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10. 夕食会①
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その日の夜、私達はグランディアの王族の方々と夕食の席を共にすることになった。
「いきなり王族の方々とご一緒するなんて……」
「フィリアは慣れてるからいいよなぁ。俺なんて緊張で心臓が破裂しそうだよ」
私の呟きに、羨むアレンお兄様。
そんな私達を見て、ハルトお兄様がこう口にした。
「2人とも緊張しすぎだよ。ここの王族は良心的な方ばかりだから、多少の無礼くらい問題ないよ」
私とアレンお兄様は緊張しているのだけど、ハルトお兄様は動じることなく落ち着いていて。
その様子に驚く私だった。
「アレンはともかく、フィリアは王子が惚れてるから問題ないだろ」
「そう……なんだか複雑な気分ね……」
「いや、そこは否定しろよ」
そんな会話を交わしながら、中庭を通って夕食の席に向かっていた時だった。
上から人が降ってきて、私達の目の前に倒れた。
「ぐっ……失敗した……」
腕をおさえて呻き声を上げる目の前の人物は、どこかで見たことのある人に似ていて。
この人物が誰なのかを知っているらしいお兄様が口を開いた。
「国王陛下⁉︎ 誰かに襲われたんですか⁉︎」
「近道しようとしたら着地に失敗して転んだんだ……」
「えっと、あの窓から飛び降りたってことですか?」
「そうだ」
三階の窓が開いていたから確認すると、そう頷く国王様。
私に治してもらうためにわざとやったのか、それとも本当に急いでいたのかは分からないけれど、これだけは言える。
この人、馬鹿だわ……。
「とりあえず治しますね?」
「すまない、頼む」
すぐに治癒魔法を起動して、国王様の怪我を治す私。
治し終えると直ぐに深々と頭を下げられた。
「顔を上げてください。国王陛下に頭を下げさせたと知られてしまったら、私の立場がありませんから」
「地位が高くても、しっかりと礼をするのは当たり前のことだ。私に礼をされて立場がなくなることはあり得ない」
そう口にする国王様。
この言葉を聞いて私は安心した。ここグランディアの王家には、ヴァルハルト王子のように理不尽な人はいないと思えたから。
ちなみにこの後、アラン王太子も飛び降りてきて、近くにいた侍女さんに注意されることになった。
それから少しして。
「「いただきます」」
王家の方々と夕食をとり始める私達。
互いのことが気になっているからか、それとも席の配置のお陰か。
私は王女のシエル様と打ち解け、話に夢中になっていた。
「いつ宣戦布告しようか迷っているのですが、何かいい案はありませんか?」
お父様と話していた国王様から、そんな衝撃的な発言が飛び出してきた。
「数日中に騎士団が来るはずなので、それを侵略とみなして布告するのが良いかと」
真面目な表情でそう答えるお父様。そこに不満は全く感じられない。
「そうですか。それなら血を流さずにノスタルダム領を占領出来そうですね」
「万が一血が流れても、フィリアの力で死者は出さずに済みます。ですが、最小限にしてください。
フィリアに無理はさせられませんから」
どちらも真面目な表情で、冗談で言ってようには聞こえなかった。
そのせいか、背筋がスッと冷えるような気がした。
「それはこちらも同じ考えですよ」
「お父様、どういうことですか?」
何も聞いていなかった私は失礼と分かりながら、口を挟んだ。
勝手に戦争に加担させられそうになっていたから……。
「いきなり王族の方々とご一緒するなんて……」
「フィリアは慣れてるからいいよなぁ。俺なんて緊張で心臓が破裂しそうだよ」
私の呟きに、羨むアレンお兄様。
そんな私達を見て、ハルトお兄様がこう口にした。
「2人とも緊張しすぎだよ。ここの王族は良心的な方ばかりだから、多少の無礼くらい問題ないよ」
私とアレンお兄様は緊張しているのだけど、ハルトお兄様は動じることなく落ち着いていて。
その様子に驚く私だった。
「アレンはともかく、フィリアは王子が惚れてるから問題ないだろ」
「そう……なんだか複雑な気分ね……」
「いや、そこは否定しろよ」
そんな会話を交わしながら、中庭を通って夕食の席に向かっていた時だった。
上から人が降ってきて、私達の目の前に倒れた。
「ぐっ……失敗した……」
腕をおさえて呻き声を上げる目の前の人物は、どこかで見たことのある人に似ていて。
この人物が誰なのかを知っているらしいお兄様が口を開いた。
「国王陛下⁉︎ 誰かに襲われたんですか⁉︎」
「近道しようとしたら着地に失敗して転んだんだ……」
「えっと、あの窓から飛び降りたってことですか?」
「そうだ」
三階の窓が開いていたから確認すると、そう頷く国王様。
私に治してもらうためにわざとやったのか、それとも本当に急いでいたのかは分からないけれど、これだけは言える。
この人、馬鹿だわ……。
「とりあえず治しますね?」
「すまない、頼む」
すぐに治癒魔法を起動して、国王様の怪我を治す私。
治し終えると直ぐに深々と頭を下げられた。
「顔を上げてください。国王陛下に頭を下げさせたと知られてしまったら、私の立場がありませんから」
「地位が高くても、しっかりと礼をするのは当たり前のことだ。私に礼をされて立場がなくなることはあり得ない」
そう口にする国王様。
この言葉を聞いて私は安心した。ここグランディアの王家には、ヴァルハルト王子のように理不尽な人はいないと思えたから。
ちなみにこの後、アラン王太子も飛び降りてきて、近くにいた侍女さんに注意されることになった。
それから少しして。
「「いただきます」」
王家の方々と夕食をとり始める私達。
互いのことが気になっているからか、それとも席の配置のお陰か。
私は王女のシエル様と打ち解け、話に夢中になっていた。
「いつ宣戦布告しようか迷っているのですが、何かいい案はありませんか?」
お父様と話していた国王様から、そんな衝撃的な発言が飛び出してきた。
「数日中に騎士団が来るはずなので、それを侵略とみなして布告するのが良いかと」
真面目な表情でそう答えるお父様。そこに不満は全く感じられない。
「そうですか。それなら血を流さずにノスタルダム領を占領出来そうですね」
「万が一血が流れても、フィリアの力で死者は出さずに済みます。ですが、最小限にしてください。
フィリアに無理はさせられませんから」
どちらも真面目な表情で、冗談で言ってようには聞こえなかった。
そのせいか、背筋がスッと冷えるような気がした。
「それはこちらも同じ考えですよ」
「お父様、どういうことですか?」
何も聞いていなかった私は失礼と分かりながら、口を挟んだ。
勝手に戦争に加担させられそうになっていたから……。
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