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ガルダシャーン帝国のこと(続)
しおりを挟むここからガルダシャーン帝国まで急いでも30日はかかると聞いて、その道のりの長さに気が遠くなりかけた私とれいかちゃん。
現代日本人からしたら全部馬車、という旅も想像ができない。
でも、この世界ではこれが普通なんだから割り切るしかない!
一生をこのアクアナ神殿ですごすならば関係ない話だけど、私は元いた日本に帰ることはできないらしいのでこの世界で生きていくしかない!
女神様のお願いを完了させたら、この世界で家族をつくって幸せな人生を送るんだ!
そのためにはもっともっとこの世界のことを知らなくちゃ。
「エルザさんはガルダシャーン帝国のことは詳しいんですか?
もしご存じなら、生活がどんな感じなのかとか、街中の雰囲気とか治安とか教えてほしいんですけど……」
私が切り出すとエルザさんは不思議そうな顔をした。
「アンナ様はガルダシャーン帝国での生活をお望みなんですか?
アクアナ神殿にずっといてくださるつもりはないのですか?」
「えっと……
アクアナ神殿からでたことがないので他の国はどんな感じなのかなぁ~と思いまして。
それに、アクアナ神殿の建物からでたこともないので、よかったら神殿の外にも今度案内してもらえたら嬉しいです」
アクアナ神殿には残らないのかとしょんぼりした顔をするエルザさんを見ていると、ものすごい罪悪感がわいて慌ててアクアナ神殿にももちろん興味ある!と言い足した。
「そうでした!
神殿の外に出られたことがなかったですね。大変失礼いたしました。
では、明日、外をご案内いたしますね」
「あ!私も行きたい!!」
エルザさんの言葉にれいかちゃんも反応した。
どうやられいかちゃんも神殿からでたことがないみたい。
「では、明日の午後はアンナ様、れいか様と神殿の外をまわることにいたしましょう」
満足そうにしたエルザさんには引き続きガルダシャーン帝国の話を聞かせてもらった。
その話によると、ガルダシャーン帝国は大きく古い歴史のある国のため、それなりに安定しており治安もよいそう。
特に皇帝の居城がある帝都は軍人の見回りも多く、安心して住める街になっているとのこと。
女神様にお願いされた水が足りない場所は城下町ってことだったので、多分この帝都のことなんだろう。
そしてガルダシャーン帝国の帝都には火の精霊の本神殿があるため、火の精霊の力が強いそう。
それもあって、水の精霊の力が弱くなっているのかもしれない。
ちなみに、水の精霊の神殿であるアクアナ神殿の分殿もこの帝都にあるとのこと。
そうなると、れいかちゃんじゃないけど、この分殿に女神様のお願いをかなえる間、住まわせてもらうようにお願いするのがいいのかもしれないなぁ。
でも、そうするとオンリーワンになりたいれいかちゃんが気を悪くするかも。
まぁ、そのあたりはいける目途がたってから考えよう。
それにしても、水の精霊がいるのだから他の精霊がいても不思議ではないけど……
火の精霊かぁ。
どんな感じなんだろう。
そういえば、あの人も体温が高くて熱かったなぁ……
やっぱり彼はガルダシャーン帝国の人なのかも……
また思い出して顔に熱が集まるのに気づいて慌てて冷やした手で顔のほてりを鎮める。
ふとしたときに思い出してしまうのは、やっぱりこの世界のどこかに彼がいるのかも、と思うからかな。
それとも初めての人だからか……
いやいや!!
今は考えているときじゃない!!
まわりに人がいるときには考えちゃだめだ!!
一人であわあわしている間にもエルザさんの説明は続いていて、今度は皇帝の話になっていた。
皇帝は在位すでに数十年、その間、一度だけ北にあるヴァイス国がアラメイア国と戦争をしたときに助けるために戦争に加担したが、それ以外は平和主義な統治者とのこと。
ヴァイス国は北にあって寒波が続いて作物不作のためにその西にあるアラメイア国を襲ったんだそうで。
寒いの苦手だし、ヴァイス国は行先からは外しておこう。
そして、皇帝には4人の皇子様がいらっしゃったが、第一・第二皇子は前回の戦争で亡くなってしまったそうで、ただ一度の戦争で世継ぎ候補が二人も亡くなってしまうなんて、やっぱり戦争だめ!絶対!
そして、第三皇子はその戦争をしかけられたほうのアラメイア国の王女と結婚しているため、現在は第四皇子が皇太子となっているそう。
第四皇子が繰り上がるって、すごいな。
本人もびっくりしただろうなぁ。
他、皇女様も数人いらっしゃるけれど、女系は後継ぎではないため、アクアナ神殿のほうまでは話が流れてくることなく、何人なのかなどわからないということだった。
それにしても、お子さん多いね!と思ったら、そこはやはり、奥様が何人もいらっしゃるそうで……
しっかり後宮が皇城にあるそうです。
一夫多妻か~。
私には無理だな。
エルザさんに念のために確認したら、一夫多妻は皇帝のみで他は一夫一妻らしいのでほっと一安心。
やっぱり一人と一人で思いあわなくちゃね!!
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