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8. 邪魔ですわ
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※怪我の描写があります
すぐ近くから放たれた風の攻撃魔法。
私は直前に気配を掴んでいたので避けることが出来ましたが、後ろにいたリリアさんに直撃してしまいました。
私が振り向いた時には、リリアさんの身体は宙に浮いていました。
咄嗟に防御魔法で彼女の身体を受け止めましたが、切り刻む系統の魔法だったようで身体中に切り傷を負っているようです。
ほとんどの傷は血が滲む程度のようですが、首の怪我はかなり酷いものです。
あまりの出血の量に目を覆いたくなりますが、そんなことをしている余裕はありません。
「シルフィーナ様……お召し物が汚れてしまいます……」
「服のことは気にしなくて大丈夫ですわ」
言葉を返しながら、リリアさんの首にハンカチを押し当てます。
少し前に教わったばかりの止血法です。
こんな形で実践することになるなんて思わなかったわ。
「事情は後で聞きます。今はリリアさんの手当てを。
全員、演習を中止してください!」
異変を察知した先生が声を上げます。
一方、魔法を放ったエドガー様は呆然と立ち尽くしているだけ。
彼はリリアさんを守ることを口実に私を攻撃してきていたはずなのに、どうしてリリアさんを巻き込むようなことをしたのでしょうか……?
「すまない、俺の腕が未熟なばかりに……」
「大丈夫ですわ……」
さっきの先生の声で我に返ったのか、今更リリアさんに駆け寄るエドガー様。
今は私が手当を任されているので、邪魔しないでください。
「手当ての邪魔ですわ」
「は? お前が受け止めなかったからこうなったんだ。手当は俺がする」
…………今、なんとおっしゃいましたか?
私の聞き間違いでしょうか?
エドガー様が私を攻撃しようとしなければ、リリアさんが怪我をすることは無かったはずです。
それなのに、どうして私が悪者にされているのでしょうか?
「もう一度言います。邪魔ですわ」
「エドガー君、一度離れてください。また魔法を暴走させられても困りますから」
先生もエドガー様のことを邪魔だと思っているみたいです。
「分かりました……」
私の方は一切見ずに返事をするエドガー様。
それに少し遅れて、ようやくリリアさんの止血に成功しました。
まだ血は滲んでいますが、これで命に関わる心配はないでしょう。
医務室の先生も来ましたし、私の役目はここまでのようです。
「シルフィーナさん、手当ありがとうございました」
「いえ、私は当然のことをしただけですわ」
「それでも、感謝してもしきれませんよ」
そう口にしながら頭を下げる先生。
リリアさんは……もう運ばれていってしまったようです。
そんな時でした。
後ろを振り向くと、目の前にエドガー様が立っていました。
私は反射的に身構えましたが……。
「余計なことをするな」
彼はそれだけ言うと、不貞腐れたような足取りで練習場を出て行ってしまいました。
すぐ近くから放たれた風の攻撃魔法。
私は直前に気配を掴んでいたので避けることが出来ましたが、後ろにいたリリアさんに直撃してしまいました。
私が振り向いた時には、リリアさんの身体は宙に浮いていました。
咄嗟に防御魔法で彼女の身体を受け止めましたが、切り刻む系統の魔法だったようで身体中に切り傷を負っているようです。
ほとんどの傷は血が滲む程度のようですが、首の怪我はかなり酷いものです。
あまりの出血の量に目を覆いたくなりますが、そんなことをしている余裕はありません。
「シルフィーナ様……お召し物が汚れてしまいます……」
「服のことは気にしなくて大丈夫ですわ」
言葉を返しながら、リリアさんの首にハンカチを押し当てます。
少し前に教わったばかりの止血法です。
こんな形で実践することになるなんて思わなかったわ。
「事情は後で聞きます。今はリリアさんの手当てを。
全員、演習を中止してください!」
異変を察知した先生が声を上げます。
一方、魔法を放ったエドガー様は呆然と立ち尽くしているだけ。
彼はリリアさんを守ることを口実に私を攻撃してきていたはずなのに、どうしてリリアさんを巻き込むようなことをしたのでしょうか……?
「すまない、俺の腕が未熟なばかりに……」
「大丈夫ですわ……」
さっきの先生の声で我に返ったのか、今更リリアさんに駆け寄るエドガー様。
今は私が手当を任されているので、邪魔しないでください。
「手当ての邪魔ですわ」
「は? お前が受け止めなかったからこうなったんだ。手当は俺がする」
…………今、なんとおっしゃいましたか?
私の聞き間違いでしょうか?
エドガー様が私を攻撃しようとしなければ、リリアさんが怪我をすることは無かったはずです。
それなのに、どうして私が悪者にされているのでしょうか?
「もう一度言います。邪魔ですわ」
「エドガー君、一度離れてください。また魔法を暴走させられても困りますから」
先生もエドガー様のことを邪魔だと思っているみたいです。
「分かりました……」
私の方は一切見ずに返事をするエドガー様。
それに少し遅れて、ようやくリリアさんの止血に成功しました。
まだ血は滲んでいますが、これで命に関わる心配はないでしょう。
医務室の先生も来ましたし、私の役目はここまでのようです。
「シルフィーナさん、手当ありがとうございました」
「いえ、私は当然のことをしただけですわ」
「それでも、感謝してもしきれませんよ」
そう口にしながら頭を下げる先生。
リリアさんは……もう運ばれていってしまったようです。
そんな時でした。
後ろを振り向くと、目の前にエドガー様が立っていました。
私は反射的に身構えましたが……。
「余計なことをするな」
彼はそれだけ言うと、不貞腐れたような足取りで練習場を出て行ってしまいました。
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