婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

文字の大きさ
上 下
26 / 155

26. 辺境伯邸③

しおりを挟む
『転ばないように気をつけてね?』

「うん、ありがとう」


 辺境伯邸の広い玄関前に着地したアルディアさんの背中から翼伝いに降りる私。
 するとすぐに女性の使用人さんが出てきて恭しく頭を下げた。


「フィーナ様、お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」


 使用人さんの後にお屋敷の中に入っていく私。

 お屋敷の中は無駄な豪華さが無く、落ち着いた雰囲気だった。
 所々に可愛らしいお花が飾られていて、心地よい気分になった。


 案内された部屋には長い綺麗な金髪の女性が座っていた。


「貴女がフィーナさん? 話は聞いているわ。
 ごめんなさい、遠慮しないで座って」

「ありがとうございます」


 頭を下げてソファに浅く腰掛ける私。


「自己紹介がまだだったわね。私はソフィアよ。これでも王族なのよ」

「そうなのですね。
 もうご存知のようですが、改めまして。フィーナ・アストリアです。宜しくお願いしますわ」

「こちらこそ、よろしくね」


 微笑みながらソフィア様がそう口にする。

 私はジーク様のお母様が元王族と聞いて驚いている。
 普通の貴族の夫人とはあまり思えない口調は元王女様だからなのかな……?

 私が疑問に思っていると、扉を叩く音に続けて長身で茶髪の殿方ーージーク様に似ているから彼のお父様だと思うーーが部屋に入ってきた。


「そちらの可愛らしいお嬢さんがフィーナさんかな?」

「はじめまして。フィーナ・アストリアと申します。よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる私。


「キーファスだ。息子が世話になってる」


 そう口にしながら私をまじまじと見ているキーファス様。
 視線を追うと、私の胸を見ていることに気付いて慌てて出て隠した。


「どこを見ているんですか⁉︎」

「胸だ」


 なんなんですかこの人⁉︎
 初対面で胸をまじまじと見てくるなんて、破廉恥にも程がありますっ!


「あなた、確実に嫌われたわよ」

「……すまない。昔のトラウマで禁術を使っていないか確かめる癖がついてしまってね」

「はぁ……そうですか」


 曖昧な返事をする私。
 今すぐにキーファス様から離れたいのはなんでかな……?

 原因は言うまでも無いと思うけど、今の私はものすごく寒気を感じている。


「早速だが本題に入る。
 我が国の社交界に参加するつもりはないか? 何もすることがなくて暇だろう?」

「確かに暇してはいるのですが、王太子殿下に捨てられた私が社交界で受け入れて頂けるとは思いませんの……」

「そこは心配しなくていい。我が国は女性の方が色々と良い目で見られる。
 同情はされても、悪い扱いは受けない」


 そう説明されて不安が解決したから、次の不安を口にする私。

「社交界に出られる手持ちのドレスがありませんの……。どうすればいいでしょうか?」

「それは安心してくれ。我が家で用意しよう。
 もちろん、デザインとかは貴女に選んでもらう」

「本当にいいのですか? 私、何もお返し出来ませんのに……」

「ああ、構わない。こうでもしないと俺の身が危ないからな。ソーラスに喧嘩は売りたくない」


 なんでここでお父様の名前が……?
 それに、キーファス様の身が危ないって、一体お父様は何をしたのかしら?
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

処理中です...