眉間にしわを寄せ彼女からニールに視線を転じる。
眉目秀麗なこの男の顔に、彼女がほだされたのは間違いない。
まさかと思っていると、ニールは少しだけ目を細めてこちらを見た。確信犯か。
───こいつ自分の顔の価値をわかっていやがるな、とヒオリは思う。
だが自分に備わったものを武器にし、使えるものは何でも使おうとする気概は嫌いではなかった。
「少し待っててね。今所長に連絡するから」
ニールに微笑みながらキリノは自分の認識証でゲートを開け、中にいた若い男性博士に声をかけて何事か言いつける。
彼は頷きながらも、ちらりとヒオリたちに視線を転じた。その目に敵意があるような気がして、首を傾げる。
彼の顔をどこかで見たような気がした。
が、その正体がわかる前に男性博士は、足早に部屋を出て廊下を歩いていく。恐らくキリノに所長を呼ぶように頼まれたのだろう。
(……はて、誰だったかな?)
記憶を探ろうとするが、すぐにキリノも戻ってきたので思考を中断する。
「こっちの部屋で待っていてくださる。準備はすぐにするから」
格段に愛想が良くなった彼女に苦笑いしながら、ヒオリはニールとともにその背を追った。
「玩具研究室に行く頃には許可は下りているはずだ」と言われ、ヒオリはニールとともに魔法道具部門のある棟へ急ぐ。
人気のない廊下を二人連れだって歩く中、ニールが後ろから静かに耳打ちしてきた。
「あの時温室でリリアン殿を囲んでいたのはほとんど魔法道具部門の方のようですよ。彼女が配属される前からの付き合いの者もいるとか」
「ふうん。あの調子で仕事になるのかしら?ヴェロニカ女史も苦労しているでしょうね」
ヴェロニカ女史もまた魔法道具部門の所属であり、責任ある部長と言う立場だ。
赤毛の博士がどんな気持ちで研究室にいるのか想像すると、他人事ながらげんなりしてくる。
対立しているようにも見える彼女らが近くにいて上手くやっていけるとは思えないし、何より研究がはかどらないだろう。
彼らに会うことが何となく憂鬱になってくるが、道具部門棟に入るとすぐに玩具研究室へ続くゲートが見えてきて嘆息する。
入室するべく認証ゲートに認識証をかざすが……、低いブサー音とともに扉はエラーの文字を画面に映し出した。
「ん……?」
「おや?おかしいですね。登録されていないみたいだ」
試しにニールの認識証をゲートにかざすが、こちらもエラー。
自分たちがゲートに登録されていない、つまり魔法道具部門へ連絡が行っていない可能性があり、ヒオリはニールとともに顔を見合わせる。
廊下の向こうから何者かの足音が聞こえてきたのは、今一度試してみようかと認識証をかざしたすぐ後だった。
「ちょっと、貴女たち。ここで何をしているの?」
足音の主はゲートで再度エラーを出した自分たちを見とがめたのか、厳しい声をかける。
振り向くと、40代半ばほどの何処となくきつい顔立ちの女性が、胡散臭げな眼差しでこちらを見つめていた。
スクエア型の眼鏡をかけておりおでこが広い知的な印象で、白衣姿である。彼女も恐らくこの研究室の博士だろう。
首から下げられている認識証を確認すると、『魔法道具部門玩具研究室・キリノ』と所属と名前が見えた。
ヒオリは背筋を伸ばし、出来るだけ警戒されないような口調と笑顔で「どうも」とあいさつをして歩み寄る。
「薬品部門の者です。温室に雑草が生えていた件で聞き込みをすると連絡が来ていませんか?私たちはその役目を請け負ったのですが」
「いいえ、聞いていないわ。本当に調査なの?」
疑いの表情のままきっぱりと言い切られて、ヒオリはやはりと眉間にしわを寄せた。
ハオラン室長は間違いなくクロード所長には話を通したと言ったはずだが、まだ道具部門には連絡が来ていないのだろうか?
疑問に思ったがだからと言って素直に帰ることも出来ず、ヒオリは丁寧な口調を心がけて頼み込む。
「所長に確認していただけないでしょうか?調査も、皆さんにお手間をかけないように配慮します」
「いいえ、駄目よ。他の部門の人間を入れるわけにはいかないわ。皆仕事中よ」
取り付く島もなく、キリノは首を横に振った。
二度手間だが今一度ハオラン室長話を聞きに行くべきか?そうヒオリが静かにため息をついた時、ニールが「失礼」と一歩前へ出る。
何だ?と首を傾げる己と女性の前で、彼は柔らかな微笑を口元に浮かべて彼女を見つめた。
「困りましたね。事態が事態ですから、なるべく早急にお話を聞きたいんですよ。何とかなりませんか?」
「……。まあ、確認くらいなら取ってあげてもいいけど」
明らかにキリノの態度が変わり、ヒオリはつい眉間にしわを寄せ彼女からニールに視線を転じる。
眉目秀麗なこの男の顔に、彼女がほだされたのは間違いない。
まさかと思っていると、ニールは少しだけ目を細めてこちらを見た。確信犯か。
───こいつ自分の顔の価値をわかっていやがるな、とヒオリは思う。
だが自分に備わったものを武器にし、使えるものは何でも使おうとする気概は嫌いではなかった。
「少し待っててね。今所長に連絡するから」
ニールに微笑みながらキリノは自分の認識証でゲートを開け、中にいた若い男性博士に声をかけて何事か言いつける。
彼は頷きながらも、ちらりとヒオリたちに視線を転じた。その目に敵意があるような気がして、首を傾げる。
彼の顔をどこかで見たような気がした。
が、その正体がわかる前に男性博士は、足早に部屋を出て廊下を歩いていく。恐らくキリノに所長を呼ぶように頼まれたのだろう。
(……はて、誰だったかな?)
記憶を探ろうとするが、すぐにキリノも戻ってきたので思考を中断する。
「こっちの部屋で待っていてくださる。準備はすぐにするから」
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