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デート後の出来事
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暑い中歩き回り、見たいものをみつけては冷房が効いているお店へと入る。
その温暖差で通常よりも体力が削られている状態で、帰りは帰宅ラッシュに被ってしまって、満員電車に乗った。
それらが重なり合った結果だろう。酔ったのか、または熱中症のなりかけか、優は苦しそうに嘔吐く。
「うぇ、げほっ、ごっ、んん…ぇっ。。。」
「辛いな。頑張れ。」
その苦しみを共感もしてやれないし、代わってやることも出来ないのが現実だ。
ひたすらに、優の背中をさすり続ける。床が汚い、などと考える余裕もないのか、座り込んで、必死に便器に縋り付く姿は見ているこちらも辛くなってくる。
吐いているものが見えないように、定期的に流してやる。
かれこれ三十分くらいはこの個室に入っているかと思うが、依然優の顔色は良くならない。
「優、一旦外に出てみる?」
「はぅ、、きもち、わるい。。」
「うん。吐いちゃっても大丈夫だから。」
締め切られているこの空間は、熱気がたまって、立っているだけでも汗をかきそうだ。定期的に流しているとはいえ、吐瀉物の匂いは完全には消しきれない。
これでは気分が良くなるはずがない。
「暑いでしょ。ここじゃ良くならないよ。」
「でも、、ごほっ、うぇ、…」
「ほら。出すものもなくなってきちゃってるし。」
「うぅ、、」
「あぁ、ごめんごめん。泣かせるつもりじゃないんだけど。」
体調が悪いと、精神的にも辛くなる。そんなに責めるような口調を使った覚えはないし、そんな声色だったとも思えないが、今の優からすれば、涙を流すのに、十分な台詞となってしまったのだろう。
生理的な出てくる涙の上から、ボロボロと流れ出る感情的な涙を、指で拭う。
その間も、少し嘔吐いてしまっているが、やはり出てくるものは口に溜まっている生唾程度。胃からの逆流はほとんどない。
「ね。俺がついてるから、大丈夫だよ。」
「……う、ん。。」
やっとの事でうなずいてくれた。
自分が持っているハンカチで、口周りを拭いてやり、その後、手も拭く。
この個室の床が濡れていなかったのが幸いだ。ズボンに特に目立った汚れはなくて、このまま出れそうだった。
俺にされるがままになっている優の手を引いて立ち上がらせる。ふらふらして覚束無いが、俺が支えればなんとか歩けそうで、ひとまず安心だ。
駅のホームに出て、電車を待つ椅子に座らせる。ラッシュは過ぎたようで、人はいるものの、人と人が押し合うような多さでは無い。
個室内と変わらずまとわりつく暑さはあるが、体感温度としては、外のほうが涼しい。さっと吹く風は汗をかいた体にはちょうどよく感じる。
「どう?」
未だに顔色は悪い優に問いかける。もしこれでもダメそうと言うなら、もう一度トイレに行かなければいけない。
「あ。たま、。いたい。」
「頭?吐き気の方はもう大丈夫そう?」
「ちょっ、とス、っきりした。」
「よかった。」
とりあえず吐き気が少しでも治まったのなら、トイレから出た意味はあった。
それによって、別の症状が出てきた訳だが。
カバンを漁ると、中に汗ふきシートを見つけた。
女性が持ちそうなそれを、俺が持っているのは以外。とよく言われるが、これは体がスースーするようで気持ちがいい。
ないよりマシかな。と思いながら、それを一枚取り出し。綺麗に折って、優の額に押し当てた。
「はぅっ……!」
「あ、ごめん。びっくりしたよな。どうだ?少しマシか?」
「ぁ。、、うん。」
表情が少し柔らかくなった。
冷やす為のものではないから、恐らくそんなに効果はない。気休め程度にもなるかならないか、というレベルだろう。
どう考えたって、こんな所でいつまでもいるよりは、きちんと家で横になった方が、回復する。
「もう少し、落ち着いたら帰ろうぜ。家まで送ってくよ。」
「きょう、とまる??」
「泊まる予定はねぇけど。」
「そっか…。」
明らかにしょんぼりとし始める優に事情を聞く。
「そ、の……。いや、なんでもない。」
言いかけて辞めたのを見て、何となく察した。俺が泊まる予定があるかどうかは、今は関係ない。
「やっぱ、泊まろうかな。」
「ほんと……!?った……。ぅっ」
「おいおい、大丈夫か?」
ぱっと光がさしそうなほど弾けて、勢いよくこちらを向いた。その後すぐにこめかみあたりを抑えて、俯いた。
不安なのだろう。それでも泊まってほしいと、素直に言えないのだろう。
そんなことを察したことを気づかれないように。言った言葉にこれだけ素直に反応してくる。
「今日はこの後もずっと一緒にいるから。安心していいから。」
自然と口から出た言葉。
直後、手にぬくもりを感じた。
優に握られたのだと気づくのにそう時間はかからなかった。その手からは、紛れもない、安心が伝わってきた。
「あり、がとぅ。。」
その温暖差で通常よりも体力が削られている状態で、帰りは帰宅ラッシュに被ってしまって、満員電車に乗った。
それらが重なり合った結果だろう。酔ったのか、または熱中症のなりかけか、優は苦しそうに嘔吐く。
「うぇ、げほっ、ごっ、んん…ぇっ。。。」
「辛いな。頑張れ。」
その苦しみを共感もしてやれないし、代わってやることも出来ないのが現実だ。
ひたすらに、優の背中をさすり続ける。床が汚い、などと考える余裕もないのか、座り込んで、必死に便器に縋り付く姿は見ているこちらも辛くなってくる。
吐いているものが見えないように、定期的に流してやる。
かれこれ三十分くらいはこの個室に入っているかと思うが、依然優の顔色は良くならない。
「優、一旦外に出てみる?」
「はぅ、、きもち、わるい。。」
「うん。吐いちゃっても大丈夫だから。」
締め切られているこの空間は、熱気がたまって、立っているだけでも汗をかきそうだ。定期的に流しているとはいえ、吐瀉物の匂いは完全には消しきれない。
これでは気分が良くなるはずがない。
「暑いでしょ。ここじゃ良くならないよ。」
「でも、、ごほっ、うぇ、…」
「ほら。出すものもなくなってきちゃってるし。」
「うぅ、、」
「あぁ、ごめんごめん。泣かせるつもりじゃないんだけど。」
体調が悪いと、精神的にも辛くなる。そんなに責めるような口調を使った覚えはないし、そんな声色だったとも思えないが、今の優からすれば、涙を流すのに、十分な台詞となってしまったのだろう。
生理的な出てくる涙の上から、ボロボロと流れ出る感情的な涙を、指で拭う。
その間も、少し嘔吐いてしまっているが、やはり出てくるものは口に溜まっている生唾程度。胃からの逆流はほとんどない。
「ね。俺がついてるから、大丈夫だよ。」
「……う、ん。。」
やっとの事でうなずいてくれた。
自分が持っているハンカチで、口周りを拭いてやり、その後、手も拭く。
この個室の床が濡れていなかったのが幸いだ。ズボンに特に目立った汚れはなくて、このまま出れそうだった。
俺にされるがままになっている優の手を引いて立ち上がらせる。ふらふらして覚束無いが、俺が支えればなんとか歩けそうで、ひとまず安心だ。
駅のホームに出て、電車を待つ椅子に座らせる。ラッシュは過ぎたようで、人はいるものの、人と人が押し合うような多さでは無い。
個室内と変わらずまとわりつく暑さはあるが、体感温度としては、外のほうが涼しい。さっと吹く風は汗をかいた体にはちょうどよく感じる。
「どう?」
未だに顔色は悪い優に問いかける。もしこれでもダメそうと言うなら、もう一度トイレに行かなければいけない。
「あ。たま、。いたい。」
「頭?吐き気の方はもう大丈夫そう?」
「ちょっ、とス、っきりした。」
「よかった。」
とりあえず吐き気が少しでも治まったのなら、トイレから出た意味はあった。
それによって、別の症状が出てきた訳だが。
カバンを漁ると、中に汗ふきシートを見つけた。
女性が持ちそうなそれを、俺が持っているのは以外。とよく言われるが、これは体がスースーするようで気持ちがいい。
ないよりマシかな。と思いながら、それを一枚取り出し。綺麗に折って、優の額に押し当てた。
「はぅっ……!」
「あ、ごめん。びっくりしたよな。どうだ?少しマシか?」
「ぁ。、、うん。」
表情が少し柔らかくなった。
冷やす為のものではないから、恐らくそんなに効果はない。気休め程度にもなるかならないか、というレベルだろう。
どう考えたって、こんな所でいつまでもいるよりは、きちんと家で横になった方が、回復する。
「もう少し、落ち着いたら帰ろうぜ。家まで送ってくよ。」
「きょう、とまる??」
「泊まる予定はねぇけど。」
「そっか…。」
明らかにしょんぼりとし始める優に事情を聞く。
「そ、の……。いや、なんでもない。」
言いかけて辞めたのを見て、何となく察した。俺が泊まる予定があるかどうかは、今は関係ない。
「やっぱ、泊まろうかな。」
「ほんと……!?った……。ぅっ」
「おいおい、大丈夫か?」
ぱっと光がさしそうなほど弾けて、勢いよくこちらを向いた。その後すぐにこめかみあたりを抑えて、俯いた。
不安なのだろう。それでも泊まってほしいと、素直に言えないのだろう。
そんなことを察したことを気づかれないように。言った言葉にこれだけ素直に反応してくる。
「今日はこの後もずっと一緒にいるから。安心していいから。」
自然と口から出た言葉。
直後、手にぬくもりを感じた。
優に握られたのだと気づくのにそう時間はかからなかった。その手からは、紛れもない、安心が伝わってきた。
「あり、がとぅ。。」
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