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19. お茶会②
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陛下とのお話を終えた私とアラン様は、お茶をしていたテラスへと戻っていた。
早い時間に始めていたこともあって、まだ日は傾いていないけれど、風が少し冷たくなっている。
「寒くない?」
「陽の光のお陰でちょうどいいですわ」
「そうか、なら良かった」
この後、私達は日が落ちるまでお話を続けた。
両方の国の歴史の話や政治のお話など難しいお話もあったけど、アラン様が分かりやすく説明してくれたお陰ですぐに理解出来た。
妃教育の時よりも分かりやすかったから、あの時の講師の先生を疑ってしまったけど……きっとこれはアラン様の説明が上手すぎるだけだと信じたい。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう。フィリアのお陰で有意義な時間が過ごせたよ」
「いえ、アラン様のお話がお上手だったからですわ」
お茶会は終わったというのに、何故か互いを褒め合う状況になっていた。
数分間揉めていたけれど不思議と嫌な感じはしなくて、最終的にはアラン様のお陰だったという事に落ち着いた。
そして夕食の時、私達家族と王家の方々とで夕食を楽しんでいる時だった。
「熱っ⁉︎」
という侍女さんの声と、陶器が割れる音が響いた。
音のした方を見ると侍女さん2人が尻もちをついていて、そのうちの1人はお茶がかかって火傷してしまっているようだった。
「【水よ】」
すぐに席から水魔法を侍女さんにかけて、私は駆け寄った。
「破片があるから、まずはここから離れよう。立てるか?」
まさかの国王陛下が侍女さんの手を取り、立ち上がらせていた。
アラン様も同じことをしていて驚く私。
「申し訳ありませんでした……」
「失敗について咎めることはない。それよりも、怪我はないか?」
「腰の辺りにお茶がかかってしまったみたいで……」
「すぐに治しますね」
火傷していることは分かり切っていたから、準備していた治癒魔法を起動した。
「すごい……痛みが消えていきます……」
「もう痛みはないかしら?」
「はい! ありがとうございました」
そう言って頭を下げる侍女さん。彼女はすぐに後片付けをしようとしていたけど、陛下がそれを制して着替えに向かわせていた。
「僕の横を水魔法が飛んできた時は驚いたよ」
「あの時はそうするしか方法がなくて……」
「いや、咎めるつもりはないから安心して」
咄嗟にアラン様の真横をすり抜けるように水魔法を飛ばしてしまっていたから、慌てて頭を下げようとした私。
アラン様はそれを制して、そう口にした。
「怒っていないのですか……?」
「フィリアなら直撃してても怒らないけど?」
「いえ、それは怒ってください」
反射的に突っ込む私だった。
この後は元の和やかな雰囲気に戻って、私達は夕食をとりながら雑談を楽しんでいた。
早い時間に始めていたこともあって、まだ日は傾いていないけれど、風が少し冷たくなっている。
「寒くない?」
「陽の光のお陰でちょうどいいですわ」
「そうか、なら良かった」
この後、私達は日が落ちるまでお話を続けた。
両方の国の歴史の話や政治のお話など難しいお話もあったけど、アラン様が分かりやすく説明してくれたお陰ですぐに理解出来た。
妃教育の時よりも分かりやすかったから、あの時の講師の先生を疑ってしまったけど……きっとこれはアラン様の説明が上手すぎるだけだと信じたい。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう。フィリアのお陰で有意義な時間が過ごせたよ」
「いえ、アラン様のお話がお上手だったからですわ」
お茶会は終わったというのに、何故か互いを褒め合う状況になっていた。
数分間揉めていたけれど不思議と嫌な感じはしなくて、最終的にはアラン様のお陰だったという事に落ち着いた。
そして夕食の時、私達家族と王家の方々とで夕食を楽しんでいる時だった。
「熱っ⁉︎」
という侍女さんの声と、陶器が割れる音が響いた。
音のした方を見ると侍女さん2人が尻もちをついていて、そのうちの1人はお茶がかかって火傷してしまっているようだった。
「【水よ】」
すぐに席から水魔法を侍女さんにかけて、私は駆け寄った。
「破片があるから、まずはここから離れよう。立てるか?」
まさかの国王陛下が侍女さんの手を取り、立ち上がらせていた。
アラン様も同じことをしていて驚く私。
「申し訳ありませんでした……」
「失敗について咎めることはない。それよりも、怪我はないか?」
「腰の辺りにお茶がかかってしまったみたいで……」
「すぐに治しますね」
火傷していることは分かり切っていたから、準備していた治癒魔法を起動した。
「すごい……痛みが消えていきます……」
「もう痛みはないかしら?」
「はい! ありがとうございました」
そう言って頭を下げる侍女さん。彼女はすぐに後片付けをしようとしていたけど、陛下がそれを制して着替えに向かわせていた。
「僕の横を水魔法が飛んできた時は驚いたよ」
「あの時はそうするしか方法がなくて……」
「いや、咎めるつもりはないから安心して」
咄嗟にアラン様の真横をすり抜けるように水魔法を飛ばしてしまっていたから、慌てて頭を下げようとした私。
アラン様はそれを制して、そう口にした。
「怒っていないのですか……?」
「フィリアなら直撃してても怒らないけど?」
「いえ、それは怒ってください」
反射的に突っ込む私だった。
この後は元の和やかな雰囲気に戻って、私達は夕食をとりながら雑談を楽しんでいた。
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