1 / 1
高校生ってまだまだ子供ですよ
しおりを挟む
半年程預かることになった斗真がお腹をさすっているのが見えて、声をかけた。
「斗真?お腹どうかした?」
「夏希さん…。大丈夫です。なんでもないです。」
高校生なんてまだまだ子供なんだから親がいてあげないと、という僕の考えは一個人の意見としては間違っていないと思うのだ。何を思って斗真の親はこの時期に海外出張なんだ…という思いはとりあえずは流しておくことにした。
親戚の中で僕の家は斗真の通う高校に一番近いとの理由から半年間、社会人歴一年目、いわゆる新卒であるにも関わらず僕の家で預かることになった。
「ならいいんだけど、なんかあったら言えよ?こんな、ちょっと前まで学生だった新卒の大人なんか頼りにならないかもだけど。」
「ありがとうございます。夏希さんは頼れる大人、ですよ。」
「ふふ、ありがと。ご飯できたから運んでくれる?」
「もちろん。」
キッチンに来てくれた斗真はなんだか涙を堪えているような、ぎりぎりで保っているような表情をしている。今、良いことでも悪いことでも何か斗真に刺激を与えればその両目から止まることなく涙があふれることだろうと想像が簡単につくくらい。
こんな表情を見たら、だから親がいてあげないといけないんだ、と自分理論を爆発させたくなってしまう。甘えられるのは、信頼に足る大人の胸だと僕は思っているのだから。
向かい合って座り、二人で手を合わせて食事に手をつける。
斗真ははじめの方こそいつも通り食べていたが、だんだん箸を動かす手がゆっくりになってきて、咀嚼速度も落ちてきた。具体的にどういえばいいかわからないけど、顔色が悪い。
「斗真、無理して食べなくていいよ?食欲わかないなら、残していいよ。」
「だ、いじょうぶです。そんな」
「無理したっていいことないよ。まだちょっとしか一緒にいないけど、そんな僕でもわかるくらい今の斗真顔色悪いよ。」
諭すように言えば、少しの間、困るような迷うような顔をしたが最後は手に持っていた箸と茶碗を机に置いた。小さくごめんなさい。と言ったのに対して大丈夫。という意味を込めて頭をぽんぽんと二回ほど撫でた。一人暮らし用の小さな机で良かったと今思った。
箸と茶碗を持っていた手を膝の上に置いてそれきりどうしていいかわからない、という顔をしている斗真。
「少し休む?って言ってもソファとかベッドとかそんなのはないから、ここか、隣の部屋くらいしかないけど。」
「いえ、……」
カウンセラーは目の前でなく、左右どちらかの斜め前に座ると聞いたことがある。人間は真正面よりもその方が話しやすいらしい。
目の前で俯いてしまってそれきり何をどう言おうか迷っている斗真にもそれは当てはまるだろうか。
「お腹、痛むの?」
「…」
席を移動しながら聞く。椅子がいるテーブルタイプじゃなくて良かったと、過去の自分を再び褒めた。テーブルだと中腰かしゃがむか、どちらにしても少し視線が合わない気がする。
先程お腹を摩っていたのを思い出して聞いてみたところ、当たっていたようで、小さく頷いてくれた。痛みがあってよかったという訳では決して無いけれど、反応がないよりは斗真のことがわかるから良い。
「足崩していいよ。」
「…」
「その体勢は楽なの?」
首を今度は横に振る斗真に少し問い詰めた。
「楽な体勢でいいよ。そんな、無理したら余計痛くなっちゃう。」
頭を撫でながら言うとおそるおそる、と言った感じに足を崩した。三角座りをした斗真だけれど、その座り方は長時間していると腰や太ももの付け根あたりが痛くなってくるのはちょっと前まで学生だった僕は身体が覚えている。それでもお腹を抱えるようなその体勢が今一番楽なのだろう。
膝に顔を埋めて小さく丸くなる姿は、迷子の子供を見ているよう。今、斗真にとって痛いのはお腹より心の方なんじゃないかと思う。
いつも背筋をピンと伸ばしていて礼儀正しく、寝起きもいいし、あまり世話のかからない子だと思っていたけど、たぶん気を使いすぎているだけだ。姿勢がいいのは気が抜けないから。寝起きがいいのではなく寝れていないのだろう。世話がかからないとは意識して自分のことを自分でしているから。
席を斜め前から真横に移動して、その丸くなった背中を抱きしめた。まだまだ安定した大人ではないけれど、少しとはいえ斗真より人生経験がある。安心させて泣かせてあげることくらいは出来るだろう。なにより…
「斗真。我慢しないでいいよ。泣いていいよ。寂しくなっちゃったかな。?」
「うっ、んっ、ぁああ…あぁぁ…けほっ、ひぐ…えっ。。ああああ…」
「よしよし。」
「あぁん…っ、、」
なにより、親元から離れたばかりの僕は、今の斗真の気持ちをどんな大人よりも理解出来る自信がある…。
「斗真?お腹どうかした?」
「夏希さん…。大丈夫です。なんでもないです。」
高校生なんてまだまだ子供なんだから親がいてあげないと、という僕の考えは一個人の意見としては間違っていないと思うのだ。何を思って斗真の親はこの時期に海外出張なんだ…という思いはとりあえずは流しておくことにした。
親戚の中で僕の家は斗真の通う高校に一番近いとの理由から半年間、社会人歴一年目、いわゆる新卒であるにも関わらず僕の家で預かることになった。
「ならいいんだけど、なんかあったら言えよ?こんな、ちょっと前まで学生だった新卒の大人なんか頼りにならないかもだけど。」
「ありがとうございます。夏希さんは頼れる大人、ですよ。」
「ふふ、ありがと。ご飯できたから運んでくれる?」
「もちろん。」
キッチンに来てくれた斗真はなんだか涙を堪えているような、ぎりぎりで保っているような表情をしている。今、良いことでも悪いことでも何か斗真に刺激を与えればその両目から止まることなく涙があふれることだろうと想像が簡単につくくらい。
こんな表情を見たら、だから親がいてあげないといけないんだ、と自分理論を爆発させたくなってしまう。甘えられるのは、信頼に足る大人の胸だと僕は思っているのだから。
向かい合って座り、二人で手を合わせて食事に手をつける。
斗真ははじめの方こそいつも通り食べていたが、だんだん箸を動かす手がゆっくりになってきて、咀嚼速度も落ちてきた。具体的にどういえばいいかわからないけど、顔色が悪い。
「斗真、無理して食べなくていいよ?食欲わかないなら、残していいよ。」
「だ、いじょうぶです。そんな」
「無理したっていいことないよ。まだちょっとしか一緒にいないけど、そんな僕でもわかるくらい今の斗真顔色悪いよ。」
諭すように言えば、少しの間、困るような迷うような顔をしたが最後は手に持っていた箸と茶碗を机に置いた。小さくごめんなさい。と言ったのに対して大丈夫。という意味を込めて頭をぽんぽんと二回ほど撫でた。一人暮らし用の小さな机で良かったと今思った。
箸と茶碗を持っていた手を膝の上に置いてそれきりどうしていいかわからない、という顔をしている斗真。
「少し休む?って言ってもソファとかベッドとかそんなのはないから、ここか、隣の部屋くらいしかないけど。」
「いえ、……」
カウンセラーは目の前でなく、左右どちらかの斜め前に座ると聞いたことがある。人間は真正面よりもその方が話しやすいらしい。
目の前で俯いてしまってそれきり何をどう言おうか迷っている斗真にもそれは当てはまるだろうか。
「お腹、痛むの?」
「…」
席を移動しながら聞く。椅子がいるテーブルタイプじゃなくて良かったと、過去の自分を再び褒めた。テーブルだと中腰かしゃがむか、どちらにしても少し視線が合わない気がする。
先程お腹を摩っていたのを思い出して聞いてみたところ、当たっていたようで、小さく頷いてくれた。痛みがあってよかったという訳では決して無いけれど、反応がないよりは斗真のことがわかるから良い。
「足崩していいよ。」
「…」
「その体勢は楽なの?」
首を今度は横に振る斗真に少し問い詰めた。
「楽な体勢でいいよ。そんな、無理したら余計痛くなっちゃう。」
頭を撫でながら言うとおそるおそる、と言った感じに足を崩した。三角座りをした斗真だけれど、その座り方は長時間していると腰や太ももの付け根あたりが痛くなってくるのはちょっと前まで学生だった僕は身体が覚えている。それでもお腹を抱えるようなその体勢が今一番楽なのだろう。
膝に顔を埋めて小さく丸くなる姿は、迷子の子供を見ているよう。今、斗真にとって痛いのはお腹より心の方なんじゃないかと思う。
いつも背筋をピンと伸ばしていて礼儀正しく、寝起きもいいし、あまり世話のかからない子だと思っていたけど、たぶん気を使いすぎているだけだ。姿勢がいいのは気が抜けないから。寝起きがいいのではなく寝れていないのだろう。世話がかからないとは意識して自分のことを自分でしているから。
席を斜め前から真横に移動して、その丸くなった背中を抱きしめた。まだまだ安定した大人ではないけれど、少しとはいえ斗真より人生経験がある。安心させて泣かせてあげることくらいは出来るだろう。なにより…
「斗真。我慢しないでいいよ。泣いていいよ。寂しくなっちゃったかな。?」
「うっ、んっ、ぁああ…あぁぁ…けほっ、ひぐ…えっ。。ああああ…」
「よしよし。」
「あぁん…っ、、」
なにより、親元から離れたばかりの僕は、今の斗真の気持ちをどんな大人よりも理解出来る自信がある…。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
小スカ短編集(没作品供養)
青宮あんず
BL
小スカ小説の没にしたものを公開していきます。
設定を変えて別のシリーズとして公開したり、他で公開するのをやめたものなど。
BL多め、稀に登場人物一人の場合がある可能性あり。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる