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初夜?
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食事を終えてあとは眠るだけだと思っていたのに、ベルメールのまさかの暴走によって、私は初夜の相手としてクリストフの部屋で待つことになった。
彼のベッドの上で頭を抱えていた。
「どうしましょう、どうしましょう! このままでは本当に私の初めてをあの人に捧げないといけない!」
クリストフは未来で殺し合いをした仲なので、まさか友人どころか一気に飛び越えて深い関係になろうとしていた。
だが元々クリストフは美人にも興味を示さない堅物で、常に禁欲をしているらしいため、私とはそういうことをしないという淡い希望があった。
「そうよ、クリストフ様ならきっと私の裸を見ても何も思わないわよね。もしかすると出て行けって怒り出すかも」
私は厳格な司祭のイメージを信じようと前向きに考えた。
彼から退出を命じられたら従うしかないのだから。
すると足音が聞こえてきたので、もしかすると帰ってきたかもしれないと緊張が増してきた。
コートは朝に持ってくると奪わてしまったので、私の恰好はほぼ下着同然のランジェリーで、男性が脱がしやすいようになっていた。
だからブランケットで隠さないと、彼に素肌を晒すことになる。
なるべくすぐに見つからないようにベッドの中でうずくまる。
そして彼の声が聞こえた。
「なかなか有益な情報がないな」
クリストフは独り言を喋りながら部屋に入ってきた。部屋の明かりは大きなろうそくが一本だけ机の上にあるだけなので薄暗い。
ゴソゴソと聞こえたのちに低い声が聞こえてきた。
「さて俺が気付かないと思ったか?」
急に殺気が飛んできて動けなくなった。私は自分の存在をアピールしようとしたが、それよりも早くブランケットを掴まれて、彼にそれを剥ぎ取られた。
「きゃっ!」
私は手で体を隠したが、それでもほとんど見えてしまっている。
クリストフは固まっており、わなわなと震えていた。
「ソフィア嬢、何をしている?」
やはり彼もこんなことを想定していなかったのだ。
弁明しなければ私が初夜を望んでいると勘違いされる。
「ベルメールが初夜はクリストフ様の部屋で待ちなさいって……偽装結婚って言えないからなすがままに、このような状況になってしまいまして……」
だから私の意思ではないことを伝えた。ここでクリストフはどうするのかで私の今後が変わる。
私は狩られるうさぎのように震えるしかなかった。
するとクリストフも苦虫をかんだ顔をした。
「それは俺の落ち度だな。俺は君にひどいことをするつもりは無い。ほら、このブランケットで肌を隠せ」
彼は紳士的にもブランケットをかけ直してくれた。
「あ、ありがとう存じます」
これは彼もその気がないという現れだった。
少しだけホッとした。
「そうですよね。クリストフ様なら私なんかに興味を示さないと信じていました!」
やはりクリストフは生粋の司祭だ。未来では私を襲おうとした男達は、誰もが欲望に目を曇られ、見ていて不快な者達だったが、クリストフの目はすごく澄んでいた。
私もこれで貞操が守られることに安心したので、ソファーを指さした。
「では私はあちらのソファーで眠りますので――」
あとは彼を刺激せずに夜を明かせばいいだけだ、と思っていたが彼はブランケットを掛けた姿勢で止まっていた。
そして、何やらにやりと笑っていた。
「これから偽装結婚を迎えるのだから俺たちは仲の良い夫婦を演じるべきだと思わないか?」
なんだか圧がすごいが一応は「そうですね」と頷いた。
すると彼の手が私の肩を掴んだ。
「それなら一緒のベッドに眠る練習もした方がいい」
「えっ!?」
ブランケットごと私は抱きかかえられて、ベッドの上で寝かされた。
彼は添い寝するように私の隣で眠る。近いせいで彼の息づかいすら聞こえてくる。
「先ほどは少し薄暗かったが、もしかしてそのブランケットの中身は下着だけか?」
どうやらしっかり見られていなかったようだ。
恥ずかしいが正直に答えておこう。
「はい。他は羽織らせてもらえませんでした」
「そうか。ソフィア嬢にはなるべく快適に過ごしてもらおう思ったが、ばあが迷惑を掛けた。すまない」
クリストフは申し訳なさそうな顔をする。私は「気にしてませんよ」と言った。
普通は結婚すればこれが普通なのだから、ベルメールが全て間違っているわけではない。
「未来のことがなければ立派な夫婦だったかもしれませんね」
「俺と君がか?」
ただの冗談で言ったつもりだったが、彼の体が少し近づいてきた。
私はまた失言したと訂正する。
「もちろんもしもですよ! あんなことをしておいてそんな都合の良いことなんて考えてませんから!」
私は未来で魔女の力が覚醒していた。魔法の力で建物を壊すくらいなら簡単にできたのだ。
今はその力は使えないがいずれは使えるようになってしまうだろう。
そうなると未来の惨劇をまた引き起こして、クリストフから今度こそ殺されてしまうだろう。
彼の手が私の頭を撫でた。
「ならこれから未来を変えていけばいい。其方もあの未来を望んでいないのなら俺と同じ気持ちのはずだ」
真剣な目に私は背けたくなった。彼はあくまでも聖人のような存在だ。私とは格が違う。いつだって私は保身のために生きているからこそ、彼の目をまっすぐに見られないのだ。
だけど私もあんな未来は嫌だ。
「クリストフ様、もしよろしければ今なら暗いので、この刻印に神聖術を掛けてもらってもよろしいですか?」
彼の力なら覚醒までの時間を遅くしてもらえるらしい。どうせこれから一緒のベッドに眠る機会も増えると思うので、利用した方がいいだろう。
それに触るくらいなら私だって我慢できる。
「いいのだな?」
私は頷いた。すると彼の手がブランケットの中に入って、私の刻印の場所に手が触れた。
彼の体温を手から感じて、妙な気分になってくる。
するとぽかぽかとお腹周りが温かくなってきた。
「ん……ぁ」
なんだかくすぐったくて声が漏れそうになった。
体がどんどん火照ってきた。頭がボーッとしてきた。
だが急にそんな生やさしいものではなくなってきた。
「ぁ……ん」
体が官能的な快楽に支配されだした。
このままではおかしなことをしそうになったので、目の前の腕にしがみついた。
心地よい感覚が体を襲い、こうでもしないと快楽に耐えられそうになかったからだ。
「もうすぐ終わる。それまで耐えろ」
「はい……んっ」
「君へ言ったわけでは――なんでもない」
彼の言葉が理解できなくなっていた。そしてようやく体の火照りが少なくなっていき、やっと施術も終わったようだ。
すると次に強烈な眠気が襲ってきた。
クリストフの手が離れ、私へ尋ねる。
「どうだ、調子は?」
「なんだか変な気分になりましたが、すごく調子が良いかもしれません」
うとうとした気分のまま答えた。
肩凝りも少しだけ無くなった気がする。一体、体の中でどんなことが起きていたのだろう。
彼に聞きたかったが、もう限界だった。
「ごめんなさい……もう目が開けられ――」
「おい――!」
何か彼が言っていた気がしたが私はもう眠りに落ちた。
なんだかすごく守られている気分になり、心地よい気分だった。
そして――。
「ん……」
朝日が差し込んだ光で目が自然と開いた。これまでで一番寝起きがいいかもしれない。
「よく寝た……でもほっぺが温かいような――」
私は横に目を向けると、誰かの二の腕を掴んでいた。それは明らかに男性の腕で、私はその腕の持ち主の顔を確認した。
「やっと起きたか」
不機嫌そうなクリストフが私を見下ろしていた。
彼のベッドの上で頭を抱えていた。
「どうしましょう、どうしましょう! このままでは本当に私の初めてをあの人に捧げないといけない!」
クリストフは未来で殺し合いをした仲なので、まさか友人どころか一気に飛び越えて深い関係になろうとしていた。
だが元々クリストフは美人にも興味を示さない堅物で、常に禁欲をしているらしいため、私とはそういうことをしないという淡い希望があった。
「そうよ、クリストフ様ならきっと私の裸を見ても何も思わないわよね。もしかすると出て行けって怒り出すかも」
私は厳格な司祭のイメージを信じようと前向きに考えた。
彼から退出を命じられたら従うしかないのだから。
すると足音が聞こえてきたので、もしかすると帰ってきたかもしれないと緊張が増してきた。
コートは朝に持ってくると奪わてしまったので、私の恰好はほぼ下着同然のランジェリーで、男性が脱がしやすいようになっていた。
だからブランケットで隠さないと、彼に素肌を晒すことになる。
なるべくすぐに見つからないようにベッドの中でうずくまる。
そして彼の声が聞こえた。
「なかなか有益な情報がないな」
クリストフは独り言を喋りながら部屋に入ってきた。部屋の明かりは大きなろうそくが一本だけ机の上にあるだけなので薄暗い。
ゴソゴソと聞こえたのちに低い声が聞こえてきた。
「さて俺が気付かないと思ったか?」
急に殺気が飛んできて動けなくなった。私は自分の存在をアピールしようとしたが、それよりも早くブランケットを掴まれて、彼にそれを剥ぎ取られた。
「きゃっ!」
私は手で体を隠したが、それでもほとんど見えてしまっている。
クリストフは固まっており、わなわなと震えていた。
「ソフィア嬢、何をしている?」
やはり彼もこんなことを想定していなかったのだ。
弁明しなければ私が初夜を望んでいると勘違いされる。
「ベルメールが初夜はクリストフ様の部屋で待ちなさいって……偽装結婚って言えないからなすがままに、このような状況になってしまいまして……」
だから私の意思ではないことを伝えた。ここでクリストフはどうするのかで私の今後が変わる。
私は狩られるうさぎのように震えるしかなかった。
するとクリストフも苦虫をかんだ顔をした。
「それは俺の落ち度だな。俺は君にひどいことをするつもりは無い。ほら、このブランケットで肌を隠せ」
彼は紳士的にもブランケットをかけ直してくれた。
「あ、ありがとう存じます」
これは彼もその気がないという現れだった。
少しだけホッとした。
「そうですよね。クリストフ様なら私なんかに興味を示さないと信じていました!」
やはりクリストフは生粋の司祭だ。未来では私を襲おうとした男達は、誰もが欲望に目を曇られ、見ていて不快な者達だったが、クリストフの目はすごく澄んでいた。
私もこれで貞操が守られることに安心したので、ソファーを指さした。
「では私はあちらのソファーで眠りますので――」
あとは彼を刺激せずに夜を明かせばいいだけだ、と思っていたが彼はブランケットを掛けた姿勢で止まっていた。
そして、何やらにやりと笑っていた。
「これから偽装結婚を迎えるのだから俺たちは仲の良い夫婦を演じるべきだと思わないか?」
なんだか圧がすごいが一応は「そうですね」と頷いた。
すると彼の手が私の肩を掴んだ。
「それなら一緒のベッドに眠る練習もした方がいい」
「えっ!?」
ブランケットごと私は抱きかかえられて、ベッドの上で寝かされた。
彼は添い寝するように私の隣で眠る。近いせいで彼の息づかいすら聞こえてくる。
「先ほどは少し薄暗かったが、もしかしてそのブランケットの中身は下着だけか?」
どうやらしっかり見られていなかったようだ。
恥ずかしいが正直に答えておこう。
「はい。他は羽織らせてもらえませんでした」
「そうか。ソフィア嬢にはなるべく快適に過ごしてもらおう思ったが、ばあが迷惑を掛けた。すまない」
クリストフは申し訳なさそうな顔をする。私は「気にしてませんよ」と言った。
普通は結婚すればこれが普通なのだから、ベルメールが全て間違っているわけではない。
「未来のことがなければ立派な夫婦だったかもしれませんね」
「俺と君がか?」
ただの冗談で言ったつもりだったが、彼の体が少し近づいてきた。
私はまた失言したと訂正する。
「もちろんもしもですよ! あんなことをしておいてそんな都合の良いことなんて考えてませんから!」
私は未来で魔女の力が覚醒していた。魔法の力で建物を壊すくらいなら簡単にできたのだ。
今はその力は使えないがいずれは使えるようになってしまうだろう。
そうなると未来の惨劇をまた引き起こして、クリストフから今度こそ殺されてしまうだろう。
彼の手が私の頭を撫でた。
「ならこれから未来を変えていけばいい。其方もあの未来を望んでいないのなら俺と同じ気持ちのはずだ」
真剣な目に私は背けたくなった。彼はあくまでも聖人のような存在だ。私とは格が違う。いつだって私は保身のために生きているからこそ、彼の目をまっすぐに見られないのだ。
だけど私もあんな未来は嫌だ。
「クリストフ様、もしよろしければ今なら暗いので、この刻印に神聖術を掛けてもらってもよろしいですか?」
彼の力なら覚醒までの時間を遅くしてもらえるらしい。どうせこれから一緒のベッドに眠る機会も増えると思うので、利用した方がいいだろう。
それに触るくらいなら私だって我慢できる。
「いいのだな?」
私は頷いた。すると彼の手がブランケットの中に入って、私の刻印の場所に手が触れた。
彼の体温を手から感じて、妙な気分になってくる。
するとぽかぽかとお腹周りが温かくなってきた。
「ん……ぁ」
なんだかくすぐったくて声が漏れそうになった。
体がどんどん火照ってきた。頭がボーッとしてきた。
だが急にそんな生やさしいものではなくなってきた。
「ぁ……ん」
体が官能的な快楽に支配されだした。
このままではおかしなことをしそうになったので、目の前の腕にしがみついた。
心地よい感覚が体を襲い、こうでもしないと快楽に耐えられそうになかったからだ。
「もうすぐ終わる。それまで耐えろ」
「はい……んっ」
「君へ言ったわけでは――なんでもない」
彼の言葉が理解できなくなっていた。そしてようやく体の火照りが少なくなっていき、やっと施術も終わったようだ。
すると次に強烈な眠気が襲ってきた。
クリストフの手が離れ、私へ尋ねる。
「どうだ、調子は?」
「なんだか変な気分になりましたが、すごく調子が良いかもしれません」
うとうとした気分のまま答えた。
肩凝りも少しだけ無くなった気がする。一体、体の中でどんなことが起きていたのだろう。
彼に聞きたかったが、もう限界だった。
「ごめんなさい……もう目が開けられ――」
「おい――!」
何か彼が言っていた気がしたが私はもう眠りに落ちた。
なんだかすごく守られている気分になり、心地よい気分だった。
そして――。
「ん……」
朝日が差し込んだ光で目が自然と開いた。これまでで一番寝起きがいいかもしれない。
「よく寝た……でもほっぺが温かいような――」
私は横に目を向けると、誰かの二の腕を掴んでいた。それは明らかに男性の腕で、私はその腕の持ち主の顔を確認した。
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