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9. ジークside 困惑(2)

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 アルディアと話をしている女は恐怖の目を向けていた。
 食われたと勘違いされてもおかしくないからな……。

 ちなみにこの女は少女と言う見た目をしているが、俺は過去に禁術で身体を作り変えている女に騙されかけたことがあるから、裏付けを取るまでは信じないようにしている。
 昔どこかで会った気もするが……。

 肌も髪も綺麗だし、所持品も貴族のものだったから、きっとどこかの家のお嬢様なのだろう。
 それも訳ありの。

 うちの国ではブロンドの髪は貴族でも珍しいことを考えると、隣国のローザニア王国から来たに違いない。
 とりあえず、事情を聞いてみないと今後の行動が出来ないから困ったものだ。


 俺はタイミングを見計らって彼女に声をかけた。


「目が覚めたみたいですね。痛いところとかはありませんか?」


 俺が声をかけると、女は驚いたような表情をする。


「ええ、大丈夫ですわ。……貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」

「私はジークですよ。貴女は?」


 どうやら俺は警戒されているらしい。当たり前だが。
 この女は名乗らない相手を信用しないらしい。

 俺も同じ質問を返すと、女は貴族の礼をしてこう口にした。


「フィーナ・アストリアです」


 アストリア家の人とは実は何度か会ったことがある。
 同盟国同士の防衛会議でアストリア夫妻と同席することがよくあったから。

 彼女はアストリア侯爵夫人によく似ていた。既視感の正体はそれだったようだ。
 それは置いておいて、彼女の正体が分かった俺はある提案をした。


「打ち解けた口調で話してもいいですか? 敬語はあまり慣れないので」

「大丈夫ですわ」

「ありがとう、助かるよ」


 これで面倒な敬語を使わずに済みそうだ。

 ちなみにだが、この会話の最中も彼女の仕草をしっかりみている。
 滲み出る上品さが彼女の正体を語っているから、俺は彼女をある程度信用する事にした。

 この仕草は以前俺を騙そうとした女には真似できていなかったから。そして、彼女の母親にどことなく似ているから。


 一応、アルディアに彼女が禁術を使っていないか確かめさせるつもりだ。
 それまでは絶対に信用しない。



 少し会話をしてから、彼女は体に付いた液体をなんとかしたいと言い出した。


「そこに川があるから洗ってくるといい。俺は見ないから安心してくれ」

「この竜は見るってことですか?」


 俺の企みは一瞬でバレていた。
 やはり女性は侮れないな。いや、この程度で騙せる間抜けは男でもそうそういなか……。


「いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」

「オス、ですよね……?」

「人に発情することはないから安心してくれ。また食べられてもいいなら見晴らせないが、どうする?」

「見張っててください……」


 結局、彼女が服を脱ぐことはなかったが、禁術を使った後に胸元に残る痕が無いことが確認できた。

 今なら言える。アストリア家の令嬢の彼女は信用出来ると。


***************


次回はフィーナ視点に戻ります。
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