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92. ソーラスside 軟禁

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 王宮に到着後、とりあえず応接室に王子を閉じ込めて陛下に事の報告に向かった。


「ソーラスです。昨日お送りしました手紙の件について報告がございます」

「入れ」

「失礼します」


 そう口にし、陛下のいる部屋に入った。

 部屋に入ると、陛下は書類を書く手を止めてこう問いかけてきた。



「クラウスの事だな?」

「左様です。殿下に使用された媚薬が淫魔の雫である可能性が出てきました」

「そうか……」

「ですので、監視をつけた上で王宮から出られないようにするべきかと」


 私がそう提案すると、陛下は少し逡巡してからこう答えた。


「分かった。次に下手なことをしないように見張ってくれ」

「分かりました。では、失礼します」


 頭を下げ、陛下の部屋を後にした私は王室親衛隊の詰め所に向かい、王子の監視を指示した。



 これでしばらく暇が出来ると思ったのだが……翌日、良くない知らせが届いた。


「ソーラス、こんなものが届いたわよ」


 王宮での仕事を終え帰宅すると、いつも通り使用人達と共に出迎えてくれたアイリスがあまり見慣れない封筒を手にそう口にした。


「司法省からとは珍しいな。内容は?」

「フィーナに証人として出て欲しいみたい。でも、そんなことしたら思い出して辛い思いをしないか心配だわ」

「そうだな……また傷付けたくはない」

「でも、隠すわけにもいかないからフィーナに手紙で伝えるつもりよ」

「分かった。手紙は任せていいか? 僕は司法省に返事を書く」

「もちろんよ」


 そうして、私達はそれぞれの部屋で手紙を認めに向かった。

 裁判は王宮内で行われるから、もしもフィーナが行くことになれば王子が接触してくる可能性が高い。
 だから、当日は王子の扱いに慣れる予定の王室親衛隊からもフィーナの護衛に付けられるようにも手配した。


 そうして一通りのことを終えてダイニングから出れるテラスで寛いでいると、イリアスが声をかけてきた。


「お父様、リーシェの誕生日プレゼントを買うためのお金を頂けませんか?」

「イリアスが自由に使える枠を昨日決めたから、そこから自由に出していいぞ。夕食の時に伝えるつもりだったんだけどな」

「そうだったんですか⁉︎ こんな忙しい時にありがとうございます」


 ちなみに、こうしたのは忙しいのと、お金の使い方を学ばせるためでもある。
 既に小遣いという形では渡していたが、こういう婚約者へのプレゼントなどは賄いきれなくなっていた。だから、財政に影響のない範囲で自由に使わせることにしたのだ。

 そうすれば将来どんな失敗をしそうなのかが分かるから。
 唯一の後継ぎなだけに、慎重にしている。

 もちろん、命などを狙われていないか薬の類の警戒は常にさせている。


 実際に食事に毒を仕込んで試したこともある。すぐに気付かれたが。
 大事な子供の食事に毒を仕込む行為は批判を受けるだろう。だが、日頃から訓練しておかないと対応できない。

 例えば媚薬に引っかかった何処かの王族のように。


「他に話したいことはないか?」

「大丈夫です」

「分かった」


 それから夕食後、アイリスとルシア、それに使用人達にプレゼントの相談を、するイリアスの姿が見えた。

 何故私には相談しないのだろうか……?
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