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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!
剣を研ぐ
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どこか楽しげな表情をしたヨハネがこの部屋に入ってきた。
めんどくさいこの女を相手にしている暇はないが、無視していい存在でもない。
「何ですか? 今貴女に構っている暇は無いのですが?」
「つれないわね。魔物が発生してピンチなんでしょ? こんなところでのんびりしてもいいの?」
どうやらヨハネはすでに情報を手に入れているようだ。
それぐらいできそうなので驚きはしないが。
「わたくしのやるべきことは学生たちを混乱させないことです。のんびりなどしていません」
「なら、なんで行かないのかしら? 早くしないと深刻なことになりますよ?」
「わたくしが行ってどうなりますの。シルヴィはすでにドルヴィとシルヴィ・スヴァルトアルフに援軍をお願いしていると言っています。今頃は編成をしてーー」
「残念だけど、どちらも助けに行かないわよ?」
ヨハネの言葉にわたしは言葉を失った。
「どういうこと……。また貴女が何かしましたの?」
わたしはきつくヨハネを見た。
この女が何かしたとしか考えられない。
だがヨハネは手を振って否定した。
「違う、違う。ガイアノスが圧力掛けているのよ」
「どうして王子であるガイアノスごときにシルヴィに圧力がいきますのよ。たとえドルヴィだろうともシルヴィに脅しなんてできないはずでしょ」
国王であるドルヴィといえども、シルヴィを抑えるほどの権力なんてものはない。
それなのにガイアノスが圧力を掛けているなんて信じられない。
「さあ、何ででしょうね。でもスヴァルトアルフは責めないであげてね。わたしからのお・ね・が・い」
本人は可愛らしく言っているつもりだろうが、今は憎たらしいだけだ。
なぜこれほど交流を深めているスヴァルトアルフから援助が見込めないのか。
「マリアさま、援軍が期待できない以上、わたしに行かせてください」
再度メルオープがわたしに懇願する。
だがメルオープだけ行かせただけでどうにかなる問題ではない。
「ダメです。セルランが指揮を執っていますので、彼を信じてください」
「セルランさまといえども体は一つしかありません。あの方が向かう頃には荒野しか残っていなかったら意味が無いのです」
分かっている。
どうにかしないといけないがどうにもならない。
大人の騎士でさえ命を落とす戦場になんて学生が行ったって危ないだけだ。
最低でも上級騎士並みの魔力があれば……。
「上級騎士並み……。そうよ、一つだけ手があるじゃない!」
わたしはやっと打開策が見つかった。
お父さまには無い戦力が、今この場にならある。
「亜魔導アーマーなら上級貴族と変わらない身体強化ができる」
わたしの呟きを拾ってメルオープは喜び、サラスがわたしの名を呼んだ。
「いけません、姫さま! 」
サラスは恐い顔をして近づいて来た。
シルヴィを絶対視しないといけないサラスはわたしを止めないといけない。
「今回は完全にシルヴィの命令に違反することになります。そうなれば姫さまの次期当主の資格が完全に失われてしまいますよ!」
シルヴィの命令はたとえ娘のわたしだろうとも破ってはいけない。
それも各領土を巻き込むようなことにわたしの独断で全てを行うなど、絶対にやってはいけないことだ。
「マリアちゃんの犠牲に三領土が助かるならいいではないですか。そのあとはレティアさまが伴侶を見つけて治めてくれますよ」
ヨハネは名案であると、両手を合わせた。
こんな時に楽しんでいるヨハネの言葉は今は無視だ。
「メルオープくんもそう思うでしょう? 民を大事にする領土ですものね」
「それは……、いやだがマリアさまの……」
ヨハネから話を振られたメルオープはなんと言ってか分からないようで口を閉ざしてしまった。
「ヨハネさま、それ以上は度が過ぎますよ。姫さまはこの国の宝です。どうか‘姫さま血迷ったことは考えないでください。シルヴィならどうにかしてくれるはずです」
「サラス……貴女がわたくしのことを想って言ってくれていることは分かりました」
サラスはホッとしていた。
対照的にヨハネは少し落胆している。
正直ヨハネを喜ばせることはしたくはないが、こうするしかない。
「ですが、わたくしはもう決めています。どうかレティアを次期当主として育ててください」
わたしは毅然とした態度で行くことを口にした。
完全なシルヴィへの反逆だが、もう迷っている時間はない。
しかしサラスはそんなことを許すはずがない。
「何をバカなことを! 今の言葉を取り消してください! 」
「ごめんなさい、サラス。出した舌を引っ込めるような育て方はされてませんの。メルオープ!」
わたしはサラスへの視線をメルオープへと移した。
「……っは!? はい!」
反応が遅れて返事が返ってきた。
わたしは彼に命令する。
「わたくしの剣を振るう時が来ました。ただちに魔導アーマーを着られる騎士を集めなさい」
「よ、よろしいのですか? マリアさまの将来がーー」
メルオープも戸惑っているようで、本当に動いていいのかわからないようだ。
もうすでにヴェルダンディとルキノのトライードは首から離れている。
側近たちも困惑しているのだ。
「早くしなさい! わたくしは今剣を振るうと決めたのよ! 」
「か、畏まりました!」
メルオープはすぐさま走っていった。
それからわたしはカオディに目を向けた。
「カオディ、総動員して魔導アーマーの整備をしなさい。わたくしが使う鎧もね。もしかして貴方もくだらない質問でわたくしに時間を使わせませんよね?」
「い、いえ、すぐ行います! エリーゼ、お前も来なさい!」
「わ、分かりました」
何か言いただけな顔をしていたので先に封じた。
妹のエリーゼを連れてカオディもいなくなった。
めんどくさいこの女を相手にしている暇はないが、無視していい存在でもない。
「何ですか? 今貴女に構っている暇は無いのですが?」
「つれないわね。魔物が発生してピンチなんでしょ? こんなところでのんびりしてもいいの?」
どうやらヨハネはすでに情報を手に入れているようだ。
それぐらいできそうなので驚きはしないが。
「わたくしのやるべきことは学生たちを混乱させないことです。のんびりなどしていません」
「なら、なんで行かないのかしら? 早くしないと深刻なことになりますよ?」
「わたくしが行ってどうなりますの。シルヴィはすでにドルヴィとシルヴィ・スヴァルトアルフに援軍をお願いしていると言っています。今頃は編成をしてーー」
「残念だけど、どちらも助けに行かないわよ?」
ヨハネの言葉にわたしは言葉を失った。
「どういうこと……。また貴女が何かしましたの?」
わたしはきつくヨハネを見た。
この女が何かしたとしか考えられない。
だがヨハネは手を振って否定した。
「違う、違う。ガイアノスが圧力掛けているのよ」
「どうして王子であるガイアノスごときにシルヴィに圧力がいきますのよ。たとえドルヴィだろうともシルヴィに脅しなんてできないはずでしょ」
国王であるドルヴィといえども、シルヴィを抑えるほどの権力なんてものはない。
それなのにガイアノスが圧力を掛けているなんて信じられない。
「さあ、何ででしょうね。でもスヴァルトアルフは責めないであげてね。わたしからのお・ね・が・い」
本人は可愛らしく言っているつもりだろうが、今は憎たらしいだけだ。
なぜこれほど交流を深めているスヴァルトアルフから援助が見込めないのか。
「マリアさま、援軍が期待できない以上、わたしに行かせてください」
再度メルオープがわたしに懇願する。
だがメルオープだけ行かせただけでどうにかなる問題ではない。
「ダメです。セルランが指揮を執っていますので、彼を信じてください」
「セルランさまといえども体は一つしかありません。あの方が向かう頃には荒野しか残っていなかったら意味が無いのです」
分かっている。
どうにかしないといけないがどうにもならない。
大人の騎士でさえ命を落とす戦場になんて学生が行ったって危ないだけだ。
最低でも上級騎士並みの魔力があれば……。
「上級騎士並み……。そうよ、一つだけ手があるじゃない!」
わたしはやっと打開策が見つかった。
お父さまには無い戦力が、今この場にならある。
「亜魔導アーマーなら上級貴族と変わらない身体強化ができる」
わたしの呟きを拾ってメルオープは喜び、サラスがわたしの名を呼んだ。
「いけません、姫さま! 」
サラスは恐い顔をして近づいて来た。
シルヴィを絶対視しないといけないサラスはわたしを止めないといけない。
「今回は完全にシルヴィの命令に違反することになります。そうなれば姫さまの次期当主の資格が完全に失われてしまいますよ!」
シルヴィの命令はたとえ娘のわたしだろうとも破ってはいけない。
それも各領土を巻き込むようなことにわたしの独断で全てを行うなど、絶対にやってはいけないことだ。
「マリアちゃんの犠牲に三領土が助かるならいいではないですか。そのあとはレティアさまが伴侶を見つけて治めてくれますよ」
ヨハネは名案であると、両手を合わせた。
こんな時に楽しんでいるヨハネの言葉は今は無視だ。
「メルオープくんもそう思うでしょう? 民を大事にする領土ですものね」
「それは……、いやだがマリアさまの……」
ヨハネから話を振られたメルオープはなんと言ってか分からないようで口を閉ざしてしまった。
「ヨハネさま、それ以上は度が過ぎますよ。姫さまはこの国の宝です。どうか‘姫さま血迷ったことは考えないでください。シルヴィならどうにかしてくれるはずです」
「サラス……貴女がわたくしのことを想って言ってくれていることは分かりました」
サラスはホッとしていた。
対照的にヨハネは少し落胆している。
正直ヨハネを喜ばせることはしたくはないが、こうするしかない。
「ですが、わたくしはもう決めています。どうかレティアを次期当主として育ててください」
わたしは毅然とした態度で行くことを口にした。
完全なシルヴィへの反逆だが、もう迷っている時間はない。
しかしサラスはそんなことを許すはずがない。
「何をバカなことを! 今の言葉を取り消してください! 」
「ごめんなさい、サラス。出した舌を引っ込めるような育て方はされてませんの。メルオープ!」
わたしはサラスへの視線をメルオープへと移した。
「……っは!? はい!」
反応が遅れて返事が返ってきた。
わたしは彼に命令する。
「わたくしの剣を振るう時が来ました。ただちに魔導アーマーを着られる騎士を集めなさい」
「よ、よろしいのですか? マリアさまの将来がーー」
メルオープも戸惑っているようで、本当に動いていいのかわからないようだ。
もうすでにヴェルダンディとルキノのトライードは首から離れている。
側近たちも困惑しているのだ。
「早くしなさい! わたくしは今剣を振るうと決めたのよ! 」
「か、畏まりました!」
メルオープはすぐさま走っていった。
それからわたしはカオディに目を向けた。
「カオディ、総動員して魔導アーマーの整備をしなさい。わたくしが使う鎧もね。もしかして貴方もくだらない質問でわたくしに時間を使わせませんよね?」
「い、いえ、すぐ行います! エリーゼ、お前も来なさい!」
「わ、分かりました」
何か言いただけな顔をしていたので先に封じた。
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