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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!
ヴェルダンディ視点3
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ルキノはトライードを下ろした。
「ならいいのよ。ではわたくしも授業の支度があるのでこれで失礼」
ルキノはそそくさと歩いて行った。
俺も息を吐いて何もなかったことに感謝した。
「ヴェルダンディ、少しいいか?」
「うぉっ!」
急に後ろから声を掛けられて思わずびっくりしてしまった。
いつから忍び寄ってたのか気付かなかった。
心臓がバクバクと音を立てており、俺は恨めしい目で睨んだ。
「急に後ろから声を掛けるのはやめてくださいよ、メルオープさま」
「さまはよしてくれ、わたしと君の仲だ。呼び捨てでいいと言っているだろう」
マンネルハイムで優勝を目指すうちにどんどん仲良くなっていき、今ではお互いに呼び捨てで呼び合う仲になった。
「ああ、そうだな。メルオープ」
「うむ、それでいい」
メルオープは納得してくれた。
話が脱線したので呼び掛けた理由を聞いた。
「それで俺に何か用か?」
「ああ、実は……、その……、だなぁ」
何だか急にもじもじとし始めた。
気持ち悪い行動だが、自分の言葉にするまで黙っていることにした。
「えぇい、まどろこしい! こんなのは俺じゃない!」
「うぉっ!」
いきなり叫ぶので二回目の驚きだ。
一体さっきから何がしたいのだ?
やっと決心が付いたのかメルオープは目をギラギラにしながら喋り出した。
「実はだな。俺はルキノさまが好きだ。もう彼女のことを考えるだけで幸せになるほどな!」
「ルキノに!? まじかよ」
まさかメルオープがルキノに恋をしているとは。
確かに顔は可愛いが少しばかり性格がきついのではないか。
そこでパラストカーティの気性を思い出した。
……そういえば、パラストカーティは女が男の手綱を握るのが美人の条件だったな。
暑い地域だからか、パラストカーティは他の領土より血気盛んだ。
そのため、そんな男を鎮めるために女もどんどん男を操る方法を学んでいったと聞く。
メルオープもそうなのだろう。
「ああ、だから芸術祭のダンスパーティーに誘おうと思うんだが、彼女は一度もパーティに参加されない、そうだろ?」
「まあ、そうだな。あいつもそろそろ相手を見つけないと家から色々言われるはずだから、ダンスパーティーは強制的に参加しろと言われると思うんだがな」
何か理由があるのかもしれないので、深く聞くことはなかった。
でも少し興味を持つとどうしても知りたくなってしまう。
「なあ、ヴェルダンディ。彼女は何が好きだ? 芸術祭までまだ時間もあるから、少しずつ仲を深めていくつもりだ」
メルオープの言葉を受けて頭に思い浮かべる。
ルキノとは同じ学生の護衛騎士だからか一緒にいる時間も多い。
世間話はよく話すので、これまでどういったことを話していたかを記憶の片隅から呼び起こした。
「ヴェルダンディ、今日の訓練はどうしましょう」
「こういった作戦とか使えるかもしれません」
「魔物の特徴をしっかり覚えてくださいね」
全部、戦いについての話ばかりだ。
色気のない話すぎて何を伝えればいいか。
「訓練かな?」
「ふざけるな! 騎士といえども女の子だぞ!」
うぉっ、と仰け反ってしまった。
言いたいことはわかるが事実なのだから仕方がない。
俺はメルオープを落ち着かせる。
「落ち着けって! 俺もあいつと話すのはマンネルハイムと魔物の話くらいなんだ。それに一緒に訓練すれば話す時間もあるだろ? 俺もサポートするから、安心しろって」
「お、おう。分かった」
「よし、なら俺がルキノを誘っておくからまた後でな」
そこでメルオープと別れた。
どうにも面倒くさいが、友人の恋は応援したいものだ。
「でもまさかメルオープがルキノを好きだとーー」
「わたくしがどうかしました?」
「うおっ!」
考え事をしながら歩いていたせいで全く気が付かなかった。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「いや、ルキノは本当に訓練好きだなって……ははは」
「何を当たり前のことを……、少しでも訓練してマリアさまのお役に立ちたいと思うのは当たり前じゃないですか」
「それもそうだな……」
ここで良いことを思い付いた。
ちょうどメルオープも知りたがっていたし、ここで聞くのが一番だろう。
「ところでルキノって休みの日って何しているんだ?」
「いきなり何ですか? そんなくだらないお話より大事なお話があるんですよ」
俺の言葉は簡単に流された。
「殿方ってどういった贈り物をされると嬉しいものですか?」
……なんだって!?
まさかルキノからそんな話を振られると思わなかった。
それも今メルオープから話を聞いたばかりでこれは辛い。
一応誰に贈るつもりか聞いておこう。
「お、贈り物か……、相手にもよるが誰に贈るんだ?」
「セルランですよ」
……メルオープ、諦めた方がいいかもしれない。
領主候補生とはいえ、流石にジョセフィーヌの血を引いているセルランでは勝負にならない。
血筋も才能も全てが上のハイスペック人間にどう太刀打ちすればいいのか。
だがその前にルキノからの相談に答えないと。
しかしセルランは何でも手に入れられるので、一体何を欲しがるだろうか。
「セルランか、あいつが欲しがる物って難しいな」
「そうなんですよ。だからわたくしも困ってて」
「いっそのこと、食事……いや、香水とかいいんじゃないか? 騎士だとどうしても汗臭くなるから、いくらあっても困る物じゃないし」
危うく、ゴールインを手伝いかけた。
同僚の恋を応援したいが、友人に少しはチャンスを与えても罰は当たるまい。
「ならいいのよ。ではわたくしも授業の支度があるのでこれで失礼」
ルキノはそそくさと歩いて行った。
俺も息を吐いて何もなかったことに感謝した。
「ヴェルダンディ、少しいいか?」
「うぉっ!」
急に後ろから声を掛けられて思わずびっくりしてしまった。
いつから忍び寄ってたのか気付かなかった。
心臓がバクバクと音を立てており、俺は恨めしい目で睨んだ。
「急に後ろから声を掛けるのはやめてくださいよ、メルオープさま」
「さまはよしてくれ、わたしと君の仲だ。呼び捨てでいいと言っているだろう」
マンネルハイムで優勝を目指すうちにどんどん仲良くなっていき、今ではお互いに呼び捨てで呼び合う仲になった。
「ああ、そうだな。メルオープ」
「うむ、それでいい」
メルオープは納得してくれた。
話が脱線したので呼び掛けた理由を聞いた。
「それで俺に何か用か?」
「ああ、実は……、その……、だなぁ」
何だか急にもじもじとし始めた。
気持ち悪い行動だが、自分の言葉にするまで黙っていることにした。
「えぇい、まどろこしい! こんなのは俺じゃない!」
「うぉっ!」
いきなり叫ぶので二回目の驚きだ。
一体さっきから何がしたいのだ?
やっと決心が付いたのかメルオープは目をギラギラにしながら喋り出した。
「実はだな。俺はルキノさまが好きだ。もう彼女のことを考えるだけで幸せになるほどな!」
「ルキノに!? まじかよ」
まさかメルオープがルキノに恋をしているとは。
確かに顔は可愛いが少しばかり性格がきついのではないか。
そこでパラストカーティの気性を思い出した。
……そういえば、パラストカーティは女が男の手綱を握るのが美人の条件だったな。
暑い地域だからか、パラストカーティは他の領土より血気盛んだ。
そのため、そんな男を鎮めるために女もどんどん男を操る方法を学んでいったと聞く。
メルオープもそうなのだろう。
「ああ、だから芸術祭のダンスパーティーに誘おうと思うんだが、彼女は一度もパーティに参加されない、そうだろ?」
「まあ、そうだな。あいつもそろそろ相手を見つけないと家から色々言われるはずだから、ダンスパーティーは強制的に参加しろと言われると思うんだがな」
何か理由があるのかもしれないので、深く聞くことはなかった。
でも少し興味を持つとどうしても知りたくなってしまう。
「なあ、ヴェルダンディ。彼女は何が好きだ? 芸術祭までまだ時間もあるから、少しずつ仲を深めていくつもりだ」
メルオープの言葉を受けて頭に思い浮かべる。
ルキノとは同じ学生の護衛騎士だからか一緒にいる時間も多い。
世間話はよく話すので、これまでどういったことを話していたかを記憶の片隅から呼び起こした。
「ヴェルダンディ、今日の訓練はどうしましょう」
「こういった作戦とか使えるかもしれません」
「魔物の特徴をしっかり覚えてくださいね」
全部、戦いについての話ばかりだ。
色気のない話すぎて何を伝えればいいか。
「訓練かな?」
「ふざけるな! 騎士といえども女の子だぞ!」
うぉっ、と仰け反ってしまった。
言いたいことはわかるが事実なのだから仕方がない。
俺はメルオープを落ち着かせる。
「落ち着けって! 俺もあいつと話すのはマンネルハイムと魔物の話くらいなんだ。それに一緒に訓練すれば話す時間もあるだろ? 俺もサポートするから、安心しろって」
「お、おう。分かった」
「よし、なら俺がルキノを誘っておくからまた後でな」
そこでメルオープと別れた。
どうにも面倒くさいが、友人の恋は応援したいものだ。
「でもまさかメルオープがルキノを好きだとーー」
「わたくしがどうかしました?」
「うおっ!」
考え事をしながら歩いていたせいで全く気が付かなかった。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「いや、ルキノは本当に訓練好きだなって……ははは」
「何を当たり前のことを……、少しでも訓練してマリアさまのお役に立ちたいと思うのは当たり前じゃないですか」
「それもそうだな……」
ここで良いことを思い付いた。
ちょうどメルオープも知りたがっていたし、ここで聞くのが一番だろう。
「ところでルキノって休みの日って何しているんだ?」
「いきなり何ですか? そんなくだらないお話より大事なお話があるんですよ」
俺の言葉は簡単に流された。
「殿方ってどういった贈り物をされると嬉しいものですか?」
……なんだって!?
まさかルキノからそんな話を振られると思わなかった。
それも今メルオープから話を聞いたばかりでこれは辛い。
一応誰に贈るつもりか聞いておこう。
「お、贈り物か……、相手にもよるが誰に贈るんだ?」
「セルランですよ」
……メルオープ、諦めた方がいいかもしれない。
領主候補生とはいえ、流石にジョセフィーヌの血を引いているセルランでは勝負にならない。
血筋も才能も全てが上のハイスペック人間にどう太刀打ちすればいいのか。
だがその前にルキノからの相談に答えないと。
しかしセルランは何でも手に入れられるので、一体何を欲しがるだろうか。
「セルランか、あいつが欲しがる物って難しいな」
「そうなんですよ。だからわたくしも困ってて」
「いっそのこと、食事……いや、香水とかいいんじゃないか? 騎士だとどうしても汗臭くなるから、いくらあっても困る物じゃないし」
危うく、ゴールインを手伝いかけた。
同僚の恋を応援したいが、友人に少しはチャンスを与えても罰は当たるまい。
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