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105. 予想外の出来事

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 1週間後、招待状を送り終えた私達は竜達に乗って王都に移動していた。
 今回は同行する護衛さんの人数も荷物の量も多い割と大規模なものになっている。

 だから野営地も限られるらしく、お昼過ぎから野営をしたり旅館に入った日もあった。
 最短で2日かかるところを今回は6日かかる予定で今は5日目の朝だけど、ローザニアにいた頃は10日かかることは珍しくなかったからすごく疲れたりはしていない。


 それなのに……


「フィーナ、疲れたりしたら言ってくれよ?」


 ……ジーク様は毎日のようにこんな問いかけをしてきていた。


「これくらい大丈夫よ。慣れてるから」

「そうか……」

「ジーク様こそ大丈夫?」

「正直に言うと、少し疲れてるけど大丈夫だ」


 私が聞き返すところまではいつも通りだったのだけど、今初めて「疲れてる」という単語がジーク様の口から飛び出した。


「少し寝たらどうかしら? ずっと起きてたの、知ってるわよ」

「バレてたか」

「顔を見れば分かるわよ」

「じゃあお言葉に甘えて……」


 そう言って目を閉じるジーク様。
 かなり眠かったみたいで、1分もしないで寝息を立てていた。



 それから数時間、もうすぐ今日の野営地に着こうとしている時だった。


「ひゃっ……⁉︎」


 突然ジーク様が抱きついてきて思わず変な声を出してしまった。
 読んでいた本ごと抱きしめられなくて良かったわ。お腹に寝息が当たってくすぐったいけど……。


「そろそろ着くから起きて?」

「もうそんな時間か……」


 離れて欲しくて起こしてみると、私を抱きしめたままそう口にするジーク様。


「そんなところで喋らないでっ!」

「す、すまない」


 変な感覚に私が声を上げると、ジーク様は勢いよく起き上がって離れてくれた。

 それから数分で野営地に到着して、ジーク様は恥ずかしそうにしながらアルディアさんの背中から降りていた。
 もちろん使用人さん達に何があったのか聞かれてしまったけど「ジーク様に聞いてください」と言っておいた。



 翌日からはジーク様が変なことをすることはなく、無事に王都に到着した。


 そしてその日、お父様から手紙が届いた。


「何かあったのか?」

「うん、ちょっと驚いちゃって……」


 手紙に目を通して固まる私に心配そうに声をかけてくるジーク様。
 そんな手紙の内容はこうだった。


『今日、陛下から侯爵家の当主が全員呼び出されて、元サーペンス侯爵領を誰が持つかって話し合いがあった。
 今のところ我が家が8割近く引き受けることになりそうだ。

 それと同時に空きができた公爵に誰がなるかって話もしたんだが、何故か私が推薦されてしまったよ。
 まだ決定ではないが、公爵家になる日が遠くないかもしれない』


 まさか私が公爵令嬢になる日が来るかもしれないなんて……全く予想できなかったわ。
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