54 / 155
54. 王太子side 望む再会
しおりを挟む
フィーナに会って抱きたい。強くそう願った僕はすぐに行動した。
まずはフィーナの両親に手紙を出してフィーナを帰らせるようにお願いをした。
だが、僕の最大限の温情は気に入らなかったようで完全に無視されてしまった。
だから直接隣国に赴いてフィーナを連れ帰ろうと考え、今それを実行しようとしている。
この時期は国境周辺の魔物の動きが活発になるから、護衛はいつも以上の数を付けることにしている。
グレイヴに手紙は出していないが、友好国だから問題ないだろう。
ちなみに、今回は魔物から逃げやすいように僕も騎乗する。
「殿下、本当によろしいのですか?」
「ああ。こちらは準備出来たぞ。そちらはまだか?」
「まもなく完了いたします」
それからすぐに出発の準備が整い、僕は大勢の護衛と共に王都を出た。
僕も騎乗ということもあって、通常よりもかなり早く移動することができ、日が昇る時には国境近くまで来ることが出来た。
僕はあらかじめ夕方まで寝ていたから眠気は無いが、護衛達は疲れた様子だった。
そんな時、索敵役達が声を上げた。
「左前方より大型の魔物の群れが接近中です!」
「右方向より赤竜が接近中です!」
「後方、ダークウルフの群れが接近中です!」
逃げられそうな谷筋全てから魔物が来ている……。どうやら囲まれてしまっているらしい。
僕達を狙っているのか、それとも縄張り争いか。どちらにせよ危険な状況に変わりはない。
「どこから突破するのが一番安全かな?」
「ダークウルフの群れが対策方法もありますので一番確実でございます」
「分かった、それで行こう。任せたよ」
「はっ」
その直後、周りを見回した時に崖を駆け下りてくるダークウルフの群れが目に入った。
あまりにも多すぎる数に、恐怖心が煽られた。
「に、逃げろ……!」
僕が思わずそう口にすると、近衛隊の1人がこう言ってきた。
「前方の群れを突破します。何があっても我々から離れないでください」
そして、僕の進路を切り開くように隊形を組んで馬を走らせた。
僕はそれについて行った。
馬の上から魔法で近くのダークウルフを倒しながら駆け抜けていく途中、左腕に激痛が走った。
同じ速さで走ってきたダークウルフが腕に噛み付いてきたからだ。
「ぐっ……」
「殿下!」
近衛隊の魔法で喉元を射抜かれダークウルフの力が抜け、すぐに振り払うことが出来たが腕から血が流れ出ていた。
だが、この痛みはまだ耐えられる痛みだから、必死に馬を駆り続けた。
「殿下、もうすぐ街です! それまで耐えてください!」
ダークウルフはもう追って来ていなかったが、僕は馬を潰す勢いで全力で逃げていた。
この時、ダークウルフが追ってこない理由が、あの場から僕達を逃すために囮りとなった200人近くの護衛のお陰だということは頭になかった。
街に着いてからは止血だけして、急いで王都に向かった。
この時、治癒魔法が使える者を連れてくれば良かったと後悔していた。
もっとも、治癒魔法を使える者は少ないのであの短時間で連れてくることなど出来なかったのだが……。
まずはフィーナの両親に手紙を出してフィーナを帰らせるようにお願いをした。
だが、僕の最大限の温情は気に入らなかったようで完全に無視されてしまった。
だから直接隣国に赴いてフィーナを連れ帰ろうと考え、今それを実行しようとしている。
この時期は国境周辺の魔物の動きが活発になるから、護衛はいつも以上の数を付けることにしている。
グレイヴに手紙は出していないが、友好国だから問題ないだろう。
ちなみに、今回は魔物から逃げやすいように僕も騎乗する。
「殿下、本当によろしいのですか?」
「ああ。こちらは準備出来たぞ。そちらはまだか?」
「まもなく完了いたします」
それからすぐに出発の準備が整い、僕は大勢の護衛と共に王都を出た。
僕も騎乗ということもあって、通常よりもかなり早く移動することができ、日が昇る時には国境近くまで来ることが出来た。
僕はあらかじめ夕方まで寝ていたから眠気は無いが、護衛達は疲れた様子だった。
そんな時、索敵役達が声を上げた。
「左前方より大型の魔物の群れが接近中です!」
「右方向より赤竜が接近中です!」
「後方、ダークウルフの群れが接近中です!」
逃げられそうな谷筋全てから魔物が来ている……。どうやら囲まれてしまっているらしい。
僕達を狙っているのか、それとも縄張り争いか。どちらにせよ危険な状況に変わりはない。
「どこから突破するのが一番安全かな?」
「ダークウルフの群れが対策方法もありますので一番確実でございます」
「分かった、それで行こう。任せたよ」
「はっ」
その直後、周りを見回した時に崖を駆け下りてくるダークウルフの群れが目に入った。
あまりにも多すぎる数に、恐怖心が煽られた。
「に、逃げろ……!」
僕が思わずそう口にすると、近衛隊の1人がこう言ってきた。
「前方の群れを突破します。何があっても我々から離れないでください」
そして、僕の進路を切り開くように隊形を組んで馬を走らせた。
僕はそれについて行った。
馬の上から魔法で近くのダークウルフを倒しながら駆け抜けていく途中、左腕に激痛が走った。
同じ速さで走ってきたダークウルフが腕に噛み付いてきたからだ。
「ぐっ……」
「殿下!」
近衛隊の魔法で喉元を射抜かれダークウルフの力が抜け、すぐに振り払うことが出来たが腕から血が流れ出ていた。
だが、この痛みはまだ耐えられる痛みだから、必死に馬を駆り続けた。
「殿下、もうすぐ街です! それまで耐えてください!」
ダークウルフはもう追って来ていなかったが、僕は馬を潰す勢いで全力で逃げていた。
この時、ダークウルフが追ってこない理由が、あの場から僕達を逃すために囮りとなった200人近くの護衛のお陰だということは頭になかった。
街に着いてからは止血だけして、急いで王都に向かった。
この時、治癒魔法が使える者を連れてくれば良かったと後悔していた。
もっとも、治癒魔法を使える者は少ないのであの短時間で連れてくることなど出来なかったのだが……。
1
お気に入りに追加
5,202
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる