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26. 辺境伯邸③
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『転ばないように気をつけてね?』
「うん、ありがとう」
辺境伯邸の広い玄関前に着地したアルディアさんの背中から翼伝いに降りる私。
するとすぐに女性の使用人さんが出てきて恭しく頭を下げた。
「フィーナ様、お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」
使用人さんの後にお屋敷の中に入っていく私。
お屋敷の中は無駄な豪華さが無く、落ち着いた雰囲気だった。
所々に可愛らしいお花が飾られていて、心地よい気分になった。
案内された部屋には長い綺麗な金髪の女性が座っていた。
「貴女がフィーナさん? 話は聞いているわ。
ごめんなさい、遠慮しないで座って」
「ありがとうございます」
頭を下げてソファに浅く腰掛ける私。
「自己紹介がまだだったわね。私はソフィアよ。これでも王族なのよ」
「そうなのですね。
もうご存知のようですが、改めまして。フィーナ・アストリアです。宜しくお願いしますわ」
「こちらこそ、よろしくね」
微笑みながらソフィア様がそう口にする。
私はジーク様のお母様が元王族と聞いて驚いている。
普通の貴族の夫人とはあまり思えない口調は元王女様だからなのかな……?
私が疑問に思っていると、扉を叩く音に続けて長身で茶髪の殿方ーージーク様に似ているから彼のお父様だと思うーーが部屋に入ってきた。
「そちらの可愛らしいお嬢さんがフィーナさんかな?」
「はじめまして。フィーナ・アストリアと申します。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる私。
「キーファスだ。息子が世話になってる」
そう口にしながら私をまじまじと見ているキーファス様。
視線を追うと、私の胸を見ていることに気付いて慌てて出て隠した。
「どこを見ているんですか⁉︎」
「胸だ」
なんなんですかこの人⁉︎
初対面で胸をまじまじと見てくるなんて、破廉恥にも程がありますっ!
「あなた、確実に嫌われたわよ」
「……すまない。昔のトラウマで禁術を使っていないか確かめる癖がついてしまってね」
「はぁ……そうですか」
曖昧な返事をする私。
今すぐにキーファス様から離れたいのはなんでかな……?
原因は言うまでも無いと思うけど、今の私はものすごく寒気を感じている。
「早速だが本題に入る。
我が国の社交界に参加するつもりはないか? 何もすることがなくて暇だろう?」
「確かに暇してはいるのですが、王太子殿下に捨てられた私が社交界で受け入れて頂けるとは思いませんの……」
「そこは心配しなくていい。我が国は女性の方が色々と良い目で見られる。
同情はされても、悪い扱いは受けない」
そう説明されて不安が解決したから、次の不安を口にする私。
「社交界に出られる手持ちのドレスがありませんの……。どうすればいいでしょうか?」
「それは安心してくれ。我が家で用意しよう。
もちろん、デザインとかは貴女に選んでもらう」
「本当にいいのですか? 私、何もお返し出来ませんのに……」
「ああ、構わない。こうでもしないと俺の身が危ないからな。ソーラスに喧嘩は売りたくない」
なんでここでお父様の名前が……?
それに、キーファス様の身が危ないって、一体お父様は何をしたのかしら?
「うん、ありがとう」
辺境伯邸の広い玄関前に着地したアルディアさんの背中から翼伝いに降りる私。
するとすぐに女性の使用人さんが出てきて恭しく頭を下げた。
「フィーナ様、お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」
使用人さんの後にお屋敷の中に入っていく私。
お屋敷の中は無駄な豪華さが無く、落ち着いた雰囲気だった。
所々に可愛らしいお花が飾られていて、心地よい気分になった。
案内された部屋には長い綺麗な金髪の女性が座っていた。
「貴女がフィーナさん? 話は聞いているわ。
ごめんなさい、遠慮しないで座って」
「ありがとうございます」
頭を下げてソファに浅く腰掛ける私。
「自己紹介がまだだったわね。私はソフィアよ。これでも王族なのよ」
「そうなのですね。
もうご存知のようですが、改めまして。フィーナ・アストリアです。宜しくお願いしますわ」
「こちらこそ、よろしくね」
微笑みながらソフィア様がそう口にする。
私はジーク様のお母様が元王族と聞いて驚いている。
普通の貴族の夫人とはあまり思えない口調は元王女様だからなのかな……?
私が疑問に思っていると、扉を叩く音に続けて長身で茶髪の殿方ーージーク様に似ているから彼のお父様だと思うーーが部屋に入ってきた。
「そちらの可愛らしいお嬢さんがフィーナさんかな?」
「はじめまして。フィーナ・アストリアと申します。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる私。
「キーファスだ。息子が世話になってる」
そう口にしながら私をまじまじと見ているキーファス様。
視線を追うと、私の胸を見ていることに気付いて慌てて出て隠した。
「どこを見ているんですか⁉︎」
「胸だ」
なんなんですかこの人⁉︎
初対面で胸をまじまじと見てくるなんて、破廉恥にも程がありますっ!
「あなた、確実に嫌われたわよ」
「……すまない。昔のトラウマで禁術を使っていないか確かめる癖がついてしまってね」
「はぁ……そうですか」
曖昧な返事をする私。
今すぐにキーファス様から離れたいのはなんでかな……?
原因は言うまでも無いと思うけど、今の私はものすごく寒気を感じている。
「早速だが本題に入る。
我が国の社交界に参加するつもりはないか? 何もすることがなくて暇だろう?」
「確かに暇してはいるのですが、王太子殿下に捨てられた私が社交界で受け入れて頂けるとは思いませんの……」
「そこは心配しなくていい。我が国は女性の方が色々と良い目で見られる。
同情はされても、悪い扱いは受けない」
そう説明されて不安が解決したから、次の不安を口にする私。
「社交界に出られる手持ちのドレスがありませんの……。どうすればいいでしょうか?」
「それは安心してくれ。我が家で用意しよう。
もちろん、デザインとかは貴女に選んでもらう」
「本当にいいのですか? 私、何もお返し出来ませんのに……」
「ああ、構わない。こうでもしないと俺の身が危ないからな。ソーラスに喧嘩は売りたくない」
なんでここでお父様の名前が……?
それに、キーファス様の身が危ないって、一体お父様は何をしたのかしら?
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