水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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やっぱり後宮入りなのか?

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 たんなる同行者としてあわよくば一緒に砂漠横断して帝都へ連れて行ってくれないかなぁ~、と使者の代表の方へお願いしにきたところ、OKがでそうなところで、まさかのまったがかかった。

「イサム様、お待ちください」

 言って立ち上がったのは街へでかけた際に馬ラクダにヴェールをはみはみされていたときに声をかけてきたベビーフェイスなのに体はムキムキマッチョという男性だった。

「ナスル、どうした。
何か問題でもあるか?」

 たれ目童顔なマッチョボーイはナスルというらしい。

 代表者の人と一緒の部屋で机についていたので、もしかしたら使者の中で地位が高めなのかもしれない。

 立ち上がったナスルとよばれた彼は私の目の前まできた。

 マッチョで背が高いのでものすごい威圧感。

 彼は手をのばして私の髪を一すくいすると、「これは染粉で?」と聞いてきた。

「染粉?」

 初めてきく言葉にエルザさんのほうを振り向くと、髪を染めるために使う粉を染粉というらしい。

「あぁ、黒い髪は地毛です」

 ナスルとよばれた彼も、代表者も全員黒髪だから珍しいわけでもないだろうし、聞かれた理由はわからないけれど、端的に黒髪はもともとだと伝えるとナスルは嬉しそうににっこりわらった。

「イサム様、やはり水巫女様は後宮へ入るために同行していただくべきです。
皇帝のお考えではラシード様とできるだけたくさんの水の精霊付きの女性を会わせるように、とのことでしたから、ただ同行いただくだけではもったいないかと思います」

「まぁ、お前の言うこともたしかにそうだな」

 ナスルの言葉にせっかくうまく話がまとまりかけたのに代表者のイサムさんもうなずいて同意しはじめた。

「あぁ、私達はあなたが水巫女様だと覚えているので、女官として同行されるなども承諾しかねますよ」

 よし、じゃあプラン2のれいかちゃんのお世話係の女官として!の案もあっけなく言い当てられて却下された。

「ぐぬぅ」

 おもわず、うめき声がもれてしまう。

 ナスルはははっと快活な笑い声をあげて、私に聞いてきた。

「皇太子のラシード様はお優しく、しかも美男子と評判ですよ?
後宮へ入るのはお嫌ですか?」

「美男子は拝見したい気もしますが……。
一夫多妻は私にはむりかと。
他に希望者もたくさん集まるでしょうから、私などがその中に混ざっても質を落とすばかりですし……」

 のーさんきゅー!とはっきり言うのはいくらなんでも失礼かと、自分を落としつつお断りをのべてみた。

 この人たちと帝都へ行けたら、とても安全な旅になりそうだったので、残念だけど、仕方ない。
 本当は最終プランとして後宮入りも考えていたけれど、なんだかこのぐいぐいおすすめしてくるナスルの様子をみていると嫌な予感がする。
 実は皇太子様、とんでも物件だったりするんじゃない?

 美男子で優しいとかなら絶対引く手あまただもの。

 女神様だって理由があってお願いの対応が遅れるのは許してくれるはず。


「あの……。後宮入りして1年たって希望すれば後宮からさがれる。というのは本当のことでしょうか?」

 そこでずっと後ろに控えてくれていたエルザさんが質問をしてきた。

「エルザさん……」

「アンナ様、私はこの方々と一緒にガルダシャーン帝国へ行かれるのが一番安全だと思っております。
 他の手段で行かれるのは心配ですので、多少の不便には目をつむっていただきたいのです。
 アンナ様が心配なのです!!」

 不便には目をつむってとか、ちょっと失礼な言葉じゃなかっただろうかとひやひやしつつも、エルザさんがそんなに心配してくれたことにちょっと嬉しくもなる。

「ははは!
女官殿の言葉は私達の中でとどめておきましょう。
水巫女様の心配をされてのことでしょうしな。

 水巫女様はアンナ様とおっしゃるのですね。
何か事情がおありのようですが、ここはお互いの利益のために最善なのはアンナ様に後宮入りしていただくことのようですね。

 アンナ様は安全に帝都までいくことができる。
私達は皇帝のお望みのとおり、水の精霊付きの女性をできるだけ多く皇太子さまの後宮へお連れできる。

 希望すれば1年後に後宮からでられるのは本当のことです。
これは私も皇太子様から直接うかがっています」

 きっぱりと代表者のイサムさんが言いきってくれたのでエルザさんはほっとした顔をした。

 なんだか外堀から埋められていっているような気がしないでもないけれども……

 やっぱり後宮入りで連れて行ってもらうしかないのかも。
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