4 / 5
4.何かが起きる予感がします
しおりを挟む
その日の夜、私はシエルと窓際でお茶をしていた。
「お姉様、助けるのが遅くなってごめんなさい……」
「いいのよ。隙を窺っていたのは分かっているもの」
申し訳なさそうに口にするシエルにそう口にする私。
そんな時、執事が部屋に入ってきてこう口にした。
「お嬢様、レオナルド殿下がお見えになりました。既に応接室の方にお通ししております」
「分かったわ。すぐに行くわね。
シエル、ごめんね。少し席を外すわ」
シエルに断りを入れて応接室へと急ぐ私。
部屋に入ると、ソファに掛けていた殿下と目が合った。
「遅くなってすまなかった。彼が回復術師だ。
早速治療を始めてもいいかな?」
「ええ、お願いしますわ」
私がそう口にすると、回復術師の方が私に手をかざして、呪文を唱え始めた。
そして、その手が淡く光ると痛みが一気に消えていった。
「痛みは消えたかい?」
「はい、さっきまでの痛みが嘘のようですわ」
「良かった。一つお願いしたいんだが、いいかな?」
さっきまでの緩い空気はどこへやら。突然重い空気が流れ出して、私はさりげなく背筋を正した。
「なんでしょうか……?」
「実は……イルシア、君のことが好きなんだ。初めてパーティーで君を見た時から気になっていた。
そして身分を偽って接していくうちに性格にも惚れたんだ。もし君が嫌じゃなかったら、結婚を前提で付き合って欲しい」
「では、友人からでお願いしますわ」
今お付き合いを始めてしまえば、私に不貞の疑惑がかかってしまう。そう考えて、私はそう口にした。
「そうか……。なら、まずは友人からだな。
これからもよろしく」
「はい、こちらこそ宜しくお願いしますわ」
お互いに頭を下げる私と殿下。
この日から私達は友人の関係になった。
その翌日にはアドルフの両親が謝罪に来て、アドルフを家から追い出したのだと言われた。
きっと彼には地獄なような日々が待っている。それは分かりきっていることだけど、不思議なことに何も思わなかった。
さらに、その翌日にはシエルの食欲も戻って、少し安心することが出来た。
「お姉様、助けるのが遅くなってごめんなさい……」
「いいのよ。隙を窺っていたのは分かっているもの」
申し訳なさそうに口にするシエルにそう口にする私。
そんな時、執事が部屋に入ってきてこう口にした。
「お嬢様、レオナルド殿下がお見えになりました。既に応接室の方にお通ししております」
「分かったわ。すぐに行くわね。
シエル、ごめんね。少し席を外すわ」
シエルに断りを入れて応接室へと急ぐ私。
部屋に入ると、ソファに掛けていた殿下と目が合った。
「遅くなってすまなかった。彼が回復術師だ。
早速治療を始めてもいいかな?」
「ええ、お願いしますわ」
私がそう口にすると、回復術師の方が私に手をかざして、呪文を唱え始めた。
そして、その手が淡く光ると痛みが一気に消えていった。
「痛みは消えたかい?」
「はい、さっきまでの痛みが嘘のようですわ」
「良かった。一つお願いしたいんだが、いいかな?」
さっきまでの緩い空気はどこへやら。突然重い空気が流れ出して、私はさりげなく背筋を正した。
「なんでしょうか……?」
「実は……イルシア、君のことが好きなんだ。初めてパーティーで君を見た時から気になっていた。
そして身分を偽って接していくうちに性格にも惚れたんだ。もし君が嫌じゃなかったら、結婚を前提で付き合って欲しい」
「では、友人からでお願いしますわ」
今お付き合いを始めてしまえば、私に不貞の疑惑がかかってしまう。そう考えて、私はそう口にした。
「そうか……。なら、まずは友人からだな。
これからもよろしく」
「はい、こちらこそ宜しくお願いしますわ」
お互いに頭を下げる私と殿下。
この日から私達は友人の関係になった。
その翌日にはアドルフの両親が謝罪に来て、アドルフを家から追い出したのだと言われた。
きっと彼には地獄なような日々が待っている。それは分かりきっていることだけど、不思議なことに何も思わなかった。
さらに、その翌日にはシエルの食欲も戻って、少し安心することが出来た。
23
お気に入りに追加
1,633
あなたにおすすめの小説
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。
紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」
と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。
攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
義弟に婚約者を奪われ、悪女として断罪されましたがなぜか邪神に溺愛されハッピーエンド?を迎えることになりました🐍
音無砂月
恋愛
※BL展開は薄めです。
※毎日1話ずつ、17:00公開
フィオナの母親は夫の不貞で心が病み、亡くなった。それからすぐ、父親は愛人と愛人との間にできた子、ランを正式な家族として邸に入れた。
元愛人で正妻として収まったセザンヌと義弟に元妻の子であるフィオナは虐げられるのはよくあること。けれど、セザンヌもランもフィオナを虐げたりはしなかった。そのことが逆に、フィオナの心に深い闇を形成する。
それでもフィオナは罪があるのは父とセザンヌであり、生まれてきてしまったランに罪はないと考える。
けれど、ある日彼女は見てしまった。
ランが自分の婚約者であるアランに告白するところを。そしてアランがそれを受け入れるところを。
ショックを受けるフィオナに優しくてを差し伸べたのは転校生のクロヴィスだった。しかし、彼は彼で思惑がある。果たして、彼は本当に味方なのか?
婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
頭の中が少々お花畑の子爵令嬢が朝から茶番を始めたようです
月
恋愛
ある日、伯爵令嬢のグレイスは頭の中が少しだけお花畑の子爵令嬢の茶番に付き合わされることになる。
グレイスを糾弾しているはずが、巻き込まれて過去を掘り返されていくクラスメイトたち……。
そこへグレイスの婚約者のリカルド殿下がきて……?
※10,000文字以下の短編です
離婚って、こちらからも出来るって知ってました?
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
元商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。
私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。
悪態をつく姑。
私を妻と扱わない夫。
夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
それでも私は三年我慢した。
この復讐のため、だけに。
私をコマとしか見ない父も、私を愛さない夫も、ただ嫌がらせするだけの姑も全部いりません。
姑の介護?
そんなの愛人さんにやってもらって、下さい?
あなたの魂胆など、初めから知ってましたからーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる