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130. 襲撃①

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「はい、チェックメイト。びっくりするくらい弱くなってるけど大丈夫か?」


 駒を動かしながらそう口にするジーク様。
 私達は今時間潰しにチェスをしているのだけど、これでは時間潰しにならないわ……。


「大丈夫じゃないわ……」

「かなり強力なのを盛られたのか……」


 十数分でルークに追い詰められたキングに視線を落とす私。
 その時、部屋の扉が叩かれた。


「このノックの音はお母様ね。開けてもらえる?」

「畏まりました」

「そういうところは大丈夫なんだな……」


 そう呟いてジーク様が首を傾げる。
 その次の瞬間だった。


「フィーナ、大丈夫? 痛かったりしない?」

「だ、大丈夫ですわ……ひゃうっ⁉︎」


 抱きしめられた時に変な感覚が全身を駆け抜けて、思わず声を上げてしまった。
 でも、お母様は中々離してくれなかったから、つい突き飛ばす勢いで押してしまった。


「あ……」


 慌てて手を伸ばすも時すでに遅し。お母様は閉じた扉に背中を打ち付けていた。


「元気そうで安心したわ。ところで、対処法は読んでくれたかしら?」


 いい音がしたのにも関わらずまた迫ってくるお母様。痛みはないのかしら⁉︎
 私は少し後退りながら正直に答えた。


「まだ読んでませんわ」

「もう少ししたら今よりももっと辛くなるから、今のうちに読んでおいた方がいいわよ」

「でも、恥ずかしいことが書いてあるような気がしたから……」

「恥ずかしいことをしないと簡単には治せないから仕方ないのよ。
 もしかして、ジークくんに助けてもらおうと思ってるの? 多分流血沙汰になるからおすすめしないわよ」

「流血沙汰⁉︎ 媚薬ってそんなに恐ろしいものなのですね……」


 私がそう呟くと、隣にいるジーク様は青ざめながら「流血沙汰……」と呟いた。
 そして可哀想なモノを目で私のことを見つめていた。


「未婚の女性の媚薬の効果を消す時になるだけだから大丈夫よ」

「それってつまり私のことですよね⁉︎ 全然大丈夫じゃないですか!」

「その紙には流血沙汰にならない方法が書いてあるから安心して読みなさい」

「分かりましたわ」


 意を決して紙に目を落とすと、そこには予想通り恥ずかしいことが書かれていた。
 それは子供を成す行為について詳しく教えられていない私には刺激が強すぎるものでーー


「「フィーナ⁉︎」」


 ー一気に顔が熱くなり、そのまま立ち眩みに襲われる私だった。


「こ、こんなことをやらないといけないのですか⁉︎」

「それをすればかなり楽になるだけだから、やらなくてもいいわよ」

「それならやりませんわ!」


 私がそう宣言すると、部屋の扉が勢いよく開かれてお兄様が入ってきた。


「フィーナ、王子が襲撃に来たけどどうしたい?」

「そのまま城に帰らせてください」

「分かった。じゃあ、王子を軽く脅し……じゃなかった。王子にお願いしてくるよ」


 そう口にして、お兄様は廊下の向こうへと消えていった。
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