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最終章 希望を託されし女神
もう一つのエピローグ
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目を覚ますとそこはコロシアムの外だった。
クロートとして最後の仕事をしたのに、どうして生きているのか。
……たしかわたしは闇の神に自分を捧げたはずですが?
ゆっくりと周りを確認すると、そこには仮面を付けた女がいた。
「一体どうして貴女が?」
「わたしが助けてあげたんだから感謝なさい」
どうやらこれは死後の世界ではなく、自分はしっかり生きているようだ。
どうやったのか分からないが、彼女が助けてくれたのだろうか。
「ありがとうござーー」
そこで今は偽の神たちと戦っている最中だ。
わたしは空を見上げると光が至る所から上がっている。
そして空には巨大な竜が空を覆っている。
「あれは……」
「アンラマンユよ」
良かったと心の底から安堵する。
わたしの犠牲は無駄になることなく、神を表に引きずり出せたのだ。
「と言っても、この世界のアンラマンユではないけどね」
どういうことだ?
言っている意味が全く理解できない。
「貴方の世界のアンラマンユが次元を渡ってこっちに来たみたいよ」
愕然とした。
もしかすると自分が来たせいであれが来てしまったのか。
「ならこちらの世界のアンラマンユは?」
「デアハウザーごと食べられたわ」
ある意味でこちらの世界の偽の神たちは死んだようだ。
しかしあれほど巨大だと倒す手段はあるのか。
突如空に大剣を持った女神像が現れた。
「まさか、あの剣は剣神エステル?」
「ええそうでしょうね」
わたしは立ち上がる。
……早く姫さまの助力をしなければ
「手助けありが……」
その仮面の女性は仮面を取っていた。
だがそれよりもその素顔に息をのんだ。
「マリアさま……なのですか?」
「ええ、あの神を倒した時に自滅してこの国を破壊しようとしたの。わたしが空に上げてそれを防ごうとしたら、貴方が過去にわたしを送ってくれた」
どんな因果か。
マリアさまは過去に戻ってわたしを助けてくれていた。
「ふふ、ははは」
思わず笑いが溢れた。
わたしはしっかり守り切れたのだろう。
逆説の答えがそこにはあった。
「お願い、クロート。もうわたしは貴方に幸せになってほしい。もうこれ以上自分を犠牲にしないーー」
わたしは思わず、マリアさまを抱き寄せた。
本来望んではいけない。
だがすぐ死ぬわたしにこれだけは、大きな罪を一つ犯させてください。
マリアさまの唇にそっと口を付けた。
「あ……えっ」
可愛らしく困っている彼女が愛おしい。
このまま彼女を連れて逃げたい。
だがわたしには最後の役目が残っている。
「マリアさま、わたしは死んでも貴女を見守っています。わたしは貴女を救えた事実だけで本当に幸せです。どうかこれからは楽しい人生をお過ごしください」
「やっぱり行っちゃうの?」
マリアさまの目に涙が溜まっている。
これ以上はもっと欲しくなる。
「あの化け物がわたしの世界のアンラマンユなら、あの中にも助けないといけないお方がいます。お幸せに」
わたしはマリアさまを名残惜しくも離した。
そして水竜を呼び出して、空へと上がる。
マリアさまが必死にアンラマンユを天まで上げていく。
魔導アーマーがかなりふらふらしているので、魔力がもう残っていないのだろう。
わたしは回復薬を手に取って、マリアさまに並行してからそっと口に運んだ。
「今度は守れました」
さらにすぐに過去へ飛ぶ魔法陣の描かれた紙を取り出した。
「では時の神よ、どうか彼女を過去へ送ってください。代償は全てわたしの存在をお使いください」
マリアさまは消え去った。
おそらく過去へ飛び立ったのだろう。
すぐに代償の請求がやってきた。
「ブハァ!」
血が盛大に噴き出す。
もうすぐに死ぬだろう。
だがわたしはまだ最後の仕事がある。
自分の存在を魔力へと変えて、アンラマンユの中へ入っていく。
たくさんの魂がこの神に眠っている。
一人の魂を探すのは至難の業だろう。
だがそれでも探す。
ーーあった!
見つけた。
間違いない。
一際大きな魂があった。
わたしはそれを掴み、急いでアンラマンユから出ていく。
そして大爆発が起きた。
目の前に川があった。
どこか夢心地で、心臓に手を当てるが鼓動がない。
「ここは死後の世界ですかね?」
何だかここは落ち着く。
天国の存在を信じていなかったが、こうして自我もあるのだとびっくりする。
何だか向こうに何かがある気がする。
わたしは足を進めた。
木々を抜けるとそこにはお花畑があった。
美しい花たちがたくさん咲いており、その中に一人の少女がいた。
「あっ、あっ」
蒼の髪を持った少女がお花を摘んでいる。
こちらに気付いた少女はニコッと笑いかけてくれた。
「あら、フリード。遅かったわね?」
この空間に時間というものがあるのか分からないが、ぼくはなかなか言葉が出てこない。
「あれ、さっきまで大人っぽかったのに最後に見た姿になったね」
そうだぼくの名前はフリードだ。
やっと思い出した。
そして彼女からそう呼ばれるとむず痒い。
「マリアさま、あのーー」
ぼくが言葉を出すよりも早くマリアさまはぼくの手を引っ張った。
「フリード、あっちへ行こう!」
ぼくの手をぐいぐい引っ張ってくれる彼女はまるで昔のようだ。
「フリード、助けてくれてありがとうね」
耳まで真っ赤にしている彼女はとても可愛らしかった。
ぼくも彼女に応えよう。
「当然です。だってぼくは貴女の下僕ですから」
そう言って、ぼくは横に並んで一緒に歩くのだった。
fin
クロートとして最後の仕事をしたのに、どうして生きているのか。
……たしかわたしは闇の神に自分を捧げたはずですが?
ゆっくりと周りを確認すると、そこには仮面を付けた女がいた。
「一体どうして貴女が?」
「わたしが助けてあげたんだから感謝なさい」
どうやらこれは死後の世界ではなく、自分はしっかり生きているようだ。
どうやったのか分からないが、彼女が助けてくれたのだろうか。
「ありがとうござーー」
そこで今は偽の神たちと戦っている最中だ。
わたしは空を見上げると光が至る所から上がっている。
そして空には巨大な竜が空を覆っている。
「あれは……」
「アンラマンユよ」
良かったと心の底から安堵する。
わたしの犠牲は無駄になることなく、神を表に引きずり出せたのだ。
「と言っても、この世界のアンラマンユではないけどね」
どういうことだ?
言っている意味が全く理解できない。
「貴方の世界のアンラマンユが次元を渡ってこっちに来たみたいよ」
愕然とした。
もしかすると自分が来たせいであれが来てしまったのか。
「ならこちらの世界のアンラマンユは?」
「デアハウザーごと食べられたわ」
ある意味でこちらの世界の偽の神たちは死んだようだ。
しかしあれほど巨大だと倒す手段はあるのか。
突如空に大剣を持った女神像が現れた。
「まさか、あの剣は剣神エステル?」
「ええそうでしょうね」
わたしは立ち上がる。
……早く姫さまの助力をしなければ
「手助けありが……」
その仮面の女性は仮面を取っていた。
だがそれよりもその素顔に息をのんだ。
「マリアさま……なのですか?」
「ええ、あの神を倒した時に自滅してこの国を破壊しようとしたの。わたしが空に上げてそれを防ごうとしたら、貴方が過去にわたしを送ってくれた」
どんな因果か。
マリアさまは過去に戻ってわたしを助けてくれていた。
「ふふ、ははは」
思わず笑いが溢れた。
わたしはしっかり守り切れたのだろう。
逆説の答えがそこにはあった。
「お願い、クロート。もうわたしは貴方に幸せになってほしい。もうこれ以上自分を犠牲にしないーー」
わたしは思わず、マリアさまを抱き寄せた。
本来望んではいけない。
だがすぐ死ぬわたしにこれだけは、大きな罪を一つ犯させてください。
マリアさまの唇にそっと口を付けた。
「あ……えっ」
可愛らしく困っている彼女が愛おしい。
このまま彼女を連れて逃げたい。
だがわたしには最後の役目が残っている。
「マリアさま、わたしは死んでも貴女を見守っています。わたしは貴女を救えた事実だけで本当に幸せです。どうかこれからは楽しい人生をお過ごしください」
「やっぱり行っちゃうの?」
マリアさまの目に涙が溜まっている。
これ以上はもっと欲しくなる。
「あの化け物がわたしの世界のアンラマンユなら、あの中にも助けないといけないお方がいます。お幸せに」
わたしはマリアさまを名残惜しくも離した。
そして水竜を呼び出して、空へと上がる。
マリアさまが必死にアンラマンユを天まで上げていく。
魔導アーマーがかなりふらふらしているので、魔力がもう残っていないのだろう。
わたしは回復薬を手に取って、マリアさまに並行してからそっと口に運んだ。
「今度は守れました」
さらにすぐに過去へ飛ぶ魔法陣の描かれた紙を取り出した。
「では時の神よ、どうか彼女を過去へ送ってください。代償は全てわたしの存在をお使いください」
マリアさまは消え去った。
おそらく過去へ飛び立ったのだろう。
すぐに代償の請求がやってきた。
「ブハァ!」
血が盛大に噴き出す。
もうすぐに死ぬだろう。
だがわたしはまだ最後の仕事がある。
自分の存在を魔力へと変えて、アンラマンユの中へ入っていく。
たくさんの魂がこの神に眠っている。
一人の魂を探すのは至難の業だろう。
だがそれでも探す。
ーーあった!
見つけた。
間違いない。
一際大きな魂があった。
わたしはそれを掴み、急いでアンラマンユから出ていく。
そして大爆発が起きた。
目の前に川があった。
どこか夢心地で、心臓に手を当てるが鼓動がない。
「ここは死後の世界ですかね?」
何だかここは落ち着く。
天国の存在を信じていなかったが、こうして自我もあるのだとびっくりする。
何だか向こうに何かがある気がする。
わたしは足を進めた。
木々を抜けるとそこにはお花畑があった。
美しい花たちがたくさん咲いており、その中に一人の少女がいた。
「あっ、あっ」
蒼の髪を持った少女がお花を摘んでいる。
こちらに気付いた少女はニコッと笑いかけてくれた。
「あら、フリード。遅かったわね?」
この空間に時間というものがあるのか分からないが、ぼくはなかなか言葉が出てこない。
「あれ、さっきまで大人っぽかったのに最後に見た姿になったね」
そうだぼくの名前はフリードだ。
やっと思い出した。
そして彼女からそう呼ばれるとむず痒い。
「マリアさま、あのーー」
ぼくが言葉を出すよりも早くマリアさまはぼくの手を引っ張った。
「フリード、あっちへ行こう!」
ぼくの手をぐいぐい引っ張ってくれる彼女はまるで昔のようだ。
「フリード、助けてくれてありがとうね」
耳まで真っ赤にしている彼女はとても可愛らしかった。
ぼくも彼女に応えよう。
「当然です。だってぼくは貴女の下僕ですから」
そう言って、ぼくは横に並んで一緒に歩くのだった。
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