上 下
120 / 155

120. 建国記念式

しおりを挟む
 お父様の部下さんと話をした後、お父様の機嫌がかなり悪くなって、そのまま式典に参加することになった私達。
 今は始まってから40分くらい経っていて、そろそろ同じ姿勢を続けるのに疲れてきた。



 そんな建国記念式は、国王陛下が国民への礼を述べ、その後に参加者全員でローザニアの地を守るとされている守護神に祈りを捧げる。
 内容で言えばそれだけで、式全体の時間は1時間しかない。だけど、その全てが退屈な時間になっている。

 聖堂内は私語は厳禁で、これを破れば神に叛いた者として処罰が下る。

 もちろん、陛下の前で姿勢を崩すことなんて許されないし、話をしている陛下の後ろの席ーー王族の席から私を見つめてきている人がいても逃れることなんて出来ない。


 早く陛下の話終わらないかしら……?
 もう40分も話しているのに、まだ終わりそうにないなんて……。


「……今から200年ほど前にあった……」


 200年くらい前にあった戦争の話に変わって、それから5分ほど経ってようやく陛下の話は終わった。
 そしてすぐに神官さんが姿を見せて、祈りを捧げる時になった。


「それでは、ローザニア王国の繁栄を願って、神々に祈りを!」


 神官さんがそう言ったタイミングで目を瞑って軽く俯き、胸の前で手を合わせる私。
 見えないから分からないけど、周りも同じような体勢にしていると思う。

 そして、静寂が訪れたーー。


 祈りとは言っても、形だけで何かを祈ったりはしていない。
 それを1分くらい続けていると、再び神官さんの声が聞こえた。


「皆様の祈りは神々に伝わったことでしょう」

 その言葉に続けて、陛下が閉会の言葉を言われて式典は無事に終えることが出来た。


 式典が終わってからは、公爵家の方々から順番に王宮内にある宴会の会場へと移動することになっていて、私達はそれにならって聖堂を後にした。


「お姉様、式中に視線を感じませんでした?」


 移動中、私の耳元でそう問いかけてくるルシア。
 殿下の視線はルシアも気付いていたみたいね。


「すごく感じたわよ?」

「あれって……」

「私を見てたのだと思うわ。今は相手がいなくて困っているみたいだから、私を狙うことにしたみたい」

「なんだか気持……気味が悪いですね」


 言い直してるけど、それも十分不敬罪になってしまうわよ?


「ちょっと、不敬罪になるわよ? 私もアレとははもう関わりたくないけど……」

「お姉様もアレって言っちゃってるじゃないですか」

「細かいことは気にしないの!」


 そんな感じで小声で話をしていると、お兄様が私たちの方に来て集音の魔法で私達の会話を聞き始めた。


「お兄様……?」

「何を話しているのか気になってね。僕が聞いてはいけない話ではなさそうだったから聞かせてもらえないかな?」

「王子殿下の悪口を言ってましたの」

「本人、真後ろにいるよ?」

「「えっ⁉︎」」


 青ざめながら後ろを見てみると……そこにはお父様の姿があった。


「おにいさま?」

「ごめんごめん、今の嘘だよ」

「心臓に悪いですわ!」


 そう抗議の声を上げるルシア。
 私はなんとなくお兄様の意図が分かったから何も言わないでいる。


「あまり気にしてると精神的に良くないから、少しは明るくなってもらおうと思って言ったんだ。だから許してもらえないかな?」

「そうだったのですね……。でも、脅かすのはやめてほしいですわ!」

「分かったよ。今度からやるようにするよ」

「何も分かってないじゃないっ!」


 敬語にするのを忘れて突っ込むルシア。
 明るくしようというお兄様の策略は成功したみたいね……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す

夏目萌
恋愛
レノアール地方にある海を隔てた二つの大国、ルビナとセネルは昔から敵対国家として存在していたけれど、この度、セネルの方から各国の繁栄の為に和平条約を結びたいと申し出があった。 それというのも、セネルの世継ぎであるシューベルトがルビナの第二王女、リリナに一目惚れした事がきっかけだった。 しかしリリナは母親に溺愛されている事、シューベルトは女好きのクズ王子と噂されている事から嫁がせたくない王妃は義理の娘で第一王女のエリスに嫁ぐよう命令する。 リリナには好きな時に会えるという条件付きで結婚に応じたシューベルトは当然エリスに見向きもせず、エリスは味方の居ない敵国で孤独な結婚生活を送る事になってしまう。 そして、結婚生活から半年程経ったある日、シューベルトとリリナが話をしている場に偶然居合わせ、実はこの結婚が自分を陥れるものだったと知ってしまい、殺されかける。 何とか逃げる事に成功したエリスはひたすら逃げ続け、力尽きて森の中で生き倒れているところを一人の男に助けられた。 その男――ギルバートとの出逢いがエリスの運命を大きく変え、全てを奪われたエリスの幸せを取り戻す為に全面協力を誓うのだけど、そんなギルバートには誰にも言えない秘密があった。 果たして、その秘密とは? そして、エリスとの出逢いは偶然だったのか、それとも……。 これは全てを奪われた姫が辺境地に住む謎の男に溺愛されながら自分を陥れた者たちに復讐をして居場所を取り戻す、成り上がりラブストーリー。 ※ ファンタジーは苦手分野なので練習で書いてます。設定等受け入れられない場合はすみません。 ※他サイト様にも掲載中。

カワウソの僕、異世界を無双する

コプラ
BL
本編完結いたしました♡コツメたん!無双おめでとう㊗️引き続きの番外編も完結しました💕 いつも読んでいただきありがとうございます♡ ほのぼのとワクワク、そしてコツメたんの無双ぶりを楽しんで下さい! お気に入り1200越えました(new)❣️コツメたんの虜になった方がこんなにも!ʕ•ᴥ•ʔキュー♡ ★★★カワウソでもあり、人間でもある『僕』が飼い主を踏み台に、いえ、可愛がられながら、この異世界を無双していく物語。 カワウソは可愛いけどね、自分がそうなるとか思わないでしょ。気づいたらコツメカワウソとして水辺で生きていた僕が、ある日捕まってしまった。僕はチャームポイントの小さなお手てとぽっこりお腹を見せつけながら、この状況を乗り越える!僕は可愛い飼い主のお兄さん気分で、気ままな生活を満喫するつもりだよ?ドキドキワクワクの毎日の始まり! BLランキング最高位16位♡ なろうムーンで日間連載中BLランキング2位♡週間連載中BLランキング5位♡ イラスト*榮木キサ様

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

記憶をなくした私は王太子妃候補の一人らしいです。覚えていないので辞退してもいいですか?

かほなみり
恋愛
――気が付くとテーラーのウィンドウの前で一人ぼんやりと立っていた、記憶を失った伯爵令嬢ルドヴィカ。自分が誰なのか分からないまま、気を失い倒れたルドヴィカは街の診療所に運ばれ、婚約者だと名乗る男性に丘の上に聳え立つ城へと連れてこられた。「俺の名前を思い出して」王太子妃候補だという自分、この人が王太子なのだろうか?何も覚えていないルドヴィカは、真実を知るために自ら行動に移すことに。 記憶を失っても自ら行動に移す強さを持つルドヴィカと、ルドヴィカに自分のことを早く思い出してほしい殿下の大切なものを取り戻すまでのお話。 ラブコメ、ハッピーエンドです!ゆるく読んで頂けると幸いです。

【完結】25妹は、私のものを欲しがるので、全部あげます。

華蓮
恋愛
妹は私のものを欲しがる。両親もお姉ちゃんだから我慢しなさいという。 私は、妹思いの良い姉を演じている。

B29を撃墜する方法。

ゆみすけ
歴史・時代
 いかに、空の要塞を撃ち落とすか、これは、帝都防空隊の血と汗の物語である。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

処理中です...