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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!
もう少しで転がせましたのに
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わたしはこれ以上ペースを引っ掻き回されないようにすぐに踵を返して席へと向かった。
ユリナナが固まってしまっているため、緊張をほぐすために話しかけた。
「ユリナナさん、行きますわよ」
わたしが話しかけても気付いていない。
ヨハネを裏切ったに等しいので、今後は彼女と敵対しないといけない。
今になって恐れというものが出てきたのだろう。
わたしが再度声をかけた。
「ユリナナさん!」
少し大きな声で話しかけたのでやっとわたしの存在に目がいった。
「大丈夫、今後はわたくしがいるから安心なさい。少しでも隙を作れば付け込まれるから今は平静を保ちなさい」
「か、かしこまりました」
ユリナナの顔の青さは戻っていないが、今は気持ちを落ち着けてもらわないといけない。
レティアの表情も優れなかった。
「レティア、わたくしがどうにかするから安心しなさい」
「お姉さまなら大丈夫だと思っていますが、やはりヨハネさまを見ると不安が押し寄せてくるのです」
レティアが手をきつく握って胸を押さえている。
どういうわけかヨハネは見る人によっては毒気を感じ、また別の者から見るとカリスマを感じるらしい。
わたしは当然毒を感じている。
お互いの領土が席に座ってから、好みに合わせて紅茶を注いでいく。
今日はわたしが主催者なので、レイナとラケシス、ディアーナを総動員して準備を済ませていく。
「久しぶりね、ディアーナちゃん」
ディアーナがヨハネの紅茶を注いでいると、ヨハネは不意に声を掛けていた。
ディアーナは特に落ち着いた様子で受け答えをした。
「お久しぶりです、ヨハネさま。数年間お会いすることもありませんでしたので、これまでのお話を聞きたいですが、今日はマリアさまの侍従として責務を全うしないといけないため、これにて失礼することをお許しください」
ディアーナは紅茶を淹れ終わってすぐにその場から離れようとした。
「ふーん、真面目ね。そういえばエルトくん可愛いわね。わたしの領土に欲しいくらい」
ビクッとディアーナの体が震えた。
ディアーナの顔が強張っており、その顔を楽しんでいるようだ。
わたしはすぐに口を挟んだ。
「ヨハネ、いい加減にしなさい。わたくしの大事なディアーナに何か良からぬことをしようとするなら許しませんわよ」
わたしはきつい目でヨハネを睨んだ。
だが彼女はそんな目に恐がったりはしない。
「そんな恐い顔をしないでくだいまし。ただ結婚後は二人でゼヌニムへ来て盛り立ててくれないか聞いているだけです。弟並みの戦士が一人いればゼヌニムも安心できるのよ」
ヨハネは笑って紅茶を飲んだ。
一体何を考えているか全くわからない。
「義姉上、あまり不穏な発言はおやめください。今日は今後の行く末を決める集まりでもあるのですから」
「ごめんね、ガーネフちゃん」
ガーネフがヨハネを注意した。
わたしは早速紅茶を全員に勧めて、お菓子と一緒に楽しんだ。
ゼヌニムからもお茶を振舞われた。
「ふふん、そちらは紅茶が美味しいみたいですけど、こちらのお菓子は凄いでしょう。フルーツをお菓子と合わせて、今までより美味しくなったのですよ」
パンのような生地に雪のようなものが乗っている。
そして生地の中にはイチゴのようなものが入っており、上側にもイチゴがそのまま丸ごと乗っていた。
アクィエルが美味しそうに食べるので、わたしも興味が湧いてきた。
一口食べてみると、まるで口の中で溶けながら甘味を感じた
「美味しいですわね。これは何というものですの?」
「いちごのケーキですわ」
わたしが食べたことで他の者たちも食べ始めて、その味に舌鼓を打つ。
ゼヌニム領の方がまだまだ甘味は進んでいるようだ。
「いちごの、と言うくらいですから他にもあるのですか?」
「ええ、どんなフルーツでも合いますのよ」
「アクィエルさんのところは素晴らしいシェフがいますのね。羨ましいですわ」
「ふふん、なら今度レシピをーー」
「アクィエルさま、落ち着いてくださいまし」
同じくゼヌニム領から出席している大貴族の令嬢ソフィアが止めた。
おだてればレシピを貰えると思い成功し掛けたが、しっかりアクィエルの暴走を止める者はいるようだ。
……もう少しだったのに
「お姉さま表情が黒くなっていますよ」
「……そんなことはありませんわよ」
わたしはすぐに表情を改めた。
また二口目を口にして、幸せを噛み締めた。
「そういえばパラストカーティの茶葉はこちらにも流通してくれませんかしら」
アクィエルがそう口にした。
どうやら紅茶をだいぶ気に入ってくれたようだ。
「シルヴィにわたくしからも伝えておきますね。まずはゼヌニム領に流通を始めるようにと」
心の中で、スヴァルトアルフと一緒のタイミングですが、と付け加えた。
「まあ、最初の流通相手がゼヌニムなんて。他の領土はまだこの味を知らないようね」
「他にも交流は深めていきたいと思っていますよ。お菓子のレシピや各々の研究など少しでもお互いに吸収していきたいです」
「マリアさんいいこと言いますね。いい加減、お互いに腹を隠し合うのはやめにすべきですね」
アクィエルがご機嫌にもわたしの意見に乗ってきた。
だがここでヨハネが口を挟んでくる。
「お待ちなってください、アクィエルさま」
「あら、わたくしに意見するつもり?」
「意見などとんでもございません。ただ交流を深める会ですので、もっと楽しいお話をしましょう」
「うーん、それもそうですわね」
ヨハネの言葉に大きく頷くアクィエルだった。
ヨハネがいることで少しばかりやりにくいが別に今日で全てを決めようなどとは思っていない。
ゆっくり紅茶を口に運んだ。
レティアも話題を提供するため、アクィエルに話しかけた。
「アクィエルさまもシスターズを始めたとお聞きしましたが本当でしょうか?」
わたしは思わず紅茶を吹きかけるところだった。
ユリナナが固まってしまっているため、緊張をほぐすために話しかけた。
「ユリナナさん、行きますわよ」
わたしが話しかけても気付いていない。
ヨハネを裏切ったに等しいので、今後は彼女と敵対しないといけない。
今になって恐れというものが出てきたのだろう。
わたしが再度声をかけた。
「ユリナナさん!」
少し大きな声で話しかけたのでやっとわたしの存在に目がいった。
「大丈夫、今後はわたくしがいるから安心なさい。少しでも隙を作れば付け込まれるから今は平静を保ちなさい」
「か、かしこまりました」
ユリナナの顔の青さは戻っていないが、今は気持ちを落ち着けてもらわないといけない。
レティアの表情も優れなかった。
「レティア、わたくしがどうにかするから安心しなさい」
「お姉さまなら大丈夫だと思っていますが、やはりヨハネさまを見ると不安が押し寄せてくるのです」
レティアが手をきつく握って胸を押さえている。
どういうわけかヨハネは見る人によっては毒気を感じ、また別の者から見るとカリスマを感じるらしい。
わたしは当然毒を感じている。
お互いの領土が席に座ってから、好みに合わせて紅茶を注いでいく。
今日はわたしが主催者なので、レイナとラケシス、ディアーナを総動員して準備を済ませていく。
「久しぶりね、ディアーナちゃん」
ディアーナがヨハネの紅茶を注いでいると、ヨハネは不意に声を掛けていた。
ディアーナは特に落ち着いた様子で受け答えをした。
「お久しぶりです、ヨハネさま。数年間お会いすることもありませんでしたので、これまでのお話を聞きたいですが、今日はマリアさまの侍従として責務を全うしないといけないため、これにて失礼することをお許しください」
ディアーナは紅茶を淹れ終わってすぐにその場から離れようとした。
「ふーん、真面目ね。そういえばエルトくん可愛いわね。わたしの領土に欲しいくらい」
ビクッとディアーナの体が震えた。
ディアーナの顔が強張っており、その顔を楽しんでいるようだ。
わたしはすぐに口を挟んだ。
「ヨハネ、いい加減にしなさい。わたくしの大事なディアーナに何か良からぬことをしようとするなら許しませんわよ」
わたしはきつい目でヨハネを睨んだ。
だが彼女はそんな目に恐がったりはしない。
「そんな恐い顔をしないでくだいまし。ただ結婚後は二人でゼヌニムへ来て盛り立ててくれないか聞いているだけです。弟並みの戦士が一人いればゼヌニムも安心できるのよ」
ヨハネは笑って紅茶を飲んだ。
一体何を考えているか全くわからない。
「義姉上、あまり不穏な発言はおやめください。今日は今後の行く末を決める集まりでもあるのですから」
「ごめんね、ガーネフちゃん」
ガーネフがヨハネを注意した。
わたしは早速紅茶を全員に勧めて、お菓子と一緒に楽しんだ。
ゼヌニムからもお茶を振舞われた。
「ふふん、そちらは紅茶が美味しいみたいですけど、こちらのお菓子は凄いでしょう。フルーツをお菓子と合わせて、今までより美味しくなったのですよ」
パンのような生地に雪のようなものが乗っている。
そして生地の中にはイチゴのようなものが入っており、上側にもイチゴがそのまま丸ごと乗っていた。
アクィエルが美味しそうに食べるので、わたしも興味が湧いてきた。
一口食べてみると、まるで口の中で溶けながら甘味を感じた
「美味しいですわね。これは何というものですの?」
「いちごのケーキですわ」
わたしが食べたことで他の者たちも食べ始めて、その味に舌鼓を打つ。
ゼヌニム領の方がまだまだ甘味は進んでいるようだ。
「いちごの、と言うくらいですから他にもあるのですか?」
「ええ、どんなフルーツでも合いますのよ」
「アクィエルさんのところは素晴らしいシェフがいますのね。羨ましいですわ」
「ふふん、なら今度レシピをーー」
「アクィエルさま、落ち着いてくださいまし」
同じくゼヌニム領から出席している大貴族の令嬢ソフィアが止めた。
おだてればレシピを貰えると思い成功し掛けたが、しっかりアクィエルの暴走を止める者はいるようだ。
……もう少しだったのに
「お姉さま表情が黒くなっていますよ」
「……そんなことはありませんわよ」
わたしはすぐに表情を改めた。
また二口目を口にして、幸せを噛み締めた。
「そういえばパラストカーティの茶葉はこちらにも流通してくれませんかしら」
アクィエルがそう口にした。
どうやら紅茶をだいぶ気に入ってくれたようだ。
「シルヴィにわたくしからも伝えておきますね。まずはゼヌニム領に流通を始めるようにと」
心の中で、スヴァルトアルフと一緒のタイミングですが、と付け加えた。
「まあ、最初の流通相手がゼヌニムなんて。他の領土はまだこの味を知らないようね」
「他にも交流は深めていきたいと思っていますよ。お菓子のレシピや各々の研究など少しでもお互いに吸収していきたいです」
「マリアさんいいこと言いますね。いい加減、お互いに腹を隠し合うのはやめにすべきですね」
アクィエルがご機嫌にもわたしの意見に乗ってきた。
だがここでヨハネが口を挟んでくる。
「お待ちなってください、アクィエルさま」
「あら、わたくしに意見するつもり?」
「意見などとんでもございません。ただ交流を深める会ですので、もっと楽しいお話をしましょう」
「うーん、それもそうですわね」
ヨハネの言葉に大きく頷くアクィエルだった。
ヨハネがいることで少しばかりやりにくいが別に今日で全てを決めようなどとは思っていない。
ゆっくり紅茶を口に運んだ。
レティアも話題を提供するため、アクィエルに話しかけた。
「アクィエルさまもシスターズを始めたとお聞きしましたが本当でしょうか?」
わたしは思わず紅茶を吹きかけるところだった。
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