上 下
36 / 155

36. ジークside 告げたいもの(2)

しおりを挟む
「悔しいのでしたら、今日中にフィーナ様に告白してくださいませ」


 ああ、確かに悔しい。流石は幼い頃から世話になっているだけあるな。
 ティアナには本当に頭が上がらない。

 そして俺は負けず嫌いだ。煽られてそのままでいるなんて無理だ。


「ああ、いいだろう。その代わり、俺がフィーナに受け入れられたらお仕置きだからな?」


 だから、俺はこう口にしていた。
 告白したら、にしなかったのは負け犬のような感じが嫌だったからだ。俺にもプライドというものがある。


「ええ、よろしいですよ」


 言ったな? お仕置きは厳しいものにするが、いいんだな?
 俺を貶した罰だからしっかり受けてもらおう。



 そうして俺が決意を決めてから1時間、大きな袋を手にしたフィーナが帰ってきた。

 いざ告白することを決めると顔を合わせづらい。
 そのせいで少し彼女を避けるような形になってしまっていた。

 こっそり、フィーナが過ごしやすいように使用人達に指示をする時はそんな感覚無かったのに、だ。


 と、とりあえず、昼食で落ち着いたら庭に面したテラスに呼び出して告白しよう……。

 そう考えていたら、フィーナとティアナが何やら話しているのが聞こえてきた。


「ティアナさん、私ジーク様に嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか……?」

「いいえ、大丈夫ですよ。ジーク様は悩んでいるだけですので」

「そうですか……」


 こっそり覗いてみると、フィーナは不安そうな表情を浮かべていた。

 彼女の様子を扉の隙間から見ていた俺は覚悟を決め、勢いよく扉を開けてこう口にした。


「フィーナ、後で庭に来てくれないか?」

「じ、ジーク様!? 今の会話聞いていましたか?」


 驚き慌てた口調でそう言うフィーナ。
 まずい……話しかけるタイミングを間違えた気がする。


「ティアナが俺を貶しているのは聞こえたぞ」

「そうですか……」


 安心したような表情を見せた彼女は、すぐに心配そうな表情を浮かべてティアナの方を見ていた。
 やはりフィーナは使用人のことも大切に思っているようだ。


「それで、庭には来てもらえるか?」

「は、はいっ。……いつ行けばよろしいでしょうか?」

「昼食後に呼ぶからその時に来てくれ」

「分かりましたわ」


 そう答えるフィーナは落ち着きを取り戻しているように見えた。


 それから2時間後、庭で俺はフィーナと向かい合っていた。

 庭には色鮮やかな花々が咲き誇っていて、こういうことをするにはうってつけの場所だろう。


「急に呼び出してすまない。
 初めて出会った時から貴女のことが好きだったんです。僕と付き合ってくれませんか?」


 俺がそう告げると、フィーナは困惑したように瞬きをするのだった。


***************


 ジーク様は不器用なようです。
 残念さんですみません……!
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

王太子殿下が私を諦めない

風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。 今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。 きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。 どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。 ※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。

処理中です...