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67. 余命4時間
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(後ろっ!)
全力で……とは言っても、ドレスのせいで遅いのだけど……必死で走っていると、フレアのそんな声が聞こえて来る。
言われた通り振り向くと、瘴気が棒のような形になって迫ってきていた。
慌てながら、なんとか魔力を当てる。でも、瘴気は消しても消しても出てきていて、このままだと先に私の魔力が尽きそうだった。
(あと5時間くらいしか保たないわよ!)
(それくらいあれば十分よ!)
なんて話しながら、逃げ続ける私。
そんな時だった。
「大丈夫か?」
「「大丈夫じゃありませんわ!」」
救世主かもしれない人物、ジグルド殿下が私達の行く手に現れた。
「そうみたいだな」
そう言いながら、剣を私の方へと向ける殿下。
えっ……私、刺されるの……?
そんな良くない想像をしてしまった直後、閃光が切っ先から迸って、私の横を通り過ぎていった。
後ろを見ると、しつこく追ってきていた瘴気が一気に離れているところだった。
「助かりましたわ。ありがとうございます」
「無事で良かった。遅くなってしまって済まなかった」
私以外は何が起きたのか分からなくて呆然としているけれど、唯一状況が分かっている私はすぐにお礼を口にしていた。
「あの瘴気、レティシアを狙っていたが、何かあったのか?」
「実は、瘴気を生み出している人物に遭遇してしまいましたの。瘴気に襲われて打ち消したら、あのような事になってしまいました」
「そうだったのか。想像でしかないが、邪魔者と思われたのだろう」
そう口にする殿下。私の考えも同じだから、頷いた。
「……一応聞いておくが、その人物の顔は見えたか?」
「ええ、一瞬だけ。アドルフでしたわ……」
「そうか」
あの男が何のために瘴気を生み出しているのかは分からないけど、今は明らかに私を排除しようと動いている。
だから、私も瘴気と戦うことになる。それくらい簡単に想像がついた。
「俺の勝手な予想だが、あの男は再びレティシア嬢を襲いに来る。貴女が嫌でなければ、側で護りたい。いいだろうか?」
殿下はそう説明するけど、私の死因って馬車の事故なのよね。
だから……
「いえ、大丈夫ですわ。あれくらいなら、私だけで対処できますので。それに、国の要である殿下を危険な目に遭わせることは出来ませんわ」
……お断りした。
「分かった。では、そういうことにしよう。無事を祈る」
「こちらこそ、殿下のご無事をお祈りしますわ」
お互いにそんな言葉を交わすと、殿下は護衛の方と共に玉座の間の方へと向かっていった。
私達も怪我は無かったから、そのまま仕事場へと戻った。
それから2時間、お茶会を楽しんでいた私達が一瞬凍り付く出来事が起こってしまった。
ガンッ!
そんな音と共に、突然私の机が動くという恐怖の出来事が。
「ま、まさか……」
私の机の中に誰か入っているの……?
想像はしたくなかった。女官になったばかりの私の机の横にある大きな引き出しの中にはあまり物が入っていない。
足元にある本立ては一杯になっているけど、その裏は頑張れば入れそうな隙間がある。
「今の、何ですの?」
「私の机の中に人がいるみたいですわ。気配は感じませんけど……」
「今の物音、ですものね……」
うんうん、といった様子で頷く皆さん。
「誰が開けますの?」
「さっきの男ですわよね……」
「私に考えがありますわ!」
机の間を見てから、そう口にするメリアさん。
次の瞬間、無言で縄を取り出して、私の机の引き出しを縛り始めた。
「その手がありましたわね」
頷き合って、6人がかりで縄を結んでいく。
そして……
「これでもう出られないはずですわ!」
……机の中の誰かが飛び出す前に縄を結び終えることが出来た。
でも、机がガタガタと激しく叩かれ始めてしまった。
全力で……とは言っても、ドレスのせいで遅いのだけど……必死で走っていると、フレアのそんな声が聞こえて来る。
言われた通り振り向くと、瘴気が棒のような形になって迫ってきていた。
慌てながら、なんとか魔力を当てる。でも、瘴気は消しても消しても出てきていて、このままだと先に私の魔力が尽きそうだった。
(あと5時間くらいしか保たないわよ!)
(それくらいあれば十分よ!)
なんて話しながら、逃げ続ける私。
そんな時だった。
「大丈夫か?」
「「大丈夫じゃありませんわ!」」
救世主かもしれない人物、ジグルド殿下が私達の行く手に現れた。
「そうみたいだな」
そう言いながら、剣を私の方へと向ける殿下。
えっ……私、刺されるの……?
そんな良くない想像をしてしまった直後、閃光が切っ先から迸って、私の横を通り過ぎていった。
後ろを見ると、しつこく追ってきていた瘴気が一気に離れているところだった。
「助かりましたわ。ありがとうございます」
「無事で良かった。遅くなってしまって済まなかった」
私以外は何が起きたのか分からなくて呆然としているけれど、唯一状況が分かっている私はすぐにお礼を口にしていた。
「あの瘴気、レティシアを狙っていたが、何かあったのか?」
「実は、瘴気を生み出している人物に遭遇してしまいましたの。瘴気に襲われて打ち消したら、あのような事になってしまいました」
「そうだったのか。想像でしかないが、邪魔者と思われたのだろう」
そう口にする殿下。私の考えも同じだから、頷いた。
「……一応聞いておくが、その人物の顔は見えたか?」
「ええ、一瞬だけ。アドルフでしたわ……」
「そうか」
あの男が何のために瘴気を生み出しているのかは分からないけど、今は明らかに私を排除しようと動いている。
だから、私も瘴気と戦うことになる。それくらい簡単に想像がついた。
「俺の勝手な予想だが、あの男は再びレティシア嬢を襲いに来る。貴女が嫌でなければ、側で護りたい。いいだろうか?」
殿下はそう説明するけど、私の死因って馬車の事故なのよね。
だから……
「いえ、大丈夫ですわ。あれくらいなら、私だけで対処できますので。それに、国の要である殿下を危険な目に遭わせることは出来ませんわ」
……お断りした。
「分かった。では、そういうことにしよう。無事を祈る」
「こちらこそ、殿下のご無事をお祈りしますわ」
お互いにそんな言葉を交わすと、殿下は護衛の方と共に玉座の間の方へと向かっていった。
私達も怪我は無かったから、そのまま仕事場へと戻った。
それから2時間、お茶会を楽しんでいた私達が一瞬凍り付く出来事が起こってしまった。
ガンッ!
そんな音と共に、突然私の机が動くという恐怖の出来事が。
「ま、まさか……」
私の机の中に誰か入っているの……?
想像はしたくなかった。女官になったばかりの私の机の横にある大きな引き出しの中にはあまり物が入っていない。
足元にある本立ては一杯になっているけど、その裏は頑張れば入れそうな隙間がある。
「今の、何ですの?」
「私の机の中に人がいるみたいですわ。気配は感じませんけど……」
「今の物音、ですものね……」
うんうん、といった様子で頷く皆さん。
「誰が開けますの?」
「さっきの男ですわよね……」
「私に考えがありますわ!」
机の間を見てから、そう口にするメリアさん。
次の瞬間、無言で縄を取り出して、私の机の引き出しを縛り始めた。
「その手がありましたわね」
頷き合って、6人がかりで縄を結んでいく。
そして……
「これでもう出られないはずですわ!」
……机の中の誰かが飛び出す前に縄を結び終えることが出来た。
でも、机がガタガタと激しく叩かれ始めてしまった。
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