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第五章 王のいない側近

隠された真実の一片

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 ルキノにお願いして二人の縄を外してもらう。
 二人とも外傷もなく、ただ運ばれただけのようだ。

「ありがとうございます、このような場所で姫さまにお会いできてよかったです」
「マリア姉さま、ありがとうございます」
「二人が無事でよかった。でもどうして縛られているの?」

 誰がやったのかはだいたい想像できるが一応聞いてみる。
 アリアは少し恥ずかしそうに答えた。

「それが、ラケシスさまたちにお手伝いを頼んで隠された部屋を調べていた時に、仮面を付けた一人の男性に無理矢理縛られてここまで運ばれました。といってもあまり乱暴にはされませんでしたけど」


 やっぱり仮面を付けた連中だったか。
 わたしが辺りを見渡すと見覚えのある玉座があった。
 わたしがシルヴィ・スヴァルトアルフと話をした場所だ。
 あの仮面の女はスヴァルトアルフの玉座の後ろに行けと言っていた。

「そういえばアリアを連れていけって前も言っていたわね。でもどうしてラケシスも連れてこられたのかしら」
「姫さまの神聖な気配を感じたので、隠し部屋に行くとちょうどアリアさまが連れて行かれるところだったので、口封じのために運ばれました」

 何とも間が悪い。
 本当に怪我一つ無くてよかった。

「そういえばライヘンはどのようになりましたか?」
「ライヘンでしたらーー」
「姫さま、あまりこの場所に長居するのはやめたほうがいいと思います」

 アリアの質問に答えようとしたがクロートに止められた。
 確かに神聖な玉座の間にわたしがいるのはよろしくないだろう。

「そうね、アリアこっちにいらっしゃい」
「はい!」

 アリアを連れて玉座の真後ろへと向かう。
 黒のカーテンがされており、その裏にある壁へと向かってわたしは手を伸ばした。
 何もないただの壁だ。
 だがわたしの予想が正しければ。

「アリア、ここを触ってみて」
「分かりました」

 アリアの手が壁へと伸びる。

「きゃあ!」

 アリアは急いで手を戻した。
 やはりわたしの勘は正しかった。

「魔力を吸われました?」
「は、はい! 少しだけですけどびっくりしちゃって」
「おそらくアリアが魔力を込めるとここの隠れた部屋が見つかるはずです。もう少し魔力を使ってください」
「分かりました!」

 再度アリアが魔力を込めると魔法陣が複数浮き上がる。
 そしてすぐに壁が消えて地下への階段が現れた。

「やっぱりね。光の髪を持つアリアしか開けない仕掛けになってたみたい」

 もしかするとわたしの城の玉座の間でも同じような仕掛けがあるかもしれない。
 だがヨハネに占拠されているので、結果的にここしか来られなかった。
 あの謎の女はこれを見越してアリアを連れてここへ来るように言ったのかしら。
 アリアもこの現象には驚いていた。

「そうみたいですね。どうしてこんな特定の人間しか入れない仕掛けを作ったんでしょう」
「それはもちろん入れたくない人物がいるからです。もし見付かるとこの部屋を消されてしまう恐れがある。それならば特定の者しか見つけられないようにすればいい」

 クロートの推測はおそらく当たっているだろう。
 この長い間で伝承については廃れた。
 だがこれほど効果の高い伝承が風化してしまうなんて人為的な策略を感じる。
 わたしたちは階段を降りて、大きな部屋へとたどり着いた。
 部屋の灯りを等間隔で置いてある大きな石に魔力を込めた。
 真っ暗だった部屋も明るくなり、そこには大量の本が置いてある。
 そしてスヴァルトアルフ領と思われる地図が壁に貼ってあった。
 わたしはその地図を見ると、各領土に一つずつバツの印がある。

「一体何の印でしょう」
「ここの資料に書いているかもしれませんね」

 クロートは早速資料を読んでその該当部分を見つけ出した。

「どうやら祭壇の場所を記載しているようですが、わたしたちが向かった場所とは違いますね。これはどういうことですか?」

 クロートは厳しい目をアリアに向けた。
 わたしがスヴァルトアルフとの交渉前に解放した祭壇とは違う。
 アリアたちから聞いた場所に行ったので、それが間違えていたことになるが、彼女たちがわたしを騙そうとするとは思えなかった。

「そうなんです! わたしたちもあの後残って調べたら全く違う記述が出てきたんです! そうですよね、ラケシスさま?」
「はい、アリアさまの言う通りです」

 ラケシスがアリアの言葉を肯定するので、やはりどちらかが間違っている。
 だがパラストカーティやシュティレンツのように魔力の奉納は出来たので、アリアたちに教わった方が本物ではないだろうか。


「おや、ですがここはマリアさまが見つけ出した祭壇ではございませんか?」
「はひ?」

 アビ・グレイルヒューケンは地図に書かれているグレイルヒューケンの祭壇を指差した。
 見る限り小さな村があり、そのような場所を訪れた記憶はない。

「見つけ出した?」
「はい、昨日のことですよ。村人から話を聞いたら、旅をしている貴族と仲良くなり、魔力を奉納すると祭壇が出現して、一緒に踊りを踊ったと。不思議な光が現れて一瞬で緑豊かな土地にしてくれたと言っていました。その時わたしはマリアさまが何かしてくださったと思ったのですが?」

 全く身に覚えがない。
 わたしはもうすでに別の祭壇で魔力を奉納している。

「それってわたくしがスヴァルトアルフに交渉する時よりも良くなったのですか?」
「全く比較できません」

 一体なぜわたしが伝承を解放した時よりも効果が出ているのか。
 謎が謎を呼び、これでは何歩も戻っている気がしてくる。
 クロートも難しい顔をして考えてくれる。

「もしかしてあの仮面の者たちが何かやったのかもしれません?」

 わたしは頭を抱える。
 一体何をしてくれるのだ。
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