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誰でも体調は崩します。
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俺の前の席の良太はいつも、授業中寝ていたりひどい時はサボったりしているが、今日はいつもと違った。なんというか、寝ているのだけれど、いつもと違う。
俺の直感がそう告げた。
休み時間に、良太にこっそり声を掛けてみた。
「良太、どうしたの?」
体調が悪いのかと思ったが確信はなかったので、さりげなくと意識して聞いてみるが、これがさりげなくな感じの言い方なのかはよくわからない。
「ほっといて。」
「なんか、いつもと違うなーと思ったんだけど」
「別に…いつも寝てるしサボってる。」
「まあそうなんだけどさ」
結局、確信が持てないままチャイムがなり席に着いた。
良太の不調に確信を持ったのは昼休みだった。
「…」
「良太、食べないの?」
「ごちそうさま……」
「もういいの!?」
「俺の勝手でしょ」
「いやそうだけど、」
いつもの良太の量より、明らかに少なかった。
弁当をなおした良太はすぐにどこかへ行ってしまった。
やっぱりいつもと違う。俺は帰ってきたら聞き出そうと決めてお昼ご飯をかきこんだ。
結局、良太が帰ってきたのは、昼休みが終わるギリギリだった。
だから、聞けずじまいで授業が始まったのだ。
「だから、人間は…」
先生が授業を始めたが、正直頭に入ってこない。
理由はわかり切っていた。
前の良太だ。
「はぁ、はぁ、っく」
左手で腹を抑えていて、浅く呼吸している。右手を枕代わりに、伏せているから気づきにくいが、明らかに体調が悪そうだった。
「良太、大丈夫?」
「はぁ、はら、いたぃ」
「先生呼ぼうか?」
「いや、いい」
痛いと言うのに、先生には言わない、たぶん、さぼりの常連として保健室をしょっちゅう利用しているくせに、こういう肝心な時に使えないタイプなのだろう。だったら、俺がやることは1つだと思う。
俺はすっと手を挙げて先生を呼んだ。
「先生、」
「…どーした?」
「良太、体調悪そうなんで、保健室連れて行ってきます。」
そう言うと先生は、良太の元に歩いていって様子をみた。
「うん、行ってこい。中谷先生の判断次第で早退になるかもな。」
「わかりました。良太行こう。」
「う、、ん、」
俺は良太の右腕を自分の首に回した。そして、教室を後にした。クラス中の視線が俺たちに注がれたが、この際全て無視だ。
良太を引きずるようにして教室から出た。
廊下に出た途端俺は左側にいきなりかかった重さに引っ張られた。
「~~っはあ、ぃた」
良太が両手をお腹に当てて、座り込んでいた。
「良太!?どうしたの、歩ける?」
良太は小さく首を横に振った。
「だから、っはあ、よばなくて、いい、、って」
「ご、ごめん、勝手なことした。」
勝手な判断で良太の主張を尊重しなかったことを今になって後悔する。しかし、あのままあそこにいても良くなるはずもない。
「はあ、っっ」
良太は唇を噛んで、ぎゅっと目をつぶっていて、その端には涙が出ていた。歩くのは確実に無理だ。
「…おぶる。手、俺の首に回せる?」
「、、、っ、むり、、」
「じゃあ、ちょっと嫌かもだけど我慢して。」
そう断りを入れてから俺は良太の足と脇に手を入れた。
同い年の男子をお姫様抱っこというのは、少々腕に負担がかかる。が、俺の自己判断でこうなった以上やりきるしかない。
保健室の前まで来たところで良太を一旦下ろす。保健室に来るまでも何度も何度もうめき声のようなものをあげていたから、相当痛いのだと思う。
「失礼します。」
「原山先生から、きいています。どうぞ。」
説明の時間を省けたことに少しだけ安堵する。
良太をもう1度お姫様抱っこして、中谷先生が指定したベッドへと連れて行く。
ベッドに下ろしてすぐに、良太はお腹を抱え込むような姿勢をとった。
「冷えちゃったのかな。良太くん、これどうぞ。」
そう言って中谷先生が渡したのはカイロだった。
俺は考えるよりも先に体が動いていた。
中谷先生からそのカイロを受け取り、良太の制服の下のシャツに当てた。そして、制服の上からカイロを抑えて良太の腹をグルグルと円を書くように撫でた。
「~っはぁ、ふっ、」
心做しか、良太の呼吸も少しずつ楽になってきたように思う。
しばらくそうしていると、良太が固く閉じていた目をうっすらと開けた。
「、、その、、ありがと。」
そう言うと俺の返事も聞かずにすっと眠ってしまった。
「……どういたしまして」
次目を覚ました時はいつもの良太に戻っていますように。そう、願いを込めて俺は良太の額に軽く口付けた。
俺の直感がそう告げた。
休み時間に、良太にこっそり声を掛けてみた。
「良太、どうしたの?」
体調が悪いのかと思ったが確信はなかったので、さりげなくと意識して聞いてみるが、これがさりげなくな感じの言い方なのかはよくわからない。
「ほっといて。」
「なんか、いつもと違うなーと思ったんだけど」
「別に…いつも寝てるしサボってる。」
「まあそうなんだけどさ」
結局、確信が持てないままチャイムがなり席に着いた。
良太の不調に確信を持ったのは昼休みだった。
「…」
「良太、食べないの?」
「ごちそうさま……」
「もういいの!?」
「俺の勝手でしょ」
「いやそうだけど、」
いつもの良太の量より、明らかに少なかった。
弁当をなおした良太はすぐにどこかへ行ってしまった。
やっぱりいつもと違う。俺は帰ってきたら聞き出そうと決めてお昼ご飯をかきこんだ。
結局、良太が帰ってきたのは、昼休みが終わるギリギリだった。
だから、聞けずじまいで授業が始まったのだ。
「だから、人間は…」
先生が授業を始めたが、正直頭に入ってこない。
理由はわかり切っていた。
前の良太だ。
「はぁ、はぁ、っく」
左手で腹を抑えていて、浅く呼吸している。右手を枕代わりに、伏せているから気づきにくいが、明らかに体調が悪そうだった。
「良太、大丈夫?」
「はぁ、はら、いたぃ」
「先生呼ぼうか?」
「いや、いい」
痛いと言うのに、先生には言わない、たぶん、さぼりの常連として保健室をしょっちゅう利用しているくせに、こういう肝心な時に使えないタイプなのだろう。だったら、俺がやることは1つだと思う。
俺はすっと手を挙げて先生を呼んだ。
「先生、」
「…どーした?」
「良太、体調悪そうなんで、保健室連れて行ってきます。」
そう言うと先生は、良太の元に歩いていって様子をみた。
「うん、行ってこい。中谷先生の判断次第で早退になるかもな。」
「わかりました。良太行こう。」
「う、、ん、」
俺は良太の右腕を自分の首に回した。そして、教室を後にした。クラス中の視線が俺たちに注がれたが、この際全て無視だ。
良太を引きずるようにして教室から出た。
廊下に出た途端俺は左側にいきなりかかった重さに引っ張られた。
「~~っはあ、ぃた」
良太が両手をお腹に当てて、座り込んでいた。
「良太!?どうしたの、歩ける?」
良太は小さく首を横に振った。
「だから、っはあ、よばなくて、いい、、って」
「ご、ごめん、勝手なことした。」
勝手な判断で良太の主張を尊重しなかったことを今になって後悔する。しかし、あのままあそこにいても良くなるはずもない。
「はあ、っっ」
良太は唇を噛んで、ぎゅっと目をつぶっていて、その端には涙が出ていた。歩くのは確実に無理だ。
「…おぶる。手、俺の首に回せる?」
「、、、っ、むり、、」
「じゃあ、ちょっと嫌かもだけど我慢して。」
そう断りを入れてから俺は良太の足と脇に手を入れた。
同い年の男子をお姫様抱っこというのは、少々腕に負担がかかる。が、俺の自己判断でこうなった以上やりきるしかない。
保健室の前まで来たところで良太を一旦下ろす。保健室に来るまでも何度も何度もうめき声のようなものをあげていたから、相当痛いのだと思う。
「失礼します。」
「原山先生から、きいています。どうぞ。」
説明の時間を省けたことに少しだけ安堵する。
良太をもう1度お姫様抱っこして、中谷先生が指定したベッドへと連れて行く。
ベッドに下ろしてすぐに、良太はお腹を抱え込むような姿勢をとった。
「冷えちゃったのかな。良太くん、これどうぞ。」
そう言って中谷先生が渡したのはカイロだった。
俺は考えるよりも先に体が動いていた。
中谷先生からそのカイロを受け取り、良太の制服の下のシャツに当てた。そして、制服の上からカイロを抑えて良太の腹をグルグルと円を書くように撫でた。
「~っはぁ、ふっ、」
心做しか、良太の呼吸も少しずつ楽になってきたように思う。
しばらくそうしていると、良太が固く閉じていた目をうっすらと開けた。
「、、その、、ありがと。」
そう言うと俺の返事も聞かずにすっと眠ってしまった。
「……どういたしまして」
次目を覚ました時はいつもの良太に戻っていますように。そう、願いを込めて俺は良太の額に軽く口付けた。
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