26 / 27
26. 戻りません
しおりを挟む
「フィリア、これは真面目な話なんだ」
こんな前置きと共に、私の元いた国での出来事が語られ始める。
「フィリアがいなくなってから、魔物の活動が活発化した。
他にも流行病が増えたりした。怪我人も病人も今いる治癒魔法使いでは治すことも出来ない。
大人しかったアウレアは高価な物を山ほど要求するようになった。私の高位の治癒魔法が欲しければ用意しろと言ってな。
今までのことはこの通り謝る。だから、戻ってきてほしい」
そんな風に愚痴と懇願を告げられ、私はこう答えた。
「嫌です」
ポカンと口を開けたまま固まるヴィルハルト王子。
「な、なぜだ……? 罪は無かったことにする。お詫びの品も渡す。高額な報酬も渡そう」
「それなら、アウレア様にでもお願いすれば良いじゃないですか。高位の魔法が使えるのですよね?
一応言っておきますけど、あんなことをされてきて、素直にはいと言うほど私は馬鹿ではありませんので」
ヴィルハルト王子は何も反応しない。
「殿下がフィリア様に何をしてきたのかは知りませんが、一度失った信用は取り戻せないんですよ。この経験を今後に生かしてください」
「はい……」
大臣にもそんなことを言われて、彼のプライドはボロボロになっているようだった。
「他に用はありますか?」
「後日、お詫びの品を送る。それで許してほしい」
「考えておきますわ」
きっと私が彼を許す日は来ない。そう思っていたから、曖昧に答えた。
「では、面会はここまでとします。フィリア様、ありがとうございました」
大臣にそう言われて、私は一礼してから部屋を後にした。
それから少しして、今まで無言を貫いていたアラン様がこんなことを口にした。
「キッパリ断るとは思わなかったよ」
「アラン様は私が優しいだけと思っているのですか?」
「いや、そうではない。ただ、普段の姿から想像できなかったんだ」
「私だって怒る時は怒るんです」
「それは誰だってそうだ」
何を当たり前のことを、と笑うアラン様。
ただ、私が怒っていることに違和感を感じているのか、苦笑いを浮かべていた。
それから1ヶ月程が過ぎたある日、アラン様と庭園を歩いている時だった。
「フィリア、初めて会った時から貴女のことが気になっていた。
こうして話すようになってからは、ますますその気持ちは強くなっていった。そして気が付いたんだ。
これが好きという気持ちなんだと」
突然の告白。
「貴女が嫌でなければ、僕と結婚してください」
そんな言葉と共に差し出される指輪。
私はそれをそっと手に取って、口を開いた。
「これからも、よろしくお願いします」
「ありがとう。こちらこそよろしく」
花々が穏やかに揺れ、私達のことを祝福してくれているようだった。
こんな前置きと共に、私の元いた国での出来事が語られ始める。
「フィリアがいなくなってから、魔物の活動が活発化した。
他にも流行病が増えたりした。怪我人も病人も今いる治癒魔法使いでは治すことも出来ない。
大人しかったアウレアは高価な物を山ほど要求するようになった。私の高位の治癒魔法が欲しければ用意しろと言ってな。
今までのことはこの通り謝る。だから、戻ってきてほしい」
そんな風に愚痴と懇願を告げられ、私はこう答えた。
「嫌です」
ポカンと口を開けたまま固まるヴィルハルト王子。
「な、なぜだ……? 罪は無かったことにする。お詫びの品も渡す。高額な報酬も渡そう」
「それなら、アウレア様にでもお願いすれば良いじゃないですか。高位の魔法が使えるのですよね?
一応言っておきますけど、あんなことをされてきて、素直にはいと言うほど私は馬鹿ではありませんので」
ヴィルハルト王子は何も反応しない。
「殿下がフィリア様に何をしてきたのかは知りませんが、一度失った信用は取り戻せないんですよ。この経験を今後に生かしてください」
「はい……」
大臣にもそんなことを言われて、彼のプライドはボロボロになっているようだった。
「他に用はありますか?」
「後日、お詫びの品を送る。それで許してほしい」
「考えておきますわ」
きっと私が彼を許す日は来ない。そう思っていたから、曖昧に答えた。
「では、面会はここまでとします。フィリア様、ありがとうございました」
大臣にそう言われて、私は一礼してから部屋を後にした。
それから少しして、今まで無言を貫いていたアラン様がこんなことを口にした。
「キッパリ断るとは思わなかったよ」
「アラン様は私が優しいだけと思っているのですか?」
「いや、そうではない。ただ、普段の姿から想像できなかったんだ」
「私だって怒る時は怒るんです」
「それは誰だってそうだ」
何を当たり前のことを、と笑うアラン様。
ただ、私が怒っていることに違和感を感じているのか、苦笑いを浮かべていた。
それから1ヶ月程が過ぎたある日、アラン様と庭園を歩いている時だった。
「フィリア、初めて会った時から貴女のことが気になっていた。
こうして話すようになってからは、ますますその気持ちは強くなっていった。そして気が付いたんだ。
これが好きという気持ちなんだと」
突然の告白。
「貴女が嫌でなければ、僕と結婚してください」
そんな言葉と共に差し出される指輪。
私はそれをそっと手に取って、口を開いた。
「これからも、よろしくお願いします」
「ありがとう。こちらこそよろしく」
花々が穏やかに揺れ、私達のことを祝福してくれているようだった。
3
お気に入りに追加
3,523
あなたにおすすめの小説
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
チート過ぎるご令嬢、国外追放される
舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。
舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。
国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。
……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
好きが言えない宰相様は今日もあの子を睨んでる
キトー
BL
なにかとやらかした双子の妹の尻拭いのため、学園で働くルット。
そんなルットに接触してくる、次期宰相と名高い第二王子の側近ジャッジ。
罪人のルットに厳しい態度のジャッジだったが、次第に態度が変わってきて──
※攻めがヘタレな上にちょっと性格が悪いので苦手な方はご注意ください。
嫌われからの愛されですが嫌われ部分は殆ど端折ってます。
【受けに惹かれてるけど最初に厳しい態度を取っちゃって怖がられてる攻め ✕ 睨まれて監視されてると思ってるちょっとネガティブな受け】
感想やお気に入り登録、エールなど、反応いただけるととても喜びます!
匿名希望の方はXのマシュマロやWaveboxへどうぞ(^^)
ムーンライトノベルズにも掲載中です。
中年競パンヒーロー強制射精
熊次郎
BL
大隈雄也は183/97、32歳。
仕事も家庭も円満な6歳の娘と3歳の息子のパパだ。そして人知れずは龍王戦士オーシャンとして悪の組織と戦っている。
しかし敵の策略によりヒーローとしてのエネルギーの源を搾取される、、、。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる