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72. フィーナ父side 失言

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 ルシアが襲われた翌日、騎士団の仕事のために王城に入るとある人物が近付いてきた。


「最近忙しいようですね。少し休暇を取られては?」


 そう声をかけてきたのはサーペンス公爵だった。


「何故ですか? 騎士団に身を置く以上、個人的な理由で休むことなんて出来ませんよ」

「そうですか。道中、娘さんのように殺されても知りませんよ?」


 何故ルシアとフィーナが殺されたことになっているのだろうか?
 ルシアは無事だし、フィーナの無事も分かっている。

 アンナは瀕死になりかけたが、1時間もしないうちに元通り元気になっている。

 ルシアが吹き飛ばされたと言っていたから、襲撃者側が誤解しているかもしれないとは思っていたのだが……。
 本当に誤解しているとは驚いた。


「何故ルシアが死んだことを知っているんですか?」

「雇った者がそう報告してきたんですよ」

「雇った者は全員帰ってきたんですか?」

「監視役が1人だけな」


 もういいだろう。
 判断能力を鈍らせるために睡魔を誘う魔法をこっそり使っていたとはいえ、ここまで私に情報を渡すとは思わなかった。


「戻って来なかった者の居場所を知っていますが、どうされますか?」

「任務を完璧にこなせない者は不要ですから、どうもしませんよ」

「そうですか。私はこれから会議があるのでこれで」


 そう言って、騎士団本部に急いだ。
 王城にサーペンス公爵がいる間に拘束の準備を終えるために。



 それから1時間後、騎士団が動きサーペンス公爵は貴人牢に入れられた。
 財務卿の彼が席を外したところで代役は誰にでも務まるから、陛下の許可があっさり下りたのもあるが、それでもこの早さは驚いた。

 ちなみに、不正をして庶民の血税を無駄遣いしていた彼を正当な理由で解任できると陛下は喜んでいた。
 それに遅れて、レイラ・サーペンス嬢の体調が回復したことが判明して再び貴人牢へと入れられた。

 2人の処遇は後に開かれる裁判で決まる。
 フィーナに辛い思いをさせたクラウス殿下は罪を犯したわけではないので陛下が決めることになるが、廃嫡されるのは確実だろう。


「閣下、なに難しい顔してるんですか?」

「そう見えたか?」

「ええ。相談ならいつでも乗りますよ」

「娘のことでな……」


 私がそう呟くと、部下の彼はやはりかという表情をした。


「会いに行きたいんですね? 団なら我々だけでも回せるので、会いに行ってあげてください」

「だが、私だけ遊びに行くというのは格好がつかないだろ」

「いいですか? 閣下は襲撃を受けた女性に当時の状況を聞きに行くんです。これはれっきとした任務です。
 誰も文句は言いませんよ」

「すまない……。感謝する」

「明後日から1週間分、休暇を確保してあるのでゆっくりしてきてください」


 なんと休暇まで勝手に確保していたらしい。
 驚き半分で礼を言うと、彼はニカっと笑みを浮かべた。
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