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13. 衝撃
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「みんな、今日は大事な話がある。この地に新しい屋敷を建てる。陛下から王都の土地を頂けることになったんだ」
お父様の口からそんな言葉が飛び出して、賑やかだった朝食の席は静まり返った。
亡命しに来たに過ぎない私達のために、そこまで気遣ってくれるとは思わなかったから。
「それと、直轄領を分けてもらえることになった。ついでに伯爵位もくださるそうだ」
驚きの連続に空いた口が塞がらない私達。
突然伯爵位を授かるのは、あり得ない事だから。
「お父様、一体何があったの……?」
「アラン殿下が陛下にそう頼んだと聞いている。それ以外の理由は聞いていない」
「爵位があればフィリアを守りやすくなるから、助かるよ」
そう口にするハルトお兄様。
でも、嬉しそうな理由は他にもありそうだった。
「そういう訳で、これから忙しくなる。ハルトとアレンは覚悟しておけよ」
「「はいっ!」」
揃って返事をするお兄様達。
蚊帳の外の私は、少しだけ寂しい気持ちになった。
そんな時だった。
「お嬢様! 今すぐ来てください!
兵士さんがひどい怪我をしているんです……!」
侍女さんの焦る声が朝食の席に響いた。
「どこにいるの?」
「こっちです」
侍女さんについて行く私達。
しばらく歩いていくと、顔にひどい痣のある男性ーーノスタルダム家の門番の姿が見えた。
「これ、普通の怪我じゃないわよね……? 何があったのか、教えてもらえるかしら?」
「お嬢様達が出られた後のことですが……」
治癒魔法で怪我を治しながら問いかけると、門番さんはゆっくりと口を開いた。
そして、拷問されていた事を語った。
「そんなことがあったのね……すぐに助けられなくてごめんなさい」
「これくらい大丈夫ですよ。日々の鍛錬の方が大変ですから」
そう言ってもらえて、少しばかり気持ちが楽になったけれど。
申し訳ない気持ちが消える事はなかった。
「ところで、拷問の後は治療されなかったの?」
「治癒魔法はかけられましたが、擦りむいた傷の血が止まっただけでした」
拷問自体は驚くことではない。問題は、拷問を受ける者が犯罪に関わったという証拠があったのかということだけ。
お父様達の証拠隠滅は完璧に見えたから、彼は理不尽な理由で拷問を受けたに違いなかった。
「本当に申し訳ないわ……」
改めて罪悪感が湧いてくる。
「いえ、お嬢様は何も悪くありません。悪いのは騎士団と腐った王家です」
「それでもよ。他に拷問を受けた者はいない? こんなもので許されるのか分からないけれど、後で見舞金を渡すわ」
「……っ。ありがとうございます。
他に5名おりますが、彼らは受け身が上手で無傷で済んだようです」
素直に受け取ってもらえるようで、安心する私。
同時に、私の責任を否定されて安心していた。
「一応名前を教えてもらえるかしら?」
「分かりました」
その代わり、侍女まで拷問されたと知って、まだ見ぬ元凶に怒りが湧いてしまった。
それでも……
「お嬢様。使用人は全員、無事にハステイルから脱出出来たそうですよ」
……こう聞かされた時は、すごく嬉しかった。
ハステイル王国に留まっていれば、彼らが酷い目に遭うことは明らかだったから。
お父様の口からそんな言葉が飛び出して、賑やかだった朝食の席は静まり返った。
亡命しに来たに過ぎない私達のために、そこまで気遣ってくれるとは思わなかったから。
「それと、直轄領を分けてもらえることになった。ついでに伯爵位もくださるそうだ」
驚きの連続に空いた口が塞がらない私達。
突然伯爵位を授かるのは、あり得ない事だから。
「お父様、一体何があったの……?」
「アラン殿下が陛下にそう頼んだと聞いている。それ以外の理由は聞いていない」
「爵位があればフィリアを守りやすくなるから、助かるよ」
そう口にするハルトお兄様。
でも、嬉しそうな理由は他にもありそうだった。
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「「はいっ!」」
揃って返事をするお兄様達。
蚊帳の外の私は、少しだけ寂しい気持ちになった。
そんな時だった。
「お嬢様! 今すぐ来てください!
兵士さんがひどい怪我をしているんです……!」
侍女さんの焦る声が朝食の席に響いた。
「どこにいるの?」
「こっちです」
侍女さんについて行く私達。
しばらく歩いていくと、顔にひどい痣のある男性ーーノスタルダム家の門番の姿が見えた。
「これ、普通の怪我じゃないわよね……? 何があったのか、教えてもらえるかしら?」
「お嬢様達が出られた後のことですが……」
治癒魔法で怪我を治しながら問いかけると、門番さんはゆっくりと口を開いた。
そして、拷問されていた事を語った。
「そんなことがあったのね……すぐに助けられなくてごめんなさい」
「これくらい大丈夫ですよ。日々の鍛錬の方が大変ですから」
そう言ってもらえて、少しばかり気持ちが楽になったけれど。
申し訳ない気持ちが消える事はなかった。
「ところで、拷問の後は治療されなかったの?」
「治癒魔法はかけられましたが、擦りむいた傷の血が止まっただけでした」
拷問自体は驚くことではない。問題は、拷問を受ける者が犯罪に関わったという証拠があったのかということだけ。
お父様達の証拠隠滅は完璧に見えたから、彼は理不尽な理由で拷問を受けたに違いなかった。
「本当に申し訳ないわ……」
改めて罪悪感が湧いてくる。
「いえ、お嬢様は何も悪くありません。悪いのは騎士団と腐った王家です」
「それでもよ。他に拷問を受けた者はいない? こんなもので許されるのか分からないけれど、後で見舞金を渡すわ」
「……っ。ありがとうございます。
他に5名おりますが、彼らは受け身が上手で無傷で済んだようです」
素直に受け取ってもらえるようで、安心する私。
同時に、私の責任を否定されて安心していた。
「一応名前を教えてもらえるかしら?」
「分かりました」
その代わり、侍女まで拷問されたと知って、まだ見ぬ元凶に怒りが湧いてしまった。
それでも……
「お嬢様。使用人は全員、無事にハステイルから脱出出来たそうですよ」
……こう聞かされた時は、すごく嬉しかった。
ハステイル王国に留まっていれば、彼らが酷い目に遭うことは明らかだったから。
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