33 / 155
33. フィーナ父side 掴んだ異変
しおりを挟む
最近、こんな噂が王宮で囁かれるようになった。
ーー王太子殿下とレイラ様の仲が冷めてきた。
普通の男性なら興味無くて聞き流してしまいそう内容だが、今回は婚約者だったフィーナを国外追放にするという暴挙に出たということもあって、男性の間でも噂は広まっている。
なにかと男性優位に事が運ぶローザニアの社交界だが、フィーナの味方の方が多くなっている。
ほとんどの貴族が王太子に喧嘩を売ってまでフィーナを擁護しようとしているのだ。
こんな光景、父ですら見たことが無いらしい。
最初は付き合いがある貴族から関係を切られないか心配だったが、今となってはその心配はしていない。
情報収集をしなくても情報が勝手に集まって来るようになったから驚きだ。
その情報の中には気になるものがあった。
『レイラ・サーペンス公爵令嬢が禁止されている魔法を使用した可能性がある』
娘のルシアの婚約者がいる公爵家から送られてきたこの情報は暗号化されていた。
その情報には、来るべき時まで情報を秘匿することを勧めるーーそう書かれた手紙が同封されていた。
おそらく、証拠を隠蔽されないようにするためだろう。
この情報を得た私は、すぐにアイリスを執務室に呼び出した。
「ここに呼び出すなんて珍しいわね? 何かあったの?」
「問題が起きたわけでは無いが、秘密事項だからここに来てもらった」
屋敷で仕事をする時に使っている執務室だが、隣の会議室と合わせて壁や扉が厚く作られていて外に音が漏れないようになっている。
さらに、盗聴対策に魔法を遮断する結界が常に張られている。
この結界を維持する魔導具は魔力消費が激しいが、私とアイリスが交代で定期的に魔力を補充することで維持している。
「重要な情報が掴めたのね?」
「ああ。これを見てくれ」
うちは軍事関係に深く関わっているから、離れている時の連絡に暗号を用いることがよくある。
そのためにアイリスには結婚する前から暗号の解読の仕方を教えてある。ルシアはまだ反抗期を抜けていない気がするから教えていないが、イリアスとフィーナにも教えてある。
「これは強みになりそうね」
「ああ。まだ証拠を押さえていないから、これからが勝負だ」
「何か私に出来ることはありますか?」
真剣な眼差しでそう聞いてくるアイリス。
これはどうでもいい話だが、アイリスは真面目な話をするときは敬語になる。
気持ちを切り替えるためにそうしているらしい。
「そうだな……こちらの動きを探られないように、公爵家の注意を引いてくれ」
「分かりましたわ」
アイリスにとって、このくらいは造作もない。
今までにやってきた似たような作戦は最初を除いて全て成功している。
だから、安心してこの役目を任せられる。
話が終わって執務室を出ると、執事が大量の書類を抱えて待ち構えていた。
「これはなんだ……」
書類の正体に気付いたが、そう問いかけた。
「領地に関する書類でございます。調査も大事ですが、こちらも抜からないでください」
「すまない。夕食後に片付ける」
私はそう口にして、アイリスとダイニングに向かった。
……書類を片付けるのが面倒だからではない。
ーー王太子殿下とレイラ様の仲が冷めてきた。
普通の男性なら興味無くて聞き流してしまいそう内容だが、今回は婚約者だったフィーナを国外追放にするという暴挙に出たということもあって、男性の間でも噂は広まっている。
なにかと男性優位に事が運ぶローザニアの社交界だが、フィーナの味方の方が多くなっている。
ほとんどの貴族が王太子に喧嘩を売ってまでフィーナを擁護しようとしているのだ。
こんな光景、父ですら見たことが無いらしい。
最初は付き合いがある貴族から関係を切られないか心配だったが、今となってはその心配はしていない。
情報収集をしなくても情報が勝手に集まって来るようになったから驚きだ。
その情報の中には気になるものがあった。
『レイラ・サーペンス公爵令嬢が禁止されている魔法を使用した可能性がある』
娘のルシアの婚約者がいる公爵家から送られてきたこの情報は暗号化されていた。
その情報には、来るべき時まで情報を秘匿することを勧めるーーそう書かれた手紙が同封されていた。
おそらく、証拠を隠蔽されないようにするためだろう。
この情報を得た私は、すぐにアイリスを執務室に呼び出した。
「ここに呼び出すなんて珍しいわね? 何かあったの?」
「問題が起きたわけでは無いが、秘密事項だからここに来てもらった」
屋敷で仕事をする時に使っている執務室だが、隣の会議室と合わせて壁や扉が厚く作られていて外に音が漏れないようになっている。
さらに、盗聴対策に魔法を遮断する結界が常に張られている。
この結界を維持する魔導具は魔力消費が激しいが、私とアイリスが交代で定期的に魔力を補充することで維持している。
「重要な情報が掴めたのね?」
「ああ。これを見てくれ」
うちは軍事関係に深く関わっているから、離れている時の連絡に暗号を用いることがよくある。
そのためにアイリスには結婚する前から暗号の解読の仕方を教えてある。ルシアはまだ反抗期を抜けていない気がするから教えていないが、イリアスとフィーナにも教えてある。
「これは強みになりそうね」
「ああ。まだ証拠を押さえていないから、これからが勝負だ」
「何か私に出来ることはありますか?」
真剣な眼差しでそう聞いてくるアイリス。
これはどうでもいい話だが、アイリスは真面目な話をするときは敬語になる。
気持ちを切り替えるためにそうしているらしい。
「そうだな……こちらの動きを探られないように、公爵家の注意を引いてくれ」
「分かりましたわ」
アイリスにとって、このくらいは造作もない。
今までにやってきた似たような作戦は最初を除いて全て成功している。
だから、安心してこの役目を任せられる。
話が終わって執務室を出ると、執事が大量の書類を抱えて待ち構えていた。
「これはなんだ……」
書類の正体に気付いたが、そう問いかけた。
「領地に関する書類でございます。調査も大事ですが、こちらも抜からないでください」
「すまない。夕食後に片付ける」
私はそう口にして、アイリスとダイニングに向かった。
……書類を片付けるのが面倒だからではない。
13
お気に入りに追加
5,202
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる