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第五章 王のいない側近
下僕視点3
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ラケシスはぼくの目を見ていた。
「下僕、貴方にですよ」
ラケシスから指を差されて戸惑った。
一体ぼくは何を託されたのか。
「わたくしでは分かりませんが、貴方なら分かるから最後の言葉を貴方だけに残したのではないでしょうか?」
ぼくはその時、マリアさまの最後の言葉を思い出す。
ーーわたしの剣を任せます、錆を落として。
ーーわたくしをまた笑わせてくれますか。
この二つが何かを意味している。
考えてみるとどちらも引っかかる言葉だ。
最後に残す言葉としてはどちらも不適切だ。
その時の状況が思い出される。
「そういえばあの時、マリアさまは何か勘付いたような顔をしていた気がする。そしてあの短い時間でぼくに気付かせようとした……」
「本当ですか!?」
リムミントが起き上がり、詰め寄ってきた。
ぼくは頷く。
「多分だけどそれが何かが分からない。一体何に気付いたんだ。マリアさまが知っている情報はぼくたちと大差ない。それでもぼくたちよりも早く何かに気付いた。ちょっとぼくを机まで運んでくれる?」
情けないことだが、今は体が痛くて思うように進めないのだ。
アスカとラケシスの肩を借りてどうにか座ることができた。
ペンを持って、考えをメモしていく。
「剣を任せる? これは何を言っているんだ。言葉通りの意味ではなくーー」
「多分パラストカーティだろうよ」
いつのまにか部屋へと入ってきたヴェルダンディが答えた。
どこかきまりが悪そうに、果物を持ってきていた。
「さっきは感情的になったが悪いとは思っていない。だけど寝込んだと聞いたから一応心配になってな。友達とは思っているからよ」
「ヴェルダンディ……ありがとう」
彼の果物を受け取る。
そしてまた思考を再開させる。
「それで何をしているんだ?」
「マリアさまがぼくたちに何かを伝えようとしているかもしれないんだ!」
「本当か!?」
ヴェルダンディは元気よく飛びついた。
細い糸かもしれないがここには希望がある。
ぼくは頷くと彼は話を黙って聞く。
「もしパラストカーティだとすると、錆を落とすの意味はなんだろう。誰か思い当たることはある?」
ここに大きなヒントがあるはずだ。
わずかなヒントがあれば答えを導き出せるかもしれない。
「錆を落とすなら鍛冶屋だよな。そうすると鍛え直せってことか?」
ヴェルダンディがひねり出した。
だがまだ弱い。
「うーん、確かにその意味もあるかもしれないけど、もっと別のことがあるかも」
「パラストカーティを任せる、そう言えばいいのにそれを言わない理由があるのかもしれませんね」
リムミントの言葉は何か核心をついている気がする。
何かもう少しで思いつきそうだ。
もっと広く、部分的ではない何かだ。
「まず何が錆び付いているのだろう。能力か、それともーー」
パラストカーティには何があったかを考える。
他の領土ではなく、どうしてパラストカーティでないといけないのか。
伝承は他の領土でもある。
そうするとそれとは違う。
ビルネンクルベとの確執があった。
そこでぼくは閃いた。
「そうだ、百年前の内乱だ!」
「百年前の内乱? パラストカーティとビルネンクルベとの間で起きたことか? それが一体ーー」
「違うよ、ヴェルダンディ! そこじゃない、思い出してほしい! それの原因は何だったかを!」
みんな一斉に内乱の話を思い出す。
そう、ドルヴィの城で見たことはあまりにも大きなヒントとなったのだ。
「たしか、フォアデルヘが本物の聖典を発見して……まてよ、そういえばドルヴィの城にアビ・フォアデルヘが来ていたな」
「そうだよ! ドルヴィとフォアデルヘは繋がっていた。そして光の神を語る人物は前は聖典に載っていない。これは本当に偶然だろうか?」
全員の顔が真っ青になっていく。
ぼくは全ての答えを導いていく。
「スヴァルトアルフとノヴァルディオンの祭壇は真新しい。そしてマリアさまはその新しい祭壇で伝承の解放を試みた。そしてその結果はどの領土も一時的なものしかなかった。グレイルヒューケンを除いてね」
誰かがグレイルヒューケンの伝承を解いたおかげで、グレイルヒューケンへの恩恵は残り続けている。
これはしっかり伝承が解放されたからに他ならない。
「つまり、わたくしたちは偽物の神を崇めさせられていたってこと?」
ラケシスの言葉に頷く。
だがリムミントが反論をする。
「ですが、聖典が変わって神への奉納先を変えたら、全領土の魔力が回復しましたよ。これはどう説明するのですか」
「逆にどうして、光と闇の神の名前を変えただけで、ぼくたち水の神の領土まで回復するのです?もうこの国は別の神に乗っ取られていると考える方が正しい。他の神への奉納が阻害されているのだと」
魔力不足の原因は、新しい光と闇の神が一国の魔力を全て見ていることだ。
これまでは五神が分担していたので問題なかったが、取って代わった二神によってこれが起きた。
そしてフォアデルヘが協力して、聖典を完全にすり替えることに成功したのだ。
リムミントは恐る恐る聞いた。
「ならパラストカーティがフォアデルヘに攻め入ろうとしたのは、聖典を替えられるのを防ぐため?」
ぼくは頷く。
「そうだよ。そしてドルヴィも動いて粛清した。その後は彼らを蔑むことで、真実を隠し通したんだ」
「おいおい、なんだその気の遠くなるような計画は? 魔力不足なんて百年どころかもっと前から起きてたじゃねえか」
ヴェルダンディの言う通り、この国はかなり前から取り返しが付かなくなっていた。
「下僕、貴方にですよ」
ラケシスから指を差されて戸惑った。
一体ぼくは何を託されたのか。
「わたくしでは分かりませんが、貴方なら分かるから最後の言葉を貴方だけに残したのではないでしょうか?」
ぼくはその時、マリアさまの最後の言葉を思い出す。
ーーわたしの剣を任せます、錆を落として。
ーーわたくしをまた笑わせてくれますか。
この二つが何かを意味している。
考えてみるとどちらも引っかかる言葉だ。
最後に残す言葉としてはどちらも不適切だ。
その時の状況が思い出される。
「そういえばあの時、マリアさまは何か勘付いたような顔をしていた気がする。そしてあの短い時間でぼくに気付かせようとした……」
「本当ですか!?」
リムミントが起き上がり、詰め寄ってきた。
ぼくは頷く。
「多分だけどそれが何かが分からない。一体何に気付いたんだ。マリアさまが知っている情報はぼくたちと大差ない。それでもぼくたちよりも早く何かに気付いた。ちょっとぼくを机まで運んでくれる?」
情けないことだが、今は体が痛くて思うように進めないのだ。
アスカとラケシスの肩を借りてどうにか座ることができた。
ペンを持って、考えをメモしていく。
「剣を任せる? これは何を言っているんだ。言葉通りの意味ではなくーー」
「多分パラストカーティだろうよ」
いつのまにか部屋へと入ってきたヴェルダンディが答えた。
どこかきまりが悪そうに、果物を持ってきていた。
「さっきは感情的になったが悪いとは思っていない。だけど寝込んだと聞いたから一応心配になってな。友達とは思っているからよ」
「ヴェルダンディ……ありがとう」
彼の果物を受け取る。
そしてまた思考を再開させる。
「それで何をしているんだ?」
「マリアさまがぼくたちに何かを伝えようとしているかもしれないんだ!」
「本当か!?」
ヴェルダンディは元気よく飛びついた。
細い糸かもしれないがここには希望がある。
ぼくは頷くと彼は話を黙って聞く。
「もしパラストカーティだとすると、錆を落とすの意味はなんだろう。誰か思い当たることはある?」
ここに大きなヒントがあるはずだ。
わずかなヒントがあれば答えを導き出せるかもしれない。
「錆を落とすなら鍛冶屋だよな。そうすると鍛え直せってことか?」
ヴェルダンディがひねり出した。
だがまだ弱い。
「うーん、確かにその意味もあるかもしれないけど、もっと別のことがあるかも」
「パラストカーティを任せる、そう言えばいいのにそれを言わない理由があるのかもしれませんね」
リムミントの言葉は何か核心をついている気がする。
何かもう少しで思いつきそうだ。
もっと広く、部分的ではない何かだ。
「まず何が錆び付いているのだろう。能力か、それともーー」
パラストカーティには何があったかを考える。
他の領土ではなく、どうしてパラストカーティでないといけないのか。
伝承は他の領土でもある。
そうするとそれとは違う。
ビルネンクルベとの確執があった。
そこでぼくは閃いた。
「そうだ、百年前の内乱だ!」
「百年前の内乱? パラストカーティとビルネンクルベとの間で起きたことか? それが一体ーー」
「違うよ、ヴェルダンディ! そこじゃない、思い出してほしい! それの原因は何だったかを!」
みんな一斉に内乱の話を思い出す。
そう、ドルヴィの城で見たことはあまりにも大きなヒントとなったのだ。
「たしか、フォアデルヘが本物の聖典を発見して……まてよ、そういえばドルヴィの城にアビ・フォアデルヘが来ていたな」
「そうだよ! ドルヴィとフォアデルヘは繋がっていた。そして光の神を語る人物は前は聖典に載っていない。これは本当に偶然だろうか?」
全員の顔が真っ青になっていく。
ぼくは全ての答えを導いていく。
「スヴァルトアルフとノヴァルディオンの祭壇は真新しい。そしてマリアさまはその新しい祭壇で伝承の解放を試みた。そしてその結果はどの領土も一時的なものしかなかった。グレイルヒューケンを除いてね」
誰かがグレイルヒューケンの伝承を解いたおかげで、グレイルヒューケンへの恩恵は残り続けている。
これはしっかり伝承が解放されたからに他ならない。
「つまり、わたくしたちは偽物の神を崇めさせられていたってこと?」
ラケシスの言葉に頷く。
だがリムミントが反論をする。
「ですが、聖典が変わって神への奉納先を変えたら、全領土の魔力が回復しましたよ。これはどう説明するのですか」
「逆にどうして、光と闇の神の名前を変えただけで、ぼくたち水の神の領土まで回復するのです?もうこの国は別の神に乗っ取られていると考える方が正しい。他の神への奉納が阻害されているのだと」
魔力不足の原因は、新しい光と闇の神が一国の魔力を全て見ていることだ。
これまでは五神が分担していたので問題なかったが、取って代わった二神によってこれが起きた。
そしてフォアデルヘが協力して、聖典を完全にすり替えることに成功したのだ。
リムミントは恐る恐る聞いた。
「ならパラストカーティがフォアデルヘに攻め入ろうとしたのは、聖典を替えられるのを防ぐため?」
ぼくは頷く。
「そうだよ。そしてドルヴィも動いて粛清した。その後は彼らを蔑むことで、真実を隠し通したんだ」
「おいおい、なんだその気の遠くなるような計画は? 魔力不足なんて百年どころかもっと前から起きてたじゃねえか」
ヴェルダンディの言う通り、この国はかなり前から取り返しが付かなくなっていた。
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