144 / 259
第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!
宿縁とのお茶会
しおりを挟む
アクィエルと大聖堂で話してから五日が経ち、やっとお茶会の日となった。
わたしとレティアは一緒の部屋でドレスの着付けを行なっていた。
「お姉さまの頑張りのおかげで悪い噂も全く聞かなくなりましたね」
レティアがわたしを褒めてくれた。
この子に言われるとしみじみと感じるが、今回ばかりはわたし一人ではどうにもできなかった。
「わたくし、というよりアクィエルさんですけどね。まさか彼女に救われる日が来るとは思ってもみませんでしたが」
あの日、アクィエルから言質を取ろうと裏で色々手を回したのに、アクィエルを説得する言葉を持たず、ジョセフィーヌとゼヌニムの仲が修正不可能なほど拗れかけた。
しかしアクィエルがどういう訳か味方してくれたので、今日のお茶会も問題なく行われる。
「アクィエルさまはお姉さまに敵意はありませんでしたものね」
レティアが笑ってそう言うがわたしは納得できなかった。
「敵意がない……ですか? あれほど執拗にわたくしの後を追いかけていたのに?」
そんなバカなことはない、とわたしは思っていた。
しかしレティアは否定する。
「ライバル、とアクィエルさまは言っていました。それが全ての答えだとわたくしは思いますよ」
「癪ですが、今回ばかりはライバルということにしてあげましょう。大嫌いなのは変わりませんが」
「まあ……お姉さまも素直じゃないですね。くすくす」
レティアと笑い合った。
着付けも終わって、わたしたちはバラ園へと向かった。
バラ園の入り口にはもうすでに今日呼んでいた三領土の代表者が各ニ名ずつ来ていた。
シュティレンツからは領主候補生であるカオディとエリーゼが来ていた。
カオディがわたしに気付いて誰よりも早くこちらに来て跪いた。
続いてエリーゼも同じく跪いた。
「おはようございます、マリアさま、レティアさま。先日の大聖堂の件、マリアさまの覚悟を見ました。わたし自身まだまだ努力が足りないことを痛感しました。これからもさらなる錬金術の秘宝を追い求め、マリアさまに献上したく思います」
「ありがとう、カオディ。でもカオディ、あなた達の領土は良くやってくれているわ。もうしばらくすればしっかり評価されてもっと順位も上がることでしょう」
「もったいなきお言葉」
カオディとエリーゼはわたしへの挨拶が終わり、次の者達へ譲った。
次に挨拶をするのは、ゴーステフラートの領主候補生ユリナナとユリナナの弟がやってきた。
挨拶を済ませると、すぐに彼女は本題に入った。
「マリアさま、最初にわたくしの謝罪を受けて入れてくださいますでしょうか」
「ええ、聞きましょう」
「アクィエルさまの言葉でわたくしがどれだけ恩知らずで不運を嘆くだけの女だったのかと気付きました。ですが、マリアさまはそんなわたくしたちのために尽力されてくださいます。どうかこれまでの無礼を許して頂くために、わたくしの首か体で今後のゴーステフラートを受け入れてくださいませんでしょうか」
誰もが今の発言にギョッとした。
入学式とは違い今度はしっかり話をしていたようで、ゴーステフラートのもう一人の領主候補生は静かに目を伏せて答えを待っていた。
自分の命かそれとも魔力の高い子供を産むためにこの身を捧げるか。
だがわたしはそんなつもりは毛頭ない。
「安心してください。わたくしはそんなことを命令するつもりはありません。ですが罰は与えるつもりです」
「お姉さま!?」
レティアがわたしをギョッと見た。
だが安心するように微笑みで返した。
「これからはゼヌニムの領土との交渉の窓口はゴーステフラートにしてもらいます。ですので、あなた方が領地仲の見本となるよう力を尽くしてください。商業に研究に……」
わたしは跪いているユリナナの手を取って起き上がらせる。
お互いの目を見た。
「そして恋愛もね」
ユリナナは目を見開き、そして優しい顏で喜んだ。
そして最期の領土であるパラストカーティと交代した。
パラストカーティからは領主候補生であるメルオープとイジメを受けていたルージュがやってきた。
「マリアさま、本日はーー」
「おーほほほ、マリアさん、おはようございます」
この笑い声は……、聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと案の定アクィエルが三領土を連れてやってきていた。
それも魔法祭の時のように数人の男たちに板を持たせて、その上に椅子を乗せてそれに座っていた。
「おはようございます、アクィエルさん。今日は来てくださってありがとうございます」
「マリアさんがどうしても来て欲しいと言うものだからしょうがありませんわね、ほら貴方達、降ろしなさい!」
「了解しました!」
男たちは大変幸せそうにその板を降ろした。
どうしてこんな雑用なことをやらされて喜んでいられるのだろう。
一人を除いて他の男たちは部屋から出て行った。
「ビルネンクルベはこの男も呼んだのか」
「メルオープさま、ぼくは気にしておりませんので」
メルオープが後ろから悪態を吐いていたが、ルージュが必死に宥めていた。
そこでビルネンクルベの代表者が緊張した面持ちでわたしに挨拶をしてきた。
わたしとレティアは一緒の部屋でドレスの着付けを行なっていた。
「お姉さまの頑張りのおかげで悪い噂も全く聞かなくなりましたね」
レティアがわたしを褒めてくれた。
この子に言われるとしみじみと感じるが、今回ばかりはわたし一人ではどうにもできなかった。
「わたくし、というよりアクィエルさんですけどね。まさか彼女に救われる日が来るとは思ってもみませんでしたが」
あの日、アクィエルから言質を取ろうと裏で色々手を回したのに、アクィエルを説得する言葉を持たず、ジョセフィーヌとゼヌニムの仲が修正不可能なほど拗れかけた。
しかしアクィエルがどういう訳か味方してくれたので、今日のお茶会も問題なく行われる。
「アクィエルさまはお姉さまに敵意はありませんでしたものね」
レティアが笑ってそう言うがわたしは納得できなかった。
「敵意がない……ですか? あれほど執拗にわたくしの後を追いかけていたのに?」
そんなバカなことはない、とわたしは思っていた。
しかしレティアは否定する。
「ライバル、とアクィエルさまは言っていました。それが全ての答えだとわたくしは思いますよ」
「癪ですが、今回ばかりはライバルということにしてあげましょう。大嫌いなのは変わりませんが」
「まあ……お姉さまも素直じゃないですね。くすくす」
レティアと笑い合った。
着付けも終わって、わたしたちはバラ園へと向かった。
バラ園の入り口にはもうすでに今日呼んでいた三領土の代表者が各ニ名ずつ来ていた。
シュティレンツからは領主候補生であるカオディとエリーゼが来ていた。
カオディがわたしに気付いて誰よりも早くこちらに来て跪いた。
続いてエリーゼも同じく跪いた。
「おはようございます、マリアさま、レティアさま。先日の大聖堂の件、マリアさまの覚悟を見ました。わたし自身まだまだ努力が足りないことを痛感しました。これからもさらなる錬金術の秘宝を追い求め、マリアさまに献上したく思います」
「ありがとう、カオディ。でもカオディ、あなた達の領土は良くやってくれているわ。もうしばらくすればしっかり評価されてもっと順位も上がることでしょう」
「もったいなきお言葉」
カオディとエリーゼはわたしへの挨拶が終わり、次の者達へ譲った。
次に挨拶をするのは、ゴーステフラートの領主候補生ユリナナとユリナナの弟がやってきた。
挨拶を済ませると、すぐに彼女は本題に入った。
「マリアさま、最初にわたくしの謝罪を受けて入れてくださいますでしょうか」
「ええ、聞きましょう」
「アクィエルさまの言葉でわたくしがどれだけ恩知らずで不運を嘆くだけの女だったのかと気付きました。ですが、マリアさまはそんなわたくしたちのために尽力されてくださいます。どうかこれまでの無礼を許して頂くために、わたくしの首か体で今後のゴーステフラートを受け入れてくださいませんでしょうか」
誰もが今の発言にギョッとした。
入学式とは違い今度はしっかり話をしていたようで、ゴーステフラートのもう一人の領主候補生は静かに目を伏せて答えを待っていた。
自分の命かそれとも魔力の高い子供を産むためにこの身を捧げるか。
だがわたしはそんなつもりは毛頭ない。
「安心してください。わたくしはそんなことを命令するつもりはありません。ですが罰は与えるつもりです」
「お姉さま!?」
レティアがわたしをギョッと見た。
だが安心するように微笑みで返した。
「これからはゼヌニムの領土との交渉の窓口はゴーステフラートにしてもらいます。ですので、あなた方が領地仲の見本となるよう力を尽くしてください。商業に研究に……」
わたしは跪いているユリナナの手を取って起き上がらせる。
お互いの目を見た。
「そして恋愛もね」
ユリナナは目を見開き、そして優しい顏で喜んだ。
そして最期の領土であるパラストカーティと交代した。
パラストカーティからは領主候補生であるメルオープとイジメを受けていたルージュがやってきた。
「マリアさま、本日はーー」
「おーほほほ、マリアさん、おはようございます」
この笑い声は……、聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと案の定アクィエルが三領土を連れてやってきていた。
それも魔法祭の時のように数人の男たちに板を持たせて、その上に椅子を乗せてそれに座っていた。
「おはようございます、アクィエルさん。今日は来てくださってありがとうございます」
「マリアさんがどうしても来て欲しいと言うものだからしょうがありませんわね、ほら貴方達、降ろしなさい!」
「了解しました!」
男たちは大変幸せそうにその板を降ろした。
どうしてこんな雑用なことをやらされて喜んでいられるのだろう。
一人を除いて他の男たちは部屋から出て行った。
「ビルネンクルベはこの男も呼んだのか」
「メルオープさま、ぼくは気にしておりませんので」
メルオープが後ろから悪態を吐いていたが、ルージュが必死に宥めていた。
そこでビルネンクルベの代表者が緊張した面持ちでわたしに挨拶をしてきた。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
完 モブ専転生悪役令嬢は婚約を破棄したい!!
水鳥楓椛
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、ベアトリス・ブラックウェルに転生したのは、なんと前世モブ専の女子高生だった!?
「イケメン断絶!!優男断絶!!キザなクソボケも断絶!!来い!平々凡々なモブ顔男!!」
天才で天災な破天荒主人公は、転生ヒロインと協力して、イケメン婚約者と婚約破棄を目指す!!
「さあこい!攻略対象!!婚約破棄してやるわー!!」
~~~これは、王子を誤って攻略してしまったことに気がついていない、モブ専転生悪役令嬢が、諦めて王子のものになるまでのお話であり、王子が最オシ転生ヒロインとモブ専悪役令嬢が一生懸命共同前線を張って見事に敗北する、そんなお話でもある。~~~
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
【完結】脇役令嬢日記~私のことよりメインストーリーを進めてください!~
コーヒー牛乳
恋愛
私、脇役(モブ)令嬢。
今日も今日とて主役たちの波瀾万丈な名場面を見守っているの。
なぜか主役級王子様も隣にいますが、私たちの方はメインストーリーに関係ないのでこれ以上は大丈夫です!
脇役令嬢VS主役級王子
============
他に書いているもののストレス展開が長くて気晴らしに書きました。ラブコメです。完結まで書きましたので、気軽にどうぞ
ロールプレイングゲームのヒロイン希望だったけど転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢でした
天月せら
恋愛
侯爵令嬢アリーニャ・レンブラントの前世は魔法使いを夢見る少女だった。
ある日、アリーニャは前世の記憶を思い出し、今世の記憶を失っていた。
xxx
ずっとずっと憧れていたの。
幼稚園の頃に流行ったテレビアニメが大好きだった。女の子達が不思議な力を授かり、魔法を使いながら悪の組織と戦うそのアニメはビジュアルも可愛く、仲間たちと協力し合いながら戦う姿やストーリーは幼い私のハートをつかんだ。
私のハートを掴んだ数年後、そのアニメは最強最悪最大の敵を倒し、ヒロインとヒーローが両思いとなり終了してしまった。
私は絶望した。だがそのアニメ終了後、次回新番組の予告編が解禁された。
新しいアニメのビジュアルも可愛かったので、さっきの絶望はふっ飛んでいった。
私は単純なのである。
その後も何回か番組が変わったが、ヒロインたち
が協力し合いながら成長していく姿は私にとっていつしか憧れになった。
いつか自分にも魔法が使えるようになる日が訪れるのではないかと思うようになるまでそれほど時間はかからなかった。
でも、そんな私の願いが叶うことはなく、気づけば私は高校生になっていた。
高校生になれば、テレビアニメを卒業しているかと思いきや、ますますハマって未だに見ている。
好きなのだからしょうがない。
更に、最近では主人公であるヒロインが過去や異世界に召喚され、歴史を変えたり、世界の危機を救ったり、冒険するような漫画にハマってしまった。
漫画の中で召喚されるヒロインはみんな心の綺麗な上に強く美しく気高い女の子ばかりだった。
主人公たちは大体高校生くらいで色々なきっかけを経て召喚されていたので、私にもチャンスあるのではないかと心待ちにしていた。
そんなある日、私は不思議な夢を見た。
夢の内容は覚えていない。
xxx
次の二章更新遅れております
【完結】転生した悪役令嬢の断罪
神宮寺 あおい
恋愛
公爵令嬢エレナ・ウェルズは思い出した。
前世で楽しんでいたゲームの中の悪役令嬢に転生していることを。
このままいけば断罪後に修道院行きか国外追放かはたまた死刑か。
なぜ、婚約者がいる身でありながら浮気をした皇太子はお咎めなしなのか。
なぜ、多くの貴族子弟に言い寄り人の婚約者を奪った男爵令嬢は無罪なのか。
冤罪で罪に問われるなんて納得いかない。
悪いことをした人がその報いを受けないなんて許さない。
ならば私が断罪して差し上げましょう。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる