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最終章 希望を託されし女神
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わたしが帰ってすぐ宴会が開かれた。
みんなと積もる話もあるので、宴会の席で話をする。
わたしの帰還を知って、他領からも数人やってきたようだ。
……よくそんな急なことに対応できましたわね。
そんなことを思っていると聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
「おーほほほ、マリアさんなら生きていると思っていましたよ!」
いつも元気なアクィエルは愉快げに話しかけてくる。
「貴女には助けられたわ」
「友人として当たり前ですよ、おーほほ」
アクィエルには一生返しきれない恩が出来てしまったようだ。
それと一緒にヨハネとガーネフがやってきた。
「あらマリアちゃん、お久しぶり」
「久しぶりね。また変な暗躍はしていない?」
「うーん、マリアちゃんにとって悪いことは起こらないかしら」
……まだ動いているのね
ヨハネに何かされるのは恐いが、もう彼女は自由の身になった。
これ以上わたしと敵対する理由もないだろう。
ガーネフは少しソワソワしている。
「そういえばガーネフちゃんから求婚されたの」
「えっ!?」
わたしはまじまじとガーネフを見た。
まさかヨハネを好きになる物好きがいるとは。
「でも結構歳が離れてーー」
「やだ、まだ十八よ。六歳差なんてすぐよね」
ヨハネは楽しそうに言うが、ガーネフは耳まで真っ赤にしている。
「僕が兄上の代わりにヨハネさまを幸せにします」
ガーネフがそこまで真剣に考えているのなら応援しよう。
途中で心変わりするかもしれないし。
「今失礼なこと考えたでしょ?」
ヨハネが頬を膨らませて怒った風を装う。
まさか彼女とこうして普通にお喋りできる日が来るとは思ってもみなかった。
もちろん、彼女がわたしの両親を殺したことを許したわけではない。
しかし彼女は一生をかけて償うと言ってくれた。
その言葉を信じよう。
「マリア!」
ウィリアノスがガイアノスを連れてやってきた。
ガイアノスは今ヨハネの元で監視されている。
それは本人が望んでいるし、ヨハネも手駒が増えて喜んでいるらしい。
「お久しぶりです。ガイアノスは髪の毛が元に戻ったんですね」
「ああ、所詮借り物の力だ。いい加減目が覚めたよ」
どこか吹っ切れており、少しはまともになったようだ。
ウィリアノスは次期ドルヴィとして、様々な教育を施されているらしい。
「今後は同じ王として、お互いに連携を密にして行こう」
「といって、ただ荒れた土地を直すため、わたくしの力が欲しいだけではありませんか?」
まだアンラマンユが残した爪痕の修繕に時間がかかっているらしい。
少し意地悪な問いだが、笑って誤魔化していた。
「はは、それも一つはある。だが今回のは自領のことしか見ていなかったからこそ起きた悲劇でもある。どうか俺たちに力を貸して欲しい」
「分かりました。元婚約者の頼みですからね」
わたしはウィリアノスと握手をして、次にガイアノスへ向けた。
「俺にはやっぱりお前は似合わない。いつか相応しい男になったら、一杯だけ付き合ってくれ」
「ええ、もう結婚式だけは勘弁ですけど」
「そんなに嫌だったのかよ!」
三人で笑い合い、後ろから声を掛けられる。
「マリア姉さま!」
可愛らしい声にすぐに誰かわかった。
アリアとラナがわたしの顔を見にきてくれた。
「お久しぶり、二人とも」
「お久しぶりです、マリアさま。マリアさまのご無事を聞いてすぐさま来ました」
「わたしもマリア姉さまと会えて嬉しいです。マリアさまならきっと生きていると信じていました」
ぴょんぴょん跳ねるアリアが可愛くてたまらない。
「そう言って、マリアさまが居なくなってから落ち込みすぎて大変だったんですから」
「もう、お姉さま! それは言わないでください!」
何とも和む会話だ。
少しだけ話して、次の人がやってきた。
ゼヌニムとスヴァルトアルフの両シルヴィとアビ・グレイルヒューケンがやってきた。
「久しいなマリア・ジョセフィーヌ」
「こちらこそ、あの日はわたしのためにあれだけの騎士を呼び寄せてくださってありがとうございます」
シルヴィ・スヴァルトアルフのおかげでこちらはだいぶ楽に戦況を進められた。
しかし少し苦い顔をしていた。
「あれはエルトとスフレだ。レティア・ジョセフィーヌと結託して口説き落としにきやがった」
「まあ」
そうだったのか。
まさかシルヴィの側近がわたしに協力してくれるとは。
「だがあいつらは真剣に訴えてきたからな。いい成長の機会と思えばいい」
何とも懐の大きいシルヴィだ。
シルヴィ・ゼヌニムは顔色を悪くしており、わたしに対して謝罪をする。
「マリアさま、その日は大変無礼なことを」
「いいえ、シルヴィ・ゼヌニムは操られていたと聞きます……少しお痩せになりました?」
どことなく覇気がなく、顔がやつれている。
それをシルヴィ・スヴァルトアルフが笑い飛ばす。
「気にするな。ただ、娘からシルヴィ乗っ取り宣言されていたことを知って落ち込んでいるだけだ」
「何がだけだ! 愛娘から反抗期を通り越して、殺害予告だぞ! これを悲しまずしてどうするか!」
どうやら複雑な親子喧嘩をしているようだ。
アクィエルの暴走は自領内で済ませてくれますように。
「息災で何よりです、マリアさま」
「アビ・グレイルヒューケンもね。貴方も色々助けてくれたのでしょう?」
「微力ですがね。マリアさまのおかげでこの地に恵みが戻りました。深い感謝を捧げることをお許しください」
彼のおかげでわたしも助かったことは多いので、お互いさまだと思っている。
彼とは今後もより関係を持ちたい。
次にパラストカーティのアビとメルオープがやってきた。
「アビ、その後はどう?」
「なんとか生きています」
「まさか、マリアさまが父上を助けてくれたとは、感謝の言葉がありません」
実はアビは仮死状態になっていただけで、その後わたしが生き返らせた。
今から本当のパラストカーティが出来ていくのだから、これからもアビとして頑張ってもらわないと。
「ううん、メルオープもよく来てくれました。もう貴方は十分、わたくしの剣です。これからもわたくしを支えてくださいね」
「勿体なきお言葉、わたし……いやわたしたちの忠義は一生貴女さまに捧げます」
パラストカーティはこれからどんどん伸びていく。
偽物の神のせいで遅れた百年をこれから取り戻していけばいい。
次にユリナナとカオディ、そしてエリーゼがきた。
「三人ともよく来てくれました」
「マリアさまのためなら、いくらでも頑張ります」
「わたくしもです。これからもわたくしたちのシルヴィに加護があらんことを」
次にユリナナに顔を向けると、少し恥ずかしそうにしていた。
「どうしました?」
「そのぉ、この前、レンオアム・リントブルムさまから求婚のお話をもらいました」
わたしはユリナナの手を握って祝福する。
「おめでとう! 良かった!」
「マリアさまのおかげです。マリアさまがここまでしてくれたからこのような嬉しいことが起きました。どうかわたしは一生をかけて貴女さまにこの御恩をお返しします」
ゼヌニムとの確執も全て偽の神が仕組んだこと。
これからどんどん交流を増やして、二度とあのようなことが起きないようにしないといけない。
「お姉さま!」
レティアがわたしの背中から抱き付いてくる。
普段賢いこの子がこのような行動をするとは思ってみなかった。
「どうしたの、レティア?」
わたしが尋ねるとレティアは泣きそうな顔になっていた。
「ひどいです。ずっと領地をほったらかしにして、わたくしがどれだけ心細かったか」
レティアはおそらく領地を盛り上げようと頑張っていたに違いない。
わたしはレティアの髪を撫でて、労いの言葉をかけた。
「レティア、ありがとう。貴女は本当にわたくしには過ぎた妹よ」
「それはお姉さまのほうです。シルヴィになった後も、一緒にお茶を飲んでくれますか?」
「当たり前ですよ、仕事を放り出してでも行きますよ」
「まぁーー」
レティアと明日以降の話をしていたら、いつの間にか機嫌も直って夜にまたお話の約束をした。
次に来たのはステラとスフレ、エルトとディアーナだ。
「マリアさま、本当にご無事でよかった」
ステラはわたしを抱きしめてくれた。
ずっと会いたかったわたしを誰よりも理解してくれる側近だった。
「ステラこそ、わたくしを助けに来てくれてありがとう」
お互いに十分堪能して離れた。
そして裏で色々動いてくれたディアーナにもお礼を言う。
「ディアーナもレティアの世話とシルヴィへの説得を頑張ってくれたのでしょう?」
「いいえ、微力ですがお手伝いしただけです。でもそのおかげで、初めてエルトさまと喧嘩しました」
ディアーナが怒る姿を想像できない。
しかしどうして喧嘩なんてしたのだろう。
エルトはわたしに話しかける。
「わたしとスフレ殿は目が覚めました。主君と愛する女性を同時に取る覚悟をしないと」
「ええ、やはり良き主君には良き臣下がいます。貴女さまの側近は全員優秀です」
「そうね。でもシルヴィ・スヴァルトアルフも良き主君だと思います。それに仕える臣下もね」
わたしにはまだ足りないことが多い。
シルヴィたちはその長い歴史を継承した者たちだ。
まだまだわたしは覚えないといけないことが多い。
新たな決意を胸に秘めて、一歩を踏み出そう。
そして最後にわたしの側近たちを集めた。
わたしは一人一人労っていく。
「リムミント、聖典の解読ありがとう」
「はい」
彼女がホーキンス先生と協力してくれたから、短期間でみんなが行動に移せた。
彼女の博識は今後も役立ててもらおう。
「ディアーナはさっきも言ったけど、裏で色々動いてくれてありがとう」
「このぐらいでしかお役に立てませんので」
謙虚で優しい彼女が恋人と喧嘩してまでわたしを救ってくれた。
どうか彼女の行く末に幸せがありますように。
「ルキノとヴェルダンディは危険な役目を任せてごめんなさい。そして、おめでとう。まさか二人が付き合うなんて」
「おいおい、バラさない約束だろ、マリアさま!」
……そうだっけ?
まあ幸せな報告ならいいだろう。
「マリアさまを最後まで守れなかったのは一番悔いるところでした。ですが本当にご無事で良かった」
「心配をかけましたね。でもまた二人でか弱いわたくしを支えてください」
「よく言うぜ。簡単に俺をぶっ飛ばしたのに」
全員で大笑いする。
こうやって笑い合えるのも勝利したからこそだ。
「アスカもマリアーマーの調整をありがとうね」
「いえ、おそらくマリアさまならそうすると思いましたから。今後も研究所の予算をお願いします」
「もちろんよ、でもあまり夜更かしはだめよ」
アスカはカオディと仲良くなっているらしい。
もっといい男もいると思うのにどうして彼なのだろうか。
「それからラケシスも……そういえばラケシスが何気に一番動いていましたね」
嬉しそうな顔でラケシスは答えた。
「いえいえ、姫さまのためならあれくらいどうってことありません。それよりも神を顕現させたことーー」
長い話が始まった。
ラケシスはわたしへの信仰を広げるために、わたしそっくりの人形を一斉に広めたらしい。
そしてマリア教を作り上げて、いつのまにか教祖になっていたりと、一体彼女の頭はどうなっているのか。
あの戦いでも数多くの国民をあの場に集めてくれたおかげで剣神を呼び出すことができた。
わたしの魔力では全く足りないので、本当に綱渡りだったのだ。
「でもヨハネと会ったと言っていたから心配しましたのよ」
「ヨハネさまは一番買ってくれたお客様でしたね。全種類買って行きましたよ。今日も新作を一品差し上げました」
……あれ、もしかしてヨハネってわたしのこと大好き?
ラケシスくらいだと思っていたが、まさかヨハネもそっち側とは。
これまで色々されたことを除けば、たしかに好意的な部分も多かった。
あれは演技ではなかったのか。
「まあ深く聞くのはやめておきましょう。セルランとレイナもずっと連れ回して悪かったわね」
ヨハネと戦ったジョセフィーヌの城から助け出してから、ずっとわたしの世話をしてもらった。
正直二人が居てくれて本当に良かった。
結構その場の勢いでやってしまったことも多かった。
しかし最後には全てが上手くいったのでよしとしよう。
「マリアさまのおかげで自分の見聞の狭さを知りました。これからもお側で自身を高めていきます。その時にマリアさまから直々に称号を頂きたいと思います」
わたしは正直最強の称号はもういらない。
女の子には必要ないよ。
「わたくしもマリアさまとの旅は楽しかったです。これからもよろしくお願いします」
「こっちこそ、それと」
わたしはレイナの耳元で話す。
「セルランはね。耳を触られるのが弱いのよ」
「もう、マリアさま!」
レイナから怒られたのでこれ以上言うのはよしておこう。
最後に下僕だ。
彼には色々言わなければならない。
「下僕はちょっと来なさい。みんなもう少しだけ楽しんでいってね」
わたしはバルコニーへと向かう。
秋の風は少し肌寒いが、室内の熱気でちょうどいい感じになる。
「下僕、ありがとうね。その髪になるために結構無茶をしたそうね」
アビ・フォアデルヘ、サタンという魔物から血を抜き取って入れたと聞く。
そのような危険なことをすれば、下僕の精神がおかしくなっても仕方がない。
「いいえ、マリアさまの助けになったのならこれ以上嬉しいことはありません」
「ならいいのだけど」
下僕はたまに思い詰めることがある。
クロートのような無茶をしてほしくない。
その時、とある光景を思い出して顔が火照ってくる。
「どうかしました?」
「ううん、なんでもないのよ!」
流石にあのことを人に言うのは憚られる。
わたしは笑って誤魔化した。
「結構夜遅くなってきましたので、執務に戻りますね」
「こんな日に仕事するの? 下僕、王国院はどうしているの?」
まだ学生がする仕事なんて、時間的にもあまりないだろう。
「今は休学していますから、ほとんど行っていません。マリアさまが帰ってきたのなら少しでも良くしていかーーブフォォォ」
わたしは水の魔法を下僕の顔にぶつけた。
目の隈がひどいと思っていたが、まさかそんなことをしていたなんて。
「下僕、付き合いなさい!」
「えっ?」
わたしが下僕に近付いて、騎獣を呼び出した。
「マリアさまが水竜を……」
「わたしも成長しているのよ。早く乗りなさい」
「もしかしてそれって……」
「抜け出しましょう」
堅苦しい催しは好きではない。
下僕も諦めてわたしの水竜に乗った。
ゆっくりと上昇する。
「これって落ちませんよね?」
「ご希望なら落としますよ」
……失礼ね!
わたしは空に上がって、城の上へ降り立った。
「良かった。また下町まで行くと言われたらどうしようかと思っていました」
「ねえ、下僕」
わたしは下僕たちを導かないといけない。
大きく平手を下僕にかました。
「ふげえ」
情けない声を上げる下僕にわたしは伝える。
「いたた。急に何ですか?」
「下僕、どうせくだらない理由で頑張っているだけでしょ?」
わたしははぁとため息を吐いた。
ここにいる重役たちは頭が固いので、どうせ色々言われているに違いない。
「いいこと。貴女はわたしの側近です。レティアやナビの使いっ走りではないのよ!」
「も、もちろん分かっています」
「いいえ、分かっていません。わたしの側近ならあそこで下町までお連れしましょうか、と言うべきです。決して仕事してきますなんて言いませんよ」
わたしの無茶苦茶な言葉に最初は口を開けていた。
そして彼は笑った。
心の底から笑ってくれた。
そして次に泣いてくれた。
「良かったぁ。本当に戻ってきてくれてーー」
彼はわたしの大切な側近だ。
今は学生なのだから、今くらい好きに生きてもいい。
彼は泣き止み、そして手を差し出す。
「マリアさま、お手をお貸しください」
「ええ」
下僕はわたしの手を引いていく。
「そういえばずっと下僕なんて貴方も嫌よね? 何か代わりの名前を付けます?」
ずっと下僕なんて彼が可哀想だ。
思い出せれないのなら新しい名前を付ければいい。
どんな名前がいいか考える。
……ポンタ、ニャンタ、あと何があるかしら。
色々な名前の案が出てくるがこれというのが中々出てこない。
下僕は一度振り向いて、答えた。
「僕にはそんなものは不要です。下僕と呼んでください。だってぼくは貴女の下僕ですから」
彼の爽やかな笑顔に思わずドキッとした。
初めて彼が本当にカッコいいと思った。
わたしが隣を歩こうとすると、いきなり目の前が真っ黒になった。
そして目の前には白い何かがある。
「うそっ、これってまた夢のお告げ!?」
クロートがわたしに口だけで現れて、未来の出来事を教えてくれたのだ。
そして学術祭でもわたしがわたし自身に話した場所でもある。
まだ何かあるのか、と心が騒つく。
「夢のお告げって、もしかしてクロートが現れたっていうやつですか?」
「どうして下僕もいるの!」
いつもわたしだけだったので、まさか下僕までこの世界に連れていかれるなんて。
「あの白い口がおそらく未来の……」
あれ、何かおかしい。
「口っていうよりも。ちょっと触ってみますね」
下僕が触るとふにゅと動いた。
「これって、体毛ですよ?」
何だか様子がおかしい。
そしてわたしはこのようなことをする者に心当たりがあった。
「あんたでしょ、フヴェズルング」
わたしがそう言うと白い球体から狼の姿に変わる。
ただ丸まっているだけだった。
「ギャフ!」
最後までわたしを驚かせないと気が済まないらしい。
何だか力が抜ける。
いつも灰色だからすぐには気付けなかった。
わざわざ手の込んだ悪戯をする。
すると徐々に毛の色が一部変化して、文字となっていく。
わたしはそれを見てクスッと笑った。
下僕がわたしに不思議そうに尋ねる。
「どうかしましたか?」
「これ見て」
下僕も同じ文字を見ると、同じくハハっと笑った。
そう、わたしたちは困難に立ち向かい、そしてそれを乗り越えた。
平坦な道ばかりではなかったが、わたしたちはしっかりと未来へ進む。
また困難が来れば今度はみんなで立ち向かえばいい。
わたしと下僕はせーのと声を合わせて読み上げた。
「「終わり」」
みんなと積もる話もあるので、宴会の席で話をする。
わたしの帰還を知って、他領からも数人やってきたようだ。
……よくそんな急なことに対応できましたわね。
そんなことを思っていると聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
「おーほほほ、マリアさんなら生きていると思っていましたよ!」
いつも元気なアクィエルは愉快げに話しかけてくる。
「貴女には助けられたわ」
「友人として当たり前ですよ、おーほほ」
アクィエルには一生返しきれない恩が出来てしまったようだ。
それと一緒にヨハネとガーネフがやってきた。
「あらマリアちゃん、お久しぶり」
「久しぶりね。また変な暗躍はしていない?」
「うーん、マリアちゃんにとって悪いことは起こらないかしら」
……まだ動いているのね
ヨハネに何かされるのは恐いが、もう彼女は自由の身になった。
これ以上わたしと敵対する理由もないだろう。
ガーネフは少しソワソワしている。
「そういえばガーネフちゃんから求婚されたの」
「えっ!?」
わたしはまじまじとガーネフを見た。
まさかヨハネを好きになる物好きがいるとは。
「でも結構歳が離れてーー」
「やだ、まだ十八よ。六歳差なんてすぐよね」
ヨハネは楽しそうに言うが、ガーネフは耳まで真っ赤にしている。
「僕が兄上の代わりにヨハネさまを幸せにします」
ガーネフがそこまで真剣に考えているのなら応援しよう。
途中で心変わりするかもしれないし。
「今失礼なこと考えたでしょ?」
ヨハネが頬を膨らませて怒った風を装う。
まさか彼女とこうして普通にお喋りできる日が来るとは思ってもみなかった。
もちろん、彼女がわたしの両親を殺したことを許したわけではない。
しかし彼女は一生をかけて償うと言ってくれた。
その言葉を信じよう。
「マリア!」
ウィリアノスがガイアノスを連れてやってきた。
ガイアノスは今ヨハネの元で監視されている。
それは本人が望んでいるし、ヨハネも手駒が増えて喜んでいるらしい。
「お久しぶりです。ガイアノスは髪の毛が元に戻ったんですね」
「ああ、所詮借り物の力だ。いい加減目が覚めたよ」
どこか吹っ切れており、少しはまともになったようだ。
ウィリアノスは次期ドルヴィとして、様々な教育を施されているらしい。
「今後は同じ王として、お互いに連携を密にして行こう」
「といって、ただ荒れた土地を直すため、わたくしの力が欲しいだけではありませんか?」
まだアンラマンユが残した爪痕の修繕に時間がかかっているらしい。
少し意地悪な問いだが、笑って誤魔化していた。
「はは、それも一つはある。だが今回のは自領のことしか見ていなかったからこそ起きた悲劇でもある。どうか俺たちに力を貸して欲しい」
「分かりました。元婚約者の頼みですからね」
わたしはウィリアノスと握手をして、次にガイアノスへ向けた。
「俺にはやっぱりお前は似合わない。いつか相応しい男になったら、一杯だけ付き合ってくれ」
「ええ、もう結婚式だけは勘弁ですけど」
「そんなに嫌だったのかよ!」
三人で笑い合い、後ろから声を掛けられる。
「マリア姉さま!」
可愛らしい声にすぐに誰かわかった。
アリアとラナがわたしの顔を見にきてくれた。
「お久しぶり、二人とも」
「お久しぶりです、マリアさま。マリアさまのご無事を聞いてすぐさま来ました」
「わたしもマリア姉さまと会えて嬉しいです。マリアさまならきっと生きていると信じていました」
ぴょんぴょん跳ねるアリアが可愛くてたまらない。
「そう言って、マリアさまが居なくなってから落ち込みすぎて大変だったんですから」
「もう、お姉さま! それは言わないでください!」
何とも和む会話だ。
少しだけ話して、次の人がやってきた。
ゼヌニムとスヴァルトアルフの両シルヴィとアビ・グレイルヒューケンがやってきた。
「久しいなマリア・ジョセフィーヌ」
「こちらこそ、あの日はわたしのためにあれだけの騎士を呼び寄せてくださってありがとうございます」
シルヴィ・スヴァルトアルフのおかげでこちらはだいぶ楽に戦況を進められた。
しかし少し苦い顔をしていた。
「あれはエルトとスフレだ。レティア・ジョセフィーヌと結託して口説き落としにきやがった」
「まあ」
そうだったのか。
まさかシルヴィの側近がわたしに協力してくれるとは。
「だがあいつらは真剣に訴えてきたからな。いい成長の機会と思えばいい」
何とも懐の大きいシルヴィだ。
シルヴィ・ゼヌニムは顔色を悪くしており、わたしに対して謝罪をする。
「マリアさま、その日は大変無礼なことを」
「いいえ、シルヴィ・ゼヌニムは操られていたと聞きます……少しお痩せになりました?」
どことなく覇気がなく、顔がやつれている。
それをシルヴィ・スヴァルトアルフが笑い飛ばす。
「気にするな。ただ、娘からシルヴィ乗っ取り宣言されていたことを知って落ち込んでいるだけだ」
「何がだけだ! 愛娘から反抗期を通り越して、殺害予告だぞ! これを悲しまずしてどうするか!」
どうやら複雑な親子喧嘩をしているようだ。
アクィエルの暴走は自領内で済ませてくれますように。
「息災で何よりです、マリアさま」
「アビ・グレイルヒューケンもね。貴方も色々助けてくれたのでしょう?」
「微力ですがね。マリアさまのおかげでこの地に恵みが戻りました。深い感謝を捧げることをお許しください」
彼のおかげでわたしも助かったことは多いので、お互いさまだと思っている。
彼とは今後もより関係を持ちたい。
次にパラストカーティのアビとメルオープがやってきた。
「アビ、その後はどう?」
「なんとか生きています」
「まさか、マリアさまが父上を助けてくれたとは、感謝の言葉がありません」
実はアビは仮死状態になっていただけで、その後わたしが生き返らせた。
今から本当のパラストカーティが出来ていくのだから、これからもアビとして頑張ってもらわないと。
「ううん、メルオープもよく来てくれました。もう貴方は十分、わたくしの剣です。これからもわたくしを支えてくださいね」
「勿体なきお言葉、わたし……いやわたしたちの忠義は一生貴女さまに捧げます」
パラストカーティはこれからどんどん伸びていく。
偽物の神のせいで遅れた百年をこれから取り戻していけばいい。
次にユリナナとカオディ、そしてエリーゼがきた。
「三人ともよく来てくれました」
「マリアさまのためなら、いくらでも頑張ります」
「わたくしもです。これからもわたくしたちのシルヴィに加護があらんことを」
次にユリナナに顔を向けると、少し恥ずかしそうにしていた。
「どうしました?」
「そのぉ、この前、レンオアム・リントブルムさまから求婚のお話をもらいました」
わたしはユリナナの手を握って祝福する。
「おめでとう! 良かった!」
「マリアさまのおかげです。マリアさまがここまでしてくれたからこのような嬉しいことが起きました。どうかわたしは一生をかけて貴女さまにこの御恩をお返しします」
ゼヌニムとの確執も全て偽の神が仕組んだこと。
これからどんどん交流を増やして、二度とあのようなことが起きないようにしないといけない。
「お姉さま!」
レティアがわたしの背中から抱き付いてくる。
普段賢いこの子がこのような行動をするとは思ってみなかった。
「どうしたの、レティア?」
わたしが尋ねるとレティアは泣きそうな顔になっていた。
「ひどいです。ずっと領地をほったらかしにして、わたくしがどれだけ心細かったか」
レティアはおそらく領地を盛り上げようと頑張っていたに違いない。
わたしはレティアの髪を撫でて、労いの言葉をかけた。
「レティア、ありがとう。貴女は本当にわたくしには過ぎた妹よ」
「それはお姉さまのほうです。シルヴィになった後も、一緒にお茶を飲んでくれますか?」
「当たり前ですよ、仕事を放り出してでも行きますよ」
「まぁーー」
レティアと明日以降の話をしていたら、いつの間にか機嫌も直って夜にまたお話の約束をした。
次に来たのはステラとスフレ、エルトとディアーナだ。
「マリアさま、本当にご無事でよかった」
ステラはわたしを抱きしめてくれた。
ずっと会いたかったわたしを誰よりも理解してくれる側近だった。
「ステラこそ、わたくしを助けに来てくれてありがとう」
お互いに十分堪能して離れた。
そして裏で色々動いてくれたディアーナにもお礼を言う。
「ディアーナもレティアの世話とシルヴィへの説得を頑張ってくれたのでしょう?」
「いいえ、微力ですがお手伝いしただけです。でもそのおかげで、初めてエルトさまと喧嘩しました」
ディアーナが怒る姿を想像できない。
しかしどうして喧嘩なんてしたのだろう。
エルトはわたしに話しかける。
「わたしとスフレ殿は目が覚めました。主君と愛する女性を同時に取る覚悟をしないと」
「ええ、やはり良き主君には良き臣下がいます。貴女さまの側近は全員優秀です」
「そうね。でもシルヴィ・スヴァルトアルフも良き主君だと思います。それに仕える臣下もね」
わたしにはまだ足りないことが多い。
シルヴィたちはその長い歴史を継承した者たちだ。
まだまだわたしは覚えないといけないことが多い。
新たな決意を胸に秘めて、一歩を踏み出そう。
そして最後にわたしの側近たちを集めた。
わたしは一人一人労っていく。
「リムミント、聖典の解読ありがとう」
「はい」
彼女がホーキンス先生と協力してくれたから、短期間でみんなが行動に移せた。
彼女の博識は今後も役立ててもらおう。
「ディアーナはさっきも言ったけど、裏で色々動いてくれてありがとう」
「このぐらいでしかお役に立てませんので」
謙虚で優しい彼女が恋人と喧嘩してまでわたしを救ってくれた。
どうか彼女の行く末に幸せがありますように。
「ルキノとヴェルダンディは危険な役目を任せてごめんなさい。そして、おめでとう。まさか二人が付き合うなんて」
「おいおい、バラさない約束だろ、マリアさま!」
……そうだっけ?
まあ幸せな報告ならいいだろう。
「マリアさまを最後まで守れなかったのは一番悔いるところでした。ですが本当にご無事で良かった」
「心配をかけましたね。でもまた二人でか弱いわたくしを支えてください」
「よく言うぜ。簡単に俺をぶっ飛ばしたのに」
全員で大笑いする。
こうやって笑い合えるのも勝利したからこそだ。
「アスカもマリアーマーの調整をありがとうね」
「いえ、おそらくマリアさまならそうすると思いましたから。今後も研究所の予算をお願いします」
「もちろんよ、でもあまり夜更かしはだめよ」
アスカはカオディと仲良くなっているらしい。
もっといい男もいると思うのにどうして彼なのだろうか。
「それからラケシスも……そういえばラケシスが何気に一番動いていましたね」
嬉しそうな顔でラケシスは答えた。
「いえいえ、姫さまのためならあれくらいどうってことありません。それよりも神を顕現させたことーー」
長い話が始まった。
ラケシスはわたしへの信仰を広げるために、わたしそっくりの人形を一斉に広めたらしい。
そしてマリア教を作り上げて、いつのまにか教祖になっていたりと、一体彼女の頭はどうなっているのか。
あの戦いでも数多くの国民をあの場に集めてくれたおかげで剣神を呼び出すことができた。
わたしの魔力では全く足りないので、本当に綱渡りだったのだ。
「でもヨハネと会ったと言っていたから心配しましたのよ」
「ヨハネさまは一番買ってくれたお客様でしたね。全種類買って行きましたよ。今日も新作を一品差し上げました」
……あれ、もしかしてヨハネってわたしのこと大好き?
ラケシスくらいだと思っていたが、まさかヨハネもそっち側とは。
これまで色々されたことを除けば、たしかに好意的な部分も多かった。
あれは演技ではなかったのか。
「まあ深く聞くのはやめておきましょう。セルランとレイナもずっと連れ回して悪かったわね」
ヨハネと戦ったジョセフィーヌの城から助け出してから、ずっとわたしの世話をしてもらった。
正直二人が居てくれて本当に良かった。
結構その場の勢いでやってしまったことも多かった。
しかし最後には全てが上手くいったのでよしとしよう。
「マリアさまのおかげで自分の見聞の狭さを知りました。これからもお側で自身を高めていきます。その時にマリアさまから直々に称号を頂きたいと思います」
わたしは正直最強の称号はもういらない。
女の子には必要ないよ。
「わたくしもマリアさまとの旅は楽しかったです。これからもよろしくお願いします」
「こっちこそ、それと」
わたしはレイナの耳元で話す。
「セルランはね。耳を触られるのが弱いのよ」
「もう、マリアさま!」
レイナから怒られたのでこれ以上言うのはよしておこう。
最後に下僕だ。
彼には色々言わなければならない。
「下僕はちょっと来なさい。みんなもう少しだけ楽しんでいってね」
わたしはバルコニーへと向かう。
秋の風は少し肌寒いが、室内の熱気でちょうどいい感じになる。
「下僕、ありがとうね。その髪になるために結構無茶をしたそうね」
アビ・フォアデルヘ、サタンという魔物から血を抜き取って入れたと聞く。
そのような危険なことをすれば、下僕の精神がおかしくなっても仕方がない。
「いいえ、マリアさまの助けになったのならこれ以上嬉しいことはありません」
「ならいいのだけど」
下僕はたまに思い詰めることがある。
クロートのような無茶をしてほしくない。
その時、とある光景を思い出して顔が火照ってくる。
「どうかしました?」
「ううん、なんでもないのよ!」
流石にあのことを人に言うのは憚られる。
わたしは笑って誤魔化した。
「結構夜遅くなってきましたので、執務に戻りますね」
「こんな日に仕事するの? 下僕、王国院はどうしているの?」
まだ学生がする仕事なんて、時間的にもあまりないだろう。
「今は休学していますから、ほとんど行っていません。マリアさまが帰ってきたのなら少しでも良くしていかーーブフォォォ」
わたしは水の魔法を下僕の顔にぶつけた。
目の隈がひどいと思っていたが、まさかそんなことをしていたなんて。
「下僕、付き合いなさい!」
「えっ?」
わたしが下僕に近付いて、騎獣を呼び出した。
「マリアさまが水竜を……」
「わたしも成長しているのよ。早く乗りなさい」
「もしかしてそれって……」
「抜け出しましょう」
堅苦しい催しは好きではない。
下僕も諦めてわたしの水竜に乗った。
ゆっくりと上昇する。
「これって落ちませんよね?」
「ご希望なら落としますよ」
……失礼ね!
わたしは空に上がって、城の上へ降り立った。
「良かった。また下町まで行くと言われたらどうしようかと思っていました」
「ねえ、下僕」
わたしは下僕たちを導かないといけない。
大きく平手を下僕にかました。
「ふげえ」
情けない声を上げる下僕にわたしは伝える。
「いたた。急に何ですか?」
「下僕、どうせくだらない理由で頑張っているだけでしょ?」
わたしははぁとため息を吐いた。
ここにいる重役たちは頭が固いので、どうせ色々言われているに違いない。
「いいこと。貴女はわたしの側近です。レティアやナビの使いっ走りではないのよ!」
「も、もちろん分かっています」
「いいえ、分かっていません。わたしの側近ならあそこで下町までお連れしましょうか、と言うべきです。決して仕事してきますなんて言いませんよ」
わたしの無茶苦茶な言葉に最初は口を開けていた。
そして彼は笑った。
心の底から笑ってくれた。
そして次に泣いてくれた。
「良かったぁ。本当に戻ってきてくれてーー」
彼はわたしの大切な側近だ。
今は学生なのだから、今くらい好きに生きてもいい。
彼は泣き止み、そして手を差し出す。
「マリアさま、お手をお貸しください」
「ええ」
下僕はわたしの手を引いていく。
「そういえばずっと下僕なんて貴方も嫌よね? 何か代わりの名前を付けます?」
ずっと下僕なんて彼が可哀想だ。
思い出せれないのなら新しい名前を付ければいい。
どんな名前がいいか考える。
……ポンタ、ニャンタ、あと何があるかしら。
色々な名前の案が出てくるがこれというのが中々出てこない。
下僕は一度振り向いて、答えた。
「僕にはそんなものは不要です。下僕と呼んでください。だってぼくは貴女の下僕ですから」
彼の爽やかな笑顔に思わずドキッとした。
初めて彼が本当にカッコいいと思った。
わたしが隣を歩こうとすると、いきなり目の前が真っ黒になった。
そして目の前には白い何かがある。
「うそっ、これってまた夢のお告げ!?」
クロートがわたしに口だけで現れて、未来の出来事を教えてくれたのだ。
そして学術祭でもわたしがわたし自身に話した場所でもある。
まだ何かあるのか、と心が騒つく。
「夢のお告げって、もしかしてクロートが現れたっていうやつですか?」
「どうして下僕もいるの!」
いつもわたしだけだったので、まさか下僕までこの世界に連れていかれるなんて。
「あの白い口がおそらく未来の……」
あれ、何かおかしい。
「口っていうよりも。ちょっと触ってみますね」
下僕が触るとふにゅと動いた。
「これって、体毛ですよ?」
何だか様子がおかしい。
そしてわたしはこのようなことをする者に心当たりがあった。
「あんたでしょ、フヴェズルング」
わたしがそう言うと白い球体から狼の姿に変わる。
ただ丸まっているだけだった。
「ギャフ!」
最後までわたしを驚かせないと気が済まないらしい。
何だか力が抜ける。
いつも灰色だからすぐには気付けなかった。
わざわざ手の込んだ悪戯をする。
すると徐々に毛の色が一部変化して、文字となっていく。
わたしはそれを見てクスッと笑った。
下僕がわたしに不思議そうに尋ねる。
「どうかしましたか?」
「これ見て」
下僕も同じ文字を見ると、同じくハハっと笑った。
そう、わたしたちは困難に立ち向かい、そしてそれを乗り越えた。
平坦な道ばかりではなかったが、わたしたちはしっかりと未来へ進む。
また困難が来れば今度はみんなで立ち向かえばいい。
わたしと下僕はせーのと声を合わせて読み上げた。
「「終わり」」
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