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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

宿縁とのお茶会

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 アクィエルと大聖堂で話してから五日が経ち、やっとお茶会の日となった。
 わたしとレティアは一緒の部屋でドレスの着付けを行なっていた。

「お姉さまの頑張りのおかげで悪い噂も全く聞かなくなりましたね」


 レティアがわたしを褒めてくれた。
 この子に言われるとしみじみと感じるが、今回ばかりはわたし一人ではどうにもできなかった。


「わたくし、というよりアクィエルさんですけどね。まさか彼女に救われる日が来るとは思ってもみませんでしたが」


 あの日、アクィエルから言質を取ろうと裏で色々手を回したのに、アクィエルを説得する言葉を持たず、ジョセフィーヌとゼヌニムの仲が修正不可能なほど拗れかけた。
 しかしアクィエルがどういう訳か味方してくれたので、今日のお茶会も問題なく行われる。

「アクィエルさまはお姉さまに敵意はありませんでしたものね」

 レティアが笑ってそう言うがわたしは納得できなかった。

「敵意がない……ですか? あれほど執拗にわたくしの後を追いかけていたのに?」

 そんなバカなことはない、とわたしは思っていた。
 しかしレティアは否定する。


「ライバル、とアクィエルさまは言っていました。それが全ての答えだとわたくしは思いますよ」
「癪ですが、今回ばかりはライバルということにしてあげましょう。大嫌いなのは変わりませんが」
「まあ……お姉さまも素直じゃないですね。くすくす」


 レティアと笑い合った。
 着付けも終わって、わたしたちはバラ園へと向かった。
 バラ園の入り口にはもうすでに今日呼んでいた三領土の代表者が各ニ名ずつ来ていた。
 シュティレンツからは領主候補生であるカオディとエリーゼが来ていた。
 カオディがわたしに気付いて誰よりも早くこちらに来て跪いた。
 続いてエリーゼも同じく跪いた。

「おはようございます、マリアさま、レティアさま。先日の大聖堂の件、マリアさまの覚悟を見ました。わたし自身まだまだ努力が足りないことを痛感しました。これからもさらなる錬金術の秘宝を追い求め、マリアさまに献上したく思います」
「ありがとう、カオディ。でもカオディ、あなた達の領土は良くやってくれているわ。もうしばらくすればしっかり評価されてもっと順位も上がることでしょう」
「もったいなきお言葉」

 カオディとエリーゼはわたしへの挨拶が終わり、次の者達へ譲った。
 次に挨拶をするのは、ゴーステフラートの領主候補生ユリナナとユリナナの弟がやってきた。
 挨拶を済ませると、すぐに彼女は本題に入った。

「マリアさま、最初にわたくしの謝罪を受けて入れてくださいますでしょうか」
「ええ、聞きましょう」
「アクィエルさまの言葉でわたくしがどれだけ恩知らずで不運を嘆くだけの女だったのかと気付きました。ですが、マリアさまはそんなわたくしたちのために尽力されてくださいます。どうかこれまでの無礼を許して頂くために、わたくしの首か体で今後のゴーステフラートを受け入れてくださいませんでしょうか」


 誰もが今の発言にギョッとした。
 入学式とは違い今度はしっかり話をしていたようで、ゴーステフラートのもう一人の領主候補生は静かに目を伏せて答えを待っていた。
 自分の命かそれとも魔力の高い子供を産むためにこの身を捧げるか。
 だがわたしはそんなつもりは毛頭ない。


「安心してください。わたくしはそんなことを命令するつもりはありません。ですが罰は与えるつもりです」
「お姉さま!?」


 レティアがわたしをギョッと見た。
 だが安心するように微笑みで返した。

「これからはゼヌニムの領土との交渉の窓口はゴーステフラートにしてもらいます。ですので、あなた方が領地仲の見本となるよう力を尽くしてください。商業に研究に……」

 わたしは跪いているユリナナの手を取って起き上がらせる。
 お互いの目を見た。

「そして恋愛もね」


 ユリナナは目を見開き、そして優しい顏で喜んだ。
 そして最期の領土であるパラストカーティと交代した。
 パラストカーティからは領主候補生であるメルオープとイジメを受けていたルージュがやってきた。

「マリアさま、本日はーー」
「おーほほほ、マリアさん、おはようございます」

 この笑い声は……、聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと案の定アクィエルが三領土を連れてやってきていた。
 それも魔法祭の時のように数人の男たちに板を持たせて、その上に椅子を乗せてそれに座っていた。

「おはようございます、アクィエルさん。今日は来てくださってありがとうございます」
「マリアさんがどうしても来て欲しいと言うものだからしょうがありませんわね、ほら貴方達、降ろしなさい!」
「了解しました!」


 男たちは大変幸せそうにその板を降ろした。
 どうしてこんな雑用なことをやらされて喜んでいられるのだろう。
 一人を除いて他の男たちは部屋から出て行った。

「ビルネンクルベはこの男も呼んだのか」
「メルオープさま、ぼくは気にしておりませんので」

 メルオープが後ろから悪態を吐いていたが、ルージュが必死に宥めていた。
 そこでビルネンクルベの代表者が緊張した面持ちでわたしに挨拶をしてきた。
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