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96. 王都めぐり

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 次の日の朝、私はジーク様と王都の商店街を歩いていた。

 午後から裁判の準備をするから、それまで王都を案内して欲しいと言われたから。


「フィーナ、今はどこに向かってるんだ?」

「あの塔よ。あそこからじゃないと見れないものがあるの」

「そんなにいい場所なのか……」


 そう呟くジーク様。これはかなり期待されてそうね……。

 寄り道をしながら王都の商店街の中心にある塔に向かうこと1時間、ようやくその塔がある広場に辿り着いた。


「これを登るのか?」


 塔の中に入ってすぐのところにある階段を見てそう口にするジーク様。
 ちなみにこの塔は高さが150メートルもあるから、階段だと登るのがかなり大変になると思う。


「流石にこれは登れませんよ……。ちゃんと昇降機があるので大丈夫です!」


 私がそう口にした時だった。
 ちょうど目の前にある扉のところからベルの音がして扉が開いた。


「ちょうど来たわ! 早く並びましょう」

「この人数、乗り切れるのか……? ……って、階段登るのかよ⁉︎」

「早くしないと行っちゃうよ?」

「ああ、分かった……」


 説明をする余裕が無いから有無を言わさずに階段を登る私。
 そして、階段を1階分だけ登り終えたところにある昇降機の扉のところまで急いだ。


「ここにもあるのか……」

「早く乗ろう?」

「ああ」


 そんな会話をしながら扉を開けて昇降機に乗った直後、ベルが鳴って扉が閉まり始めた。

 それから1分ほどで塔の頂上に到着し、昇降機から降りると暖かい風が優しく撫でてきた。
 風を感じながら外側の方に歩く私。

 そして、あと少しで見せたいものが見せられると思ったらジーク様がこう呟いた。


「すごいな……。ここまで統一された街並みは初めて見るよ」

「なんでこんなデザインになったのか分からないけど、夕方になるともっといいものが見られるわ」

「準備が早く終わったら来てみるよ」


 塔を中心に円形に連なるように建つ建物を見ながらそう口にするジーク様。

 中心が低くなっている地形だから商店街のすぐ外側は見えないけど、ここからうちの屋敷がある貴族街も見える。
 もちろん、王都の中心にそびえ立つ王城もよく見える。


「この地形、大雨が降ったら大変そうだけど、大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。船で移動出来るから」

「いや、それ大丈夫じゃないよな?」

「1メートルより深くなることは無いから大丈夫よ。元々、そういう風に作られてるみたいなの」

「流石は魔法国家だな……」


 私の説明にそう呟くジーク様だった。

 この後はまっすぐ屋敷に戻って、夜まで裁判の準備をした。
 いよいよ明日、私を貶めた女と戦うのね……。
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