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26. 戻りません
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「フィリア、これは真面目な話なんだ」
こんな前置きと共に、私の元いた国での出来事が語られ始める。
「フィリアがいなくなってから、魔物の活動が活発化した。
他にも流行病が増えたりした。怪我人も病人も今いる治癒魔法使いでは治すことも出来ない。
大人しかったアウレアは高価な物を山ほど要求するようになった。私の高位の治癒魔法が欲しければ用意しろと言ってな。
今までのことはこの通り謝る。だから、戻ってきてほしい」
そんな風に愚痴と懇願を告げられ、私はこう答えた。
「嫌です」
ポカンと口を開けたまま固まるヴィルハルト王子。
「な、なぜだ……? 罪は無かったことにする。お詫びの品も渡す。高額な報酬も渡そう」
「それなら、アウレア様にでもお願いすれば良いじゃないですか。高位の魔法が使えるのですよね?
一応言っておきますけど、あんなことをされてきて、素直にはいと言うほど私は馬鹿ではありませんので」
ヴィルハルト王子は何も反応しない。
「殿下がフィリア様に何をしてきたのかは知りませんが、一度失った信用は取り戻せないんですよ。この経験を今後に生かしてください」
「はい……」
大臣にもそんなことを言われて、彼のプライドはボロボロになっているようだった。
「他に用はありますか?」
「後日、お詫びの品を送る。それで許してほしい」
「考えておきますわ」
きっと私が彼を許す日は来ない。そう思っていたから、曖昧に答えた。
「では、面会はここまでとします。フィリア様、ありがとうございました」
大臣にそう言われて、私は一礼してから部屋を後にした。
それから少しして、今まで無言を貫いていたアラン様がこんなことを口にした。
「キッパリ断るとは思わなかったよ」
「アラン様は私が優しいだけと思っているのですか?」
「いや、そうではない。ただ、普段の姿から想像できなかったんだ」
「私だって怒る時は怒るんです」
「それは誰だってそうだ」
何を当たり前のことを、と笑うアラン様。
ただ、私が怒っていることに違和感を感じているのか、苦笑いを浮かべていた。
それから1ヶ月程が過ぎたある日、アラン様と庭園を歩いている時だった。
「フィリア、初めて会った時から貴女のことが気になっていた。
こうして話すようになってからは、ますますその気持ちは強くなっていった。そして気が付いたんだ。
これが好きという気持ちなんだと」
突然の告白。
「貴女が嫌でなければ、僕と結婚してください」
そんな言葉と共に差し出される指輪。
私はそれをそっと手に取って、口を開いた。
「これからも、よろしくお願いします」
「ありがとう。こちらこそよろしく」
花々が穏やかに揺れ、私達のことを祝福してくれているようだった。
こんな前置きと共に、私の元いた国での出来事が語られ始める。
「フィリアがいなくなってから、魔物の活動が活発化した。
他にも流行病が増えたりした。怪我人も病人も今いる治癒魔法使いでは治すことも出来ない。
大人しかったアウレアは高価な物を山ほど要求するようになった。私の高位の治癒魔法が欲しければ用意しろと言ってな。
今までのことはこの通り謝る。だから、戻ってきてほしい」
そんな風に愚痴と懇願を告げられ、私はこう答えた。
「嫌です」
ポカンと口を開けたまま固まるヴィルハルト王子。
「な、なぜだ……? 罪は無かったことにする。お詫びの品も渡す。高額な報酬も渡そう」
「それなら、アウレア様にでもお願いすれば良いじゃないですか。高位の魔法が使えるのですよね?
一応言っておきますけど、あんなことをされてきて、素直にはいと言うほど私は馬鹿ではありませんので」
ヴィルハルト王子は何も反応しない。
「殿下がフィリア様に何をしてきたのかは知りませんが、一度失った信用は取り戻せないんですよ。この経験を今後に生かしてください」
「はい……」
大臣にもそんなことを言われて、彼のプライドはボロボロになっているようだった。
「他に用はありますか?」
「後日、お詫びの品を送る。それで許してほしい」
「考えておきますわ」
きっと私が彼を許す日は来ない。そう思っていたから、曖昧に答えた。
「では、面会はここまでとします。フィリア様、ありがとうございました」
大臣にそう言われて、私は一礼してから部屋を後にした。
それから少しして、今まで無言を貫いていたアラン様がこんなことを口にした。
「キッパリ断るとは思わなかったよ」
「アラン様は私が優しいだけと思っているのですか?」
「いや、そうではない。ただ、普段の姿から想像できなかったんだ」
「私だって怒る時は怒るんです」
「それは誰だってそうだ」
何を当たり前のことを、と笑うアラン様。
ただ、私が怒っていることに違和感を感じているのか、苦笑いを浮かべていた。
それから1ヶ月程が過ぎたある日、アラン様と庭園を歩いている時だった。
「フィリア、初めて会った時から貴女のことが気になっていた。
こうして話すようになってからは、ますますその気持ちは強くなっていった。そして気が付いたんだ。
これが好きという気持ちなんだと」
突然の告白。
「貴女が嫌でなければ、僕と結婚してください」
そんな言葉と共に差し出される指輪。
私はそれをそっと手に取って、口を開いた。
「これからも、よろしくお願いします」
「ありがとう。こちらこそよろしく」
花々が穏やかに揺れ、私達のことを祝福してくれているようだった。
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