婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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Extra 01. 破滅した者の末路

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「頼む、誰かここから出してくれ!」

 ドンドンと扉を叩く音が虚しく響く。
 ここはイストリア帝国の王宮。そして、扉を叩く人物はクラウス・ローザニア。

 彼は表向きこそ王子だが、事実上では廃嫡されている。
 既に破滅した彼がここまで焦っている理由は、部屋の状況を見る限り窺い知ることは出来ない。

 整った調度品に、高級品のベッドやソファ。窓際のテーブルには茶菓子が置かれていて、お茶は湯気をあげている。
 見た目だけは普通の部屋だが、住人であるクラウスの表情は憔悴し切っていた。

 それでも彼は扉を叩き続けて訴える。
 しかし、そんな時に扉越しに女性の声が響いた。

「煩いですわね? 貴方は私の玩具モノなの、分かるかしら?」

 同時に勢いよく扉が開き、クラウスはベッドまで飛ばされた。

「うっ……」

「さあ、今日もわたくしを楽しませてくださいまし?」

 そう口にするこの女性の名はエルザ・イストリア。イストリア帝国の皇女だ。
 ちなみに彼女は『娼婦』という不名誉な二つ名を貴族達から頂戴していた。

 その欲求は婚約破棄直後に女性を自室に連れ込み、王族でありながら婚前に盛っていたどこかの男を遥かに超える者だった。

 エルザ皇女と付き合えば命まで搾り取られるなどという噂が流れるほどだった。
 そしてこの噂は偽りなどではなく、彼女と付き合った男性2人が行為中に発作を起こし、帰らぬ人となっている。

 そんな彼女に監禁されているクラウスは、ここに来てからまだ1週間なのにも関わらず、彼女を拒絶するようになっていた。

「さあ、早く服を脱いでくださいまし?」

「ひっ……」

 満面の笑みを浮かべるエルザを前に、クラウスは気絶したようだった。
 しかし彼女は構わず準備を続け、数分後には2人の声が部屋から漏れ出していた。


「皇女様は嬉しそうですな……」

「王子様はご愁傷様、としか言えませんな……」

 部屋の前で護衛をしている騎士たちは溜息を漏らした。
 彼らはクラウスを可哀想な王子だと思っている。だからこそ同情していて、満足の行く食事を用意したりしていた。

 もしもクラウスが過ちを犯していたことが知られたら、使用人達の態度は変わるだろう。
 皇女の『お気に入り』なので虐待を受けることはないだろうが、雑に扱われることは間違いない。

「頼む、休ませてくれ!」

「流石にこれは酷いですな……」

「そうそう、知っていますか? あの王子様、自国の令嬢に酷い仕打ちをして追放されたそうですよ」

「それが本当なら、自業自得ですな……」

 この噂は瞬く間に広まり、クラウスは冷遇され始める。

 そしてこの日から2ヶ月後、クラウスは全裸のまま最期を迎えた。



 彼の遺体は数日のうちにローザニア王国へと送られ、葬儀が執り行われる事となる。
 国王を始め、彼の死を都合が良いと喜ぶ者はいた。

 しかし、悲しむ者は誰もいなかった。
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