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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

閑話ステラの恋愛話6

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 第二章、カジノデビューからサラスへの説得の間のお話です。

 今日でサラスさまが来られて三日が経った。
 流石は現シルヴィの指導をしたことがあるお方だ。
 わたくしたちがいくら怒っても次の日には忘れてケロっとしている姫さまをしっかり指導している。


「姫さま!」
「は、はい!」
「心ここに在らずで勉強ができるものですか! それが続くのなら朝までだって続けますよ!」
「ご、ごめんなさい! 集中しますから今日は早く終わってください!」
「何を寝ぼけてますか! そんな甘いことを言う元気があるのなら、わたくしめももう容赦しません!」

 パチーンと鞭を叩く音が聞こえ、再度姫さまの悲鳴が聞こえてきた。
 流石のわたくしたちでもここまでできない。
 サラスさまを罰することはシルヴィ以外できないからこそ、姫さまだろうとあれほど怒れるのだ。


「今日もサラスさまはおっかないな。俺たちも大変だが、マリアさまはそれ以上だ」


 今日はわたくしと共に護衛の当番であるヴェルダンディが、ドア越しに聞こえる声を聞いて声を漏らした。
 だがわたくしはそう思っていない。
 最近のヴェルダンディは前以上に訓練に身が入るようになっており、サラスさまからの課題以外に自分で課題を見つけて取り組んでいた。
 雷に打たれて長い期間眠り続けたのでかなり鈍っていたが、復活してからどんどん元の調子に戻りつつあった。
 それに今日のお昼を過ぎてからはかなりやる気に満ちていた。
 わたくしはお昼に何か話があったからだろうと思うので聞いてみることにした。


「そういえば今日のお昼頃にクロートがやってきましたが、どのようなお話をしたのですか? 貴方だけは中に入ったから話を聞いたのでしょう?」

 質問するといきなり焦ったように、えっ、と声を上げた。
 予想外の質問だったようで、いきなり怪しい挙動を始めて、しどろもどろになった。

「いや、何て言うか……あれだ! 明日の天気は晴れですって!」

 真っ直ぐな子だとは思っていたがここまで嘘を付けない子だとは思わなかった。
 おそらくかなり重要な話だったのだろう。
 それでなければここまで隠すようなことはしない。

「何をそこまで慌てるのですか。嘘を付くのならもっとそれらしい嘘を付いてください」

 同僚の課題を一個見つけて、どうにか改善させないといけないな、とため息がでた。

「嘘だなんて、まったくないない。ステラは疑いすぎなだけだぜ、ははは」


 誤魔化すように笑い始めて、一層怪しさが増した。

「それに明日の天気を伝えに来るなんて、まるで遊びに行くようではありませんか」
「あ、遊びなんて自分は全く行ってませんよ!」
「ステラ、ヴェルダンディ! 護衛中にお喋りなんてもっと課題を増やしますよ!」


 慌てた様子で否定してくるが、あまりに声が大きくサラスから怒りの矛先がこちらに向いてきた。
 急いで謝罪して、小さな声で喋った。


「そんな大きな声を出さないでください。サラスさまがいる以上、遊びに行く時間がないことくらい知っています」
「す、すいません」

 ヴェルダンディはシュンと小さくなっていた。
 そこでドアが開き、姫さまが外に出てきた。

「少し散歩に行ってもいいと許可がでました」

 姫さまの言葉を聞いてわたくしはすぐに意味を理解した。


「それならわたくしがお伴しますね」


 これは女性同士がいいだろうとわたくしは提案した。
 だが姫さまから驚くべき答えが返ってきた。

「いえ、すぐに戻るのでステラは残っていてください」

 今の発言に問題がありすぎて、わたくしは注意をした。


「姫さま! 婚約者がいる身で何を考えているのですか! 」


 わたくしは堪らず大きな声で叱ってしまい、サラスさまから、何事ですか?、と声がきた。
 すぐに姫さまが何でもない、と誤魔化した。
 口に人差し指を当てて、声を潜めるように指示を出した。


「おいおい、何を焦っているんだ。護衛騎士は特にそこは関係ないだろ」

 ヴェルダンディが馬鹿なことを言っているが、わたくしはしっかり止めないといけない。
 姫さまだってわかっているはずなのに、何故わたくしではなく、わざわざヴェルダンディを指名するのか。


「ステラ、落ち着いて。この後ヴェルダンディにはお使いに出てもらう予定なの。だからそのままルキノに変わってもらうから、貴女の心配したようなことはないから安心して」


 少しばかり頭の痛いことだが、ルキノと代わるのならまだ許せる。
 幸いすぐ近くにルキノの部屋もあるので、特に誰かに見つかったりはしないだろう。

「分かりました。でもこれからお使いって一体どのような」
「今度お話します。あまりサラスを待たせるとまた怒りますから」

 姫さまは早歩きで廊下の先へ向かっていった。
 あの方といると常に心休まる時間もない。
 このまま婚姻が進んでもいいのかと考えてしまう。
 そこで今朝来ていた手紙を思い出した。
 わたくしがお手紙を出して、すぐに返事が返ってきたのだ。
 今日の任務が終わってから読もうと思っていたのだ。
 頑張って書いてみたが、剣を持ってきた時間の長いわたくしではあまり良い手紙を書けない。
 一応勉強は同世代と比べてもよかったが、神学に関しては似たような名前がたくさんあるので苦手だったのだ。
 不安と同時に待ち遠しい気持ちもあり、任務中にこんなことを考えていては年長者として失格だ。
 わたくしは少しばかり気持ちを落ち着かせる。


「た、大変お待たせしました」

 落ち着いている間に姫さまがルキノを連れて帰ってきたようだ。


「おかえりなさいませ。少し遅かったですが何かトラブルはありませんでしたか?」
「全くありません!」

 姫さまが前かがみに言ってくる。
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