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9. 余命13日③
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「話って何ですの?」
学院でアドルフに話しかけられたことはないから、不審に思って聞き返す私。
すると、こんな言葉が返ってきた。
「それはここでは話せない」
彼の表情は真剣そのものだった。
もしかしたら、人生に関わるような重要なことかもしれない。
そう思って、私は頷いた。
「分かりましたわ。まだ時間もありますし、庭園に行きましょう」
「ありがとう」
それからエスコートされることなく、言葉を交わすこともなく、私はアドルフと庭園に向かった。
数分後──。
庭園にたどり着くと、彼は私の正面に立って、こんなことを口にした。
「このままだと俺もレティシアも幸せになれない。だから、婚約をやめた方がいいと思うんだ」
幸せになれるような努力をしないで、浮気に夢中になっていた男の言葉がこれ。
浮気だけならよくある話で、素直に諦めがついたのに……。貴方のことは完全に見損なったわ。
「何故努力もせずに婚約破棄などと言いますの?」
「それは……」
本当に努力をしていなかったからか、浮気をしているからか。もしくはその両方か。
言い淀む彼に私は訝しむ視線を送る。
「何も言えませんのね……。
返事は明後日までにしますわ。それまで、気持ちの整理をしたいので」
浮気中で私を顧みる素振りすらしない彼と一緒にいても、待っているものが不幸しかないのは分かっている。
だから、せめて私が満足できる形で綺麗さっぱり彼とは縁を切りたかった。
私の名誉のためにも、彼が浮気をしていたという証拠を集める必要もあったから。
「レティシアだって努力してなかったくせに。何故待つ必要がある?」
マナーなどの基本的なことはもちろん、私は彼に振り向いてもらおうと必死に悩んで、努力して、行動していた。
それなのに、この男は……っ!
「これは命令ですわ。明後日まで返事を待ちなさい」
「……分かった」
つい頭に血が上り、余程のことがない限り使わないと決めている命令をしてしまった。
でも、後悔はしない。
彼とはしっかり縁を切って、幸せになってみせると決めたから。
これが彼に対する仕返しになるかは分からないけど、仕返しになると考えるだけで気持ちは楽になった。
「では、また明後日に」
私はそれだけ言うと、踵を返した。
アドルフからの返事は無かった。
それから、私はホームルームになっている教室に向かったのだけど……。
「レティシア様、アドルフ様と仲直りされたのですね!」
不意に、同じクラスの伯爵令嬢からそんなことを言われた。
「していませんわよ? 一体誰からそんなことを聞きましたの?」
「そうでしたのね……。珍しく一緒に歩かれていたので、仲直りされたのだと思ってしまいましたわ」
私とアドルフの仲が悪いというのは、学院では有名な話なのだけど……一緒に歩いていただけでこんな勘違いをされるとは思わなかった。
でも……
「勘違いして申し訳ありませんでした」
……謝罪までされたから、咎めることはしなかった。
謝罪が無くても咎める程の問題ではないけれど。
それから数分。
朝礼の始まりを告げる鐘の音と同時に、私のクラスの担任教授が入ってきた。
既に全員が席に着いていて、教壇の前に立った教授はこう口にした。
「皆様、おはようございます。本日より試験期間となります。悔いの無いよう、全力で臨んでください。
以上になります」
それだけを言って、一礼してから教室を後にする教授。
普段なら、この瞬間に教室は騒がしくなるのだけど、今日は違った。
全員、真剣に今日の試験の勉強をしている。
もちろん私も例外ではない。
でも、余裕を持って勉強を終わらせていたから、周囲のように焦ったりはしていない。
だから……
「予定よりも早いですが、枚数が多いので机の上は片付けてください」
……そんな声がかかっても、私が慌てることはなかった。
学院でアドルフに話しかけられたことはないから、不審に思って聞き返す私。
すると、こんな言葉が返ってきた。
「それはここでは話せない」
彼の表情は真剣そのものだった。
もしかしたら、人生に関わるような重要なことかもしれない。
そう思って、私は頷いた。
「分かりましたわ。まだ時間もありますし、庭園に行きましょう」
「ありがとう」
それからエスコートされることなく、言葉を交わすこともなく、私はアドルフと庭園に向かった。
数分後──。
庭園にたどり着くと、彼は私の正面に立って、こんなことを口にした。
「このままだと俺もレティシアも幸せになれない。だから、婚約をやめた方がいいと思うんだ」
幸せになれるような努力をしないで、浮気に夢中になっていた男の言葉がこれ。
浮気だけならよくある話で、素直に諦めがついたのに……。貴方のことは完全に見損なったわ。
「何故努力もせずに婚約破棄などと言いますの?」
「それは……」
本当に努力をしていなかったからか、浮気をしているからか。もしくはその両方か。
言い淀む彼に私は訝しむ視線を送る。
「何も言えませんのね……。
返事は明後日までにしますわ。それまで、気持ちの整理をしたいので」
浮気中で私を顧みる素振りすらしない彼と一緒にいても、待っているものが不幸しかないのは分かっている。
だから、せめて私が満足できる形で綺麗さっぱり彼とは縁を切りたかった。
私の名誉のためにも、彼が浮気をしていたという証拠を集める必要もあったから。
「レティシアだって努力してなかったくせに。何故待つ必要がある?」
マナーなどの基本的なことはもちろん、私は彼に振り向いてもらおうと必死に悩んで、努力して、行動していた。
それなのに、この男は……っ!
「これは命令ですわ。明後日まで返事を待ちなさい」
「……分かった」
つい頭に血が上り、余程のことがない限り使わないと決めている命令をしてしまった。
でも、後悔はしない。
彼とはしっかり縁を切って、幸せになってみせると決めたから。
これが彼に対する仕返しになるかは分からないけど、仕返しになると考えるだけで気持ちは楽になった。
「では、また明後日に」
私はそれだけ言うと、踵を返した。
アドルフからの返事は無かった。
それから、私はホームルームになっている教室に向かったのだけど……。
「レティシア様、アドルフ様と仲直りされたのですね!」
不意に、同じクラスの伯爵令嬢からそんなことを言われた。
「していませんわよ? 一体誰からそんなことを聞きましたの?」
「そうでしたのね……。珍しく一緒に歩かれていたので、仲直りされたのだと思ってしまいましたわ」
私とアドルフの仲が悪いというのは、学院では有名な話なのだけど……一緒に歩いていただけでこんな勘違いをされるとは思わなかった。
でも……
「勘違いして申し訳ありませんでした」
……謝罪までされたから、咎めることはしなかった。
謝罪が無くても咎める程の問題ではないけれど。
それから数分。
朝礼の始まりを告げる鐘の音と同時に、私のクラスの担任教授が入ってきた。
既に全員が席に着いていて、教壇の前に立った教授はこう口にした。
「皆様、おはようございます。本日より試験期間となります。悔いの無いよう、全力で臨んでください。
以上になります」
それだけを言って、一礼してから教室を後にする教授。
普段なら、この瞬間に教室は騒がしくなるのだけど、今日は違った。
全員、真剣に今日の試験の勉強をしている。
もちろん私も例外ではない。
でも、余裕を持って勉強を終わらせていたから、周囲のように焦ったりはしていない。
だから……
「予定よりも早いですが、枚数が多いので机の上は片付けてください」
……そんな声がかかっても、私が慌てることはなかった。
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