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5. 家出③

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 街道から離れれば離れるだけ騎士団に見つかる可能性は減るから、街道が見えなくなるまで離れた。

 その分魔物に襲われる可能性は高くなるけど、この辺りの魔物なら私が習得している攻撃魔法で対処出来る。


 ただ、宿に泊まれないから今晩は寝れないのよね……。
 いつ魔物に襲われるか分からない場所で眠ることなんて、朽ち果てたい人しか出来ないと思う。

 婚約破棄されたのは辛いけど、そこまで私は追い込まれていない。
 ここまで追い込む殿下に腹は立てているけど。



 馬の速さが落ちてきた時、お腹が鳴ってしまった。

 誰も見ていないのに、途端に恥ずかしくなる。


「そろそろ休憩にしよう……」


 馬を止めて乗馬のまま食事をとる事にした。


 魔物に不意打ちされないように探知魔法を起動してから、あの短時間で用意してもらったサンドイッチを口にする。

 その間、馬も草を食べていた。


 休憩を終えてからは再び手綱を握って馬を走らせる。
 長時間の乗馬の体勢は足が疲れるから、回復魔法をかけて無理矢理疲れを取る。

 明日には全身が痛むことになるけど、日が昇る前には隣国に行きたい。
 馬にも無理をさせてしまっているから、回復魔法をかけてあげる。



 途中、何回か食事をとりながら草原を進んでいると、次第に岩が増えて山に入った。

 ここまで来たら危険な魔物が増えるし、私の手配はまだされていないと思うから街道に戻ることにした。


 でも、私の予想は外れてしまった。


「いたぞ、捕まえろ!」


 街道に入って少しして、後ろの方から騎士の小隊が追ってきていた。

 咄嗟に目眩しの強い光を放つ魔法で騎士達の視界を奪って、その隙に山の中に逃げ込んだ。


 それから山の中をしばらく移動していると、正面から人を襲うこともある犬型の魔物、シャドウウルフが迫ってきていた。

 シャドウウルフはジャンプ力が優れていて、騎乗の人の首筋に噛み付いて瞬く間に絶命させることが出来る恐ろしい魔物だ。


 だから、慌てて攻撃魔法の呪文を唱えた。

「ライト・アロー」


 私の手から放たれた光の矢はシャドウウルフの額に吸い込まれていき、

「キャウンッ」

 一瞬で絶命させた。


 でも、魔法の光に照らされて、7体のシャドウウルフの姿が見えた。
 そのうち1体は私の方に飛んできていた。


「バーストっ!」


 爆発の魔法でなんとか凌いで、1体ずつ倒していった。



 それから何時間経ったのか、空が少しずつ明るくなってきた。
 周りは再び草原になっていて、私は国境を超えたことに気付いた。


 一睡も出来ていないからそろそろ限界だわ……。
 魔物との連戦で魔力もほぼ使い切っているから、早く街に入らないと……。


 そう思った時、真っ直ぐ私に向かってくる黒い影に気付いた。

 でも、攻撃魔法を使えるほど魔力は残っていない。


 どうしようか迷っている間にも黒い影は迫ってきていて、気付いた時には目の前で黒い竜が大口を開けて私を食べようとしていた。


 お父様、お母様……先に旅立つことをお許しください……。


 心の中で謝ると、涙が溢れた。

 そしてすぐに、視界が真っ暗になった。
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