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26. 余命9日①
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「マリー、もう時間がないからこのままでも大丈夫かしら?」
「せめて髪飾りくらいは付けてください」
普段なら食堂に移動している時間なのだけど、私は大慌てで夜会に参加するための準備を進めていた。
「お嬢様、あと10分で始まりますよ」
「分かっているわ」
他の侍女さんに時間を告げられ、そう返す。
本来ならあり得ないことなのだけど、こうなったのには理由があった。
数十分前──。
「レティシアさん、今日の夜会はそれで参加しますの?」
夕食中、シエル様にそんなことを言われて、私は首を傾げた。
招待状が届いた訳でも、参加するように言われた訳でもないから。
「私って、参加することになっていますの……?」
「そうですけど、もしかして知らなかったのですか? 招待状の返事は来ていましたのに……」
この言葉で、私は確信した。
お父様かお母様が私を参加させないようにするために仕組んでいたことなのだと。
それが分かっていても、夜会に遅れてしまいそうなのに変わりはない。
「メイクはそのままで大丈夫そうですね。あとは、アクセサリーを付けるだけです」
今日着ていたドレスがシンプルなデザインだったのも幸いして、準備は5分前には終えることが出来た。
「これなら間に合いそうね。手伝ってくれてありがとう」
「いえ、私達のミスも原因でしたので」
「もう始まってしまうので先に会場に行きましょう!」
侍女さん達にお礼をしているとマリーにそう言われて、慌てて部屋を飛び出す私。
会場になっている広間に着いたのは、始まる2分前だった。
「良かった……間に合いましたのね」
「ええ、侍女さん達のお陰ですわ」
入り口近くで待ち構えていたシエル様に声をかけられ、そう返す私。
少しだけ雑談を交わすことは出来たのだけど、シエル様は主催者側の立場で参加者の方々から挨拶を受けないといけないから、私は一旦離れて他の方に挨拶をしに行くことにした。
ちなみにこの夜会、個々の仲を深めるという名目で開かれているから、エスコート役は付けない決まりになっている。
だから、今は婚約者がいない私でも気兼ねなく参加できている。
気は乗らなかったけれど、クリスティーナ様に挨拶した時も嫌味を言われることはなかった。
それどころか縋る|ような視線を向けられたのは、どうしてかしら……?
気にはなったけれど、私も侯爵家の人間だから挨拶を受けなくてはいけない。
だから、深く考えることもなく参加者の方々からの挨拶を返したりしていた。
お父様に声をかけられたのは、そんな時だった。
「何故ここにいる?」
「招待されたからですわ」
正直に答えると、こんな言葉が返ってきた。
「そういうことではない。何故公爵家に迷惑をかけてまで、ここで暮らしているのか聞いている。
最初は連絡が無かったから心配したんだぞ」
「そんなに心配するなら、迎えの馬車が来ないなんてこと起こらないようにしてください。あれ、お母様の嫌がらせですわよね?」
私がそう言うと、お父様は訝しげな表情を浮かべた。
「ちょっと待て……」
そう呟いて、お母様の方を見るお父様。
次の瞬間、怒り混じりの声が聞こえた。
「メアリー、これはどういうことだ? 説明しろ」
「軽い嫌がらせのつもりで……」
「お前の頭が足りないことはよーく分かった。もう二度と侍女以外の使用人に命令するな」
幸いにもまだ誰にも気付かれていないけれど、ここは夜会の会場。このままだと恥を晒すことになってしまう。
だから、私はこう提案してみた。
「お父様、皆様の目がありますので、夜会後にしませんか?」
「そうだな。メアリー、行くぞ」
そう言って離れていくお父様とお母様。
てっきり戻るように迫られると思っていたのだけど、それは無かったから少しだけ驚いた。
でも、それ以上に悲しかった。
分かってはいたけれど……私は家にいない方が良いと言われているようなものだったから。
「せめて髪飾りくらいは付けてください」
普段なら食堂に移動している時間なのだけど、私は大慌てで夜会に参加するための準備を進めていた。
「お嬢様、あと10分で始まりますよ」
「分かっているわ」
他の侍女さんに時間を告げられ、そう返す。
本来ならあり得ないことなのだけど、こうなったのには理由があった。
数十分前──。
「レティシアさん、今日の夜会はそれで参加しますの?」
夕食中、シエル様にそんなことを言われて、私は首を傾げた。
招待状が届いた訳でも、参加するように言われた訳でもないから。
「私って、参加することになっていますの……?」
「そうですけど、もしかして知らなかったのですか? 招待状の返事は来ていましたのに……」
この言葉で、私は確信した。
お父様かお母様が私を参加させないようにするために仕組んでいたことなのだと。
それが分かっていても、夜会に遅れてしまいそうなのに変わりはない。
「メイクはそのままで大丈夫そうですね。あとは、アクセサリーを付けるだけです」
今日着ていたドレスがシンプルなデザインだったのも幸いして、準備は5分前には終えることが出来た。
「これなら間に合いそうね。手伝ってくれてありがとう」
「いえ、私達のミスも原因でしたので」
「もう始まってしまうので先に会場に行きましょう!」
侍女さん達にお礼をしているとマリーにそう言われて、慌てて部屋を飛び出す私。
会場になっている広間に着いたのは、始まる2分前だった。
「良かった……間に合いましたのね」
「ええ、侍女さん達のお陰ですわ」
入り口近くで待ち構えていたシエル様に声をかけられ、そう返す私。
少しだけ雑談を交わすことは出来たのだけど、シエル様は主催者側の立場で参加者の方々から挨拶を受けないといけないから、私は一旦離れて他の方に挨拶をしに行くことにした。
ちなみにこの夜会、個々の仲を深めるという名目で開かれているから、エスコート役は付けない決まりになっている。
だから、今は婚約者がいない私でも気兼ねなく参加できている。
気は乗らなかったけれど、クリスティーナ様に挨拶した時も嫌味を言われることはなかった。
それどころか縋る|ような視線を向けられたのは、どうしてかしら……?
気にはなったけれど、私も侯爵家の人間だから挨拶を受けなくてはいけない。
だから、深く考えることもなく参加者の方々からの挨拶を返したりしていた。
お父様に声をかけられたのは、そんな時だった。
「何故ここにいる?」
「招待されたからですわ」
正直に答えると、こんな言葉が返ってきた。
「そういうことではない。何故公爵家に迷惑をかけてまで、ここで暮らしているのか聞いている。
最初は連絡が無かったから心配したんだぞ」
「そんなに心配するなら、迎えの馬車が来ないなんてこと起こらないようにしてください。あれ、お母様の嫌がらせですわよね?」
私がそう言うと、お父様は訝しげな表情を浮かべた。
「ちょっと待て……」
そう呟いて、お母様の方を見るお父様。
次の瞬間、怒り混じりの声が聞こえた。
「メアリー、これはどういうことだ? 説明しろ」
「軽い嫌がらせのつもりで……」
「お前の頭が足りないことはよーく分かった。もう二度と侍女以外の使用人に命令するな」
幸いにもまだ誰にも気付かれていないけれど、ここは夜会の会場。このままだと恥を晒すことになってしまう。
だから、私はこう提案してみた。
「お父様、皆様の目がありますので、夜会後にしませんか?」
「そうだな。メアリー、行くぞ」
そう言って離れていくお父様とお母様。
てっきり戻るように迫られると思っていたのだけど、それは無かったから少しだけ驚いた。
でも、それ以上に悲しかった。
分かってはいたけれど……私は家にいない方が良いと言われているようなものだったから。
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